●白いツリーは海辺で私達を導く灯台の様に
ずっと眠り続けていた。
そんな私が目覚めたのは、今年の秋。
そして、迎える初めての、クリスマス。
街はクリスマスの電飾にあふれていた。
心躍るような、賑やかな音楽。家族や恋人達の笑い声。
(「すごく眩しい」)
穂乃美は少し瞳を細めて、嬉しそうな笑みを浮かべた。
(「日本でユールを迎えるのは、初めてなのです」)
にこにこと、ニルも笑みを浮かべる。
ちなみにニルの言うユールとは、クリスマスのことを指す。北欧諸国では、クリスマスをユールと呼ぶようだ。
電飾が燦然と輝く賑やかな街中も素敵だけれど、青いイルミネーションを眺めていると心が穏やかになっていくよう。
外は寒いけれど、暖かい灯台の中でただひたすら、青い灯りを眺めながら、皆と楽しく話ができると思うと。
(「ちょっぴり贅沢な気がします」)
思わずニルは、ふふりと笑みをこぼした。
今、穂乃美とニルは二人で、ツリーの飾り付けをしている。
二人が所属する、結社のメンバーが集まる灯台の中。
灯台の中とは思えないほど、暖かな部屋になっているその中で、白いツリーが飾られていく。
ツリーのイルミネーションの光は、海の色を連想させるような、青。
つけていく飾りは、船のいかりや、ヨットといった海のモチーフ。もちろん、クリスマスにちなんだ飾りもいくつか入っている。
まるでそれは……。
(「私を導いてくれた、白い灯台そのままで……」)
穂乃美はそっと、貝殻のモチーフをツリーにつけた。
「はい! キラキラ灯台ツリーの完成です♪」
ニルの言葉に、穂乃美は優しく微笑む。
「ニルさん、すごく綺麗なツリーになりましたね」
「はい」
と、外から声が聞こえてくる。
どうやら、皆が集まってきたようだ。
二人は顔を見合わせ、もう一度、微笑んだ。
これから始まる海辺のクリスマスに、胸を躍らせて。
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