【お引越し大混乱】芳春茶会



<オープニング>


 陽射しは良好、風は穏やか、季節は春。
 金木鼠の陽だまり霊査士・フェイバー(a90229)は、手紙らしき羊皮紙を手にして、冒険者達を呼び集めた。
「引越しの手伝いを依頼された森の孤児院のことなんだがな」
 何かトラブルでも? と表情を固くする冒険者達に、フェイバーは苦笑する。
「大丈夫だ、今回はそんな話じゃない」
 言って、持っていた紙をテーブルに置く。
「前に少しだけ話したが、孤児院では毎年この時季にバザーを兼ねた茶会を開いている。おかげで今年も無事に開けそうだからと、引越しを手伝ってもらったお礼も含めて、お前さん達にもぜひ遊びに来てほしい――という誘いが来てな」
 バザーといってもあまり大規模なものではなく、森に近い町の人達を招き、お茶会を楽しんでもらうついでに、子供達の作ったお菓子や細工品と、必要な生活品とを交換してもらうだけの、ささやかな交流会のようなものである。
 それでも今回は冒険者達も呼ぶということで、子供達は張り切って準備をしているらしい。
「もちろん、引越しの手伝いにかかわらなかった人も大歓迎、だそうだ。遠慮せず楽しんでこい」
 そう、いつも通りに冒険者達を送り出そうとして。
 フェイバーは、ふと考える。
「――せっかくだから、俺も行くかな」
 明るく穏やかな森でのんびり空を見るのも、子供達の相手をするのも……悪くなさそうだった。

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参加者
NPC:金木鼠の陽だまり霊査士・フェイバー(a90229)



<リプレイ>

●ただいま準備中
 うららかな一日の始まり――新しい森の孤児院前には、準備を手伝おうと一足先に訪れた数人の冒険者達の姿があった。
「今日はよろしくお願いします、です」
 出迎えてくれた双子の姉妹と子供達を前に、ほんわかと笑うエフォニード(a20102)。
 クリストファー(a13856)、ジョ〜(a02787)、ミサリヤ(a00253)は協力しながらテーブルやイスを並べていき、ナコ(a15542)はジョ〜の後に続きながらテーブルにかける布を運ぶ。
 一方、孤児院の中では、ソナ(a37045)とカナエ(a36257)が子供達のお菓子作りを手伝い中。おおよそ作るのに手を貸しているのはソナで、カナエは道具の用意や火の扱いを引き受けた。
 出来上がるのは、可愛らしい人型のジンジャークッキーや、ドライフルーツたっぷりのパウンドケーキ。そして甘い香りのタルトやパイ。
 手元の危なっかしい男の子達の代わりに、ユウ(a45420)が飾り付けられたお菓子の皿を外まで運ぶと、エフォニードが受け取ってテーブルの上へ置いた。一通りテーブルやイスを並べ終えた面々も、子供達の作ったバザー品を運んでは並べていく。

「ここに来るのも暫くぶりだな」
 バザーと茶会の準備が大方整ってきた頃、ちらほらと姿を見せ始めた来客に交じって、ベルガリウス(a39669)は片手に持った籠を差し入れた。中身は彼お手製のカップケーキである。すごーい、意外ー、と囃し立てながら群がる子供達。会うのは二度目の引越し以来で気がかりだった少年少女達は、どうやら変わらず元気なようだ。
 丁寧に挨拶をしつつ、林檎ジャムの詰まった瓶を差し入れたイエンシェン(a30743)の背中には、覚えのある声がかけられる。振り返れば、先日の引越しで共に歩いた少女が二人。笑顔で再会を喜ぶと、そのままおしゃべりに花を咲かせる。
「リーレィ様アーレィ様、バザー開催おめでとうございます」
「初めまして。クリムゾンと言います。今日はよろしくお願いしますね」
 祝辞に次いで、バザーの手伝いを申し出たサイカ(a37845)とクリムゾン(a28860)に、ありがとう、と微笑みが返った。

●始まりはゆるやかに
 デーブルの上に並んだ苺のタルトとアップルパイを見比べて、うーん、と悩むのはジェイド(a45326)。甘いお菓子は最強です……と、パイも捨て難いながらに紅茶とタルトを手にして、まったり幸せに浸ってみたりする。
「この風景が得難い大切な物……だな」
 飲み物と少々のケーキやクッキーをつまんで、レクス(a41968)は穏やかな空気に疲れを癒す。
「へえ、丁寧に出来てるね」
 ラードルフ(a10362)はバザー用の細工品が並べられたテーブルを見てまわり、それを作った子供へ感想を伝えた。きっと、また次の機会の張り合いにしてくれることだろう。
「ちいさい奴らばっかりだと思ってたけど、お菓子作ったりもできるんならたいしたもんだよな」
 ソヨゴ(a32667)も持ち帰り用のお菓子を手にしながら呟いて、引越しで一緒に歩いた少女を見つけ、元気そうでよかったと声をかける。
 孤児院への差し入れをする町の有志に交じって、普段使う消耗品の類が必要だろうと、たくさんの子供服を手渡したのはガルスタ(a32308)。町の古着屋で手に入れてきたものだ。
「まあまあ、こんなに……本当にありがとうございます」
 同じように、孤児院で使えそうな胴鍋や包丁、園芸用のスコップなどをいくつか差し入れたノリス(a42975)の分も大切に受け取って、姉妹は、ぺこりと頭を下げた。
「おいで、一緒に遊びましょう」
 テーブルの陰から顔を覗かせた幼い少年を目に留め、優しく手を差し伸べるメタ(a42061)。エンジェルの翼に惹かれていたらしい少年は、明るい表情で彼女に抱きついた。
「元気な子達を見ているのはなんだか和みますね」
 ルイス(a16431)は、自分の元へ駆け寄ってきた少女に森の中で摘んだ花を渡した。嬉しそうにそれを受け取った少女は、そのままルイスの手を引っ張って、一緒に遊ぼう、と笑顔を見せる。
 空いたテーブルの前に立つリョウ(a46785)の周りには、数人の子供や来客の町人達が興味深げに集まっていた。華麗な手つきで見せているのはカードマジック。どうやってるのー、と種明かしをせがむ子供達へ、リョウは微笑を浮かべて答えた。
「駄目だよ、このカードは魔法のカードなのだからね」

 ルウィン(a31863)は、訪れて早々に孤児院の裏手へ向かった。そこにいるのは、日向で戯れているたくさんの犬と猫。
「ふふふー……幸せ……」
 めいっぱい撫でたり抱っこしたり。応えてじゃれついてくる犬達に囲まれて、ルウィンは満悦した笑顔で呟いた。
「みんな元気だった? 新しいおうちはどうかな?」
 猫を撫でながら嬉しそうに声をかけたのはリツカ(a20633)。問いに答えているのか、再会が嬉しいのか、リツカめがけて飛びつく犬達。猫も逃げないところを見ると、撫でられて嫌ではないらしい。子供達の様子にも安心したけれど、犬猫達も元気そうで何よりだ。
 姉妹への挨拶を済ませて、わくわくとやってきたスウ(a22471)は、獣達の歌で声をかけつつ、犬猫達をなでなでぎゅー。
 フィード(a35267)と共に訪れたセレスト(a26442)も、二人揃って幸せいっぱいな笑顔を見せつつ犬達と戯れる。やがて二人は、陽だまりの中で躯を丸めた白い老犬につられるようにして、うとうとと居眠りを始めた。

「フェイバーさん、こっち持っててなぁ〜ん♪」
 孤児院の横では、ジャジャ(a18306)が丸太と縄を使って、引越し祝いに子供達へ贈るブランコの作成中。それを手伝うフェイバーの後ろから、悪戯っぽい笑みを浮かべて近寄るセイレーンの少女が一人……
「フェイバーおにーさんっ♪」
「おぉ?」
 リス尻尾に突撃して、もふもふとじゃれつくのはクゥリエス(a39493)。
 のんびりお茶とお菓子を楽しんでから、ユユ(a27098)と一緒に傍へやってきたロウラン(a22375)も、視線がリス尻尾に注がれていたりする。
「……触っていいぞ?」
 応えた微笑にゆるゆると猫尻尾を揺らして、ロウランは手を伸ばした。もふもふもふ。
 完成したブランコに早速駆け寄ってくる少年を見ながら、子供と遊ぶのも楽しそうだな、とユユ。
「フェイバーも遊ぶなら一緒に遊んで『あげて』もいいぞ……? べ、別に私が遊んで欲しいわけじゃないから……な?」
 言いながら猫尻尾がぱたぱたと揺れている。それには気付かないようにして、じゃあ遊ぼうか、とフェイバーは笑った。

●きっとずっと素敵な一日
「出たなモンスター! エリーゼと愉快な仲間達の渾身の一撃を食らえ!」
 ごっこ遊びに興じて四人の子供を引き連れたエリーゼ(a46646)がターゲットにしたのは、バザーの手伝いを一段落したクリムゾン。
「え、ま、待ってくださ……あう、あうううう!?」
 一斉にくすぐり攻撃を受けて悶える一五歳。これも子供達と仲良くなるための試練の一つである。たぶん。
「なっ。ちょ、待ってくださいっ! テーブル下は反則ですよーっ!!」
 一方、別のちびっこに振りまわされながら全力で相手しているのはスティアライト(a31359)。そこにエリーゼの連れた子供達も合流し、いつのまにやら孤児院周りの木々の合間を縫って子供達と冒険者数名との鬼ごっこが開始された。
「……うゃ、わらわ、鬼でしょうか、のぅ?」
 じゃんけんに負けてしまったリンゴ(a22920)は、一斉に別の方向へ逃げ出したうちの誰を追うかで迷い、頬を紅潮させながらほてほてと追いかけていく。
 こんなに走りまわったら明日あたり筋肉痛になってしまうかも、と子供の元気さに己の体力の衰えを感じつつ、ニビイロ(a33747)は袖を引っ張る少年と一緒に駆ける。
「おいかけっこ楽しいなぁ〜ん♪」
 緑のノソリン耳と尻尾を跳ねさせるグリュウ(a39510)は、何故かキルドレッドブルーを模した着ぐるみ姿で参戦中。
「子供って可愛らしいですわ」
 木にもたれて一休みしつつ微笑むリリーナ(a39659)。目の前を駆け抜けようとした一人が転んで泣き出して、彼女はそれを優しく抱き起こした。痛いの痛いの飛んでけー、と声をかけながら、淡く光る癒しの波を発する。

 バザーと茶会のテーブルから少しだけ離れた一角では、ドン(a34663)がリュートを奏でていた。流れるのはシンプルだけれど軽やかで楽しく、優しい春の音色。
 色々な楽器を用意してきたジェイドやジョ〜達も、それに加わった。
 冒険者と共に走って満足したらしい子供達が音色に惹かれて戻ってくると、クリストファーやエフォニードが声をかける。
「楽器、まだありますよ。一緒に、遊びませんか?」
 子供達にやり方を教えながら、行われるのは小さな演奏会。
「ソナさん、楽しいですね」
 子供達の笑顔に幸せを感じながら、カナエは隣に立つソナの顔をそっと見る。そこにあるのは心の安らぐ柔らかな微笑み。そうですね――と、笑顔を絶やさぬままにソナは肯く。子供達の高い笑い声も、程よい人込み加減も。とても、心地よかった。

 銘々にゆったりした時間を過ごし始めた中で、トウキ(a00029)は陽だまりに座って空を見上げるフェイバーの横に寝転んだ。
「……あの犬達も、この空を見てるんだろうな」
 一瞬だけ視線を交わしてから、流れる雲を見て微笑みを浮かべる。
 そのまま穏やかな陽気に寝入ってしまった二人が、子供達の手により顔に落書きされてしまうのは、もう少し後の話。

●閉幕
 ――覚えのある匂いに、犬達は視線を巡らせた。
 彼らの居場所のずっと端。必要以上に近付かないようにして姿を見せたのは、数人の冒険者達。
「しあわせ、おすそわけなぁ〜ん♪」
 そのうちの一人がクッキーを置いた。
「忘れないで……私達も忘れないから……。いつかまた、会いましょう――」
 別の一人が同じように肉を置きながら歌いかける。
 それ以上は何もせず、冒険者達はゆっくりと後退った。
 犬達が置かれた食べ物をくわえていく。
 もう、心配は要らないのだろう。誰からともなく笑顔を見せて、冒険者達はその場を後にする。

 陽射しは良好、風は穏やか、季節は春。
 ――涙が出そうなほどに、蒼穹は澄んでいた。


マスター:長維梛 紹介ページ
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作成日:2006/04/20
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