●MerryChristmas
「「メリークリスマス!」」
声を揃えて、智暁と煉は扉の前で出迎えた。
パーティ会場の手前に立つふたりの、今日のコスチュームはサンタクロース。
いや、サンタガールというべきだろうか?
ミニ丈のサンタクロースワンピに黒いタイツ。ふんわりとしたケープを羽織り、頭の上にはサンタ帽を載せて……今日このクリスマスの夜にピッタリな装いに身を包んだふたりは、それぞれ笑顔でお客様を出迎える。
さあどうぞ、扉の奥へ。
そう迎え入れるように、手を伸ばしながら。
「…………」
扉の奥へ消えていく背中を見送って、煉は顔から笑みを消すと、盛大に溜息をついた。
ああ、なんで……こんな姿してるんだろう。
むしろ、しちゃったんだろう。
大きく溜息1つ。
そんなクリスマスの夜を過ごす……朔夜・煉、19歳(男)。
……どうにも居た堪れない気分になって、煉はがくりと肩を落とした。
無意識のうちに、フラフラと隅の方へ移動しながら、壁を向いてもう1度「はぁ……」と盛大に溜息。
「煉様?」
その様子に、智暁はきょとんと首を傾げた。チラと智暁へ視線をやって、煉はもう1度複雑な顔で溜息をつく。
これはこれで、似合っているように見えなくもない。
ただ、その。
髪が長かろうと、天真爛漫でほわほわとした笑みを浮かべていようと、智暁もまた男である事には変わりないわけで。
「いや……」
止めようにも止まらない溜息をまたついて、よろよろ力なくその場で座り込む煉。
(「……何か辛いことでもあったのでしょうか……?」)
その姿に智暁は少しだけ心配げな顔をすると、煉を励ますようにぽむぽむと、その肩を叩いた。
「……あ。煉様、また新しいお客様がいらっしゃいましたわ。お出迎えしないといけませんわね」
「……ソウデスネ……」
また新しい足音を耳にして、ポジションにつく智暁。煉もゆるゆると立ち上がると、扉を挟んで反対側に立ち……先程と同じように、極上の笑顔を浮かべた。
「「……メリークリスマス!」」
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