乾・舞夢 & 高瀬・綾乃

●モミの木の前で

 舞夢が銀誓館学園に入学してから、2度目のクリスマスが訪れた。
 そして、彼女が大好きな綾乃先輩とも2度目のクリスマス!
 去年よりも綾乃先輩と仲良くなっている事もあり、舞夢は彼女と会う前からワクワクとしている。
(「一体、どんな話をしようかなっ♪」)
 楽しそうに鼻歌を歌いながら、舞夢は待ち合わせ場所にむかう。
 辺りにはポツポツと雪が降り始め、まわりを覆い隠していく。
(「あっ、綾乃先輩!」)
 ……時間ぴったり!
 舞夢の姿に気づいて、綾乃先輩が手を振っている。
「もしかして、ちょっと待った?」
 笑顔を浮かべて落ち合う、ふたり。
 綾乃先輩は『いま来たばかりよ』と答えを返す。
「良かった♪ ちょっと心配だったんだよっ♪」
 ホッとした表情を浮かべ、舞夢がニコリと微笑んだ。
 それから、ふたりで今年の思い出を語り合った。
 同じ依頼に参加した事や、ふたりで買い物に行った事……。
 一緒に高原まで遊びに行った時の事も思い出深い。
 みんな、舞夢にとっては大切な宝物であり、素敵な思い出だ。
「あっ、イルミネーションが、とっても綺麗なんだよっ」
 瞳をらんらんと輝かせ、舞夢が彼女の腕を引っ張っていく。
 くるぶしまで届く柔らかいボリュームのあるストレートの黒髪が、舞夢の元気な動きに合わせて左右に揺れる。
 まるでそれは彼女の気持ちを表しているかのように……。
「あっ、待って」
 綾乃はフラフラとしながら、転ばないようにして後を追う。
 しばらくして、ふたりはイルミネーションが凄く綺麗なモミの木の前に立つ。
 モミの木に飾り付けられたイルミネーションはとても美しく、キラキラと輝きを放つたび、ふたりの心を和ませてくれた。
 そこで舞夢はモミの木を背にしてくるりっと振り返り、自分の手を後ろで握って綾乃先輩を見上げる。
「ありがとう♪ それと、これからも仲良くしてねっ♪ 大好きっ♪」
 そう言って舞夢がえへへっと笑った。




イラストレーター名:上弦 幸平