かつて、全ての人類は≪能力者≫であった――――。
世界は、驚くべき怪奇と神秘に満ちていた。
生と死、大地と宇宙、全ては隣り合わせにあり、
人類は生き延びる為に、己の内にある超常の力を以って、
絶え間ない殺戮の中に在らねばならなかった。
人類は、己の持つ炎を放ち大地を穿つ程の力と、
それを高める「詠唱兵器」を手に、蘇る死者や異世界よりの
来訪者を退け、自らの生存圏を防衛していたのだ。
しかし、遥かな太古より続いた神秘と殺戮の歴史は、
13世紀末から14世紀初頭にかけて形成された≪世界結界≫
により、終焉を迎える。
偉大なる世界結界は全ての神秘と伝説を追放し、かくて
人類はかつてない平和をその手にする事となった。
700年続く≪忘却期≫の始まりである。
世界結界は、超常の力を否定する人々の「常識」を、その糧とする。
故に、結界による平和と引き換えに、かつての力と詠唱兵器、
そして真実の歴史は世界より失われ、次第に忘却の淵へと
飲み込まれていった……。
そして、現代。
≪忘却期≫は今、終わりを告げようとしていた――――。
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