五十嵐・のり子 & 烏丸・識羽

●Ami de l'enfance

 今日は特別な日。
 その手には、しっかりとあの人に渡すためのプレゼントが握られていた。
 プレゼントと一緒に自分の気持ちを伝える。
 そう、のり子は決めていた。
 ちょっとずれていた眼鏡を直して、気合は充分!
(「今日こそウチの気持、ちゃんと知ってもらうん!」)
 煌くツリーの前でのり子は、強い意志が込められた瞳をあげた。

 プレゼントを差出し、のり子は緊張した面持ちで識羽を見る。
「しきちゃん、あんね……」
 手が触れる。思わずのり子はその手を両手で掴んでいた。
「ウチ、小さい頃からずっと……!」
 心の中には一つの想いがぐるぐると回りだす。
 15年もずっとずっと片思いなんてもう嫌!
「幼馴染なんてもう嫌や……。何言うても、冗談やって思われてまう」
 識羽の顔を見ようとして、見れなかった。
 俯くように、でもその声はしっかりと響く。
「……ずっと、しきちゃんの事、大好きやったん」

 その告白を識羽は黙って聞いていた。
 もらったプレゼントを受け取り、離れたその手で大切な何かを取り出した。
「あー、そんなに言うなら……。ま、付き合ってやってもいいぞっと」
 ちゃりと金属が重なる音と。
 首に何かが掛けられる感覚。
 その識羽の言葉には照れ隠しも入っていて。
 識羽が取り出し、のり子の首にかけてやったのは、雪の結晶モチーフのネックレス。
 のり子の視界が、溢れそうになる涙で揺れていた。

(「ちゃんとした返事はさすがに言えねぇ……!」)
 それは今までの告白を軽くあしらってきた識羽の心の言葉。
 ぱちっと外れぬように金具をつけてやって、後は……。
「しぎぢゃああああんっ! すき! すき大好き!!」
 がばっと抱きつかれてしまった。面食らいながらも識羽はしっかりとそれを抱きとめる。
「しきちゃん愛してるー!」
 ぎゅっとのり子は識羽に抱きついたまま。零れる涙は隠したまま。
「ま、これで一応恋人っつーことで……これからもよろしく頼むな!」
 その識羽の一言で、のり子の涙が止まらなくなったのは言うまでもなく。

 何度目の告白だろう?
 でも、そんなことはかまわない。
 長い間思い続けてきた願いが叶ったのだから。
 イルミネーションの光を受けて、のり子のネックレスがきらりと輝いた。




イラストレーター名:マメ太