<リプレイ>


●結社企画巡り 〜グルメストリート編
 みなさん、こんにちは。未来のフードアナリスト山本・真緒です。
 学園祭2日目の今日は、90店もの模擬店が軒を連ねるグルメストリートから、特に人気の上位3つのお店をご紹介していきます。
 どんな美味しい料理が出てくるか、いまから、ドキドキわくわくです。
 さぁ、私と一緒に魅惑のグルメ体験にレッツゴーですね。
 まずは、第3位に入賞したお店に行くのですよ!

●第3位は ビニールプールと温泉と
 グルメストリート。
 それは、家庭科室を中心とした特別教室・一般教室と、中庭や校庭に作られた屋台村をつないだ、学園祭の食を司る重要なライフラインの総称である。
 お昼のランチタイムはもとより、十時と三時のおやつタイムは、それこそ戦場のような忙しさをかもしだすのだ。

「えっと、目印はビニールプールです??」
 真緒は投票結果を記しているメモ帳を読むと、小首を傾げながら屋台村を見渡した。
 グルメストリートとビニールプールとの間に、どのような因果関係があるのか、少し腑に落ちなかったらしい。
「ビニールプールってあれですよね、子供が水遊びする……って、見つけた!」
 真緒は、見つけたビニールプールを指差すと、そちらに向かってとととと駆け出していた。

「ごめんくださーい」
 ビーチパラソルに囲われたその店は、なんとも珍しい『足湯茶屋』であるようだ。
 夏の鎌倉天気は晴天、うだるような暑さの中でビニールプールに満たされたお湯に足を浸して食べる軽食は、ある意味、極上の贅沢かもしれない。
 真緒は店員の響・楓(至善の飾り手・b44270)がやってきて、おしながきを渡された後、足湯に案内される。
 靴とソックスを脱いで、足を浸すと、なんとも良い塩梅の湯が疲れをほぐしてくれる。
「このお湯は、温泉のお湯を使っているのよ」
 隣の席に座って和菓子を食べていた、美袋・真砂(舞華の如し・b48129)さんが、真緒に教えてくれる。
 温泉水は無人旅館【たまゆら】の温泉をポリタンクで運んできているらしい。
「それは、かなりの力仕事ですねぇ」
 真央は、感心しながらお品書きを読む。
 お饅頭に水羊羹、くずきり、かき氷に各種団子といった、和のスイーツが並ぶ。
「どれが美味しいのかなぁ」
 と、そんな呟きに、向かいの席にいた七獅・流初(世間を知らぬ者・b61684)が、
「みたらしだんごがおいしいよ」
 と、教えてくれた。
「それじゃ私はみたらしだんごと、冷やし抹茶をお願いします」
 さっそく店員の桜庭・未夏(雇われ剣士・b29819)が注文の品を運んできてくれる。
 更に、神楽木・京子(風に揺れる三つ葉・b56223)が、真緒を含めたお客さん全員を、大団扇で扇いで涼風を送ってくれる。
 その心地よい風の中、おいしいみたらしだんごを冷たい抹茶で頂いた真緒は、やっと、メモ帳を取り出して仕事を開始した。
「こんにちわ、団長の歌彩さんはどちらでしょうか? この『足湯茶屋』がグルメストリート3位に入賞しましたので、インタビューをしたいのですが」
 その真緒のインタビューに、心底びっくりしたという風情の団長の歌彩・真矢(ソラノカケラ・b14665)が駆けつけてこう答えてくれた。
「まぁ、あれだな。団長と言っても、そう大げさな事をしたわけじゃなく、湯を沸かしたり雑用をしたりそんな事をしていたな。とにかく、この炎天下の足湯という企画にも関わらず高い評価を得られて感謝している」
 確かに、夏の炎天下に温泉といわれてもしっくりこない。
 だが、疲れた足を休めるという事では、足湯に勝るものが無いのもまた事実なのだ。
「本当に良い温泉で足の疲れも吹っ飛びました。ここが人気になったのは、企画の勝利だと思いますよ! みたらし団子も美味しかったですし」
 真緒は、心からそう言うと、団長と店員の皆さんに、パチパチパチと拍手を送った。
 足湯に浸かりながらなので、ちょっと盛り上がりにかけたかもしれないが、そのほっこりとした雰囲気もまた、この足湯茶屋の魅力なのだろう。
 その後、20分程足湯を楽しんだ真緒は次のお店に行くために、タオルで足を拭き、ソックスと靴をはいて、店の外に出たのだった。

●準優勝 春の花々咲き乱れる 春の宴の和風ビュッフェ
「いよいよ次は、準優勝のお店ですね!」
 真緒は、グルメストリートにしたがって校舎に入ると、目指すお店に向けて軽やかな足取りでステップした。
 この足取りの軽さは、おそらく足湯効果だろう。
 そして、発見したのは、桜色の上品な暖簾。
 そう、この場所こそグルメストリート準優勝の和風ビュッフェ『桜庵』なのだ。

「こんにちは」
 と暖簾をくぐった真緒は、藍色の浴衣の氷采・亮弥(青藍ヴィエチニー・b16836)の出迎えを受ける。
 春の花々が咲き乱れるように飾り付けられた店内は、まさに春の桃源郷。
 その季節を忘れた不思議な雰囲気の中で案内されたのは、風情のある竹網の机。
 そっと渡されたお弁当の箱が、ビュッフェの皿の代わりらしい。
「お花見弁当みたいで楽しそうね」
 真緒は、花が描かれた10種類の割り箸袋から一つを選ぶと、さっそくビュッフェのお料理に向かった。
 料理の前には、たくさんのお客様が、料理を選んでお弁当箱に詰めている。
 並んでいる料理は、主食が花形のおにぎり、お稲荷さん、素麺、さんどいっち。おかずが、玉子焼きに夏野菜さらだ、ささみの梅肉はさみ揚げ、冷しゃぶ。お吸い物とこんそめすぅぷと、あとはスイーツと店員に注文する飲み物となっているようだ。
 ビュッフェの品数としては決して多くは無かったが、色とりどりの食事をお弁当箱に詰めるのは、なかなか、楽しい作業のようだ。
 ささみの梅肉はさみ揚げをメインにお弁当箱を盛り付けた真緒は、一緒にお弁当を詰めていたお客さんを捕まえると、早速仕事にとりかかった。

「こんにちは! 未来のフードアナリスト、山本真緒です。今日はグルメストリートの有名店を巡ってるのですが、桜庵さんのお料理はいかがですか?」
 いきなりのインタビューにちょっと驚かれたが、お店のお客様もお店の雰囲気に似て、おおらかに答えてくれた。
「日本はすてき、そんなばしょ。ふんわり、ふんわり、すてきな空間……」
 はちみつ色の髪の毛の人形のような美少女、ドロシー・ルドヴィカ(ピノチオ・b57988)が言う。
 うたうように紡がれた言の葉は、春の雰囲気にベストマッチ。
「お店の空気が暖かいですし、夏を忘れ春に舞い戻ったような雰囲気がすごく素敵ですね」
 桜次・胡乃(春陽桜花・b23783)も、そう続ける。
 目でも楽しめる華やかな料理は、見ているだけで嬉しくなってしまうのだ。
「溶けると花が出てくる氷に胸キュン! だな」
 嵯峨野・眞琴(春茜のうた・b17012)は、飲み物の花氷入りあいすてぃをいたく気に入ったようだ。
 桜庵は、そのさりげない気配りと演出、そして暖かな雰囲気で女性客の心をぐっと掴んでいるようだった。
「ということで、花氷入りあいすてぃください!」
 美味しそうに盛り付けたお弁当を手に席に戻った真緒はさっそく、花氷入りあいすてぃを注文する。
 そして、届けられたあいすてぃをからんからんと掻き混ぜて、溶けてゆく氷から現れる花の姿をはにゃーんという表情で愛でると、おもむろにこう言った。
「店長を呼んでください」
 と。
 やってきた店長の壱条・ひかる(ローレライ・b01516)は、淡雪の髪に太陽の瞳を持つ美人さん。
 店の雰囲気にも良く合う、やわらかい声でこう尋ねてきた。
「お客様、どうされましたか?」
「はい。実は、この桜庵がグルメストリートの準優勝に選ばれたので、是非、お話を聞かせてもらえますか?」
 真緒はひかるに事情を説明する。そういうことならと、ひかるも快諾してくれた。
「店の自慢は、料理の味……ですね。皆で作ったけれど、味は保証済みです。あとは、1日目の夜のかき氷も楽しかったです。本当に、心から楽しめた学園祭でした、最後に賞もいただきましたし、皆には心から感謝します」
 コメントからも、ひかるの暖かさや優しさが伝わってくるようだ。
 真緒も、丁寧にお礼を言うと、最後にこう付け加えた。
「この桜庵は、お客さんからの投票が一番多かったんですよ。私もお客さんとして、このお店の雰囲気を楽しみましたが、とても優しい気分になれました。ありがとうございます。そして、ごちそうさまでした」
 こうして、真緒は、春の雰囲気の桜庵の暖簾をくぐり、再び真夏のグルメストリートへと歩き出したのだった。

●でも、ちょっと待って。何か物足りなくない?
 桜庵を出た真緒は、幸せな気分のままグルメストリートを進む。
 目指すは栄えある優勝を勝ち取ったお店!

 と、その時、グルメストリートに一つの音が響いた。
「ぐぅぅぅぅ〜」
 それは、真緒のお腹の虫が鳴いた音に間違いないようだった。
 考えてみれば、三位の足湯茶屋も準優勝の桜庵も、がっつり食べるぜーというお店では無く、グルメストリートの名店を食べ尽くすぜ! という覚悟を決めていた真緒の胃袋にとっては、かなり物足りなかったらしい。
 そこで、真緒は持っていたメモをめくって周囲のお店情報をチェックする。
「たしか、さっき通ってきた場所に4位の名店があったはず……」
 どうやら、優勝報告の前に、軽く腹ごしらえしようという腹積もりのようだった。

「そうそう、ここここ。デカ盛り喫茶sole〜2009〜!!」
 2008年度の準優勝のこの店は、惜しくも入賞を果たす事はできなかったが、堂々の4位を獲得していたのだ。
「えっと、情報によれば、闇鍋、蒼汁、紫知るは頼まない方が良いんですね。あとは学園祭特別メニューの鮎飯(6倍)も、美味しいけど食べきると腹痛を起こす量、シュークリームは自分の体積を超える……!?」
 軽く腹ごしらえにくるような場所じゃ無かったかもしれないが、ここまで来たら引き返せない。
 真緒は腹を括って、デカ盛り喫茶sole〜2009〜に入っていったのだった。

「いらっしゃい、注文はお決まりでしょ〜か?」
 その真緒を出迎えたのは、店員の日生・結希(晴れときどき雪女・b45294)。
 差し出されたメニュー表には、魅力的なメニューが並ぶが、その中から『フルーツと生クリームのパスタ』を選んだ。
「フルーツと生クリームのパスタ、量はどのくらいになさいますか?」
 結希ににっこり尋ねられた真緒は控えめに2倍量を注文した。このくらいなら余裕で食べられるはずだ。
「フルーツと生クリームのパスタ2倍、ですね。了解ですー♪」
 待つこと、少々。
「フルーツと生クリームのパスタ普通、完成ですー♪」
 結希が元気良く、お皿一杯のパスタを運んできてくれた。
「それでは、いただきまっす! あっあまーい、でもパスター、不思議なあじー、でも美味しいー」
 真緒は、そんな感想を言いながら完食。
 とても美味しゅうございましたと、手を合わせた。

 勿論、最後に店長へのインタビューも忘れたりはしない。
「去年の流れを踏襲した今年の企画は、去年と変わらぬ賑わいを見せてくれました。ただ、危険な超大盛りメニューや青汁で倒れるお客様も居りましたが……」
 団長の一神・奈月(月凪・b46623)は、そう言って胸を張ったが、入賞できなかったのは少し残念そうだった。

●グルメストリート優勝 ウェスタン喫茶☆封印倶楽部
 砂塵舞う開拓者たちの町。
 そこにある一軒の酒場。
 そこが、ウェスタン喫茶☆封印倶楽部。
 街に唯一の酒場に、馬の蹄の音が響き息も絶え絶えのカウボーイが馬から転がり落ちるように駆け込んできた。

「なんですとー」
 真緒は、目をまん丸に開いて、その情景に見入っていた。
 勿論、ここは砂塵舞う開拓者の町では無く、銀誓館学園のグルメストリート。
 そして、この酒場こそは、グルメストリートで見事優勝を飾った、ウェスタン喫茶☆封印倶楽部なのだが、丁度、即興西部劇が始まってしまったらしい。

「大変だっ!乗合馬車がインディアンたちに襲撃されて、女たちが連れ去られた!」
「なんですとー」
 ざわめく一堂に、真緒もちゃっかり混ざる。
 こういうイベントに参加してこそのグルメアナリストなのだ。
「幸いにも敵は女の子たちを乗せた乗合馬車に並走するように移動中。そんなに速度は出せないから、今から大急ぎで馬で追いかければ、どうにか追いつけるだろ」
 こうして始まった西部劇は、葦原・淳(漆黒のめちゃやんちゃな猫・b02155)が保安官代理を、セフィラ・マーゴット(ヴォーパルバニー・b60878)が流しのシスターガンマンなどを熱演。
 加えて、ガンフーを極めた賞金稼ぎ、大富豪のお嬢様と超カワイイ街娘という名の親父で犯人などが、入り乱れて大活躍して解決したらしい。

「あぁ楽しかった。それじゃ、私はウェスタン・バーガーとミルクをお願いします!」
 西部劇が終わったので、真緒はメニューを確認して注文。ウェスタン・バーガーは肉厚の豪快ハンバーガーで、ウェスタン喫茶の人気の一品だ。
 店の雰囲気は劇が終わってからも、カウボーイやミニスカ・マリアッチなどが接客してくれるので、西部の雰囲気が存分に楽しめる。
 そして、特大のウェスタン・バーガーを食べ終えた真央は、この西部の住人達にドラムロールをお願いすると、意気揚々と団長を呼んでもらった。

「「「「「「ダララララララララ……ダララン!!」」」」 」」

 そのドラムロールに合わせるように、団長の古城・一星(疾風の若獅子・b60818)が登場する。
 そして、真緒の、
「おめでとうございますっ! ウェスタン喫茶☆封印倶楽部が、グルメストリートの最優秀に選ばれました!」
 という言葉に、ノリの良い西部の住人達が拍手喝さいを浴びせたのだった。
「団長として、即興の劇の脚本を考えたりとかしてたが、楽しんでもらえれば何よりだ」
 団長の一星は、控えめにそうコメントしたが、去年にも勝るとも劣らない盛況ぶりに満足しているようだ。
 ベリエス・マイズナーの感想通り『他とは一線を隔す客入り、盛況ぶり』だったのだから。
 西部開拓時代にタイムスリップしたような、ウェスタンの世界。
 保安官とカウボーイとガンマンの世界を楽しんだ真緒は、喜びに沸くウェスタン喫茶☆封印倶楽部を後にしたのだった。


「フードアナリスト真緒のグルメストリートレポートは、以上で終了です!
 投票してくれた皆さん、レポートに協力してくれた皆さん、本当にありがとうございました!
 優勝は、ウェスタン喫茶☆封印倶楽部。
 準優勝は、桜庵。
 第3位は、足湯茶屋となりました。
 入賞した結社の皆さんは、おめでとうございます!
 ただ、惜しくも入賞できなかったお店にも、様々な美味しい料理があったと思います。
 全ての料理を食べきる事はできませんでしたが、来年はもう少しお腹をすかせて頑張りたいです!
 あっ、来年の話をしたら、少し別腹がすいてきたみたい。
 せっかくだから、違うお店でデザートとか食べようかなーっと。
 それでは、残りの学園祭も楽しみましょう!」

 結社企画巡り 〜グルメストリート編 終了。