●セカンド・クリスマス
あっという間の1年が過ぎ、今年もまたクリスマスがやってきた。
恋人なんだと、改めて強く意識し合ったあの日。
思い出せば、何だかとても照れくさくって、暫くは顔に出ないようにするのも大変だったけど。
別に誰かに公表したわけでもないのみ、いつの間にか知れていて、色々聞かれるたびに気恥ずかしさで一杯になったけど。
けれど、今はもう、普通に接せるようになった……かな?
晩餐のための買い物を終え、ふたりで歩く帰り道。
背中に両腕を回したまま、サクサクと霜柱を踏みながら歩く雹。
そのあとを、大きな荷物を両手に持って付いて行く雨水。
普段はちょっぴり無表情な雹だが、こうやって雨水と一緒に歩いていると、嬉しさが抑えきれないほどに溢れてくる。
そんな雹の、滅多に見られない満面の笑顔を見れば、雨水の口元もつい緩んでしまう。
「いきなり大学辞めて探検家だなんて……あの時は驚いたわよ」
「すみません、中退してまで私の我侭に付き合ってもらって……でも、本当に感謝しています」
この1年、色々な思い出ができた。
時間に縛られることなく2人で過ごすことができるのは、卒業生ならでわの特権。
喜び、悲しみ、楽しみ……そんな話を交わしながら、森の小道を歩くのも、きっと素敵な思い出のひとつになる。
木の葉にうっすら積もった雪が、時折、微かな音を立てて落ちる。
「家に帰ったら、腕によりをかけてご馳走作るからね」
世間のご馳走には、程遠いかもしれないけれど。
そう付け加え、雹が笑顔で振り返る。
「いいえ、きっと世間の御馳走より素敵ですよ」
作って貰う立場ですがと、雨水も柔らかに微笑み返す。
大事なのは、2人一緒に食べるということ。
質素だとか豪華だとか、そんなのはほんの些細なこと。
仕事柄、金銭的な問題が常に付きまとっているけれど、一緒ならきっと何とかなる。
そう思えるのも、互いを心から信頼しているからこそ。
「これからもよろしくね、雨水」
「こちらこそ。これからも宜しく、雹」
来年も、再来年も、その次のクリスマスも。
ずっとずっと、一緒にいられますように。
2人の時間が、もっと沢山重なり合いますように。
| |