●* 愛らしいサンタを捕獲 *
今年の12月24日は、ちょっと特別。
恋人と2人、素敵なイブを過ごすため、チャールズはいつもより早足で街の中を歩いていた。
そのとき不意に、彼の頬に冷たい何かが微かに触れた。
「……雪?」
はらはらと舞い落ちる、白い妖精。
それは、ほんの僅かな体温を奪い、すぅっと音もなく消えてゆく。
その儚さに、暫し気を取られていると……。
「チャーリーさんっ」
聞こえてきたのは愛しい声。
振り返れば、そこにはサンタドレスを身に纏った雛が、もじもじしながら立っていた。
「わ、雛。どうしたの?」
驚き、そして嬉しさから緩む頬。
それを隠すかのように、チャールズは口元を片手で押さえた。
「えへ、迎えに来ちゃったのです」
彼を見上げ、雛は少し恥ずかしげな笑顔を浮かべてそう言った。
その愛らしい仕草に、表情に、チャールズの表情は緩みっぱなし。
「嬉しいなぁ、ありがと。雛」
すっかり見惚れ、心奪われてしまったチャールズだが、それ故か、ふとあることに気が付いた。
それは、街を行き交う人々の視線。
街に現れた愛くるしいサンタの少女は、どうやら、道行く人々の心まで掴んでしまったらしい。
そうなると、頭を擡げるのは独占欲。
「雛は俺だけのだよ」
チャールズは、ちょっぴりムッとした表情を浮かべてそう呟くと、まるで周りの人に見せつけるかのように、雛をふわりと抱き上げた。
「は、わ……チャーリーさん」
突然のことに驚いて、雛は顔を真っ赤にしたが、すぐに嬉しそうな微笑みを浮かべ、チャールズの首に腕を絡めた。
互いの吐息がかかるほどに近付いた顔と顔。
腕の中の重み、伝わる温もり。
人前では、ちょっと照れくさいけれど。
けれど、愛おしさは抑えきれない。
触れ合った唇は、ほんの少し冷たかった。
けれど忽ち、とろける程に熱くなる。
それはきっと、素敵なイヴの始まりの合図。
2人の思い出に、またひとつ、深い想いが刻まれた瞬間。
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