閉ざされた浮島へ:迷い路の死闘



<オープニング>


●閉ざされた浮島へ
 かつて行われたピルグリム戦争。
 冒険者達の活躍でピルグリムマザーは倒れ、ホワイトガーデンには一応の平和が訪れた。
 ピルグリムの残党による被害もあったが、マザーを失ったピルグリム達に大規模な集団を作る気配は無く、個々の討伐によって対応できていた。

 しかし、そのピルグリム達に異変がおきようとしていたのだ。

※※※※
「再び、皆様の力を借りねばならない事態となったようです」
 エンジェルの霊査士・エリアード(a90210)は、冒険者達にそういって頭を下げた。
 突如現れたピルグリムの群れは、多くの冒険者の力で駆逐する事ができ、作戦としては大成功に終わっている。
 しかし、問題は目の前のピルグリムの群れだけでは無かったのだ。
「どうやら、あのピルグリム達は、ピルグリム戦争時に巨大豆の木が折れたため行き来が出来なくなっていた浮島からやってきたようです」
 彼の説明によれば、ホワイトガーデンの地図の右上にある浮島からピルグリムがやってきているらしい。
 その方法は、自分達の体を融合させて繋ぎ合わせて作ったピルグリムの糸で、折れた豆の木同士を繋げたものであるらしい。

「ピルグリムの糸は、直径100メートル程の網状に編まれており、縦横無尽に寄り合わされて作られています。それだけでも恐ろしい存在ですが、真に恐ろしいのはその番人達です」
 十体以上のピルグリムワームが、この迷路の中に潜んでおり侵入者に備えているのだそうだ。

「今後のピルグリムの被害を阻止する為には、ピルグリムワームを撃退し、ピルグリムの侵攻路であるこの糸を制する事が重要となると思います」
 ピルグリムワームは強敵ではあるが、幸いな事に、長大なピルグリムの糸を巡回するために単独行動しており一体づつ撃破する事が可能なのだ。

「ピルグリムワームを全て倒すことができれば、ピルグリム戦争以来連絡が取れていなかった浮島の仲間達の様子を確認する事も出来るかもしれません」
 いまだ、ピルグリムに支配されているらしい浮き島。
 そこに住む同胞達の事を考えたのだろう、エリアードの表情が険しくなる。

「危険な任務となりますが、多くのエンジェル達のために皆さんの力をお貸しください」
 エリアードはそう言うと、倒すべきピルグリムワームの状況について説明をはじめたのだった。

●迷い路の死闘
「皆さんに赴いてもらうトンネルは複雑な迷路になっています。その中に番人ともいえるピルグリムワームが徘徊している訳ですが……その迷路の中でも、特に入り組んだ場所に一体、ピルグリムワームの姿が見えます」
 上、下、右、左、前に後ろ。様々な方向に伸びたピルグリムの迷い路。その中を縦横無尽に徘徊するピルグリムワーム。
 まずは接触時に注意しなければならない。どこから来るか分からないのだ、不用意に迷路を進めば奇襲を受ける事になるだろう。
「また戦闘に突入した後も油断は出来ません。強敵であること勿論。戦場は迷路、戦闘中の混乱で仲間とはぐれる、敵を見失い奇襲を受けるなどの危険もあります。それにトンネルはピルグリムで出来ているのです。敵は眼前だけでは無いと、お考え下さい。……閉ざされた浮島への道、どうぞ切り拓いて下さい」


!注意!
 このシナリオは同盟諸国の命運を掛けた重要なシナリオ(全体シナリオ)となっています。全体シナリオは、通常の依頼よりも危険度が高く、その結果は全体の状況に大きな影響を与えます。
 全体シナリオでは『グリモアエフェクト』と言う特別なグリモアの加護を得る事ができます。このグリモアエフェクトを得たキャラクターは、シナリオ中に1回だけ非常に強力な力(攻撃或いは行動)を発揮する事ができます。

 グリモアエフェクトは参加者全員が『グリモアエフェクトに相応しい行為』を行う事で発揮しやすくなります。
 この『グリモアエフェクトに相応しい行為』はシナリオ毎に変化します。
 エンジェルの霊査士・エリアードの『グリモアエフェクトに相応しい行為』は『協力(consensus)』となります。
 グリモアエフェクトの詳しい内容は『図書館』をご確認ください。

マスターからのコメントを見る

参加者
堕落論・スバル(a03108)
緋天の一刀・ルガート(a03470)
月の睡り子・セツナ(a05313)
闇擁の槍・フェリス(a18114)
擁蔽なる具現創師・ミュル(a18173)
蒼輝神翼・ユウリ(a18708)
黄昏を撃つ雷撃・リリィ(a22501)
天照・ムツミ(a28021)
飛熊・ティエン(a33937)
曲弦師・フェリス(a34382)


<リプレイ>

●絶望の待つ、希望への道
「今更だけど、やっぱ気持ち悪いとこだわね……」
 白いトンネルに突入し、探索を始めてどれ程経ったろうか? 陣の最後尾に付いて後方の警戒に当たっていた曲弦師・フェリス(a34382)がふと零した。
 トンネル内部には幾つもの隙間があり、そこから差し込む光で明かりには困らない。更には闇擁の槍・フェリス(a18114)が明かり兼目印としてホーリーライトを頭上に灯している為、トンネル内のあちらこちらが良く見える。
「確かに、あんまり……いい気分はしませんね」
 リングスラッシャーを伴い、先頭を歩く蒼天の魔術師・スバル(a03108)が口元に苦笑を浮べた。
 壁や床、その色や質感。妙に生物的なのがまた嫌悪感を誘うのだ。
「ピルグリムワームも、できればあんまり近付きたくない相手だしな」
 以前に見たその異形を思い出し、緋天の一刀・ルガート(a03470)は眉根を寄せる。
「でも、こんな所でいつまでも足踏みしている訳には行きません」
「浮き島の仲間、早く助けなくちゃいけないのデス」
 しかし、後列で視線を後ろに向けたままの月の求め子・セツナ(a05313)、そして同胞の身を案じる擁蔽なる具現創師・ミュル(a18173)の言うとおり。やらねばならぬ戦いだ。
「ホワイトガーデンの人達のためにも、この戦い、負けられない、なぁ〜ん」
 壁に口紅で印を付けながら言うあまりにも鋭いこの俺のサマー・ティエン(a33937)。そう、勝たねば成らない戦いだ。浮き島のエンジェル、ホワイトガーデン、ひいては同盟諸国の為。
「……負けるのは、嫌です」
 過去の戦いを思い出し険しい表情を浮かべるフェリス。その肩を、天照・ムツミ(a28021)は軽く叩いた。
「大丈夫! 仲間を守り、信じ、闘う。一人では無理でも、皆で協力すれば、一は十にも百にもなるよ!」
 トンネルは続く。浮き島へ繋がる唯一の、希望の道。されど入った者を迷わせ、闇へ誘う迷い道。
「(……皮肉なものね)」
 過去に立ち止まる事を止め、歩き出した矢先、示された道は強大な敵の潜む、穢れた白い迷い道。先にあるのは希望か、絶望か、それすら分からぬ道を。
「(でも……ここで足を止めるわけには行かない)」
 壁に目印の傷を刻み、蒼悲天翼・ユウリ(a18708)は歩む足に力を込めた。

 それからまた数分、一行は思わず足を止める。
「さて……ここからでしょうか」
 黄昏を撃つ雷撃・リリィ(a22501)が険しい表情で呟く。
 此処から先、道はさらに複雑に。前、右、左、上に下。エリアードが視た強大な番人は近そうだ。

●迷い路の死闘
 中心に術士三人とユウリ。その前後を前衛職の六人が二手に分かれ固め、迷い路を進む。
「またですか……」
 スバルは小さな溜息と共に消えてしまったリングスラッシャーを再度召喚した。
 探索中、敵の奇襲に備えての案だったのだがリングは一〇分程しか存在できない。迷い路の探索が長引き、その残り回数は減っていた。
 上や下に道のある通路を避け、影にも注意を払い進む。
「みつかんねぇな」
 十字路に差し掛かり、ピルグリムワームも、戦闘に向きそうな場所も無くルガートがふと洩らした時、
「……!? 左!」
 ユウリが声を上げた。
 左の横穴は直ぐに下に落ち込む道になっていた。その下穴から勢い良くピルグリムワームが飛び出したのだ。そのまま突撃してくるワームの巨体!
 後方に居たセツナが大鎌を手に前に出ると同時に、隊列の中央に位置していた者達を入れ替わるように後ろへと送る。
「さがって下さい!」
「来るわよ! 気ぃ抜かないようにね〜?」
 フェリスも前に出る、その得物は指先から流れる鋼の糸。
 左の穴から右の穴へ、ワームは全力で駆けていく。
「……クッ!」
 後列に退きながら、ユウリは生み出した逆棘を生やした矢を射る。
「こっちも!」
 同時にスバルのリングも動く。
 しかし矢はワームの体を捉えるも勢いを緩める事無く、リングは僅かな傷を付けたのみで砕かれた。
 ワームは右の穴へと駆け抜けていく。
「追うぞ!」
 得物の巨大剣を背負い、ルガートが駆け出す。折角見つけた獲物、ここで見失う訳にはいかない。
「うん、逃がさないよ!」
 そのルガートに聖鎧降臨を施しながら続くムツミ。
「はい!」
 聖鎧降臨によって術士服を自身の体にフィットする形状へと変えたフェリスが答え、他の仲間も陣を整えつつ後に続く。と、黒炎を身に宿し同じく走り出そうとしたミュルが、突然バランスを崩し転倒した。
「わわ、大丈夫!? って……!」
 慌てて急ブレーキを掛け駆け寄るフェリスは、ミュルの足元に転倒の原因を発見した。
「ピルグリム!」
 ミュルの足元だけではない、壁から点々と蠢く触手が伸びて来ている。リリィのニードルスピアが壁を標的に放たれその動きを牽制し、
「ハッ」
 セツナの大鎌がミュルの足を絡め取る触手を断つ。しかし、その間に、
「あちゃ〜、もしかしてはぐれた?」
 前を走っていた仲間の姿は見えなくなっていた。フェリスが大声を出してみるが縦横無尽の迷宮が音を反射させてしまう。
「拙いね、早く合流しないとなぁ〜ん。たしか向こうのフェリスさんはホーリーライトを付けてたはずなぁ〜ん」
「じゃあ、明かりを頼りに合流、だね」
 言いながら自身の頭上にも赤いホーリーライトを生み出すティエン。その案にこっちのフェリスさんは頷いてみせると元気に拳を突き上げ歩き出した。

「ん、あれ? ねぇ、後ろから来ないよ!」
 ムツミが立ち止まった。先行していたルガート、スバル、フェリスとユウリも足を止める。
「いつの間に……?」
「とりあえずこのままじゃ拙いですね、合流を優先しましょう」
 表情を曇らせるフェリス。対しスバルは即座に判断すると、仲間に来た道を戻るよう提案する。
 応え来た道を戻る一行、と、
スドォォン
 何か巨大なものが落ちるような音が響いた。
「どっちだ!?」
 ルガートが辺りを見回す。が、音が反響してどこからのものか判別が付かない
 感覚を澄まし、周囲の状況を探ろうと試みるユウリ。その髪に、パラパラと何かが舞い落ちてきた。
 見上げる。……そこにある真上に通じる穴、その先から物音と、人の声が微かに聞こえてきた。
「上よ!」
 ユウリが強い口調で言う。
「応!」
 真っ先にルガートが応え走り出した。真上の穴は登れない、どうにか別ルートを見つけなくては……!

 突如、縦穴から舞い降りてきたピルグリムワーム。セツナ達はそのまま否応なく戦闘状態へと突入してしまった。
 フェリス、セツナが前に。ミュルとリリィが援護のニードルスピア、デモニックフレイムを放ち、ティエンの回復が皆を必死に支える。
「私がいる限り、そう簡単には重傷者なんか出させない! っと、言いたいとこだけど、なぁ〜ん!!」
 過去の大戦において猛威を振るったピルグリムワーム。眼前の敵はそれよりは小型とは言え、五人で相手にするには分が悪すぎる。
「薔薇の香りに埋もれ、眠りに着くが良い……なぁんてね!」
 鋭い爪先の刺突を巧みにかわし、薔薇の幻影を従えてフェリスの糸が舞う。鉄のような敵の脚が火花を散らし、胴体から得体の知れない体液が漏れた。
「……全く、しぶといですね」
 フェリスの逆サイドから、一時的に少女の身に似合わぬ筋肉を得たセツナが攻撃が仕掛ける。炸裂する闘気。が、ワームは脚を引くことで衝撃を和らげ、逆にセツナを蹴り飛ばした!
 更に一歩踏み出そうとするワーム、その頭部を黒炎が撃つ。
「これは、拙い……」
 その一撃を受けても怯まないワームに、さすがにミュルも眉根を寄せた。
「断ち切れ! 真空の刃よ〜!」
 細い糸が生み出す音速の衝撃波を叩き込むフェリス。が、ワームはなんら堪えた様子も無い。動き回るフェリスに高速の蹴りを叩き込み、
「……クゥ!?」
 フェリスは流しきれず、その圧倒的な攻撃をまともに受けてしまう。
 悠々と歩み寄るワーム。そこに、金色の尾を牽いた、一矢が飛来し、ワームの眉間に突き立った!
「やっと見つけました!」
 弓を構えた姿勢のユウリの横を抜け、光る輪を載せたフェリスが安堵の表情で駆け寄よる。しかし、仲間の状況を目にして表情を硬くした。
「畜生! テメェ!!」
 巨大剣を腰に構え、怒声と共にワームへと接近したルガートが破壊の一撃を叩き込む。更に後方から、ユウリの放った稲妻の矢が追い討ちをかける。
 スバルが此処に到着するまでに生み出した六個のリングもワームへと殺到し、
「燃えて、凍れ!」
 細身剣と短剣、双方に紅蓮の炎と銀の冷気を乗せて振る!
 が、炎も氷も、ワームの体を蝕めない。
 猛るワーム。振り上げられる鍵爪。
 咄嗟に下がる前衛。一人残ったムツミが巨大な盾を地面に突き立て、真正面から一撃を受ける!
 聖鎧降臨の加護もありダメージは浅い。が、想像以上の衝撃! 肩膝が地に付きそうになり、しかし踏みとどまった。
「信頼してるから……ボクは盾となって戦えるのだ!」
 ムツミの信頼に、仲間達は行動で応える。フェリスとティエンの回復、ミュル、リリィ、ユウリの援護を受けての前衛陣の攻撃。
 しかしここまで揃っても、容易い敵ではない。

「クッ!」
 リングを全て潰され、一旦距離を取りソニックウェーブを放つスバル。低めに飛んだその一撃はワームの脚を一本、跳ね飛ばした!
 バランスを崩すワーム、しかし残る七本の脚が巨体を支え、それどころか、飛んだ!
 体ごとのまさに体当たり。咄嗟に双剣を交差し防御の姿勢を取るも堪えられるものではない。
「チクショウ!!」
 ルガートの一撃がワームの脚をもう一本、砕く。
 左右の前脚を失いつんのめる様に倒れ込むワーム。
「今なら……!!」
 フェリスが叫びながら、この一撃に全てを賭けられるよう、残り少なくなった癒しの波動を放つ。
 暖かな光りを浴びながら、ユウリの稲妻の矢、リリィの黒炎の顎、ティエンの慈悲の聖槍が放たれピルグリムの体を打ちのめす!
 全身に浅からぬ傷を負い、それでも立ち上がろうと顔を上げるワーム。その顔面に、
「これで、終わりたぬーっ!」
 ムツミの太刀が振り下ろされる。頭上に生まれる巨大な守りの天使。その天使は通常より大きく、また神々しき輝きを宿し、己が主の剣へ奇跡の力を与える。
 光りそのものとなった斬撃は、ワームの頭を真っ二つに切り裂いた。

●真の平和への一歩
 セツナ、フェリス、スバル。三人は一様に大量の血を失い消耗していた。
 傷はエンジェルのフェリスがヒーリングウェーブで塞いだが、失った血は取り戻せない。
「ふぅ……やられましたね」
「全く、無駄に固いんだもん! おまけに手加減無しに蹴ってくれちゃって……!」
「でも、死者が出なかっただけ、良しとしましょう」
 タハハと笑うスバル、憤るフェリス、セツナはそんな二人に笑いかける。
 持ち上げる手、動けるだけまだマシ。多量の血でバリバリになってしまった衣服の方が気になるというものだ。
「はい、誰も失われず、本当に良かったです」
 そんな緊張感の無い三人を見てフェリスは微笑む。本当に、良かった……。
「浮き島の仲間も、無事でいてくれてるといいなデス……」
 ミュルは自分の同胞、浮き島のエンジェルの事を思う。既に多くの仲間が失われているのだ、これ以上は失いたくない。心から、その無事を祈った。

「障害は倒した……これで、進める」
 動かなくなったピルグリムワームを前にユウリは目を瞑る。この先、閉ざされた浮き島に何があるのか、それは分からない。だがそれが、閉ざされた自分の心に何らかの変化をもたらすかも知れない。
 ならば歩もう。ただ立ち止まる事は止め、進む為に。
「まだ、お預けか……」
 少し離れた位置からユウリを見ていたルガートは肩を竦めて苦笑する。
 以前のピルグリム大戦から随分経った。それでもこの状況、ホワイトガーデンに真の平和が訪れるのはまだ先のようだ。そして、ユウリの本当の笑顔も。
「さてと……」
 立ち尽くすユウリにムツミが歩み寄る。不思議そうに見るユウリに笑い返すと、ムツミは屈み落ちていたワームの脚、その欠片を拾う。
「エリアードに持ってこうと思ってね。じゃ、そろそろ帰ろうか?」
 言って仲間の元に歩み去る。
「行こうぜ」
 ルガートがユウリの手を取り、歩み出す。仲間達の元へ。


マスター:皇弾 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:10人
作成日:2006/04/28
得票数:冒険活劇5  戦闘8 
冒険結果:成功!
重傷者:堕落論・スバル(a03108)  月の睡り子・セツナ(a05313)  曲弦師・フェリス(a34382) 
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。