イセス・ストロームガルド

<敦賀市攻略戦 侵攻開始!>


 敦賀駅方面へと通じる道路上に、銀誓館学園の能力者達の姿はあった。
 妖狐達はここに来て、その敦賀市に対する支配を隠す気をなくしたらしく、敦賀市へと至る鉄道各線、および高速道路には、多数の監視用と思われるゴーストの姿が確認されていた。
 敦賀市に拠点を置く妖狐達が、既に防衛体制を整えていることは明白だ。
 本格的な戦場となる敦賀市中央部での激しい抵抗を、能力者達は予感する。

 妖狐側は敦賀原発、東洋紡、松原公園といった時間稼ぎに加えて、七星将「廉貞」まで動員しての『生命賛歌殺し』作戦と、この敦賀市での決戦で、銀誓館学園に勝利を収める気でいるのだ。
 コマンダーのイセス・ストロームガルド(b47362)は、思わず肩をすくめた。
「もうちょっと封神台を過信して油断してくれると楽なんですけどね」
 いずれにしても、事ここに至った以上、戦う以外の選択肢は無い。
「生命賛歌を発動しましょう!」
 イセスの言葉に従い、メガリス『玉鋼の塗箱』が能力者達の前に運ばれて来る。
 破壊からの復活の後、能力者集団カースブレイドを経て、銀誓館学園が入手したメガリスだ。
 このメガリスの所有者による連続殺人事件に脅かされていたカースブレイドは、その後の事件の経緯もあって、現在は銀誓館学園の敵となってしまっている。
 敦賀市内にもカースブレイドがいることが確認されており、即和解するとはいかなそうだった。
 やがて能力者達の力が集まり、玉鋼の塗箱が砕け散ると共に、『生命賛歌』は発動した。
「侵攻開始!」
 イセスの声と共に、能力者達は一斉に敦賀駅への侵攻を開始する。

 一方、敦賀市中央部から北に離れた敦賀原発では、黒衣の少女……銀誓館学園についた神将である「蘭黒」が、周囲の能力者達に宿った力に目を見張っていた。
「……妖狐が警戒するのも、分かる気がします」
 神将である蘭黒にも、能力者達に宿った強い生命力は感じられる。
(「復活をもたらす封神台とは異なる、死なせないための力……これが、銀誓館学園のメガリス破壊効果ですか」)
 目を細めた蘭黒に、側にいた能力者の一人が声をかけた。
「蘭黒……行けるか?」
「はい。私は決めたのです。貴方たちと共に戦うと……!」
 蘭黒は鞘から剣を引き抜いた。
 銀の刃の回転動力炉が、唸りを上げ始める。
 既に神将席を外された蘭黒は、一度でも戦闘不能になれば、消滅してしまう。いかに強い力を持つ蘭黒とはいえ、それが無敵を意味しないことは、能力者達自身が証明していた。
 だが、それでも、彼女の瞳に宿る意志は揺るがない。
「妖狐勢力に一矢報いることで、貴方たちの役に立てるのなら……私は、もう迷いません」
 能力者達は頷いた。
「行こう!」
 蘭黒を伴い、銀誓館学園の能力者達は一気に敦賀原発へと突入していく。