あちゃ・おちゃ・ちゃちゃちゃの茶!



<オープニング>


●お前はすでに……アチャ!
 茶畑で暴れている人型モンスターが一体。
 とても危険だ。
 倒さなくてはなるまい。
 だが、なぜだろう?
 側に寄りたくないのだ。
 武器を持っているわけでもないのに……どうしてだろう?
 ツルツル頭が眩しいからか?
 奇妙な叫び声が、頭に響くからか?
 ――いや、予感がするのだ。
 普通の戦いに……真面目な戦いにならない……、そんな予感が。
『ウーワッチャーーーーー!!!』

●死んでいる……ワチャー!!
 毎日のように冒険者の酒場へ持ち込まれる、様々な依頼。
 ヒトの霊査士・ラミュー(a90271)が提示したものも、そんな数ある依頼の内の一つに過ぎない。
 ただ、今回の相手はモンスターだ。
 命の危険が付き纏う、危険な依頼である。
「モンスターは一体。使われなくなった茶畑の中をウロウロ歩き回り、奇妙な叫び声を上げています」
 真剣な表情で、冒険者を見渡す霊査士。
 油断は禁物と言うことか?
「敵は武道家に似た力を持ち、体力、素早さ共に優れています。……さらには、特別な能力をも備えているようです」
「特別な能力?」
「そうです。『紅蓮の咆哮』とでも言うのでしょうか? 奇妙な叫びを放ってくるのです。ただ、その影響を受けるとマヒ以外にも問題が……」
 何やら言い難そうなラミュー。
 冒険者達は、出発の準備を始めながらも首を傾げるばかりだ。
「まぁ、そんなに気にする必要はないですよ。少しばかり口調が変わるだけですから……」
 不安を和らげるかのように、ニッコリ笑って冒険者を送り出す霊査士。
 その笑顔は、……とても不気味であった。

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参加者
黒兎は密かに哂う・ウヅキ(a03612)
グランスティード爆走族・アシャンティ(a14189)
轟音・ザスバ(a19785)
おとぼけモノノケ狐狗狸さん・ミズキ(a36086)
小さな海・ユユ(a39253)
紅紫黒・チェリ(a43838)
雪桜嵐花・アキラ(a46182)
氷炎の黒騎士・カシュー(a47550)


<リプレイ>

●冒険者よ旅立て!
 荒れ果てた荒野……、もとい荒れ果てた茶畑にその恐るべきモンスターは降り立った。
 人の姿は何処にも無く、長き年月による疲弊感だけが畑の中を漂う。今、この茶畑を支配しているのは無法の暴力。弱者はただ踏み躙られ、物言う事も許されない……誰も居ないけど。
 そう――、ここはモンスターの恐怖が重く圧し掛かってくる絶望の茶畑なのだ! このままでは、見放された茶畑に明るい未来などやって来ない。待っているのは、通りがかった一般人がモンスターに殺されるという悲惨な結末だけだ。
 ……誰かが救世主を熱望した。分かり易く言うと、霊査士が冒険者へ協力を求めた。試練に立ち向かうは八名。無論、胸に傷など無い。伝説の勇者でもない。ただ、彼等には勇気と覚悟……、そしてネタを愛する精神があったのだ。
「ラミュー霊査士閣下のご期待に添えるべく! このカシュー、粉骨砕身の覚悟にて挑む所存であります!」
 踵を打ち鳴らし、漆黒の騎士・カシュー(a47550)が示した意気込みは、「閣下って、誰が金髪エルフやねん!」という霊査士の意味不明ツッコミを受けながらも、仲間の気持ちを引き締める素晴らしいものであった。
 おとぼけモノノケ狐狗狸さん・ミズキ(a36086)も指先に気を込め、出発前からやる気十分である。
「同じ武道家の技を使う者として、今回の依頼、必ずや成功させねばなりますまい。待っておりなさい、今決着をつけて差し上げます…!」
 茶畑の敵とは初対面にも拘らず、ミズキは何かの因縁をほのめかす。遠い昔に目を通した書物にでも影響されているのか、モンスターの急所を指で狙おうとするその様は、酷く怪しげであった。

「被害が出ていない内にー…倒さないとー…ですねー…」
 のんびり口調の、狂姫・アキラ(a46182)が荷物を手に立ち上がる頃、その物語は動き出した。巨悪を倒す為、民衆を護る為、全ての愛を取り戻す為に……。
 紅紫黒・チェリ(a43838)も拳を握り締めつつ、楽しそうな笑みを……じゃなくてモンスターの特殊奥義を想像し尻尾を震わせていた。もちろん恐ろしくて――、である。決して『あるなぁ〜ん』とか『あちょなぁ〜ん』とか言いたい訳ではないし、万年貧乏な重騎士・アシャンティ(a14189)が気にしている語尾の変化に興味がある訳でもない。
 カシューは――、そしてチェリはただ言いたいだけなのだ。『ホワチャー!』と、『お前はもう死んでいるなぁ〜ん』――と。
 冒険者が立ち去った後、酒場には微妙な空気が流れた。それでもまだ外からは、天藍石の牙狩人・ユユ(a39253)の楽しそうな声が聞こえてくる。
「あちゃー! あちゃちゃちゃホワッチャー!」
 大丈夫なのだろうか? 誰とは言わないが、霊査士を含めた様々な者達から心配の声が上がる。でも……、まぁ問題なかろう。歴戦のツワモノばかりだし、ミズキの指殺(秘孔突きではないよ♪)もあるし……。何とかなるに違いない!
「ウーワッチャー! ウォター! ワチャー! ホワチャチャチャー!」
 ……たぶんね。

●救世主よ立ち向かえ!
『ホワタッ! ホワタッ! ホワタタター!!』
「………騒がしい……モンスターですね」
 茶畑に響く大音量の叫びを頭の上に通しながら、灼眼の・ウヅキ(a03612)はゆっくりと間合いを詰めていた。まだ、モンスターの攻撃範囲内には入っていないものの、その良く通る叫び声は、影響が無いとは言え五月蝿くて仕方がない、まさに『迷惑な叫び』であった。こんな騒音を撒き散らしていたら、相手がモンスターでなくとも、いつか必ず退治して欲しいとの依頼が舞い込んだことであろう。それほどに、茶畑から隠れ見るツルツル頭のモンスターは耳障りな存在であった。
 ……でもね、当のウヅキも両手に鉄爪付けているし、格闘服を着込んでいるし、邪竜導士のクセに一体何がしたいのか疑問である。
「………気にしたら負けです」
 仲間からの冷たい視線を気にした訳でもないのだろうが、ウヅキがポツリと呟く。そして何を思ったのか、全身に『やる気オーラ』ならぬ黒炎を纏わせ、仲間に鎧聖降臨を求めだしたのだ。
 アシャンティとしては、鎖で繋いだ二つの斧を引きずりながらも、なんとかウヅキの希望通り――妖しげなスリットの入ったどこぞやの民族衣装へと――鎧の形状を変化させてあげるのだが……。
 ちなみに、アシャンティの対斧は鎖鎌ではないらしい。ただ単に『片方だけなくなると困るなぁ〜ん』という理由で、深い意味も、ここで説明する必要もあまり無いのだが、まぁそれはそれ。アシャンティが自らの鎧を強化させ、背中に『鬣と長いヒゲが生えた巨大トカゲ』のマークを浮き上がらせた事と同様、ツッコミ無しである。

「あれがー…今回の敵さんですかー…」
 茶畑の陰に潜み、アキラはのんびりと戦闘準備に入っていた。黒炎を身に纏い、自分なりの気合を入れて、飛び回っているモンスターを見つめる。
「が、頑張らないとー…」
 ……これが気合……、ってかなり不安だ。アキラはもう少し、轟音・ザスバ(a19785)の意味不明な――げふげふっ、……素晴らしい理性をも吹っ飛ばす気性の荒さを見習ったほうが良いだろう。
「ゲァッハッハハッ!! 真の咆哮ってもんを見せてやろうじゃねえか!! グァッハッハハハァ!!」
 隊の一番前で、脳天を激しく光らせながら立ち上がるザスバ。……えーっと、やっぱり見習う必要は無いかな? でも〜、太ももが見える色気たっぷりの民族衣装に、鎧を変化させているチェリを見習えって訳でもないけど……、まぁつまり、雰囲気を大事にすれば何でもアリって事だね。
 後はそう――、モンスターさえ退治出来れば、万事問題無いのであるよ。
「あるあるよそうあるよ、ホワタタタッ! ホワチャー!!」
 ……ちょっぴりユユの暴走が心配だけど。

●ヒトノソリンを踏み潰せ!
『アチョッ! アチョッ! アチョチョチョーー!!』
「グァッハッハハハァ!! もっと掛かって来やがれある!!」
 仲間の盾となるべくモンスターの前に立ち塞がったザスバは、文字通り盾を翳して、襲い来る連続蹴りを受け止めていた。美しい盾が容赦なく蹴り上げられ、それを押さえるザスバの腕にも血管が浮き上がる。さすがモンスターと言ったところか? 囮となって攻撃を受け止めたのがザスバでなければ、今頃治療を必要とする仲間が出ていても、おかしくは無かったかもしれない。
 だが――、何かが妙だ。今回のモンスターは言語障害を及ぼす技を用いるらしいのだが、今のところ使用した気配はない。ならばなぜ、ザスバの口調が――いや、ユユといいアシャンティといい変な喋り方なのだ。おまけに、カシューは自らの鎧を楓華風五月人形に変化させ「なんだかメデタイ」とのたまっているし……。
 これは本当にモンスター退治なのであろうか? 茶畑に隠れていたチェリも太ももを露にした姿で、双眼鏡を巨大剣に持ち替えこっそりと前衛へ進み出ようとしている。加えて後方では――。
「ワチャー! ホワッチャー! あちゃちゃちゃホワッチャー!」
 嬉しそうに楽しそうに、凶悪な棘付きの矢を放つユユの姿が見える。敵の素早さ故に外される場合も多いが、反撃を受けない遠方からの攻撃はモンスターにとって脅威の一言に尽きるであろう。ただ、その口調はいったい何? 元からそんな喋り方だっけ? いやそれより、茶畑の中に隠れているアシャンティに当たらないよう気をつけてね。
 なにやら彼は、モンスターの側まで隠れて近づき、一刀両断にしようと狙っているようだから……。
(「そろそろなぁ〜ん。俺の一撃で倒してやるなぁ〜ん。……なぁっ? ん!?」)
『ホワタッ!!』
 ――何処かでブチっと、血の詰まった肉袋が潰れる音がした。光の軌跡を描いて茶畑の中に振り下ろされたモンスターの片足――、それが何故か真っ赤に、血の色に染まっていたのだ。もしや背を低くして茶畑の中を進んでいた誰かが、鉄をも斬り裂く蹴りの一撃を受け、踏み潰されたのであろうか? 微かにヒトノソリンの呻き声が……、今にも死にそうなほどの弱々しい救難信号が聞こえる。
 ……まっ、そんな事はどうでもイイとして、問題はモンスターだ。ユユの矢を全身に浴び、ザスバの剣撃で肩口を爆砕され、ミズキの蹴りに一歩退いたツルツル頭は、アキラの撃ち放った呪鎖に縛られた状態で、最後の手段に出ようとしていたのだ。
「う、動かないで下さいー…」
 自信無さげなアキラの言葉からも分かるように、最初から長時間の縛鎖には無理があった。故に今、自由となったモンスターは切り札を、身の毛もよだつ雄叫びを、何だか期待に満ち溢れて嬉しそうな――いや、恐怖におののく冒険者達へ打ち放とうとしていた。
 圧倒的な音の力が冒険者の全身から入り込み、身体を、そして言葉を支配する。

●ツルツル頭よ叫べ!
『ユワッッシャーーー!!!』
「グワッ? 身体が動かねえある!」
「あるあるよそうあるよ! 動かないある! でも慌てないあるよホワタタッ!」
「あちょなぁ〜ん? 誰か動ける人は居ないあるかなぁ〜ん? ウヅキも踊ってないで助けて欲しいあるよなぁ〜ん!」
「…チェリさん、これは……ブレードダンスなのネ。……決して……遊んでいた訳ではないアルヨ。――……しまったアル! これだとみんな同じ口調でキャラ被りまくりネ! 図られたネ」
 おいおい、っとツッコミが入る事もなく、チェリ達数名は全身をマヒさせ妙な言葉を口走っていた。ところが、マヒも言語障害も免れているはずのウヅキは、頬についた血を拭いペロッと舐め、「ここから本番アルヨ」と言いながら、全身に刺青を浮き上がらせる有様だ。
 こうなると望みはカシューか? ってあれ?
「…っ…ぅっ…」
 武器を振り落とし、苦悶の表情を浮かべたまま、カシューは蹲っていた。漏れ出てくるのは吐息ばかりで、動き出す気配は無い。でも、なにやら演技臭いのは気のせいか? 奇妙な人形鎧に身を包み、乱れた髪で目元を覆い、必死にマヒを抜け出ようともがいているその姿。――どうやっても、大きな人形がジタバタしているようにしか見えない。
「ホワチャチャチャー! 復活あるよ! ユユが皆を癒すあるよー!」
 真っ先に状態異常から抜け出て、癒しの風を送り出すユユ。その口調は回復しているにも拘らず変なままだが、本人が面白がっている事だし、仲間のマヒも回復出来たみたいだし、別に良いのだろう。
 己の肉体を強化させているチェリも、結構ノリノリみたいだしね。
「思いっきり撃ち込んでやるあるよなぁ〜ん! あちょなぁ〜ん!」
 茶畑の影から飛び出したチェリにより、炎の闘気を秘めた巨大剣が力任せに――、再び『奇妙な叫び』を放とうとしていたモンスターの頭部へと振り下ろされる。
 肉を抉り、骨を砕く鈍い音。生肉が燃え、モンスターの雄叫びならぬ悲鳴が轟く。覚束無い歩みでチェリとの間合いを取り、血で染まった瞳を向けてくるモンスター。荒い呼吸音が茶畑に漂う。
 直後、ザスバが心地よい癒しの風を送ってチェリを癒し、またもや皆の盾となるべくモンスターと相対す。その脇では、ミズキが止めを刺すべく隙を狙い、アキラが万全を期して治癒の光を放っていた。
 そしてもう一人、モンスターの背後から忍び寄る影が……。
「ボクの素早さ舐めないでほしいアル」
 肩に飛び乗り、ツルツル頭を両足で挟んだウヅキは、そのままモンスターを茶畑に叩きつけるつもりだったのかもしれない。だが言うまでもなくウヅキ自身、ストライダーだからと言って敵に勝る敏捷性を持つ訳でもなければ、モンスターの身体を投げ放てるほどの体力を備えている訳でもない。結果としてウヅキは、ツルツル頭に飛び乗った状態で敵に捕らえられていた。
「俺に任せろ! アーーッタタタタタタタタタ、ホワチャー!」
 轟く雷撃と怪しげなカシューの奇声。だがその意味不明な掛け声とは別に、モンスターを刺し貫いた雷の刃は、ウヅキが頭部に纏わり付いていた所為もあってか、見事に半身を切り裂いていた。流れ出る体液が、その負傷の重篤なる様を知らせてくれる。
 モンスターはゆっくりと、ウヅキを支えきれず膝を付き、断末魔の叫びと共にその遺骸を晒すのであった。
『ヒーデーブッー!!』
 ……全てはお約束。無論、モンスターの胸にミズキの指殺の跡があったかどうかは、定かではない。

●戦いよ永遠なれ!
「お、おわったー…」
 最後までのんびり口調のアキラは、崩れゆくモンスターを尻目に――、仁王立ちで「正義は勝つネ」と言い放っているウヅキを横目に、皆の治療へと乗りだしていた。
 茶畑の奥から引っ張り出されるのは、まともに斬鉄蹴を喰らい無残な姿となったアシャンティだ。どうにも彼は、自ら進んで踏まれに行ったような気配が感じられるのだが……。
「…いや、その、面白そうだったから…なぁ〜ん」
 げしげしっ! ――再度、踏みつけられるアシャンティ。尻尾をピクピクさせる彼はいったい何がしたかったのやら、気を失ってしまった今となっては知る由も無い。

 ――『強敵ここに眠る』――
 茶畑の隅に作られた簡素な墓。ユユはその前で、恐るべき能力をもってして冒険者を苦しめたモンスターとの奮闘を思い起こし、感慨に耽っていた。
「強い敵だったあるよ…、ユユとここまでの死闘を繰り広げたのは、20人位あるよ…」
 なぜか口調が改まらないユユ。真剣な表情であるが故に、怪しさ満点だ。ってか20人て多くない?
「今日からお前の事は、強敵と書いて友と呼ぶあるよホワワッチャー!」
 モンスターの居なくなった茶畑に、ユユの奇妙な叫びが――、ツッコミどころ満載の不可思議な宣言が舞い飛ぶ。全ては終わった、勝利をもぎ取り、依頼を成功させる事が出来たのだ。仲間達も治療を終え、お茶を沸かして、一時の休息に身を委ねようとしていた。
 ふと、カシューがお茶を口にする。
「ズズ……あちゃっ」
 ……何も言うまい。ただ日が傾き始めた天空には、見てはいけない星が輝いていた。八つ目の綺麗な星、もちろんその星を見たのはカシューだけ……。
 ――幸運を祈るあるよホワチャー!!


マスター:コトリュウ 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2006/05/08
得票数:ほのぼの1  コメディ20 
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死亡者:なし
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