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アクエリオの星、聖域へ

■これまでのお話


 

●参加者

アクエリオの星・リィナ(c01845)

■オープニング1

 水神祭も終わり……。
 アクエリオの市街地では、祭の後の「風物詩」が姿を見せ始めた。

 気高き白馬の上半身に、しなやかな魚の下半身。「シーホース」と呼ばれるその獣は、アクエリオでは聖なる獣として、人々に崇拝されている。なぜならばシーホースは、聖域とされる「水瓶の中」にのみ生息し、年に1度、目的を果たす為にしか、聖域から出てくることが無いからである。

 シーホースの目的とは、「アクエリオの星」に選ばれた者を、聖域へと招待すること。
 集まった数十体のシーホース達は、愛用のゴンドラに乗ったアクエリオの星・リィナ(c01845)の周りに集合した。
 そしてリィナの周りでゆっくりと回転したと思うと、発生した大きな渦の中にゴンドラもろともリィナを飲み込み、自分達もまた姿を消した。

 その様子を大歓声で見守るアクエリオの住人達。彼らに、リィナの安否を気遣う様子は無い。
 なぜなら彼らは知っているからだ。何回も行われたこの儀式の後、アクエリオの星は必ず無事に帰還し、帰還後は、シーホース達とアクエリオを巡る楽しいパレードが始まるからだ!

(ここから先のオープニングは、アクエリオの星となったリィナしか閲覧できませんでした)

■オープニング2


〜アクエリオの聖域〜

 「人魚の祝福」があって助かった……!
 シーホース達と共に渦に飲み込まれたリィナは、シーホース達が鬣の間に結っていたこの希少植物……呼吸ができるようになる実を噛むことで、何とか水中の移動を耐えきったのだ。

 そして、辿り着いた先は……。
 満点の星空に、広大な砂浜。そして反対側からは、巨大な水瓶の注ぎ口から、アクエリオの全景が見える。
 間違い無い。ここが聖域、アクエリオの天頂にある、巨大水瓶の内部なのだ。

 リィナは砂浜にゴンドラを停泊し、聖域へと足を踏み入れた。  聖域のそこかしこでは、不思議な存在が何匹も、ふわふわと空中を漂っている。その実物を見るのは初めてだが、仮にもゴンドラ乗りであるならば、それがどんな存在かを尋ねる必要は無い。
 本物の「星霊ディオス」だ! ゴンドラに描かれた絵ではない本物は、きちんと実在したのだ!



 そんなディオス達が、リィナを歓迎するようにふわふわと空中を漂い、どこかへと導く。
 リィナは導かれるままに、清浄な聖域の中でも特に美しい、宝石のようなビーチへと辿り着いた。
 このように美しいビーチは、見たことがない。足元にはきめの細かい砂がさらさらと触れ、果てしなく透明な水は、夜空の下でありながら海中を泳ぐシーホース達を見ることができる程だ。星空を長く見つめるのはよそう。あまりの美しさに、何故か自然と涙が溢れてしまうからだ。
 ややあって、
「ようこそ、アクエリオの星よ」
 突然、背後から声が掛けられた。
 慌てて後ろを振り返るが、一匹のディオス以外は何も見当たらない。
 しかしこのディオス、他の子達と違って、表情に妙な威厳があるような……。

「お初にお目に掛かる。私がこの聖域の主。『水神アクエリオ』と呼ばれることもある。……今はこんな見た目なので、信じるのは難しいと思うが……」

 謙遜気味に語るディオス、もとい水神アクエリオ。
「君に来て貰ったのは他でも無い。君には、アクエリオの『水を浄化する』儀式を頼みたいのだ」
 そう言って、アクエリオは詳細を語り始めた。



「君も知っていると思うが、水瓶から流れるこの大量の水は、魔神ゼルデギロスを封じるためのものだ。水に籠められた『封印の魔力』と、水そのものの『物理的な重さ』のふたつで、ゼルデギロスを封じているのだ」
「しかし、水瓶からは常に豊富な水が流れているが、それでもゼルデギロスを完全に封じるには少し足りない。時を追う毎に、水はほんの少しづつ、ゼルデギロスの呪いで汚染されてゆくのだ」
「君にお願いしたい儀式というのは、水に溶け出した1年分の『呪い』を中和するものだ。シーホース達とアクエリオの決められた場所を巡り、儀式を完遂して欲しい。お願いできるだろうか?」

 それに対して返事をする前に、リィナはいくつかの質問を投げかけた。
 何故、アクエリオの人々に依頼してやらせないのか?
 もし、人々が信用できないというのがその理由なら、何故「アクエリオの星」の事は信用するのか?

 水神アクエリオは答える。
「人々に知らせてしまえば、ゼルデギロスの配下に知られる可能性も高まるからね。アクエリオの星にだけ知らせるという方式にしておけば、彼らが例え儀式場を占領したとしても、儀式の詳細まで知ることは難しい。儀式の内容は毎年変わるからね」
「でも、毎年厳しい試練を乗り越えたアクエリオの星ならば、大丈夫だと信頼できる。そもそも、ゴンドラ乗りに悪人なんていないからね」
 そういって、水神アクエリオはつぶらなペンギンのウインクをするのであった。

■引き受けますか?

 水神アクエリオの依頼を引き受けますか?
 引き受けるか引き受けないかの選択を行ってください。
 締め切りは8/11(木)朝8:30です。

(1)儀式を引き受ける
(2)儀式を引き受けない

●プレイング(全角600文字まで)

 引き受ける、引き受けないを選択した上で、水神アクエリオに対しての行動を記入してください。例えば質問を投げかければ、儀式に関係の無い事であっても、何か答えてくれるかもしれません。
(聖域の情報や、これらのプレイングで得た情報は、他のエンドブレイカーに話して構いません)

■アクエリオの星・リィナのプレイング


(1)儀式を引き受ける

最初にアクエリオ様に水瓶の中に招いていただいたお礼を言う。
儀式についてはもちろん承諾。儀式の詳しい話を聞かせてもらう。
次に、アクエリオ様に質問を。(事前に長い質問になっても大丈夫かをお伺いする。)
質問の内容は

【アクエリオ様について】
・アクエリオ様自身の事をもっと詳しく教えてほしい
・マスカレイドとエンドブレイカーについてどの程度知っているのか(わからない場合は説明)

【魔王について】
・魔王とはどのような存在なのか
・どのように封印したのか
・封印されたはずの部位が何故存在するのか
・部位にはどんな力があるのか
・部位を集めるとどんな事が起きるのか

【その他】
・遺失魔術のテレポートについて何か知っているか
・獣王の使ったエンドブレイカーのマスカレイド化は他の部位持ちでも使えるのか
・地底湖の水位が下がったことに心当たりはないか。それによって現われた遺跡が明らかに異文化のものであるのは何故なのか。
・魔王復活を目論む勢力に心当たりがあるなら教えてほしい
・正規の方法以外で水瓶の中に入れるか

質問が終わった後に、アクエリオ様に自分はエンドブレイカーとしても、アクエリオの星としても、自分は大好きなアクエリオを守りたい気持ちを伝え、アクエリオ様に魔王勢力との戦いでエンドブレイカーに協力して貰えるようお願いする。
最後に、感謝の気持ちと、今度は個人的にアクエリオ様とこの都市の楽しいお話をしたいという気持ちをを伝える。

■リプレイ

「儀式を承諾して貰えて感謝する」
 水神アクエリオはそう言うと、そっと胸をなでおろした。

「もちろん、それは喜んで協力させていただきます。それで、私は何をすれば良いのですか?」
「では、手続きを始めよう。私の前に手を出して……」
 リィナが素直に手を出すと、アクエリオがその手に触れる。それと同時に、ぽうっと、ぼんやり光る何かの力が、リィナの体内に注ぎ込まれた。

「それが、儀式を行うための力だ。街に戻ったら、シーホース達とアクエリオの所定の場所を巡り、各地でその力を分け与えていって欲しい。それで、儀式は終了だ」
「……思ったより簡単ですね」
「いやいや、本当はまず最初に力を与えるのが難しいのだ。君は非常にやりやすくて助かった。ミューレットの時はいったいどれだけ苦労したか……」
 かぶりをふるペンギン、もとい水神アクエリオにクスッと笑いながら、リィナは改めて話しかける。

「ところで、この機会にアクエリオ様に幾つかお伺いしたい事があるのですが、よろしいでしょうか?」
「ああ、もちろんだよ、何でも聞いてくれ。知っていれば答えよう」



「アクエリオ様の事を、もっと良く教えて貰えませんか?」
「もちろん構わないけど、何を話せばいいのかな? 御伽話は知ってるかい?」
 水神アクエリオはここまで軽口を話した後、リィナの表情を見て口調を変えた。
「……どうやら、君には何か、僕から話を聞かねばならない、切迫した事情があるようだね。まずはそれについて教えて貰っても良いだろうか?」

「アクエリオ様、私はエンドブレイカーです。終焉を終焉させ、棘(ソーン)を、マスカレイドを滅ぼす者。これらの言葉について、ご存じですか?」
「いや、今のところ、私の知っている言葉は何も無い。教えて貰えるかな」

 そしてリィナは、水神アクエリオに自分達の事や、これまで自分達が為してきたことを、なるべく細かく説明した。例えアクエリオがこれらの事柄を知らなかったとしても、無碍に全てを嘘だと断じる事は有り得ないと考えたからだ。
 一通り話を聞き終えた水神アクエリオは、うーむと唸り込んだ。
「マスカレイド、成る程な。『あれ』の手下達は、確かにそういう存在であったかもしれないな。そして、今このアクエリオは『棘(ソーン)』に覆われているというのか……」
「であれば、君達は世界の生んだ新たなる希望か。いいだろう、私自身の事を、出来る限り正確に伝えよう。何か、君の役に立つ事があるかもしれない」



「私がゼルデギロスを封印したのは、遙か太古……まだ人類が『王』によって統一されていた頃の事だ。君が言う、妖精騎士が密告者を封じたという物語よりも、ずっとずっと昔の事になるね」
 水神アクエリオは昔を懐かしむように目を細めると、話を続けた。

「当時の人類は、大魔女スリーピング・ビューティにより滅びの縁にあった」
「最後の砦『グレートウォール』をも分断された人類は、僅か400人の勇者に最後の望みを託した」
「かつて、そのような時代があったのだ」
 いわゆる『伝説の時代』だ。リィナは戦慄を覚えた。
 リィナは今、遙か古代の生き証人と対面しているのだ!

「魔王ゼルデギロスは、スリーピング・ビューティにより人類絶滅を命じられた五将軍のひとり。この恐るべき敵を打倒するべく、私、大星霊アクエリオが召喚されたのだ」
「私がこの水瓶に召喚された時、勇者達は多くの犠牲を出しながらも、既にゼルデギロスを瀕死の縁にまで追い込んでいた。しかし、ゼルデギロスを殺す事だけはどうしてもできなかったのだ」
「その為に私が呼ばれた。私は水瓶を溢れさせ、水の清浄なる魔力と物量によって、ゼルデギロスの封印に成功した」
「もっとも、それによって私自身は元の姿と力の殆どを失い、水瓶から出られぬ身となってしまった。今では、キュートなだけが取り柄の、単なる一匹のディオスに過ぎん」
 そういってペンギンウインクするアクエリオ。彼の中で流行っているのだろうか。

 しかし、何気なくスケールの大きな話をされてしまった……。
 語られた内容の大きさに驚きつつも、リィナは本題に踏み込むことにした。



「今、アクエリオの街には、魔王ゼルデギロスの『部位』を持つと主張するマスカレイド達が出現しています。これについて、ご存じの事はありませんか?」

 途端に、水神アクエリオの表情が変わる。
「部位が、出現しただと……! まさか、封印が弱まっているというのか? いや、封印の弱まりは感じない。おそらく君の言う『棘(ソーン)』の影響か。これは、由々しき事態だ……!」

 戦慄し動揺するアクエリオをなだめ、リィナはどうにか話の続きを促す。
「すまない、リィナよ。魔王ゼルデギロスの封印こそが我が存在理由であるが故に、平静でいることはできないのだ。だが、説明しよう。力の殆どを失ったしまった私は、もはや誰かの力を借りるしか、対処法が無いのだ……」

「私は……私達は、きっとアクエリオ様の力になれます。だから、詳しい事を教えてください」
 強い決意を帯びたリィナの言葉に感謝の意を表しつつ、アクエリオは説明を始める。
「部位とは、ゼルデギロスの肉体そのものではない。ゼルデギロスの力の一部を受け取った者の証なのだ。封印が弱まれば、ゼルデギロスが己の復活の為に部位所有者を選出するであろうことは、元から予想されていた」
「部位所有者は一度に6人出現し、互いに争い始める」
「なぜなら奴らは、自らの力を高めるか、他の部位所有者から部位を奪うことによって、自らの部位を増やすことができるからだ」
「そうして左頭部・右頭部・右翼・左翼・左半身・右半身の6部位を手に入れた者は、ゼルデギロスの『苗床』となる。『苗床』は本能のままに殺戮して力を蓄え、やがては魔王ゼルデギロスそのものになるだろう。そうなってしまえば、もはや封印の意味もなくなってしまう」

 そして、アクエリオは断言した。
「……ゼルデギロスが復活してしまえば、おそらく今の君達では勝ち目が無い。君達の能力は必殺の力を持つが、残念ながらまだ地力が足りない」

「何か、対処法は無いのでしょうか?」
「ひとつは、部位所有者を全て倒すことだろうが、倒した後に新たな部位所有者が出ないかどうかには、確証が持てない。そう簡単に部位所有者は増やせない、とは思うが……」
「封印が完全に施されれば、問題は解決するのですか?」
「ああ、封印が完全ならば、ゼルデギロスの力が外部に漏れることはない。新たな部位所有者が生まれることも無ければ、部位所有者が部位を増やすこともできなくなるだろう」

 リィナは推測する。
「おそらく、代々のアクエリオの星によって維持されてきた完全な封印を妨げているのは、棘(ソーン)の存在……」
「うむ、それは間違いが無いように思える。君達は、既に2つの都市国家の棘(ソーン)を滅ぼしてきたのだったな」

 水神アクエリオは俯いたが、気を取り直して話を続ける。
「それはともかく、儀式は例年通り行って貰うよ。原因が棘(ソーン)だったならば、君達が棘(ソーン)を消し去ったときにきちんと稼働するよう、今年分の封印を間違い無く施さなければならない。リィナよ、よろしく頼む」



 大方の目的は達せられた。リィナは、細かな疑問を尋ねることにした。
 ひとつ、『怪盗』ファルケインの使った「遺失魔術≪テレポーテーション≫」について。
 ひとつ、『獣王』バンガイアの使った「エンドブレイカーをマスカレイド化した技」について。
 ひとつ、アクエリオの水位が下がった理由と、出現した遺跡が異文化のものだった事について。
 ひとつ、魔王復活を目論む勢力に心当たりはないか。
 ひとつ、正規の方法以外で水瓶の中に入れるか。

 ひとつひとつ、水神アクエリオは答えていった。

「遺失魔術……いや、星霊の私にはよく分からないな。ゼルデギロスに関する事以外で、私の知ることは殆ど無い。だから、ゼルデギロスはそのような魔術を使わなかった事だけは知っている。……しかし、そんな魔術をわざわざ修得するような者には、激しく邪悪な意図を感じるな」
「エンドブレイカーをマスカレイド化する能力については、全く分からない。どちらも先ほど初めて聞いた言葉だからな」
「アクエリオの水位が下がったというなら、それは、封印が弱まっている事の証明だ。遺跡にアクエリオらしからぬ物が含まれているのは、今様のアクエリオ文化はゼルデギロスの封印後に生まれたものなのだから、遺跡との文化的差異は、充分有りうる話だ」
「魔王復活を目論む勢力か……。私は水瓶から出られないので、世事には疎いな」
「唯一のルートは秘匿されているし、シーホース達が守っているから、ほぼ不可能と考える」

 最後にリィナは、水神アクエリオに改めて自分の気持ちを告げた。
「私はエンドブレイカーとしても、名誉ある『アクエリオの星』としても、この美しいアクエリオの都を守りたいと考えています。その気持ちに嘘はありません」

 水神アクエリオは目を細め、リィナに答えた。
「私も、この街が好きだ。私は聖域から出られぬ身だから、アクエリオの事はこの水瓶からの眺めと、年に一度の『アクエリオの星』との語らいでしか知ることができない。それでも私はこの街が好きだ。分かってくれるかい?」

 リィナはにっこりと微笑み、頷くのだった。
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