<ファイナルクエスト 攻略開始!>


 『ビッグモンスタージェネレーター』との戦いから1週間。
 MMORPGディスティニーサーガにログインした能力者達は、先日の戦いの舞台となった大陸中央の都市、『ラスフェイルの街』にキャラクターを集結させていた。
 三次職となったクラン『銀誓館学園』所属のキャラクター達で、街はごった返している。
 体の周囲にオーラを纏わせ、あるいは騎乗動物にまたがった彼らを取り巻き、たむろしているのは、この呪いのMMOをプレイ中の一般プレイヤー達だ。

 クラン『銀誓館学園』は、現在のディスティニークエストにおける最注目クランだった。
 1万人近いキャラクターが一気に増加した事で引き起こされたディスティニーサーガ世界における物価とアイテム流通の大変動は、全プレイヤーに影響を与えている。
 さらにディスティニーサーガが魂を吸い取るゲームであると知る一握りの一般プレイヤーにとっては、銀誓館学園がファイナルクエストに挑まんとしている事は全く別の意味を持っていた。

 ディスティニーサーガの最難関、攻略不可能とも言われる『ファイナルクエスト』を突破することで、全プレイヤーの魂をこのMMOに縛り付ける『ソウルアカウント』を解放できるのだ。
 ファイナルクエストに挑むことが出来るのは、一度に1クランのみ。
 過去にファイナルクエストに挑んだクランもあったが、それらのクランは全て敗退している。
 膨大なモンスターと厳しいクエスト達成条件は、一般プレイヤー達に打ち破れる物ではない。
 他のクランと比較して圧倒的な人数を擁し、課金の上限が一切無い銀誓館学園でもなければ。

「……時間だ」

 ファイナルクエストの開始時間になると同時に、ラスフェイル城の鐘が鳴り響く。
 中央広場に立つ騎士の像が発光したかと思うと、騎士の像は巨大な扉へと姿を変えていた。
 銀誓館学園のキャラクターだけが入れる扉の向こう側は、ファイナルクエスト専用の裏世界。
 伝説の『魔神戦争』がいまだに続く戦場だ。
 自分達だけが入れる扉をくぐり、能力者達はキャラクターを裏世界へと突入させた。
 ロード画面が表示され、次の瞬間、画面に映し出される世界は一変していた。

「はじめて見る場所だな」

 ポリゴンで描画される裏世界の入り口……ファイナルクエスト唯一の復活ポイントは、白く淡い光を放つ床と、星の輝く空のみで出来た空間だった。
 正面、北側には2つの道が、そして東西には天上の神世界と地下の地獄に通じる2つの転送用の光の柱……ポータルが存在している。

 世界に迫る神と魔の戦いの運命を示すように、不吉な鐘の音が鳴り響く。
 この鐘が鳴り終わる……すなわち運命(ディスティニー)ゲージが25に達した時、ファイナルクエストは失敗に終わる。
 そして、いずれの道を選ぼうと、待ち受けるのは常識外れの数のモンスターの大軍団だ。
 異常な速さで溜まっていく運命ゲージの加算速度を減らすには、これらのモンスター達を悉く倒していかねばならない。
 その上で、魔軍の長である『魔帝デーモンエンジェル』と神軍の長『神帝セラフィックシャドウ』を撃破し、最終ボス、『ケルベロスオメガ』を倒さねばならないのだ。

「よし……行くぞ!」

 この1週間で、能力者達の操作テクニックは、もはや熟練と言うべき領域に達している。
 マウスを、あるいはゲームパッドを操作し、能力者達はディスティニーサーガを終わらせるべく自らのキャラクターを戦場へと進めるのだった。