<リプレイ>
●結社企画巡り〜イベント企画編
ハ〜イ皆さん、いよいよ待ちに待った結果発表の時間です!
この2日間、皆さん思う存分エンジョイできましたか? 私はしました!
さて、いよいよ結社企画の順位発表です。ダラララララララ、ダダン!
おっと、つい口でドラムロールしてしまいました。ノリノリですね私。ハッハー!
●第3位 一夏怪談『旧校舎の回廊』
マイクを握り締めたスティーブがまず向かったのは、海の家のような雰囲気をかもし出す『旧校舎の一角』前だった。
手渡されたパンフレットに目を通しながら待つこと数分……。
「いってらっしゃいませ――どうぞお気をつけて」
海の家の店員に見送られ、スティーブはいよいよお化け屋敷の中へ。
「ほほう、これが日本のホーンテッドハウスですか。ノウリョウノウリョウ!」
怖がるというよりも、すっかり楽しんでいるようにも見えるが、まだまだここはほんの入り口。
……カラン、コロン……。
「この音は?」
暗闇に響く下駄の音。目を凝らせば、そこにバンカラ姿の青年がのような影がひとつ。
「オーッ! もしもし、ちょっと一言戴けますか?」
早速駆け寄るスティーブだが、青年は、まるで闇に溶け込むように、すぅっと姿を消してしまった。
インタビュー失敗。
気を取り直して先に進むと、そこには、人形を抱えた少女がひとり佇んでいた。
「ちょっとそこのお嬢さん、インタビュー……えっ!?」
「ふふ……素敵な黒髪、ね……。その髪、この子のために……ちょうだい?」
「バカな! この子の目は本気と書いてマジです!」
いきなり取り出されたバリカンに、さすがに驚き、逃げ出そうとするスティーブだったが、その先に今度は紙袋を被ったバリカン男が待ち構えていた!
「髪だ……ふさふさの髪が欲しいんだよぉおおおお!!!」
「この子に似合うのは、黒……」
「デンジャラーース!!」
何故かその場に置かれていたハリセンを、一心不乱に振り回し、ひとまずその場からの逃走をはかったスティーブ。だが、まだまだ先は長そうだ。
「ふ〜っ、これではいつまでたってもインタビューできません。一旦外に出るとしましょう」
係に連れられお化け屋敷の外に出たスティーブは、待合室となっている海の家で、皆からこのお化け屋敷についての感想を聞いてみることにした。
「聴こえる悲鳴に、ひやっとする涼しい……いや、寒い空気。中に何が潜んでいるのだろうと思わせる外観……」
「ほほーう! それで、お化け屋敷内部の感想は?」
「僕は……結局、入れませんでした」
「………」
気を取り直して、次のお客さんにインタビュー。
「まさか学園祭の定番、お化け屋敷をしっかり遊べるとは思わなかったよ。一緒に参加してくれた人も含めて予想外のイベント続出だった肝試しを心の底から楽しませて貰いました」
「手が、腕が、いっぱい壁や床から出てきて怖かったですよ〜……お腹空いたワンちゃんとかは可愛かったですけど」
「そんなモノまでいましたか!」
「はい〜! 暑さを吹き飛ばすような、楽しい、ひと時でした〜♪」
お化け屋敷は学園祭の定番。
なるほど、そんなところも人気の理由だったのだろうかと、食事中の生徒達に次々と声をかけてみる。
「おばけ、怖かったけどたのしかったよ!」
「アナウンスや、お化けの名演技……。とても凝っていたと、思います……。優しいお化けさんもいて、楽しかったです……」
「たしかに、あの恐怖はハリウッドスターばりの名演技でしたね」
それは少しばかり褒めすぎかもしれないが、お化け役の演技を賞賛する声は、他にも多く聞くことができた「ホラーは苦手ですけど、団体だと……かなり安心しますね……」
みんなでワイワイ。それも、やはり学園祭ならではだろうか。
そういえば、皆の食べている美味しそうなメニューも気になるところ。
「スミマセーン、こちらのお勧めメニューは何ですか?」
「おすすめは焼きとうもろこし、かな?」
他にもスイカやラムネや焼きそばといった、海の家の定番メニューがずらりと並ぶ。
耳を澄ませば聞こえてくるのは波の音。
「う〜ん。まさにワビ・サビの世界ですね」
それはちょっと違う気がするが……。
●第2位 カップル非応援・独り身応援喫茶「爆発」
「こ、ここは一体……!」
次にスティーブが向かったのは『銀誓剣術士団SSM』の企画する喫茶店……だが、店の雰囲気がどこかおかしい。外装がとか内装がとかではなく、雰囲気が。
「いらっしゃいませ! 爆発しろ!!」
「イクスプロージョン!?」
「当喫茶では、カップルの方や恋人がいる方にはスタッフ一同妬みオーラを発しつつ対応させて頂きます!」
団長の風間・雷の説明を聞き、スティーブは事を理解した。
ここの喫茶店の最大の特色……それは、スタッフ達から発せられる凄まじい妬みオーラにあったのだ。
「カップルの皆さんに恨まれたりはしませんか?」
「むしろそれをカップル仲を深めるスパイスにして頂ければ、こんな嬉しい事はありません。爆発しろ!」
応援しているのかしていないのか。
とにかくスティーブは、店内のお客さんたちにもこの喫茶店の感想を聞いてみることにしたのだが……。
「氷一さんがエロかったです。爆発しろ!」
「かかかカップルがなんだ! 爆発しろ!」
やはり爆発。
だが一方で、こんな声も聞こえてきた。
「カップル非応援といいながらも、さりげなく応援しているツンデレ喫茶でした」
「何だかんだかなり背中を押されたような……。他のペアの客も例外ではないらしい」
「ほほぅ、それはつまりエンムスビのお手伝いを」
「……爆発しろ爆発しろと30回ぐらいは言われた気がするが。ともあれ、明るい雰囲気の所であった」
ん? カップル非推奨としておきながら、これは一体……?
試しに、接客をしている店員さんの声を、こっそり盗み聞きしてみましょう。
「お客様、おひとり様ですか? カップルまたは恋人がいらっしゃる方ですか?」
「いえ、まだ恋人未満で……」
「そうですかまだ恋人じゃないと……この微妙な距離感、ああ、青春ですわね♪ 爆発しろっ♪ これを機会に一気に恋人まで♪」
「あ……有難うごさ……」
「幸せ者め、爆発しろっ♪」
爆発、爆発、爆発しろっ♪
眩しい笑顔と暴力的な言葉のギャップ、これこそが、この喫茶店の真髄なのだろうか。
また、店員の一人からは、こんな建設的な意見を聞くこともできました。
「周りのイチャイチャオーラに当てられて、団員同士でもカップルが成立すればいいと思うんだ」
「ナイスアイディア! 確かにそれなら、カップルを妬む必要はなくなりますね!」
しかしそれは、つまり、この喫茶のアイデンティティーを捨てるということに他ならない。
それは果たして、良いことなのか悪いことなのか。
「カップルさんの爆発時の破壊力が予想以上で店員一同あてられてダメージを喰らうという面白ハプニングもありましたが、私達頑張りました! 独り身の方にもそれなりに楽しんでいただけたかと思います」
店員からの、そんな熱いメッセージも聞くことができた。
独り身応援喫茶「爆発」……ここは、もしかしたら、カップル達が絆を確かめ合うための場所なのかもしれない。
「いらっしゃいませ! 爆発しろ!!」
「なんか目覚めた気がしました。禍々しいよ!キミら!」
……やはり、そうじゃないかもしれないが。
●審査員特別賞 ▽†モラ隊クエスト†△
「さて、気になる第1位の発表の前に、審査員特別賞とまいりましょうか」
数多くの結社企画の中で、スティーブが「これは!」と思った企画……それは『モーラット秘密特殊部隊』の作り上げた、60項目にも及ぶ壮大なゲームブック。その名も【モラ隊クエスト】だった。
ページをめくれば、そこにあるのは数奇な運命。
モーラットとなってしまった主人公は、果たして生き残ることができるのか!?
「ゲームブック形式で楽しかったと思うわ。登場人物も豊かで結社の良さが表れていたと思う」
ざっとページを開いただけでも、ネギー魔王やアホ毛ブレードといった気になる単語がゴロゴロと転がり出てくる。
そしていざ足を踏み出せば、そこは綿密に作りこまれたゲームの世界。
「思いのほかと言ったら失礼だけど、しっかり作り込まれててのめり込まされたよ。誘惑に駆られる選択肢とちょっと理不尽な展開の数々は、ゲームブックって感じだったな」
「綿密に工夫されたシナリオとスレッドが他に無いオリジナリティと面白さがあったので投票しました。参加者がモーラットになって独特の雰囲気や微笑ましい姿に癒されつつ色々な選択肢のお陰で一度で終わらず何度でも遊べるのが◎」
「あ、ありのまま起こったことを話すぜ! 朝起きておかしな夢を見て二度寝していたら、なぜかオレは! 死んでいたッッ!! つーわけでもっかいエンジョーイしてくる。スティーブもどうだ?」
「ゲームブックは得意ですよ、スティーブですから。ハッハー!」
あまり通じないアメリカンジョークを飛ばしながら、スティーブも意気揚々と挑戦する。
憧れのモーラットとなってオリジナリティ溢れる世界を巡り、しかも、それを何度も楽しめる。
手抜きのない、こだわりの作りこみは、やはり多くの参加者からの高評価を得たようです。
「みんなで作った1つずつのシーン。モラ隊らしさ満載で楽しかったですぅ〜。お手伝いしてくださった皆様、遊んでくださった皆様に感謝なのですよぉ〜」
「ですが、思わぬところで死んでしまうという声も、ちらほら聞こえてきましたが?」
「理不尽なことで死んでしまうのはゲームブックだからです、よ?」
なるほど、それもまたゲームブックの醍醐味といったところだろうか。
「そういうわけで、オメデトウ御座いましたー!」
「有難う御座います♪」
団員達と硬い握手を交わしたスティーブは、モラクエ2の発売を心待ちにしつつ、いよいよ1位となった結社企画の発表へと向かった。
●第1位………! ぼいかつ☆学園祭生放送ラジオ
ダラララララララララララ、ダンッ!!
お約束のドラムロールが鳴り響く。
「お待たせいたしました! 今年の結社企画、第1位の発表デース!」
個性豊かな企画が数多く発表される中、2位、3位に大差をつけて、結社企画1位に輝いたのは……!
「ぼいすかつどう同好会の『ぼいかつ☆学園祭生放送ラジオ』オメデトウ御座いマース!」
ぱんぱかぱーーーん♪
ファンファーレとともに、スティーブが豪快に放送室の扉を開く。
「……わっ!」
「なんだなんだ!?」
「おぉーっと失礼、オンエア中でしたか」
一旦静かに扉を閉めて、確認を取って再度1位の報告のために扉を開く。
「……というワケで改めまして、1位獲得オメデトウ御座います!」
スティーブは、投票所に届けられたリスナー達の声を、早速同好会の皆に読んで聞かせることにした。
「ラジオ放送最高ですねぇ。特に俺の飯のリアルタイム実況やリスナー参加型企画は面白かったですねぇ」
「とても楽しく聴かせてもらえました」
「昨年に引き続き、腹筋崩壊でした。オレの飯でオリジナルOCD(お茶漬け)を作成。まぁ、食べられるんじゃない?なものから、頭大丈夫? な発案のものまで作られました。ブルーハワイやプロテインOCDは……」
「OCD(お茶漬け)でザンガイガーさんが……あれはきつそうだったわね」
「あ〜、そのあたりのお茶漬けはは、私も食べたくありませんねー」
スティーブは、心の中でザンガイガーに黙祷をささげた。
「ナンパ王決定戦が面白かったな。小道さんへの告白の言葉が続々発表される中、頭に残ったのは下位グループの奴等の言葉だよ。あほすぎるネタものは強烈、なかには伏見さんに言わせたいだけ<とか無駄に長い変態的なものも……」
「キャーフシミサンキャー!!」
「伏見さんのハッスル具合が最高ね」
「フシミサン?」
度々出てくるその名前に、スティーブは結社員達を見回した。
「フシミサン、いらっしゃいますか?」
「はい、私です」
現れたのは、思いのほか落ち着いた佇まいの男性だった。
「フシミサン大人気のようですねー!」
「はい、有難う御座います」
もちろん、他のパーソナリティ達へのラブコールも、多数寄せられている。
「小道さんも清和さんも伏見さんもそーりゅーさんもお疲れ様でしたっ」
「プロジェクトオロチというラジオドラマがあったんだけど、主人公格の人物達が頑張るなか……嫌に印象に残るのは個性的な脇役達! 変人気味な外国人忍者、ブットンデル親父、面白すぎるわ!」
「ニンジャ!」
きらりとスティーブの瞳が輝く。
「14時間続けて面白い放送するなんて流石だ」
「放送事故が何度もあり回線が切断される中、その復旧のために物凄く頑張ってましたですぅ。長時間の活動お疲れ様でした」
このように、放送中のトラブルにも負けず、14時間という長丁場を戦い抜いた団員達への、熱いエールも寄せられている。
「それでは最後に、団長の九条・烈輝さんに、締めの一言をお願いしましょう!」
「リスナーの方々! 協力結社の方々! 伏見さん、元橋さん、創流さん、ほんとにありがとう! でもまだまだ終わりじゃないだろ! さぁ続きをいくぞ!」
沢山の人々に支えられての優勝。
ぼいすかつどう同好会の皆さん、おめでとう御座います!
「……ふ〜っ、これで私の仕事は終わりです」
スティーブは、晴れ晴れとした表情で黄昏に染まる空を見上げた。
初めて体験したジャパニーズガクエンサイ、それは、彼の胸に思い出として深く刻みつけられた。
「来年もまた、皆さんとガクエンサイを楽しめたらいいですね」
誰に言うでもなく呟いて、スティーブは、マイクの電源をOFFにした。
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