西方プーカ領を求めて〜獣人と七匹の小人〜



<オープニング>


「皆、今度プーカ方面の方へ行ってみたいと思うんだけど……誰か一緒に来てくれないかな?」
 始まりは幸福の護り手・バニット(a34106)のそんな呼びかけ。
 プーカ領への道を切り拓く事。それは今の同盟にとって重要な案件の一つ。
 未だ見ぬプーカとの道を繋げる為に。幾人もの冒険者が声を上げてくれた。

 旧ソルレオン領南部。海岸に沿うように伸びる街道を進む。
「ん、あれって……」
 やがて、一向は遠めに寂れた漁村を発見し、
「あなた方は……?」
 疑心に満ちた村人の目に迎えられた。

「まさか、こうして来て下さるとは……」
 同盟諸国からやってきたという冒険者の話を信じられないという風に村人は目を見開いた。
「なにか、困っている事はありませんか? ボク達でできる事があれば……」
 バニットがそう名乗りでる。
 困っている事など数多あるが、それでも冒険者に頼む事となれば決まっている。
「実は……、ここからしばらく行った先に此処よりは大きな、町がある……いえ、あったのですが」
 その町にモンスターが住み着いているという。
 様子を見に行った村人の話によれば。猫背な、長大な腕と巨大な爪を持つ不完全な人型をした三メートル程の毛むくじゃらな一体と。その周りを数匹、五〇センチ程の毛むくじゃらな小人がうろついていたそうだ。
「町から出てくる様子は無かったのですが……なにぶん此処から近く不安で、何とかなりませんでしょうか?」
 すがる様な目で見てくる村人にバニットは笑顔で返し、仲間たちに向き直る。
「ボク達の出番だね。気合入れていかないと……!」
 バニットの掛け声に、仲間達はそれぞれに応えた。

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参加者
銀の剣・ヨハン(a21564)
終焉の探求者・ガイヤ(a32280)
緑風に舞う白銀の羽根・フェニール(a33093)
終焉を綴る少女・テルミエール(a33671)
幸福の護り手・バニット(a34106)
守護の剣・ジーン(a34701)
黎旦の背徳者・ディオ(a35238)
笑顔のヒーロー・リュウ(a36407)


<リプレイ>

●廃墟と化した町で
 村で得た情報を頼りに街道を進む暫く。冒険者達の視界にそれは入ってきた。
 高さ一メートル程の石壁に囲まれた町。見える家々はほぼ無傷に見えたが、良く見れば所々が崩れ、破損している。まるで鋭い爪で砕かれたように……。
 人の気配は感じられなかった。
「では、インセクト出しますね」
 石壁が崩れた場所を見つけ、緑風に舞う白銀の羽根・フェニール(a33093)は早速一摘みの塩に自身の生気を分け与える。
 途端生み出されたのは体長一メートル五〇センチほどの、蟲のような足を持つクリスタルだ。
「本当は東西南北、一辺に四方へ送れればいいのですけどね……」
 一度に動かせるのは一体限り、意識を集中していないインセクトは自動的に雑音形態となってしまうので偵察には使えないのだ。
「出来る限り速やかに行いところだが……確実にやるなら待つしかあるまい」
 苦笑を浮べるフェニールに深黒の浮気者・ガイヤ(a32280)は答える。
 多少時間が掛かっても確実に。少なくとも今回は慎重に超した事は無いのだし。

「この町の荒廃も……あの敗北が招いた事なのだな」
 索敵に徹するフェニールを待つ間、町の様子を眺めていたガイヤは僅かに表情を歪め呟いた。
 レルヴァ大遠征での敗北の結果。こうしてその様子を見ると改めて思うものもある。だが、今は懺悔するよりも、
「助けを求める誰かの為に、自分達に出来る事、一歩一歩進む事。守れなかった誰かの為に、出来る限りを尽くす事、弔いの歌を捧げる事」
 まるで歌うように言う終焉の医術士・テルミエール(a33671)。ガイヤは視線だけを向けた。
「私は、それが大事なんだと思います」
「意思無き荒ぶる魂を鎮め、この地に安全を取り戻す事。それがこの地を守っていたソルレオンの願いだと私は思います」
 町に視線を向けたまま、銀の剣・ヨハン(a21564)は決意を瞳に宿し呟く。
「分かっている。どちらにしろ、まずは住民の不安を取り除かんとな」
 ガイヤは再び視線を町へと向ける。その顔に、もはや迷いは無かった。

 一〇分後。南に向けたインセクトで何も発見できなかったフェニールが、次いで召喚したインセクトを西へと向ける。
 その様子を見ていた黎旦の背徳者・ディオ(a35238)は地面に半分ほど埋もれた岩の上に飛び乗り町の様子を伺い始めた。
「どうしました?」
 それまでストレッチで体を温めていた幸福の護り手・バニット(a34106)が問いかける。
 ディオはチラッとだけ見遣ると、直ぐに町の方に顔を向け、
「相手は猫背でも三メートルだろ? 少しは見えてもいいんじゃないかと思ってな……」
 素っ気無く答えた。
「そうですか」
「バニットは?」
「あはは……、モンスター戦は初めてで落ち着かないので」
 照れたように笑い、屈伸をするバニットに「ふ〜ん……」と素っ気無くディオは反す。と、その時、
「居ました……!」
 フェニールが敵発見の報をもたらした。
「下僕の数は?」
「え〜と、七です」
 ヨハンの問いに間をあけて答えた。どうやら全ての下僕が集まって行動しているようだ。
「行こう。この戦を、明日への一歩とする為に」
 立ち上がり剣を抜く守護の剣・ジーン(a34701)に皆も頷く。
「レルヴァには色々置いて来てるんだ。少しでも早く戻れるように頑張らないとね」
「それにプーカさん達も心配ですしね。インセクトは……ぶつけますね」
 笑顔の剣士・リュウ(a36407)の差し出した手を取りフェニールは立ち上がる。
 インセクトはモンスターへ向けた。足止めにはなるだろう。
 フェニールの案内に従い、冒険者達は荒れた町へ突入した。

●獣人と七匹の小人
「この先ですか?」
 ヨハンの問い掛けに、隣のフェニールが頷いて返す。
 廃屋の影から様子を伺えば確かに気配がする。どうやらインセクトは既に倒されてしまったようだが……。
「……よし」
 ジーンは一人頷くと、自身に聖鎧降臨を施す。
「皆にも掛ける。幸い、時間はあるようだからな」
 直ぐ傍にモンスターの気配を感じながら、一同は戦闘の準備を行う。
 ガイヤは邪竜の力を内に宿し黒炎を纏う。
 リュウ、ヨハンはウェポンオーバーロードを己が得物の威力を高める。
 程なく全員に聖鎧降臨が施され事前の準備は整う。一同は互いに目配せすると、一斉に飛び出した!

「参ります」
 戦闘を行くヨハンの声に毛むくじゃらのモンスターが反応した。
 その毛に覆われた瞳で白銀の騎士の姿を、その後ろから出てくる七人の冒険者の姿を映す。
 取り巻いていた下僕は本体以上に素早く反応し、冒険者に向けて駆けて来た!
「踊りなさい、雑魚クン達」
 ディオが立ち止まり杖を構える。ガイヤ、フェニールがその横に並び、僅かに前にテルミエール。
 フェニールの眼前に描かれるのは光の紋章。そこから無数の光条が放たれる!
 さらにあわせて放たれる三人分のニードルスピア。数多の針が密集していた下僕を纏めて射抜く!
「私がお相手いたしましょう」
「来い! 俺達が相手だ!」
 針と光線の雨の後は眩い光。下僕の注意はヨハンとリュウへと向いた。
 敵を認め奇声を上げる下僕。その間を抜けジーンは一気に獣人との間を詰める。
「ウォォオォン!!」
 迎撃せんと右の腕を振るう獣人。せいぜい二メートル程しかなかった腕は鞭のようにしなり、数倍に伸びてジーンの肩を叩く!
「チッ、ウォォオォ!!」
 肩に走る痛みを無視して走るジーンは、獣人の左腕を掴む。獣人に負けぬ咆哮を上げ、力任せにその体を振り回し、放り投げた!
 半身から地面に叩き付けられる獣人。素早く体勢を整え立ち上がった時には至近にバニットの剣先があった。
「これが決まれば、どんな相手だって……っ!」
 幻惑の薔薇を纏い、剣戟が獣人を斬りさく。続いて二撃……剣が振るわれるたびに舞う薔薇。が、三撃目にして獣人の爪が剣先を止めた。
「クッ!?」
 そのまま剣で爪を弾き、その勢いで後退するバニット。
 獣人の毛の間から見える赤い瞳が、バニットを殺意で射抜く。

 先制の術者による範囲攻撃に晒されて倒れた下僕は三体。存外に下僕はしぶとかった。
 近距離、中距離から放たれる鋭利な爪による突き。
 それを剣と盾で捌き、ヨハンは流るる水の如く剣を薙ぎ、不用意に近付いていた下僕を纏めて斬る。
 二体が崩れ落ちる。その後ろから別の下僕の腕が伸びてきた。
「クッ!」
 慌てて盾を構えるが間に合わない……! と、
「ギャァァアァ!?」
 下僕の腕が引っ込んだ。ガイヤのデモニックフレイムが下僕を飲み込んだのだ。
 下僕を内に取り込んだ黒炎は、まるで生き物のようにうねり、その形を徐々に変え、
「ん、上手くいったようだな」
 満足気に呟くガイヤの忠実なる下僕のクローンと変化した。
 仲間の異変に動揺したか動きを止める最後の一体。その背をリュウの剣が切り裂く!
「今なら……!」
 最後の力で体を支える下僕。その身をディオの生み出した黒炎の顎が噛み砕き、
「フフ、上手く行ったもんだね。さぁ、雑魚クン達……君達の元親分を攻撃したまえ」
 生まれた忠実なる下僕クローンに、ディオは楽しげに指示を下した。

 繰り出される鋭利な爪が鎧を掠め火花を散らす。軽くは無い衝撃を歯を食いしばり耐え、ジーンの剣が獣人を斬リつけた。
 その間に獣人の背後に回りこんだバニットは何回目かの薔薇の剣戟を打ち込む! が、今度は一撃目で、
「ッ!?」
 真横に薙ぎ払われた爪に後退を余儀なくされた。
 長い毛を真っ赤に染め、怒り狂う獣人は吼え、バニットへと迫る!
「バニット! 後ろだ!!」
 ジーンの警告。僅かに振り返ったその目に映ったのは二匹の下僕。……そして、仲間の姿だった。
 下僕はバニットの前に出て爪を己が主に、いや元主へと突き立てる!
「グウォゥォ!?」
 困惑の声を上げる獣人。狙いも無く振り回した腕が下僕クローンを弾き飛ばす。
 その腕を掻い潜り、間合いを詰めた二人の武人、稲妻の闘気宿したる、
「吠えろ! ダークソウル!」
 リュウの剣が右肩から左腰に、
「そろそろ沈みなさい!」
 ヨハンの剣が左肩から右腰に掛けて走り、十字の傷を刻み込む。
「これで、終わりとしよう……!」
 ジーンの頭上に生まれる大きな守りの天使、その力を剣に込め、獣人の頭部へと叩き込む!
「ガッ……」
 短い悲鳴。それを最後に、獣人はゆっくりと大の字に倒れた。
「終った……のでしょうか?」
 構えを解かないバニット。その隣で、リュウは天を仰ぐ。
「ふぅ、これでまた一歩あの地に近づけたかな?」
 リュウの顔を見るバニット。リュウはそんなバニットに笑顔を向け、
「お疲れ様。大丈夫?」
 戦いの終わりを告げた。
 フェニールとテルミエールのヒーリングウェーブが広がり全員の傷を癒していく。
 冒険者達はその暖かさに一時、浸るのだった。

●かつての守護者よ安らかに
 町よりやや離れた場所にあった丘。
 今そこに、冒険者達の総意により簡素な墓が作られていた。

『己が使命を果たした勇敢なる戦士、ここに眠る……』

 バニットがそう刻み込んだ墓標、テルミエールが摘み集めた小さな花。
 それらを前に冒険者達は祈る。
「もしかしたら彼は、この町を護る冒険者だったのかもしれないね……」
「きっとそうなんでしょう。そして守るべき者を滅ぼした後も……町を守る為に残った」
 バニットの言葉に頷き、テルミエールは瞳を瞑る。かつての守護に生きたであろう者を思い。
「守るべき物を壊しながらか。……こんなこと、したくなどなかっただろうにな……」
 ジーンは墓標を撫でる。一時は肩を並べた仲間を思い。
「無念でしたでしょう。……お疲れ様でした。どうぞ、安らかにお眠り下さい」
「無念は必ず晴らすからね」
 フェニール、そしてリュウの祈りに応えるように、春の柔らかな風が駆け抜けていった。

「……さて、村の方々に報告に参りましょう。安心して頂きませんと」
 遠く西方を眺めていたヨハンがそう告げた。
 確かに、いつまでもここにいる訳には行かない。
 待つ人が居るのだ。今はその人達の為に動こう。
 最後に深い祈りを捧げ、名残惜しそうに冒険者達は村への道へ付く。
「他の敵と遭遇する可能性が無い訳ではないからな。少し町の様子を見て行きたい所だが……ん? どうしんたディオ?」
「……ちょっとな」
 ガイヤが足を止めたディオに首を傾げる。彼女の視線は簡素な墓へと向けられていた。
 それが、かつては他のソルレオンに違わす勇猛な冒険者であったあろう者の終焉の居。
「(下手をしてしまったら、私達もあぁなるそうだろうか?)」
 思わず顔を顰める。なんとも嫌な未来図だ。
「ディオさん?」
 今度はバニットが呼びかける。振り返れば七人の仲間が一様にディオを待っていた。
「……いや、プーカ領はまだまだ遠いな……てな」
 肩を竦めディオは仲間達の元へと足を向けた。
 歩き出す。と、今度はテルミエールが突然墓へ振り返り頭を下げた。
「どうしたのです?」
 驚くジーンにテルミエールは微笑みだけで返し、首を傾げるジーンを置いて歩き出す。
――いつか町が蘇った時は、そこから見守ってあげてくださいね
 テルミエールの願いに、春風が応えてながれた。


マスター:皇弾 紹介ページ
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