<リプレイ>
●シャンス村へ もうすぐ、戦いが始まる……。 ノスフェラトゥの侵攻から、この地を守れなかった事は、冒険者の責だ。 だがこれ以上、この地に生きる人々を犠牲にする訳にはいかない。 成し遂げなければ……。
静かな村であった。 皆、せっせと畑仕事に精を出している。 そこに同盟諸国から来た冒険者達が到着した。 「同盟諸国の冒険者として、避難の為の護衛に来ました」 そういって、村人に声を掛けるのは、色術師・ナオ(a09228)。 「村長の方と話がしたいのですが……」 軽い挨拶を交わした後、瞑月・シズ(a39292)が村長と話をしたい旨を告げ、村人に丁寧に頼んだ。 村人は冒険者達を見た。 シズは武器を持っていたが、その武器に触れようとはしなかった。護衛用の、という意味が強いようだ。 シズだけでなく、これから説得に向かう銀の剣・ヨハン(a21564)は、いつもの銀の装飾を施した鎧と剣を外し、地味な服に護衛のための短剣をマントの下に忍ばせるのみ。雨の輝きの蝶・ナナレ(a24492)にいたっては武器を一切持っていない。 村人達から言われれば、武器を差し出すことも厭わないだろう。 村人達は三言二言話し合うと、シズ達に言った。 「いいだろう。だが、その武器は預からせてもらう。いいな?」 「ええ、かまいません」 シズとヨハンはそれぞれの武器を村人に渡すと、村人達は三人を連れて村長の所へと向かった。 「それじゃ、ボク達は、向こうの畑に行くね」 幼き闇・ディグヴァイス(a30059)は、向こうの畑を耕しているアンデッドを見据えた。 既にピューとオペ・ドクター(a04327)は、周囲の警戒を始めている。 「あ、待って! あたしも行くよっ」 二人の後を追うように闘姫・ユイリ(a20340)も畑の方へと向かい。 「この時期にこんな知らせを受けるのは、辛いだろうね……。住み慣れた地を離れるのは、簡単な悲しさではないからね……」 そう言って、指パチン伝説から生まれた閣下・リファゼル(a18551)は、空を見上げる。 空には鳥が飛んでいく。アンデッドではない、小さな小鳥達が青い空を泳ぐように駆け抜けていった。
●村人達との対話 ここは村の集会場。 村長だけではない、ナオの働きによって、数多くの村人達を集会場に集める事ができた。 ここには、ヨハン・ナナレ・シズが村長の前にいた。 「で、話とは……エルドール護衛士団からのお触れの事かな?」 どうやら、村人達はわかっていたようだ。 ヨハンは会釈をして、口を開いた。 「はい、私達は同盟諸国から来た冒険者のヨハンと申します」 そういって、自己紹介を行う。 「私はナナレと申します。ヨハンさんと同じく同盟の冒険者です」 「同じく、シズと申します」 ナナレとシズもヨハンに続いて、自己紹介を行う。 「突然の訪問、突然の申し出で申し訳なく思っています」 そう前置きして、シズは続ける。 「これから、この土地はまた戦火に飲まれようとしています。いえ、この村を戦火に巻き込むような事はしないよう勤めるつもりです。ですが……村人の方には避難していただきたいのです。我々の敵はノスフェラトゥ。彼らの考える事は、この地の村人を盾にし、戦う事も選ばないとは言い切れません。そのために、皆さんには戦いの間だけ、避難していただきたいのです」 そのシズの言葉を受けるようにヨハンとナナレが頷いた。 「その前に……外にいる者達は何なのだ?」 外でアンデッドなどの警戒を当たっている仲間達の事を指しているようだ。 その村長の言葉を受け、ナナレが説明する。 「外でアンデッドや他のノスフェラトゥ達を警戒しているのは、私達と同じ同盟の冒険者達です。この交渉を終えた後、アンデッドを一掃する予定になっています」 その言葉に村人達から、不満の声があがった。 もっともかもしれない。 今までずっと、畑仕事を手伝ってくれたのは、まぎれもなくあの不気味なアンデッドなのだから。 「ノスフェラトゥは死者にも安息を与えません」 その不満を抑えるかのようにヨハンは口を開いた。 「畑を耕す気の毒なアンデッドなのです……。そして、ここが戦場になれば、村は荒れ、木は枯れ、死者はアンデッドとして甦るでしょう」 そして、村人達を見渡し。 「私達同盟は、皆さんと広場の木が、この地に戻れるよう力を尽くします。村を再建し、アンデッドではなくご自身の意思と手で、畑を耕し、木と過ごす事ができるように……」 それはヨハンの本心。心からの言葉。 「だが、広場の木はどうするのだ? あの木を置いて、この地を離れる事はできん」 静かに村長がそう告げる。 「広場の木は……」 その言葉にナナレが前に出た。 「広場の木は挿し木をすることで、皆さんの守りたいものを……一部ではありますが、守る事ができると思います……ですが、いつかは……いつかは、この土地に戻って来れます。それまでの間、広場の木がここを守ってくれるでしょう」 そういって、ナナレが説明する。 彼らが運べぬ広場の木。それを挿し木にして、村人達と共に運ぶという案であった。 全てを運ぶ事は難しい。 ならばと考えた案であった。 「……挿し木か」 周りの村人達がざわめく。 「一部からでも、この木の未来は育つのです。その未来を、共に生きたいと思いませんか?」 そのヨハンの呼びかけに、村人は静まり返る。 「何で、何で木を運ぶ事はしないんだ? ここが危険なんだろう? だったら、あの木も運ばないと!」 そう、木を運ぶ事が良いに決まっている。 だが、それは出来ない。 冒険者達の役目は、村人達を安全に避難させることなのだから……。 「こんな方法でしか、貴方方を助けられない……本当に申し訳なく思っています」 そういって、シズは頭を下げる。 地べたに頭を付ける勢いで。 「お前さん方の話は分かった。だが、すぐに答えを出す事はできん……少し時間が欲しい。良いかな?」 「村長!」 「この人達の話は最もな事だ。それに、我々だけではなく、この地の木についても考えてくれている。この地を汚さぬよう心を尽くしてくれようとしている。ならば、我々はどうすればいいのか……分かっているのではないのかね? だが、それを決めるには、まだ少し時間が必要なようだ……すまないな」 まだ数人、村長の言葉に頷かない者もいたが、大半はその村長の言葉で心を決めたようだ。 「俺達は認めない! お前達が来なかったから、来なかったから……」 ヨハン達を睨みつけ、数人の村人達が集会場を出て行った。
●死人は地に眠れ 村に歌が響く。 明るい元気な歌だ。 それを聴いていた村人達はいつの間にか、飢えがなくなっていた。 そう、この歌はディグヴァイスの幸せの運び手改。 周りの村人達の心を少しでも和らげるためにと歌っている。 子供達も喜んで聴いている。 そのお陰だろうか、村人達の警戒する瞳が薄れていた。
説得が終わるまで、監視を行っている仲間達は周囲の警戒を怠らなかった。 「ねえねえ、おにーちゃんたち、何をしているの?」 村の子供達が彼らに近付き、話しかけてきていた。 「お兄さん達は、あのアンデッドが皆を襲わないようにと、見張っているんだよ」 そういって、優しく説明するのは、リファゼル。 「そうなの? でも、あの怖い顔の人達、僕らを攻撃してこないよ?」 「そうだよ。ボク達、一度、あいつの背中を蹴ってみたけど、それでも襲ってこなかったよ」 「そ、それって本当?」 冷や汗を浮かべながら、ナオが尋ねる。 「うん! ねー?」 それはたまたま襲われなかったというだけなのではないか? 思わず、そう口にしそうになったが。 「と、とにかく、あのアンデッド達……いや、怖い顔の人達に近寄らないようにね?」 「「はーい」」 といいながら、子供達は冒険者達が珍しいのか、その場から離れようとはしなかった。 「粘り蜘蛛糸、使わないとダメかな?」 そのリファゼルの呟きにリオは苦笑を浮かべた。
ずっとアンデッドの様子を監視していたが、畑を耕す事以外は、何もしてこない。 鳥のアンデッドも、ノスフェラトゥの姿さえも現れない。 監視。それは退屈な仕事であった。 「説得班の方は大丈夫かな……」 ふと、ユイリが口を開いた。 「どうやら、説得が終わったようだぞ」 ドクターは、集会場を見据え、そう告げた。 集会場から何人もの人々があふれ出す。 荒々しく叫ぶ者達。 「ま、まさか失敗した!?」 驚いてユイリが立ち上がる。 「違うみたいだよ。ほら、よく見て」 ディグヴァイスの言葉にユイリは瞳を細める。 遠くで声が聞こえた。 「急いで準備をしなくては」 「ここを離れるのは辛いが……仕方ないだろう」 その村人達の言葉に、ほっとした表情を浮かべるユイリ。 「よかった、成功して」 「全員じゃないみたいだけどね……」 ナオが少し心配そうに見つめる。 「それよりも、始めるぞ」 ドクターの声に皆が散る。 「俺は同盟の冒険者だ。事情は村長に話してある。村長の元へ行ってくれ」 周りに居る村人に声を掛け、アンデッドを倒す準備を行うのだ。そう、彼らの戦いはまだ始まったばかり。 「何をするんだ? 俺達の畑をどうする気だ!?」 畑に向かう冒険者達に村人達の声が。 「アンデッドを処理したら話す。今はこの場を離れてくれ!」 そのドクターの声に村人達がやっと動き出した。 「よかった、粘り蜘蛛糸使わなくて」 「そうだね」 ほっとした表情でリファゼルとナオが頷いた。
「畑はダメか……適当な場所まで引き付けるぞ」 「了解、スーパースポットライト!」 まずはリファゼルがアンデッドを引き寄せる。 ゆっくりとした動作で、アンデッド達は冒険者達の方へと向かってくる。 冒険者達は村人達がいない空き地へとアンデッド達を引き付ける事に成功した。
「慈悲の聖槍!」 ナオの放つ光の槍がアンデッドを葬っていく。 「達人の一撃!」 周りを気にしながら、ユイリもウェポン・オーバーロードで強化したペトルンカムイで、アンデッドを倒していく。 「ニードルスピアっ!!」 ディグヴァイスの放つ無数の黒き針は、次々とアンデッドを貫いていく。 「ホーミングアロー!」 リファゼルも矢を放ち、アンデッドを倒していく。 「指殺! 未完成っ! ……お前はすでに死んでいる!」 ドクターもその強烈な技で、最後のアンデッドを葬った。
10体のアンデッドは、あっという間に倒されていった。 無理も無い。召還獣や、強烈な技を持つ冒険者の敵ではなかった。 また起き上がらないようにと、丁寧にアンデッド達を埋葬していた。
その働きを見ていた者がいる。 そう、村人達だ。 それに気付いたドクターが村人達の元へと向かう。 「俺は同盟の冒険者、大陸一の外科医ドクター・ケイツ。……戦争が始まる。戦火がここまで及ぶかもしれん。だから避難してくれ」 「嫌だと言ったら?」 村人が尋ねる。その問いにドクターは厳しい顔で答えた。 「ならば村で死ぬか?」 「………」 静かになる村人を見据えながら、静かに続ける。 「村があるから人が居るのではなく、人が居るから村があるのだ。生きていれば村はまた作れる。命を粗末にするな。未来ある子供を巻き込むな。俺は力づくでもお前達を連れて行く!」 そういって、手にしていた武器を輝かせて威嚇をした。 「ちょ、ちょっと、ドクター。抑えて抑えて」 リファゼルが間に入り、威嚇している武器をしまうよう促した。 先ほどのドクターの迫力に、村人達はたじたじになっている。 「ひ、広場の木はどうする?」 その村人の言葉。愚問だといわんばかりにドクターが答えた。 「広場の木なら『挿し木』で持ち出せば良かろう。種も持って行き、育てれば良い。新たな地でもお前達が木を見守り、木がお前達を見守るのだ」 そういって、ドクターは背を向ける。 「……だがな。いずれここに戻れる事を約束しよう。必ずな」 ドクターはそういい残し、また村の周囲の警戒に戻る。 「………」 そんな彼らを村人達は複雑な表情を浮かべながら、見送ったのであった。
●木との別れ そして…… 耐える大地も強いが、そこに住む人達も強い。 生きる強さを持った人達だね。
冒険者達の説得が、村人達を動かした。 最後まで反対していた者たちも、ドクターの言葉が聞いたのか、最後には避難する事に同意した。 いや、それだけではないだろう。 冒険者達のその態度。村人達の事を第一に考え、そして説得を行った、アンデッドを退治した事。 それが、村人達の頑なな心を動かしたのだろう。
そして、挿し木の作業が行われる。 挿し木は村人達の手によって行われた。 もちろん、植物知識のあるユイリだけでなく、ディグヴァイス、ナオらも手伝って、作業は滞りなく終える。 「早くこの木と、村の人達とが再会できますように……」 ナオがそう祈る。 「そうだね。一時だけのお別れになるように、これから頑張らないと、だね」 ユイリがそう、意気込む。 その二人の横で、数々の村人達が木に別れを告げていた。 「次はこれですね?」 別れを告げる横で、ヨハンらが避難する村人達の荷物を、次々と運んでいく。 その間も、ドクター達は常に周囲を警戒していた。 村人達を守るためにと……。
いよいよ、村を後にする時間が来た。 冒険者達が心配していたノスフェラトゥの攻撃はなかった。 鳥アンデッドの視察もなかった。 後は、村人達を安全に新たな地へと導くのみ。 人気の無い広場の木の下で、ナナレは枝が数本無くなった木を見上げた。 「しばらく、この村を守っていてください。お願いします」 「おーい、ナナレ! 出発するよっ!」 ディグヴァイスの声が響く。ナナレはもう一度、木に頭を下げると、仲間と村人達のいる先へと向かった。
遠ざかる村。 ヨハンは遠くに見える広場の木を眺めた。 「いつか、花を満開にしたあの木を見てみたい」 その声に村人達が僅かに笑みを浮かべる。 と、広場の木が風に吹かれて、枝を揺らした。 「見ろ。木が枝を揺らして……まるで手を振っている様じゃないか」 ドクターのその言葉に、冒険者達は、初めて子供達が笑みを浮かべたのを見た。

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参加者:8人
作成日:2006/05/07
得票数:冒険活劇18
ミステリ2
ほのぼの1
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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