≪【CLOVERS CAFE】≫初夏の高原の記録



   


<オープニング>


「と言うわけで、『初夏の高原でオープンエアな出張カフェ』なのです!」
 深雪の優艶・フラジィル(a90222)が端的過ぎて情緒に欠ける宣言をした。
 暦の上でも春と夏の間に差し掛かるこの季節に、高原のとある村では花祭りを行うらしい。空気が美味しい緑の草原に咲き誇る可憐な野の花を見て、冷えて気持ちの良い綺麗な小川に足を浸し、涼しい夜には近い星空を見上げて一日を楽しむ。村も多くの人々に高原の素晴らしさを知って欲しいと願い、日が暮れれば毎年夜店を出していた。
 しかし、昼の間から焼きそばの香りを漂わせるわけにも行かず、草原が最も初夏らしく輝く日中に一体何をすれば良いのかと考えた挙句、【CLOVERS CAFE】に御鉢が回って来たと言うわけだ。爽やかな風が吹き抜ける草原で、一日限りの出張カフェを行いたいと思いますと軽やかに跳ねる靴音・リューシャ(a06839)が微笑んで告げる。
 団員たちは大喜びで、美しい草原へのお出掛けを心待ちに準備を始めるのだった。

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参加者
白碧の微睡・ルフィーティア(a04088)
軽やかに跳ねる靴音・リューシャ(a06839)
凪影・ナギ(a08272)
草露白・ケネス(a11757)
蜜星の讃美歌・ルーツァ(a14434)
詩歌いは残月の下謳う・ユリアス(a23855)
澄天の花瓣・フィオラ(a35780)
海天藍・エルヴィーネ(a36360)
宵藍・リュー(a36901)
黒猫同盟幹部会員・ファイ(a37110)
冰綴の蝶・ユズリア(a41644)
桃華の歌姫・アユナ(a45615)
南風の雲・ユー(a45791)
高潔なる椿姫・ヒメコ(a46428)
華を護りし盟誓の剣・アルファネス(a46431)
貧乏生活の清涼剤・ラナ(a46527)
NPC:深雪の優艶・フラジィル(a90222)



<リプレイ>

●緑薫る高原で
 旅団の面々は朝早くからカフェの設営に大忙しだ。
 幸運なことに本日は晴天。軽やかに跳ねる靴音・リューシャ(a06839)は心が弾むのを感じながら、材料の買い出しを行った。小さな村は出張カフェをとても歓迎してくれており、良い品を多く手に入れることが出来る。気付けば自然と買い過ぎてしまい、荷物持ちを買って出てくれた草露白・ケネス(a11757)の両腕を圧迫することになった。
 大量の食材が厨房に届くと、裏方として働く面々の作業が本格的に始められる。其の間にもリューシャはケネスや凪し夕影・ナギ(a08272)ら男手の手伝いを受けて、カフェの設営を始めるのだった。白いテーブルとチェアを並べ、陽射しを和らげるようにとパラソルを設置する。爽やかな風が草原を吹き抜けた。美しい緑が眩しく、ケネスは心が澄み渡るのを感じる。
 草原には花と草と空しか無いけれど、そんな自然も何処か懐かしくてナギにはとても好ましく思えた。いそいそ白いエプロンをつけ始めた深雪の優艶・フラジィル(a90222)に声を掛けると、にっこり笑顔で「ジルもナギさんも、皆一緒に満喫しましょうです」と返される。一頻りカフェの準備が出来た頃には高原に観光客が増え始め、可愛らしいカフェは開店と同時に注目を集めた。

 いらっしゃいませ、と可愛らしく落ち着いた緑の制服を靡かせ店員たちは接客に勤しむ。
 空気が美味しくて空も綺麗で、訪れる人々も皆笑顔だから、蒼穹の光華・フィオラ(a35780)の頬は勝手に緩んでしまって仕方なかった。普段よりも楽しく躍る気持ちで、ラベンダーの香る蜂蜜檸檬に、生搾りのオレンジジュースをテーブルに置く。
「爽やかな風の中で、素敵な一時を御過ごし下さい」
 フィオラの笑顔に釣られたように、高原へ遊びに来た少女たちが微笑み返す。乾いた軽い風がとても涼しくて、太陽の優しい光が優しくて、時折はフィオラも接客の手を止め風に舞う白い花弁を見た。
 特に午前中からお昼時に掛けては甘いものよりも、昼食代わりになるような品が人気だった。特に白碧の微睡・ルフィーティア(a04088)が作ったサンドイッチは好評だ。狐色の熱々パンには、クローバー型の焼き目が入れられている。挟んだ具も卵やチーズなど、食欲をそそるものばかり。とろりと溶けたチーズが堪らないと男女問わずに大人気だ。更にルフィーティアが用意して来たキッシュも、焼き上がると同時に売り切れてしまう盛況振りである。しっとりと焼けた生地に包まれた、人参やキャベツなど高原で育つ瑞々しい採れたての野菜の甘さが人々の心を捕らえて離さない。
 ケネスも団長が指示したドルチェを、出来るだけ可愛らしく女性が好むよう飾り付けながら、タンドリーチキンのトーストサンド等の軽食類も準備している。厨房から漂う食欲をそそる香りが、ますます人を呼び込みカフェはあっと言う間に満席になった。

●青い空と白い雲を仰ぎ
 宵闇の蝶・ユズリア(a41644)は時折、手早く仕事を続ける誰かに見惚れた様子でぼんやり視線を泳がせる。其のたび手が疎かになり、気付いて顔を赤らめるたび更に調理が中断されるが、彼女も一生懸命になってケーキを作っていた。今は軽食の類が多く注文されるけれど、日が傾き始めれば甘いものが求められ始める筈。彼女はチェリーを使って作られたキルシュ酒で風味をつける焼き菓子を作っていた。キルシュトルテのレシピは数あるけれど、其の中でも上から存分に削ったチョコレートを散らして飾り付けるタイプのものを選んでいる。
 てきぱきと動く皆を見て、桃華の歌姫・アユナ(a45615)は小さく「凄いね」と囁いた。彼女に誘われた高潔なる椿姫・ヒメコ(a46428)も、小さく頷く。カフェで働き出して間も無い二人は、今日の機会に皆の働く様子を見学して勉強しようと考えたのだ。勿論、御客が沢山入った店内でうろうろすることは出来ないから、美味しそうな香りで満ちた厨房を行き来しては、感心に溜息を洩らす。
 自分も何時かは皆と同じように働けるだろうか、と少し不安になりながらも焼き上がっていくケーキの類を見、ごくりと唾を飲み込んだ。きっと味見したいと言えば優しい皆のことだから、親切に切り分けて食べさせてくれるのだろうけれど、忙しい最中に声を掛けることが躊躇われてしまう。おろおろとしている間に気付けばヒメコと逸れてしまったのに、アユナは未だ気付いていなかった。
 着慣れぬスカートを摘まむヒメコは少し恥ずかしそうで、けれどほんのり嬉しげだった。が、顔を上げるとアユナの姿が見えないことに気付く。所在無さげにきょろきょろと辺りを見渡す彼女に目敏く気付き、華を護りし盟誓の剣・アルファネス(a46431)が近付いて来る。穏やかな口調で丁寧に、御嬢様は御仕事など為さらずごゆっくり御過ごし下さいませ、と微笑を見せた。
「もう、アルったら」
 自分だって店員なのだからとヒメコは唇を尖らせるも、直後、ぐぅ、と自己主張する胃。
 顔を赤らめる彼女にアルファネスは微笑したまま、否、心成しか笑みを深めて、客足の落ち着いた頃にはいつものように御嬢様の為の紅茶を淹れさせて下さいませと囁いた。御茶と空腹を癒すものを頂きながらゆっくりと寛いで貰えればと思いながら、彼は慣れた仕草で紅茶を淹れ、ティーセット一式を白いテーブルへと運んで行く。太陽が真上に来る頃に、冷たい飲み物の注文が増え始めた。

●涼やかな小川のせせらぎを聞き
 昼を過ぎると息を吐く暇も無い裏方作業がひと段落する。次は「おやつの時間」の前から人が入り始め、恐らく本日一番の盛況となるだろう。短い間に休息を取るべく、ナギは川原へ遣って来ていた。駈けだしエンジェル・ファイ(a37110)と南風の雲・ユー(a45791)が水を掛け合いながらじゃれているのを見、ナギは「よお」と声を掛ける。
 未だ水も冷たいだろうが、天気が良いせいか寒くも無さそうだ。ナギは二人と歓談しながら、水に足をつけて寛いだ。立ち続けて張った足を、ひんやりとした水が癒してくれる。疲労感が心地良い日と言うのは何と貴重なものだろうかと、彼はひとり笑みを零した。
 散歩道の傍には、宵藍・リュー(a36901)が立っている。良く使いこまれた愛用のヴァイオリンを奏で、涼やかな草原に優雅な音色を響かせた。人々は何が始められたかと彼を注視する。
 彼の横には、リューシャが用意してくれた菓子類をプレートに載せて持つフラジィルが居た。バニラビーンズたっぷりのプリンと季節のフルーツ盛り合わせ、ライムとミントの風味が利いたシフォンケーキ、そしてリューが考案した花弁入りのアイスクリーム。其々試食用に少しずつ皿に載せて運んで来た。高原を味わっていた人々も気を惹かれ、試食を始めるのに合わせてリューが言う。
「柔らかな風とともに、初夏の香りを運んでまいりました。此方のメニューはあちらのカフェのメニューですので、御気に召しましたら皆様御誘い合わせの上、如何でしょうか」
「(す、素敵ですわ〜……)」
 物陰からこっそりと覗いていた海天藍・エルヴィーネ(a36360)は、グネグネと身を捩じらせた。本人が目の前に居るわけでは無いが、其処は其れ、乙女心と言う奴でデレデレが止まらない。せめて怪しい人物と思われないよう気配を消して物陰に隠れたが、気付かれた場合最もフォローがし難い状況であることに、エルヴィーネは未だ気付いていなかった。
「リューさんが優しいスマイルで試食のアイスを配られるなんて……高原の女性が全員陥落してしまいますわっ! 寧ろ全部、私が頂いてしまいたい……ヴァイオリンが似合い過ぎですの!」
 ぐにょぐにょしている彼女の声が徐々に大きくなって来ている。
 聞こえたわけでも無いのだが、何か感じたようにリューはきょろきょろと辺りを見回した。人々をカフェまで案内すると、彼は高原の「音」を探しにひとり草の海へと歩き始める。彼の背が遠く消えるまで見詰め続けていたエルヴィーネは、気合も新たに次のターゲットを探し始めた。

●咲く冷えた花に目を細め
 折角の天気ですからまずは楽しんで来て下さい、と笑顔のアルファネスに見送られアユナとヒメコは草原に出た。咲き誇る花々は評判以上に美しく思えて、風の運ぶ甘い香りが気疲れを綺麗に癒してくれる。アユナは上機嫌に鼻歌を歌いながら、今ある幸せを噛み締めるように目を閉じた。
 小川の傍の樹に背を預け、普段通りにハーモニカを吹いていた木陰に眠る詩唄い・ユリアス(a23855)は、視界に映った知人の姿に顔を上げる。びゅうと冷えた風が吹き、彼の金髪を靡かせた。
「ルーツァさん、何してるんですか?」
 声を掛けられた翳らぬ蜜星の讃美歌・ルーツァ(a14434)は、ユリアスさんですのね、と驚いた様子で笑顔を見せながら摘んだ花々を差し出して見せる。折角綺麗な花なのだからカフェに飾ろうと摘んでいたと話を聞いて、手持ち無沙汰になりつつあったユリアスは手伝いを買って出る。喜ぶ彼女を見ていたら、手伝えと言うのはやはり啓示だったのかと妙にしみじみした。
 白い可憐な花を選んで摘んで、緑の草原に白い花なんてカフェの制服のようとルーツァは唇を綻ばせた。大自然の中、時折吹く風はとても心地良くて、舞う花弁が美しくけれど何処か儚くて、今が愛しく過去が愛しく未来が愛しく、幸福過ぎるように感じられて胸が騒ぐ。昔、花の蜜を吸おうとして父親に止められたことを思い出し、白い花に口付けてみる。直ぐ、甘いような苦いような不思議な味に目を瞬いた。蝶や蜂にとっては最上のものかと思うと頬が緩む。
 横を見ると、何故かノソリンが居た。
「なぁ〜ん、なぁ〜ん」
 寂しげに鳴くノソリンの緑の耳には見覚えがある。貧乏生活の清涼剤・ラナ(a46527)らしい。
 最近何かと忙しく感じていた彼女は、気持ちの良い緑の上にごろごろと寝転がり初夏の高原を満喫していた。ラナは綺麗な小川の傍で休息を楽しみ、うとうと居眠りもした。そして、とうとう耐え切れない空腹により目が覚めたのである。もう昼過ぎだと言うのに何も食べていないのだから当然かも知れない。
 ぐうぐうとおなかを鳴らすノソリンを前に、ルーツァとユリアスは顔を見合わせる。結局、カフェに戻れば食べ物は必ずあると言うことで、三人は仲良くカフェへと向かうのだった。

●暖かな紅茶を注いで
 漸く数の減った御客様たちに、リューシャはメニューの説明をしていた。。季節柄なのかやはり苺は人気があって、苺尽くしパフェはあっと言う間に売り切れてしまった。暖かな午後と言うこともあり、アイスストロベリーラテも同様の大人気である。ルフィーティアが作ったベリー尽くしのタルトを指し、ミントの葉を添えたデザートなのでミントティーとセットで頂くと尚美味しいと勧めもする。
 今度高原を訪れる時には素敵な殿方と二人切りで、なんて妄想の翼を広げていたエルヴィーネは「大丈夫ですか?」と心配そうなケネスの声で我に返った。彼女はフィオラに御願いして催促して、スイーツを彼が持って来てくれるように何とかして貰ったのだ。働く御姿も素敵と頬を染める彼女の前へケネスは紳士的にケーキを並べる。見ればワゴンの上にはメニューに載っていないタルトがあるでは無いか。
「も、もしかして! ケネスさんたら、特別に!?」
「ええ、ジルさんにと思いまして」
 にこり、と紳士的な笑み。
「……相変わらずつれないですのね……!」
 涙を拭いつつ、エルヴィーネはケーキを食べた。上品な甘さがとても美味しい。

 以前「今度は俺が御持て成しします」と紡いだ約束を果たそうと、ケネスは特別に用意したアイスロイヤルミルクティーと完熟マンゴーのタルトを運んで来る。フラジィルは目を輝かせて大喜びし、一口頂いて更に大喜びした。夏らしいワンピースも可愛くてとても似合っている、と彼が微笑むと「大事にしますからね」と彼女は此れ以上は笑えないだろうというくらいに満面の笑みを浮かべる。
 日が暮れ始めるとオープンエアのカフェからは客が消えた。問題無くカフェの特別な一日が過ぎたことに安堵して、店員たちは漸く肩の力を抜く。リューシャが気を抜いたのを見計らって、ユズリアは後ろから彼女を脅かした。驚いて悲鳴を上げる彼女をユズリアは無表情に見遣って「驚いたか?」と問う。混乱しているリューシャの肩を「御疲れ様」と軽く叩いてユズリアは片付けを再開した。ユズリアなりに色々と考えての行動なのだが、気にしていると彼女に通じては恐縮させてしまうだろうし、不思議に思われるくらいで丁度良いのだろうと思う。
 東の空に煌き始めた星を見遣る団長に、フィオラは微笑んでオリジナルのブレンドティーを差し出した。ハイビスカスとローズヒップスの香りが優しく身体に染み込んで行く。表で働き詰めだった団員たちと、裏方で働き詰めだった団員たちは、美味しい紅茶を頂きながら今日、楽しく過ごしたカフェの一日を振り返る。
「素敵なカフェに幸あれ……です」
 夜に瞬く星を見上げて、ルフィーティアが微笑んだ。


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