稲葉・雪兎 & 藤宮・有栖

●White love

「見て、なんて綺麗なツリー……」
 広場の中心にそびえ立つクリスマスツリーの美しさに見惚れ、有栖が幸せそうに溜息を漏らす。
 ユキと一緒に過ごす、二度目のクリスマス。
 ふたりで仲良く手を繋いで、日が落ちて暗くなるまで、買い物や食事などのデートを楽しみ、明るいイルミネーションの街を歩いている途中で、ふと目に留まったクリスマスツリー。
 クリスマスツリーはまるで沢山の宝石が飾られているかのように美しく、ただ眺めているだけでも心が和む。
(「ユキは……どうなんだろう?」)
 何気なくユキの横顔を覗き込めば、彼も有栖を見つめていた。
(「僕はクリスマスツリーを見惚れているアリスが一番綺麗ですよ」)
 あえて口には出さなかったが、その思いが伝わったのか、彼女の顔がぽっと赤くなる。
 ユキも自然と笑みがこぼれ、ふたりで微笑みあいながら、相手を愛しいと思う気持ちで満たされていく。
 例え、言葉を交わす事がなくとも、相手の想いを感じる事が出来るため、それがとてもとても嬉しかった。
(「もっとユキを感じていたい」)
 次第にその思いが強くなり始めたため、有栖がユキの背に合わせて、少し目を屈めて瞳を閉じる。
(「来年はアリスより背が高くなると良いな」)
 一瞬、そんな事を考えつつ、ユキがそっと目を閉じて、有栖の唇に自分の唇を重ね合わせた。
 その途端、有栖は身も心も蕩けてしまいそうなほど、幸せな気持ちに包まれいく……。
「アリス。大きくなったら、僕のお嫁さんになって下さい」
 自らの瞳に有栖を映し出し、ユキが彼女に告白をする。
「もちろん、返事は今度でも構いません。僕はずっとこれから先もアリスと一緒に、こうして過ごしたい。アリスが傍にいてくれるなら、僕もきっと幸せですから……」
 その言葉を聞いて有栖は改めて、ユキと恋人同士である事を実感し、恥ずかしさと共に、嬉しさがこみ上げてくるのであった。




イラストレーター名:橘平