御厨・和沙 & 望月・英二

●Sweet sweet Christmas

 愛する人と一緒に過ごす二度目のクリスマス。
 例え二度目であっても、ドキドキする事には変わりない。
 今回はふたりで別々のクリスマスケーキを作り、一緒に食べてみる事になった。
 和沙はお菓子作りが得意なので、いつも通りに作れば、失敗する事はないのだが、英二に美味しいケーキを食べてもらいたかったので、いつも以上に頑張った。
 一方、英二はお菓子作りが得意というわけではないので、味の方にはまったく自信がないのだが、部屋の中でふたりっきりになれる状況を作る事が出来たので、それとは別にとても嬉しそうな雰囲気だ。
 ふたりとも考え方は違えど、一緒にいたいという気持ちは同じ。
 この一年でさらに愛が深まったので、去年とはまた違った感覚でクリスマスを過ごしている。
「はい、あーん! メインの調味料はボクのあふれる愛情なんだよ! ちょっとお砂糖は控えめにしたから、英二くん食べやすいかな? かな?」
 満面の笑みを浮かべながら、和沙が手作りケーキを英二に食べさせた。
 そのケーキを口にした途端、英二の表情がぱぁっと明るくなり、自然と笑みが零れていく。
「……うん。和沙ちゃんのケーキはしっかり甘いのにしつこさが無くて、凄く美味しいよ」
 和沙の作ったケーキを堪能しながら、英二が素直な感想を口にした。
 そのため、英二も自分の作ったケーキを手に取り、食べさせようとしてピタリと動きを止める。
(「美味しいかどうか不安だけど……。その代わり、手間をかけて愛も込めた……はず。」)
 それでも正直……、自信が無い。
 せっかく、こんなに美味しいケーキを作った貰ったのに、そのお返しがこれでは和沙もションボリしてしまう。
「はい、和沙ちゃんもあ〜ん。冒険はせず、レシピ通りに作ったから、面白みの無い味かも知れないけど……どうかな?」
 だからと言って、このままケーキを食べさせないわけにも行かないので、覚悟を決めて彼女の口まで運んでいく。
「……えへへ、男の子にケーキ作ってもらうのって、すごく贅沢な気分だよ。それに、すごく美味しいし!」
 恥ずかしそうに頬を染め、和沙がケーキの味を堪能する。
 英二の作ったケーキはお世辞抜きでとても美味しく出来ており、どうしてあんなに躊躇っていたのか、彼女には不思議に思えたほどだった。
「あ、ケーキほっぺについてるよ」
 『美味しいケーキをありがとう』という意味を込め、和沙が英二のほっぺにキスをする。
「あはは、もっといっぱい付けといたら良かったかな?」
 予想外の出来事に照れながら、英二がそれを誤魔化すようにして、彼女にチュッとキスをした。




イラストレーター名:たぢまよしかづ