砂山の王様



<オープニング>


 ひなびた村といっては可哀想か?
 村名をウィダリーという、よくあるような田舎の村だったが一つだけ珍しいものがあった。
 山だ。
 村の奥にあるイズと呼ばれる山だ。
 それは大きな山だったが信仰の対象にはなっていなかった。
 なぜかといえば遠望すると荒廃した印象を与えられるから。
 すなわち岩山だから。
 生き物の少ない山だった。
 そこに現れた者があった。
 これもまた歓迎されないものだった。
 犬グドンである。
 それほど多くはない様子だった。
 具体的にいえば二十五匹ほどの犬グドンが群れを成している。
 ただ問題はといえば山の上に陣取っているということだ。
 この岩山はかなりけわしい上に足場が悪い。そのために上にいるというだけで相当の優位に立っているということになる。
 さらに足場が悪ければ武闘家などは不利になりやすいし、剣なんかも扱いが難しくなるだろう。
 軽快さが失われることもある。
 結果的に何も考えていない犬グドンよりもこちらのほうが不利が大きくなってしまった。

「そんなに大変な仕事というわけでは無いんですけどね」
 冒険者の酒場で、誰に目を合わせるでもなく、エルフの霊査士・ハクマは語りかける。
 農村ウィダリーからの依頼というのは、山に棲みついた犬グドンを退治して欲しいということだった。
「ウィダリーの井戸は山のふもとにあるので、水を汲みに行くたびに村の人たちは不安がっています」
 今のところは井戸が荒らされたということはないが、このまま放っておけばどうなるのか分からない。
 その前に追い払ってほしいと思うのは村民として当然だろう。
「問題は地形のことだけですね。グドンの数は多くないですから」
 ハクマの話を聞くと、退治する犬グドンは三十匹に満たないようだ。
 ただ岩山全てではないがこの山は足場が悪く、武闘家や翔剣士など足を取られる可能性がある。ほかの職種の中にも似たような問題を抱えていることがある。
 大した問題ではないかもしれないが、多少は気をつけておかなければならないだろう。
「それではお願いしますね」
 最後にハクマはぺこりと頭を下げた。

マスターからのコメントを見る

参加者
緑星の戦士・アリュナス(a05791)
紫の翼・レミリア(a26506)
蒼穹貫く闇色の剣・レイ(a38500)
一生紫を愛す司書・コハク(a39685)
奔放な躁風・アムリス(a47329)
怪獣王使い・ラウル(a47393)
紫眼の緑鱗・ボルチュ(a47504)



<リプレイ>

●遁走劇の始まり終わり
 イズの山は岩に覆われている。
 その山に何でだか棲みついたグドンたちはおなかが減っているだろう。
 そんなグドンたちを偵察している存在がいた。予想通りだろう、冒険者たちである。
「全てのグドンがここに集まっているようじゃな」
 索敵をし終えた、猫を愛でる司書・コハク(a39685)が戻って報告をした。
「あぁ、そうみたいだな」
 駆け抜ける疾風・ラウル(a47393)は遠眼鏡で辺りの状況を確認をしてから同調した。
 それを聞いた冒険者たちは、首を縦に振ると無言で行動を開始する。
 今回の作戦で囮となる、蒼穹貫く闇色の剣・レイ(a38500)、コハク、ラウルの三人が他の四人に先がけて動きだした。誘き寄せる為に小道具も用意しているようだ。
 もう一方の四人は岩陰に隠れて、前に動いていった三人の動きを待っていた。
 今回は岩山ということで足場があまりよくない。無鉄砲で無謀な闘争心をもつグドンだが、その押しの強さが生かされやすい地形といえる。自らを省みないことがプラスになりやすい場所なのだ。
 冒険者たちが考えたのは自分たち七人を三人と四人に分けて、先に動きだした三人に犬グドンたちを引きつけておく。その三人が少しずつ下がっていって、犬グドンたちも釣られて下がってきた所で隠れていた四人が背後を衝くといった戦法をとることにした。
 そして引きつけ役の三人がさっきのレイ、コハク、ラウルというわけだ。
 ゆっくりとグドンの群れに近づく三人。慎重に歩を進めていく。
 少しづつ、空気が重くなる。
 たかがグドン三十匹弱だが、最大限の力を発揮するための環境と精神を整えているのだ。
 もちろん目線の先には常にグドンの群れがある。
 そしてグドンの一体に気付かれたかという時、レイとコハクとラウルの三人は行動を開始した。
「来い。前に来た奴から倒してやろう」
 グドンたちはレイの声に顔を向ける。同時にあるものを認識する。
 肉とかおでんとかの食べ物を、である。冒険者たちが用意してきた食べものだ。人間は二番目だ。
「わしのことも忘れてもらっては困るのぅ」
 なのでコハクがスーパースポットライトを使って再度グドンたちの注意を引いた。
 ……。
 グドン全員が気付いたのを確認した。
 そして最初はゆっくりと、徐々にスピードを上げて後退を始めた。
 
「馬鹿となんとかは高いところに登りたがるって言うけど……分かりやすい連中だね」
 紫の翼・レミリア(a26506)。グドンたちを見ての言葉だ。
 蔑みといった類の物ではない。幾つもの冒険依頼を受けてきた彼女の実感なのだろう。
「そうですね。ただ油断は禁物です」
 碧の異邦人・アリュナス(a05791)の気配は薄い。ハイドインシャドウを使っているからだ。
 レミリアはこくりと頷いた。よく見てみればレミリアの気配も同じように希薄になっている。
「きっと大丈夫よぉ。ここのグドンたちはお腹へってそうだしぃ」
 この言葉、単に楽天的なのではなく作戦の成功を信じつつ失敗した時の対応も考えているのだろう。その言葉の主、白銀の癒し手・アムリス(a47329)もやはりハイドインシャドウを使っている。
「しっ、来ました!」
 そしてもう一人。紫眼の緑鱗・ボルチュ(a47504)は違う方法をとった。辺りの岩と似た色合いの服を着て地面に伏して身を隠す。照り返しを防ぐように泥を塗ったりという工夫もしている。
 岩陰に隠れた四人はひっそりと待っていた。
 先に行った三人がグドンたちを下に誘き寄せてきている。それを姿を隠してやり過ごし挟撃しようというのだ。
 ……。
 レイコハクラウルの三人は犬グドンたちに追いつかれてはいたが、上手く足どめをしながら誘い出しているようだった。
 本格的な戦闘はせずに、少しずつ後退し続けている。
 そして隠れていた四人が最後尾についた時に状況が変化した。
 戦闘が始まった。

●戦う者の強さと弱さ
 淡く光る蝶が飛び、陽炎のような煌きをして消えていく。ボルチュの放った舞飛ぶ胡蝶の効果だ。グドンたちの一部がこのアビリティの効果で混乱状態になった。
「分断成功です」
「紅い風の抱擁から逃げる術は無いよ」
 次いで混乱状態のままのグドンにレミリアがソニックウェーブを飛ばす。
 衝撃の波を受けたグドンは弾かれるように転げていった。更に転げてきたグドンにぶつかって連鎖的に倒れていくグドンもいる。
「一気にやっちゃうわよぉ」
 そんなグドンたちにアムリスの放ったニードルスピアが追撃となる。混乱などの影響によってグドンたちが分散していたので効果は絶大となった。
 ステータスの混乱に奇襲による混乱状態も加わる。それは指揮系統の殆どないグドンたちにも効果的だった。こうなればもう場所の不利なぞはそれほど大きな要因とはならない。グドンたちにも足場の不自由さのみを感じさせることになる。状況の変化を把握できないまま、足をとられて動きのとれないグドンもいた。
 そんなグドンを視界に収めつつ、これから更なる乱戦となるだろうので、アリュナスはウェポン・オーバーロードを己の武器に付与してから攻撃を繰り出す。
「残念だがもう負けるなぞありえない!」
 場の状況は冒険者たちに流れていた。

 一方の先行隊三人も攻転していた。とはいってもグドンたちを逃がさないように、せき止めることを優先していたが。
「ここから先には行けぬと思え」
 レイの気迫が響き、言葉が理解できないグドンにも逡巡の間を与えた。
 その僅かな硬直の時を、コハクが同意しながらソニックウェーブで切り裂く。
「そういうことじゃ」
 一番前にいたグドンを吹き飛ばしながら衝撃波が群れを薙ぐ。
 そしてラウルがソードラッシュでソードラッシュをかけようと距離を詰めつつ剣を振った。
「つまりはジエンドってことだ」

 元々グドンの数が少ないし、互角以上の状況になれば冒険者たちに分があったようだ。
 完全に冒険者たちが圧していた。
 グドンたちの抵抗も、最期の足掻きとなっている。
「みんなもう一息だよぉ」
 アムリスのヒーリングウェーブが淡く光る波を発し冒険者たちの体力を回復させた。治癒を終えたアムリスは再び戦闘に戻る。
 ヒーリングを受けたレミリアは、きっちりと逃げようとするグドンに対して攻撃している。
「紅に抱かれて散りなさい……さっさとね」
 薔薇の剣戟を使った攻撃にかかれば、もはやグドン一体など敵では無い。
 即座に薔薇の花が咲き、そのままグドンがくずれ落ちる。
「後は逃がさないようにするだけだな」
 同じくアリュナスはぽつりと呟きながら、剣をなぎ払いグドンの掃討を始めている。
 一体終わればまた次の一体に向かい剣を振るう。確実にしとめようと動いている様子だ。
「はい。絶対に逃がしはしません」
 やはり逃げ出していたグドンに、ボルチュがエンブレムシュートを当てて動きを止めた。すかさずレイがとどめをさす。ボルチュは礼をいうと別の目標を探しに向かう。
 ボルチュは辺りを見渡した。しかしグドンの姿はない。
「終わったな」
「そうじゃな」
 一番下にいたラウルの言葉にコハクが肯定した。
 グドンの討伐が完了した。

 ●そして来たのはエピローグ
 グドンの遺体をイズの山に埋めた冒険者たち。
 それぞれの表情で、それぞれの言葉を紡ぎながら。
 結果に満足し、成功を喜び、無事に安堵し、グドンに同情をする。
 討伐依頼の後によくある光景だったが、岩山の荒々しさが逆にその風景を美化させる。
 太陽が照っていた。
 風も少しだけ強くなってきている。
 少しだけ背の高い草々がさわさわと揺れる。
 汗が光を反射した。
 何かを終えた後の景色だった。
 グドンたちのために穴を掘り、そして埋めた。
 埋葬を終えた冒険者たちはその場を後にする。
 空気に色がついてくる。
 山を下り終えると、自分たちが護った井戸を横目に見ながらウィダリーの村を後にした。
 それぞれの経験を胸に秘めて。


マスター:須賀道崎 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:7人
作成日:2006/05/27
得票数:冒険活劇6 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。