ミッドナーの誕生日〜たとえば、そんな一日〜



<オープニング>


 ミッドナーの誕生日。その事を某金ピカ男や、某トレジャーハンターが話し始めた頃。彼女は突然現れて、こう言ったのだ。
「サプライズパーティーとかするつもりなら、お気持ちだけ受け取ります。そーゆー年でもないですし。そんな事より……私に付き合ってくださいませんか?」

 そして、翌日。
「日向ぼっこに行きましょう」
 彼女は、そう告げた。
 いつもどおりの顔。冗談の類ではないようだ。
 しかし……あまりにも。
「似合ってないのは重々承知です。でも、私だって……そういう気分にもなります」
 たまには、何もしないで日向ぼっこする。そんな日があってもいいでしょう?
 そう言ってミッドナーは、身を翻す。
「あ、そうそう。お酒と果物ジュースは、おやつには入りませんから」
 振り返ってそう言うミッドナーに、冒険者達はどう反応したらいいのかわからない、といった顔をする。
「……冗談ですよ?」
 本当に冗談だったのかどうかすら、判別がつかないまでにいつも通りの表情で。
 彼女はそう言って、少しだけ歩みを速めたのだった。

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参加者
NPC:夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)



<リプレイ>

●日向ぼっこに行こう
「着きましたよ、皆さん」
 武侠・タダシ(a06685)の背中から飛び降りた夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)が、そう告げた。
 相変わらず目的地に着くまで歩く気力の続かない彼女ではあるが。まあ、いつも通りである。
 楽風の・ニューラ(a00126)に頼まれて運んでいた酒樽を下ろした漢・アナボリック(a00210)は……早くも日向ぼっこだろうか。随分とぼーっとしている。
「大吟醸に果実酒……と」
 ニューラがそれを確かめている横では、ミッドナーが2人に分裂している。
 ……いや、よく見ると。片方は随分と大きい。180cm以上はありそうだ。
「どうも、僕がミッドナーです」
 本多・リオン(a03763)20歳。一片の迷いも無く言い切った彼は……まさしく男であった。
「……全然似てませんの」
 面白そうに見ているミッドナーとは逆に、冷静に突っ込みを入れる蒼の歌姫・メビウス(a35783)。
「ぜんぜん似てねえだとゥ? 何言ってんの。同じ金髪だし青瞳だし。同い年だし。違いを見つける方が難しいっちゅーねん! 完璧な作戦だ! 我ながら恐ろしい!」
 自分で言ってしまう辺りが恐ろしい。
 そんな異様な空気を打ち破るかの如く、悪をぶっ飛ばす疾風怒濤・コータロー(a05774)が現れる。
「誕生日おめでとうだな、ミッドナー」
 頭をなでなでされるミッドナー。
 もう21なんですけど、とか。色々言いたい事はあったけれど。
 悪気が無いのは分かっているから、何も言わない。
 あと、誰にも言わないけれど。そんなに悪い気分でも、ない。
「そういや、あれから家事の方の腕前はどーよ?」
「ええ、そこそこですね」
 そんな2人の近くでは。
「ずっと……抱き締めてみたいと思ってたんだ」
 無造作紳士・ヒースクリフ(a05907)がブックハビタントに近寄っていたりしたのだが、それはさておき。
「ふふふ、皆良く見ておくぎゃ! 名付けて「日の光を惜しげもなく浴びるポーズ!」」
「果たしてミッドナーはこの原っぱで何をしたいんじゃろうな? おお? わしの斑色の脳細胞の力を魅せる時が来たかえ?」
 何かを始める赤い風・セナ(a07132)と甲斐の・チアキ(a07495)。あとリオン。
 3人揃うと、何かのオブジェのようですらある。
 座禅のようなポーズを取るチアキの横では、セナが何やらいつもとは違うポーズを取る。
 足を大きく広げ、体を限界にまで反らし、絶妙のバランスでキッカリと日の光を浴びるポーズ。
 何か世界的なアレで金色に輝きそうポーズであった。
「ふむぅ……」
 ポクポクポク……ゴキッ
 セナの腰がいつも通りになった所で、チアキの答えが導き出される。
「カレーライス」
 ここまで違うと、いっそ清々しくすらあったに違いない。

●陽気な歌でお祝いを
「あっ、やっと見つけた」
 早々に木陰で昼寝していたミッドナーに、翔剣士・セリア(a16819)が話しかける。
「どんなのが好きかわかんなかったからさ、似合いそうなの選んだんだけど……こういうの好きかな?」
 渡された銀のイヤリングを受け取ると、少し考えてから答えた。
「つけたことないですけど……嫌いじゃないです」
 そう言って振り向くと、セリアは早々に寝息を立てている。
 幸せそうな寝顔を見ると、ミッドナーはそっと其処を離れた。

 何故かキャベツを抱えたミッドナーが桃ノソリンの行かず後家・トロンボーン(a34491)に乗って、のそのそと移動する。
「あ、ミッドナーさん。これをどうぞ」
 寝転がっていたうたかたのゆめ・ロン(a33766)が、その姿を見つけて瓶を手渡す。
「……どうもです」
 小鳥と戯れていた大樹の寵愛を授かる者・モニカ(a37774)の横を通り過ぎ、孤独を抱く月の雫・セラフィン(a40575)からスミレの花束を受け取った頃。
「暇だ、遊んでくれ」
 彩雲追月・ユーセシル(a38825)が立ち塞がり、ミッドナーがトロンボーンノソリンから降りる。
「はい、おめでとうだね」
 ユーセシルからプレゼントを受け取り、ミッドナーは少し考えてからキャベツを渡す。
「……あそこで倒れているセナさんの腰痛を、このキャベツで治す方法を開発する遊びなんてどうでしょう」
「いいね、それ」
 夜蝶嬢王・ペテネーラ(a41119)の奏でる陽気な歌がその気にさせたのだろうか。
 あっさりとキャベツを受け取るユーセシル。
「お誕生日おめでとう。これからのミッドナーちゃんの一年にAlegria(喜び)が満ち溢れますように。Happy Barthday!! 」
「……どうもです。ぺネテーラさんにも、同様の喜びがある事を信じてます」
 
●静かな歌でお祝いを
 深淵の流れに願う・カラシャ(a41931)の奏でる静かな歌が響く。
「……故郷でお祝いの時に奏でる曲ですけれど……」
「そんな感じですね」
 肯定も否定もせず、ただ耳を傾けるミッドナー。
 それは、ミッドナーなりの賛辞だ。
「ミッドナー・イートゥ」
 突如、黒色の少女・ルノア(a42211)が話しかけてくる。
 どうやら、ここでずっと詩集を読んでいたらしい。
「……何時か言ったわね。他人を信用するのが仕事だと」
「ええ、それが何か?」
 思い返しつつ、そう答える。
「何故? あなたは何故、信じる事ができるの?」
 一瞬の間も空かずに、答えは返ってきた。
「朝が来る事を疑う人なんて、居ないでしょう?」
 それと同じだと、言っている。
 実際には、そんな簡単なものではないだろう。
 世界は。そんな完璧に綺麗なものではない。
「私は。例え自分にナイフを向ける人でも……最後の瞬間まで、信じてみたいんです。その最後の一瞬で、考えを変えてくれると」
「……そう」
 少し目を細めて、その場を離れていく。
「変な事を聞いてごめんなさいね。――誕生日、おめでとう」
「いえ、別に。ありがとうございます」
 少しだけ、強い風が吹いて。
 鎧をつけたまま日向ぼっこしている鍛冶屋の重騎士・ノリス(a42975)を眺めながら、ミッドナーは少しだけ目を閉じた。

●お誕生日、おめでとう
「……21ですから」
「ごめんなさい……想像とちょっと違ったもので。お誕生日おめでとうございます」
 果たしてどんなのを想像していたやら。
 ニューラやセナみたいな感じだろうか。
 まさか、アナボリックみたいなのだろうか。
 双風円舞・ルナ(a43935)からワインを受け取りつつ、そんな事を考えてみる。
「誕生日おめでとうです。ゆっくりと休んでくださいね」
 武具王・ゼラン(a44038)から花を受け取った近くでは、ヒトノソリンの吟遊詩人・ナーン(a45816)が楽しそうに歌っている。
「なぁ〜んの歌とかいうらしいぞ。ちなみに今日の俺も執事スタイルだ」
 そう言いながら、黒豹・サキト(a38399)が月吼・ディーン(a03486)を伴って現れる。
「燕尾服はともかく刀は違うだろ……だったら術士どうするんだよ」
「何を言う燕尾服と刀は執事の制服、たとえひなたぼっこであろうとこの格好は譲れん」
 よく分からない理屈だが、そんなものなのだろう。
「ああ、丁度良い……日向ぼっこの面白味を教えてくれないか?」
 言い争いを始めた2人を掻き分けるかのように、無銘なる赤・デスペラード(a27803)が現れる。
「この時間に何かを出来るかもしれないのに、日向で寝転がって無為に時間を浪費している事を自覚しながらも気持ちいい。そんなカタルシスを楽しむのが面白いんです」
「……よくわからん。難しいものだな」
 というか、日向ぼっこはそういうものではない。
 ひょっとしたらミッドナーは酔っているのかもしれなかった。
「誕生日おめでとー」
「ありがとー編なのデス」
 続けて現れた影武者ドラゴ・トート(a16979)と貴方の・ユーシス(a23842)。
 差し出されたピルグリムに何だか似ているぬいぐるみと、あみだくじ。
 無難にワインを受け取ったミッドナーの髪の毛を、トートが弄り始める。
「枝毛とかあるデスかねー」
「……さあ?」
 気にしたことないけど、あるかもしれない。
「春は暖かくて優しくて……気持ちいいですね」
 風の楽師・メイ(a34843)の言葉に、無言で答える。
 暖かくて、気持ちいい。
 眠気が最高潮になってきたミッドナーは、適当にやわらかいものを見つけて頭を乗せる。
 実のところ、それは光牙咆震閃烈の双刃・プラチナ(a41265)の膝であったのだが。
 いやな顔1つせず、プラチナはミッドナーに頭を乗せられたままになっていた。
「ミッドナー誕生日おめでとう……」
 もう聞いてはいないだろうが。
 空賊団の犬・グラリア(a44018)が、こっそりと呟く。
「どれ、利き酒でもやってみようか」
 探索士・エルヴィン(a36202)がお酒を1本開けると、酒好きがワラワラと寄っていく。
 もう少し立てば、この原っぱも寝転んだ人達だけになることだろう。

●帰り道
「実は僕、スーツ姿のミッドナーさんって好きなんだ〜」
「……そですか」
 笑顔の剣士・リュウ(a36407)から受け取ったスーツをどうやって持って帰るか悩みつつ答える。
 結局荷物持ちをしているタダシに渡すと、そのタダシが荷物を降ろしてミッドナーの頭をなでなでする。
「そういえば言ってなかったな。誕生日おめでとうさん。これからもよろしくな」
 そう言って、少し考える素振りを見せる。
「21歳だったら、こうかな」
 そう言ってミッドナーの手の甲を取って、彼女の手袋の上からキスをする。
「そう言えば……おめでとう、だったか」
 思い出したように、デスペラードが言った。
「うん……おめでとう」
「ええ、どうもです」
 一歩、二歩。ほんの少しだけ皆より先に進んでから、振り返らずにミッドナーは。
「……私、皆さんのこと。たぶん、大好きですから」
 そう言って、顔を見られないように足早に歩き始めたのだった。


マスター:じぇい 紹介ページ
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