「婚約式を始めますよ」 イベントの企画者であるシュレーン・エフェメローズ(月華曲・b69333)が厳かに式の開始を宣言した。一組の男女が前に進み出る。新婦である槇嶋・阿斗夢(真土蜘蛛・b60489)のドレスの端を持ち、万屋・桟敷(にゃじき・b73225)が彼らを中へと促した。 「それじゃお2人とも、まずは一緒にゆっくり、目の前の祭壇まで歩いてください。……あ、腕を組んでね」 刃霧・紅蓮(黒にして深霧の仄暗い者・b58728)は無言で頷くと阿斗夢と腕を組んだ。二人は教会の奥へと進む。 「上手ですよ」 彼らを微笑ましく眺めながら桟敷は後ろをついていく。 二人が到着すると、桟敷は祭壇前に移動した。牧師役として彼らに尋ねる。 「えー、それではまず、お2人に誓いの言葉を述べていただきます。まずは新郎、刃霧紅蓮さん。貴方は阿斗夢さんを将来の伴侶とし、健やかなる時も病める時も、互いに支え合い、共に歩んでいくことを誓いますか?」 「誓います」 紅蓮の答えに頷くと、桟敷は阿斗夢にも尋ねる。 「それでは続いて、槇嶋阿斗夢さん。貴女は紅蓮さんを将来の伴侶とし、健やかなる時も病める時も、互いに支え合い、共に歩んでいくことを誓いますか?」 「誓いますお!」 「それでは、続いて指輪の交換を致します」 笑って頷くと桟敷は二人に透明なガラスの指輪を授けた。 「まずは新郎から新婦の左手の薬指へ、そのあと新婦から新郎へ、嵌めてあげてください」 緊張しながらも紅蓮は阿斗夢の左指に、阿斗夢は紅蓮の左指に指輪をはめた。 「それでは、式の最後として、二人に……誓いのキスをお願いします。新郎は、新婦のベールを上げてくださいね」 『恥ずかしかったら、ほっぺでもいいんだよ』と桟敷に囁かれたが、紅蓮は静かに阿斗夢のベールを上げると優しく抱いて唇にキスした。 ほわわわ、と阿斗夢はうっとりと紅蓮に身を任せた。紅蓮もまたキスを終えたあと、いつまでも抱いて離れようとはせず、ただ赤面した笑顔で阿斗夢を見つめ続けている。阿斗夢はぎゅっと紅蓮を抱きしめた。 「このままお姫様抱っこでお持ち帰りだお!」 嬉しさと恥ずかしさで頭がぼーっとしていた紅蓮を現実に引き戻したのは彼女の言葉だった。 「え……ちょちょっと待って!? 逆だから! 抱っこする側、逆だから!」 「なら抱っこおねがいするお」 「……う、うん」 抱き上げられると、阿斗夢は紅蓮の首にしっかりとしがみついた。 「ぎゅー♪」 「あうう……え、え〜っと……」 「このまま退場すればいいんじゃないかお?」 「そそうだよな……うん」 恋人の言葉に従い、紅蓮は抱っこしたまま出口に向かう。 「今ここに、お二人の誓いは成立しました。 これからお二人の歩んでいく先が、太陽にまばゆく照らされた、暖かな道でありますように……」 「ご成婚おめでとうございます! お二人に心からの祝福を!」 教会から出てきた彼らにシュレーンが色とりどりの花びらを撒いて祝福した。
【マスター候補生:タカば】
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