春薫る丘の夢見草



<オープニング>


「〜〜〜♪」
 その日、エルフの重騎士・ノエルは、リュックサックに荷物を詰め込みながら、どこかへと出掛ける準備をしていた。
「……あ、こんにちはなのです〜」
 ふと近付いて来た冒険者の姿に気付くと、ノエルはにっこりと笑いかけた。
「ボクはこれから、ピクニックに行くところなのです。夢見草を見に行くのですよ〜」

 ノエルの目的地は、ここから少し西へ行った所にある丘だ。
 そこは今、色も種類も様々な春の花達が、ここぞとばかりに咲き乱れているのだという。
「この丘には、ここにしかない、ちょっぴり変わった花が咲くのです。それが夢見草なのです〜」
 夢見草というのは、この季節に丘の近辺にだけ咲く花で、とても心地よい香りがするらしい。
 そして、自分の手で摘んだ夢見草を、枕元や枕の下に置いて眠ると……とてもとても素敵な夢を見る事が出来ると、そんな言い伝えもあるのだという。
「とってもステキなお花なのです〜。ボク、1回見に行ってみたいと思っていたのですよ〜」
 この目で夢見草を見るのが、楽しみで楽しみで仕方ないといった様子で、わくわくと笑みをこぼすノエル。
「あ、よければ一緒に行きましょうなのですよ〜。きっと1人で行くよりも、みんなで行った方が、ピクニックは楽しいのです〜」
 にこにこと、そう周囲に誘いかけると、ノエルはリュックサックを背負うのだった。

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参加者
NPC:エルフの重騎士・ノエル(a90260)



<リプレイ>

●春が薫る丘へ
 澄み切った、青い空が広がる春の日のこと。
 ピクニックに出かけるというノエルと共に、40人ほどの冒険者達が、丘を目指して歩いていた。
「花見など、街に来てから初めてじゃなぁ……」
 一団の中でも前の方に位置しながら、笑みをこぼすのは蒼き瞳の双剣士・アオ(a47200)。一体どんな場所なのだろうかと、歩く彼の足取りは軽い。
「そろそろなのですよ〜」
 街道を外れ、緩やかな坂道を進むうち、周囲には花々が広がり始め……楽しげに歩くノエルを先頭に、やがて一行は丘の上に辿り着く。
「ここかぁ……。ねえ、どれが夢見草なの?」
 辺りを見回した白翠狼の牙・ルド(a43380)は、首を傾げながら問いを発する。植物については詳しい方だと思っていたけれど、ルドにとって、夢見草とは初めて耳にした植物だった。
「あそこに咲いているのが夢見草なのです〜」
 それを聞き、ノエルが指差した先には、白い花をつけた小さな花が、春の風に吹かれながら揺れている。
「これが夢見草かぁ〜♪」
 風迷舞散光・カルル(a02775)は、指差された先を見ながら瞳をキラキラと輝かせると、早速そこに駆けて行く。
 ほのかに届く夢見草の香りは、どこか優しげな甘い香り。強すぎずも、弱すぎずも無いそれを、カルルは目を閉じながら感じる。
「結構咲いてるね」
 カルルに続いてやって来た、ヒトの吟遊詩人・サキラ(a47412)は、辺りに咲く夢見草を軽く見回して呟く。これだけあるなら、自分が一輪摘んで帰る事くらい、十分に可能だろう。
「お花綺麗だね〜」
 一方、夢見草の他にも丘に咲く花々は数多く……。それらを楽しげに眺めていた、惑星少女・ルナ(a32958)は、ふと何かを思い皆を振り返る。
「お腹すいちゃった……お弁当、食べない?」
 ――太陽はすっかり空の上。確かにそろそろ時刻はお昼。少し気が早いかもしれないが、ここまで歩いて来た体には、その位で丁度良いのかもしれない。
「皆さんどうぞです〜」
 ふと見れば、うっかり医師・フィー(a05298)がバスケットから取り出した、メロンパンとシュークリームを周囲の者達に配り始めている。
「甘くて美味しいので、歩いてきた疲れも吹き飛ぶこと間違いなしですよ〜♪」
「はい、どうぞ」
 隣では、フィーの誘いで一緒にメロンパン作りに挑戦した、エルルもそれを配っている。
「カーディスさんも、はい」
「へぇ、これをエルルが?」
 朱い城塞・カーディス(a26625)は、ありがとうと言いながら早速メロンパンに齧りつく。
 丁寧に形が整えられたそれは、味の方もなかなか。エルルの料理の腕は、以前に比べて上達しているように思えた。
「わたしのほうは、楓華風のお弁当なの……」
 エルル達のすぐ近くに腰を下ろした、想い紡ぐ者・ティー(a35847)は、湯葉巻きや煮つけ、炊き込みご飯などが入った重箱を広げると、メロンパンのお返しにと、おかずを少しお裾分けする。
「こんな風に過ごすのも、楽しいですわね……」
 蒼桜雪の斎女・オウカ(a05357)も、春野菜とハムのサンドイッチに桜茶、そして桜餅を広げると、咲く花々を見つめながら微笑む。
「あ」
 サンドイッチと紅茶を広げ、キーゼルをお昼に誘った、瘋詠緋骨・ズュースカイト(a19010)は、ふと思いついた様子で葉を取ると、草笛にして吹いてみる。
「キーゼルさんもどうですか?」
「そうだね。たまには、こういうのも悪くないかも」
 ピクニックらしいと言えばらしいと、真似をするように草笛を吹くキーゼルと、ズュースカイトは一緒に草笛を鳴らしながら、のんびりと昼食を取る。
「ああ、いたいた」
 そこにやって来た鍛冶屋の重騎士・ノリス(a42975)は、良ければ鑑定試合をしないかとキーゼルを誘う。互いに品を出し、どちらがより価値があるかを周囲の者達に決めて貰おう! という提案だったのだが……。
「鑑定、ねぇ」
 キーゼルの持ち物といえば、がらくたばかり。勝ちを競う以前に、そもそも勝負になるかどうか……。
「……君の勝ちかなぁ」
 ノリスが取り出した品を見て、戦う前に勝ちを譲るキーゼルだった。

●そよ風に揺れる夢見草
「はい、リーンちゃん。あーん」
 彼らから少し離れた場所では、蒼の奏剣・セレネ(a35779)が謳わぬ偽花・リーン(a35793)に、スプーンですくったプリンを食べさせてあげようとしていた。
「じゃあセレネちゃんもお返……あっ」
 同じようにスプーンを手にしたリーンだったが、ふと向こうに誰かの姿を見つけると、さささっとセレネの影に隠れてしまう。
「……ああ」
 何事かと思ったセレネだが、そっちを見て何となく納得する。そこには、シナト・ジオ(a25821)と蒼剣の薬師・カレン(a17645)がいた。
「はい。暖かい紅茶もありますからね」
 そうカレンが差し出したサンドイッチを受け取ると、それをおいしそうに食べたジオは、自分もと持参したパンプキンパイを取り出す。
「自分で作ったものじゃないけどなぁ〜ん」
 貰ってばかりじゃ悪いから、と切り分けて。二人はそれらを食べながら、花を眺めて過ごす。……それを見つめる視線には気付かず。
「こんな過ごし方は久々かもな」
 その脇の小道を通りながら呟くのは、未知なるものを求めて・スフィア(a20010)。
 同居鳥のクロガネに手を伸ばし、お前も心地良いかと尋ねながら、スフィアは夢見草が良く見える辺りに腰を落ち着ける。
「ちょっと休憩しませんか? お弁当作ってきたんですよ」
 午睡誘い詠う歌・ツバキ(a36964)は、サンドイッチを白華遊夜・アッシュ(a41845)に差し出す。
 夢見草を渡したい人がいるのだというアッシュの為に、何が出来るかと考えたツバキは、お腹が空いては動けなくなるだろうからと、昼食を用意しておいたのだ。
「ツバキに一緒に来て貰えて、本当に有難いのです〜」
 そう心から言いながら食事を終えると、アッシュはツバキに花の扱いを尋ねつつ、夢見草を摘む。
「……綺麗。良かったね、ベアトリーチェ」
 夢見草を編んで、花冠を作った白骨夢譚・クララ(a08850)は、それを少女の名を持つ白き頭へと載せると、どこか影のある微笑みを、ベアトリーチェへと向ける。
「これが夢見草か……へぇ、何か……んー、何て言えば良いのかな?」
 ストライダーの忍び・アリーナ(a46846)は、夢見草を前にそう呟く。面白そうだからと、ヒトの武道家・バリー(a45990)にくっついて来てみたが、こうしてみると言葉が思いつかない。
「きれい……だな」
 そう呟いたバリーの言葉に、しっくり来たというように頷くアリーナ。
 一方バリーは、花をしばし見つめた後、何もせずに踵を返す。
(「そのままにしておこう……」)
 もし、夢で再び、あいつに逢えたとしても。一体何を言えば良いのだろう?
 空しさが残るくらいなら……そう、首を軽く振って、バリーは夢見草の元を去る。
(「こんなにもたくさんの命が芽吹き、今この時を一生懸命生きているんですね……」)
 丘に咲く花々、それらに集う虫たち……それらを見つめながら、護りの蒼き風・アスティア(a24175)は歩くと、やがて夢見草の側に寝転んだ。
 夢見草は摘まず、ただ瞳を閉ざして。どんな夢を見られるだろうかとアスティアは思う。
「素敵な植物、ね……ロマンチックで……」
 そう微笑むのは、栗鼠を愛した櫻・アティ(a32376)。彼女の隣では、アティの美味しいお弁当を食べ終え、自分は幸せ者だと噛み締めている、櫻を愛する栗鼠・ガルスタ(a32308)がいる。
「香りも良いしな……」
 アティの言葉に頷くと、香りとこの陽気に包まれていては、つい眠ってしまいそうだと笑みを漏らすガルスタ。だが、たまには昼寝なんてのも、良いかもしれない。
「ここが良いでしょうか……」
 ゆっくりと丘を歩いていた、旅人の篝火・マイト(a12506)は、そう呟きながら目を細めると、弓弦を調整する。
 この咲き誇る夢見草の中で、ひととき舞うために。
 弦を鳴らし、風のようにしずしずと。そして、次の弦の音の後には、激しく。
 その動きと共に、甘く優しげな香りもまた、ふわりと揺れる。
「ん……」
 聖なる樫の護り手・ガイ(a42066)は、久遠の時を想う者・レラ(a40515)が欠伸を噛み殺したのに気付くと、少し眠れと告げる。
「この間のようなことはしない。心配するな」
 折角花を見に来たのに。それに、前のような事をされても……と見つめるレラに、苦笑を浮かべつつガイが告げても、レラはしばらく頑張っていたが、それでもやがて眠ってしまう。
「いい夢を――」
 しばらく、その寝顔を見つめていたガイは、ふと、その額に軽く唇で触れると、そう囁いた。

●あたたかい、ひだまりで
「……クロコさん、味はいかがでしょうか?」
 蒼月を抱きしめる涼風・アンジェリカ(a22292)は、恐竜殿下・クロコ(a22625)にお手製サンドイッチを渡すと、その反応を見つめる。
「ああ、美味いよ」
 勿論といった顔で頷くクロコ。しばらく、のんびり昼食を取った二人は、やがてまた散策をと歩き出す。……控えめに裾を掴んだアンジェリカの指先を、クロコがしっかりと握りながら。
「ね、ね、押し花の作り方、ちょこっと教えて欲しいのーっ」
 一方では食事を終えた何人かが、ノエルと一緒に夢見草を押し花にしている。
「こんなふうに紙に包んで、こう……本にはさむのです〜」
 夢見草は花が大きいから、ぐっと力を込めた方が綺麗に出来ると思うのです、と言いながら、ノエルは本の表紙を両手でしっかりと押す。
「あとはカラカラになったら出来上がりなのです〜」
 早ければ3日程で乾燥するだろうとはノエルの言だ。
「なるほどねー」
 ふむふむと頷いて、どんな素敵な夢が見れるかしらと、優水の旋律・サガラ(a17496)は想像する。
 美味しいご飯いっぱいの夢? 作ってくれる人は、もう近くにはいないけれど……夢に見る位なら、良いだろうか……?
「夢見草も摘み終わったし、次は探検に出発だなぁ〜ん!」
 一緒に押し花を作ってみた、骨を心に抱く・クーリン(a35341)は、ノエルを誘いながら元気よく歩き出す。折角初めての所に来たのだ、色んな場所を見て回らなければ、損というものである。
「ノエル君、あれはどんな花か知ってるかな?」
「あれはマーガレットなのです。その向こうは、ゼラニウムなのです〜」
 黎明の燕・シェルト(a11554)は、花の心地よい香りを楽しみながら、この機会に花について教えて貰おうと、ノエルに尋ねながら歩く。そんなシェルトの質問に、ノエルは楽しそうに答えている。
「……ほえ?」
 と、そんな中、ふと自分に誰かの視線が向けられているのに気付いて、ノエルは振り返る。
 視線の主は、紅い魔女・ババロア(a09938)だ。
「すぐに私より、ずっと強くていい男のナイトになれそうね」
 じーっと見つめながら、そう呟くババロア。何故ならば、大抵の事は気にしない性格というのは、とても男として大切な物だからだ。
 そう、胸の事とか年齢の事とか……。
「……7歳年上なだけよ。いつか一緒に冒険しようね」
「はいなのです〜♪」
 夢見草の事を教えてくれたお礼に、とワイルドファイアで手に入れた花を渡しながら、桁が1つ違うだろと突っ込まれそうな台詞を放つババロアだが、ノエルはやっぱり気にしていない様子で、にこにことお礼を言いながら笑っている。
「きもちいいなぁ〜〜ん……♪」
 いつものように眠たそうな顔ながらも、そう空を見上げた甜睡姫・サチ(a13963)は、ノエル達を誘い、一緒に草の上に座りながら景色を眺める。
「あれは、マンゴーみたいに見えるなぁ〜〜ん……」
「向こうはブーツなのです〜」
「じゃあこっちは帽子なぁ〜ん!」
 雲が何の形に見えるかを、一緒にあれこれ言い合ったりしながら過ごすうち、ポカポカした陽気に誘われて、サチはうとうと、瞼を落としていく。
(「穏やかな日は、気持ちが安らぐよね……」)
 少し離れた場所では、身に秘せし鼓動の赤・ファスティアン(a46847)が、夢見草を編んで作った簡素なコサージュを手に、草の上に寝転がっている。
「夢見草か……。このままここで寝たらどうなんだろうな?」
 そうふと浮かんだ疑問を漏らしながら、黒麒・クロ(a41958)は風竜の舞姫・セラ(a17990)が座っている、すぐ隣へと寝転がると、両目を閉ざして、そのまま本当に眠ってしまう。
「……この春の陽気だと、眠くなって来るな」
 狭霧・アイズ(a05918)の様子に、儚い光の軌跡・リア(a03550)は笑うと、膝枕してあげましょうか? と彼の頭を膝に乗せる。
「……そういえば、アイズンはどんな夢が見たいんでしょうか?」
 やがて、すぐ眠ってしまったアイズの頭を撫でながらリアが呟くと、それに応じるかのように、微かな声が零れる。
「夢なら、見られる……お前が、居るなら」
 微かに彼女へと触れるかのように伸ばされる指先に、はにかむようにリアは微笑む。
「……キーゼルさん? 寝てしまわれたのですか……?」
 日当たりの良い一角で、キーゼルと共に景色を眺めていた、微笑みの風を歌う者・メルヴィル(a02418)は、ふと彼の目が閉ざされているのに気付いて、小声で問いかける。
 返事は無く、返るのは微かな吐息だけ。
 メルヴィルはそれを見ると、そっと……起こさないように、気をつけながら慎重に、彼の頭を自分の膝の上へと運ぶ。
 彼の目は、それでもまだ閉ざされたまま。
(「……素敵な夢。それは、きっと……」)
 こんな風に過ごす時間の事なのかもしれないと、そう思いながら。メルヴィルは、風に揺れる夢見草を見つめながら、微笑んだ。


 青く澄んだ綺麗な空と。
 眩しくきらめく暖かな太陽と。
 優しげに広がる甘い香りと、それを乗せて運ぶ風に包まれて――。
 冒険者達は、穏やかに流れていく春の一日を楽しむと、その夜は、とても穏やかな眠りについた。


マスター:七海真砂 紹介ページ
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作成日:2006/04/21
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