潦・ともの & ヴァナディース・ヴァーサ

●幸せのトロイメライ

 こうやって、ふたりで過ごすクリスマスも今年で三度目。
 とものはヴァナディースの家でも、まるで我が家のように寛ぎ、ゆったりした時間を過ごしていた。
(「うぅーん、恋人なのだから、もう少しそれらしい事をしたほうがいいのかな?」)
 何となく、そんな気持ちが脳裏を過ぎる。
 だからと言って、何をすればいい、と言う明確なヴィジョンが浮かんでいるわけではない。
(「んーと、抱っことか、膝枕とか、撫で撫でとか……」)
 浮かぶのは小学生並みの考え。
 とものには、それが限界。
 視線は既にヴァナディースが持ってきたプレゼントに向けられている。
「今日はとものにプレゼントがあるのよ」
 その事を察したのか、ヴァナディースが苦笑いを浮かべ、クリスマス用の包装紙に包まれたプレゼントをとものに渡す。
「わぁ、スュール。ありがとー!」
 我慢する事が出来ず、暖炉の前にぺたんと座り、とものが躊躇いも無く、包装紙をびぃーっと開ける。
 プレゼントの中身はゲーム機と、沢山の玩具。
 そのため、とものの瞳がより一層らんらんと輝いた。
(「あらあら、もう高校生なんだから、少しはエレガントにできないかしら? でも、とものの、そういうところが可愛いんだけどね♪」)
 そんな彼女の姿を眺め、ヴァナディースがクスリと笑う。
(「それに、どんなに頑張っても、大人になるしかないんだから、いまのうち、子どもらしい事をしなさいなぁ♪ まあ、成長の片鱗が見えないけどね。特に胸の」)
 そして、ヴァナディースの視線が、とものの胸に……。
 ……まだ小さい。
(「とりあえず、来年に期待ね。どんな奇跡が起こるか分からないし……。とは言え、いつまでこういうクリスマスができるのかしら?」)
 少し寂しげな表情を浮かべるヴァナディース。
 そこで、彼女と目が合った。
 とものは心のままに素直な笑顔と感情をヴァナディースに向け、感謝の意味を込めて彼女にギュッと抱きつく。
「ずっと、クリスマスを一緒にすごしましょうね♪ ともの好きよ♪ ハッピークリスマス♪」
 そう言ってヴァナディースが、優しくとものの頭を撫でた。




イラストレーター名:東原史真