■近況 ○長い間、ありがとうございました。 今度は、遅刻が趣味、といわれないよう頭と体力を絞ります。
○これからはTW3でも、よろしくお引き立てのほどを。 いやー、ファンタジーって素晴らしいのです。
■はみ出し連載:対珠沙 プレイング攻略法その51 ○最終回として、むげふぁんのPBW版リプレイを元にTRPGをやる際の心構えを載せておきます。 なお、これは、ファンブック1に掲載したものです。
---------------------------- ●はじめに とあるオフ会で次のような言葉が私の耳に飛び込んできました。 「webのシナリオをTRPGでやったけんど、戦闘ばかりのセッションになってしもうた」 その場で先輩マスターが返した素敵なコメントは、数時間後のアルコールに流され、私の記憶から抜け落ちてしまいました。 さて、全世界のむげふぁんPLさんの誰か一人が思った疑問は、きっと別のPLさんも疑問に思うもんです。
この記事では、むげふぁんPBW版のリプレイを、TRPG版のシナリオに変換する際、小耳に挟んでおくとよさそうな「PBW版とTRPG版の違い」を書いてみます。 とはいっても、ベテランGMさんならば無意識のうちに理解されていることなので、そういう方は読み飛ばすのもありかと思います。
また、変換サンプルについては、「ファンブック2」をご覧ください。
本稿では、PBW版のマスターをMS、TRPG版のマスターをGMと表記します。プレイヤーをPLと表記します。
なお、本稿は非公式なものですので、使用の際は適量にご注意ください。
●PBW版とTRPG版の違い この違いは、どちらが優れているというわけではなく、遊び方の違いにすぎません。小説のドラクエ、RPGのドラクエが違うのと似たようなものといって理解いただければいいのですが。
PLとして遊ぶ際に把握しておくべき相違点については、「リゼルの同盟探検隊」2005年2月号のコラム「PBWのプレイングとTRPGの行動宣言」がお勧めです。勘のいいGMさんならば、これだけ読めば、この珠沙記事を読む必要はないかもしれません。
さて、大きな違いは、次にあげた三点です。
1)やりとりの回数 2)場面数 3)世界の広がり
この後、違いごとの説明、TRPG版への変換時の注意事項を見ていくとしましょう。
1)やりとりの回数 マスターとPLの間での、意思疎通(やりとり)の回数に違いがあります。 三点ある違いのうちで最大の違いがこれなので、これだけ長めに説明しておきます。
PBW版: シナリオオープニングでMSからPLに1回 酒場のテーブルでPL間で一定期間無制限 プレイングでPLからMSに1回 リプレイでMSからPLに1回 計: MS→PL 2回 PL→MS 1回 PL同士 一定期間無制限
TRPG版:プレイの最初から最後まで無制限 計: GM→PL 無制限 PL→MS 無制限 PL同士 無制限
つまり、PBW版においては意思疎通タイミング・回数が限られているのに対し、TRPG版では(時間と気力の許す限り)無制限にできるのです。
たとえば、PBW版だと 「広場を中心に町の人々に聞き込んでおき、その情報を元に盗賊館に踏み込む」 とプレイングを書き、リプレイで次のように描写されます。 「盗賊たちは玄関に罠を仕掛けているとジャーチルが街で聞いてきたので、冒険者一行は勝手口から潜入を図った」
それがTRPG版だと次のようなやりとりで進みます。 PL「広場を中心に町の人々に聞き込みます」 GM「盗賊は玄関周りに番犬を放してあって、普段は勝手口から出入りしてるみたい」 PL「それじゃ、勝手口から潜入します」
この程度のやりとりならば、PBW・TRPGで大きな違いとなりません。しかし、次のように、情報が重なり合う場合には、PBWで扱うのは面倒です。 「盗賊館の二階に行くには、番犬の首輪についている鍵が必要で、番犬をおとなしくさせるには、街の広場に面したポールの肉屋で扱われている骨付き肉が必要」 この重なり合う情報は、複数の人に聞き込んだり、複数の部屋を探索したりすることにあたります。
そのため、何度も意思を表明しなければならない、ダンジョンの一部屋単位の探索、細かい聞き込みなどがPBW版では描写しにくくなっています。 この描写の省略によって、PBW版のリプレイは読み物としての面白さを向上させています。細かい行動描写は、文章にすると文字数ばかりで面白さに欠けますから。
《TRPG版への変換心構え》 リプレイで描写されていない行動、情報をイメージしてみよう。
2)場面数 TRPG版に比べ、PBW版では描写される場面が限られています。これは、リプレイの文字数制限と「やりとりの回数」に起因します。
PBW版では文字数、やりとりの回数の関係上、3〜4場面でシナリオに決着がついています。 TRPG版では、上記の制限がないため、丁寧にダンジョン探索、細かい聞き込み、臨機応変な行動を扱うことができます。
《TRPG版への変換心構え》 リプレイで描写されていない場面をイメージしてみよう。その場面で行われる行動とその結果、得られる情報などをまとめておこう。
3)世界の広がり TRPG版は、PBW版と比べると世界の広がりを感じることが難しく、局地的な冒険が扱われます。 PBW版では一つのシナリオと同時に別のシナリオが運営されていますが、TRPG版では一つずつシナリオが運営されます。複数の事件が動いていくダイナミックさや、別のシナリオにもいるキャラクターの存在は、TRPG版では表現しにくいものです。 ゲームルール的にいえば、TRPG版ではサポート参加というかたちがありません。同じシナリオに参加している旅団仲間だけで事件を解決しなければならないわけです。
《TRPG版への変換心構え》 各人が楽しめるよう、各クラスごとに活躍できる場面を考えておこう。
●例 ここでは、冒頭の「戦闘ばかりになってしまう〜」に答えておきましょう。
前段の「1)やりとりの回数」「2)場面数」の問題で、PBW版では戦闘風景をメインに扱っている書いてあることが少なくありません。 TRPG版に変換する際には、「戦闘場面にたどりつくまで」と「戦闘後」をふくらますように場面を付け加えます。 また、シナリオの準備、当日のマスタリングに自信と余裕があれば、シナリオのメインデッシュ「戦闘」で活躍しにくそうなPLのためのシーンも検討してみましょう。 「冒険者クラス」「特技・趣味」「生まれ」ごとにスポットを当てる場面を準備しておけば、PLがアクビをしたときにすぐゲームに呼び戻すことができるはずです。
(戦闘場面前の追加例) ・決戦場所へ赴く前の情報収集シーン 敵の弱点、決戦場所で優位に立つための地形情報は、戦闘での勝利率が向上するのでPLは喜びます。 敵が退治される理由、敵に虐げられた存在をPLに伝えられれば、冒険が奥深くなるでしょう。 ・移動風景シーン ダンジョンの各室を巡るのは好奇心を刺激します。罠、雑魚敵、NPC、自然の猛威との遭遇はPLに驚きや興奮を提供します。
自分がPLだったら「決戦場所に行く前にしておきたいことはなんだろう」−−それを考え抜けば、自然と追加場面が思いつくでしょう。
(戦闘後の追加例) ・NPCからの反応 NPCからの感謝の言葉、NPCの感情の変化(見直される)は物語好きのPLが喜びます。 裕福度、アイテムの入手はキャラクターを強くしたいPLが喜びます。 ・情勢の変化 橋が復旧して隣町に移動可能に、悪徳商人が改心して小麦の値段が安定化などは、次のシナリオのネタにもなりますし、世界を変えたという達成感をPLに与えます。
(冒険者クラスの追加例) ・忍び アクロバティックな動きが要求されるトラブル(亀裂の向こうへ重要な鍵を回収、木にかかった凧を回収) ・医術士 負傷したNPC、動物(リス、うさぎ、ノソリン)との遭遇。
(生まれの追加例) ・役人の家で厳しくしつけられた 杓子定規で頭の固い役人NPC、しつけに反発する子供などを出すと似た生まれを持つキャラクターに話のきっかけを与えられます。
●終わりに 駆け足で語ってしまい、私の空回りにすぎない記事になってしまったかと危惧しております。 それでも何かの助けになれば幸いです。
皆様の冒険にグリモアの加護があらんことをお祈り申し上げます。
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