怪獣墓場の大怪獣:湖のほとりで



<オープニング>


●怪獣墓場の大怪獣
 広大なワイルドファイア大陸には、誰も足を踏み入れた事のない脅威の大自然が幾つも存在している。
 ヒトノソリン達が住む平原の更に西にある、見渡す事すら出来ない大峡谷もまた、その一つであった。

 その大峡谷に程近い場所には怪獣墓場と呼ばれる地があった。
 死せる怪獣の骨がうず高く積み重なるその場所……。そこに、今、一つの異変が起きようとしていた。

「モガーン!!」
 ひときわ大きく響き渡るうなり声は、立派なトサカで頭部を飾る大怪獣モーガストマック。
 それに唱和するように、新たな唸り声が響く。
「「「「「モガーン!!!」」」」」
「「「「「モガーン!!!」」」」」
「「「「「モガーン!!!」」」」」
 それは、怪獣墓場を埋め尽くすような大怪獣モーガストマックの群れであった。
 ひとしきり唸り声をあげた大怪獣達は、自分達がやってきた大峡谷の方を仰ぎ見ると、それぞれが別々の方角へと歩み出したのだった。

※※※※

「みんな、はじめまして! 僕はキャロットだよ。今日はキミ達にお願いがあってやってきたんだ」
 そう言って、元気良く挨拶したのは、ヒトの霊査士・キャロット(a90211)だ。
 なんでも、彼女が住んでいるワイルドファイア大陸で、大きな事件が起こりつつあるらしい。
 なお、ヒト族の彼女がワイルドファイア大陸に住んでいる理由は『ワイルドファイア大陸が大好きだから』なのだそうだ。

 そして、何事かを集まった冒険者達にキャロットは、
「えっとね、ワイルドファイア大陸の怪獣墓場に集まった大怪獣をやっつけて欲しいの。このままだと、みんな、とっても困っちゃうんだよ!」
 そう明るく言い切った。

 彼女の依頼を要約すると、ヒトノソリンの国の西の外れ、怪獣墓場と呼ばれる場所から現れた大怪獣の群れを退治するというものだった。
「大怪獣モーガストマックは一体づつバラバラに行動してるんだけど、出会った怪獣達を配下にして、それぞれが大きな群れになろうとしているみたい」
 暴君王者とも呼ばれるモーガストマックは、他の怪獣達をまとめあげる力があり、このままでは、強大な怪獣帝国があちこちに現れてしまうだろう。

「とにかく、今のうちに何とかしないとダメなんだ。みんな、よろしくね!」
 そしてキャロットは、別方向に向かった大怪獣の、それぞれについて説明を始めた。

●湖のほとりで
「みんなに行ってもらいたいのは、ここなんだ」
 キャロットが簡単な地図を即興で描き、冒険者たちに目的地を示す。湖のほとりだ。敵を褒めるのも妙だが、水のある場所を拠点とするのは非常に理にかなっている。
「モーガストマックは、その湖に棲んでいた1匹の巨大カエル怪獣を配下につけたようでね、これも一緒に倒さなきゃならないんだ」
 モーガストマックの得意技は突進と尻尾、巨大カエル怪獣は舌での薙ぎ払いと拘束ということだ。2匹同時相手となると、なかなかに難しいものがある。しかし退くことはできない。
「あっちが力づくならこっちも力づく。とにかく難しいことは考えず、盛大にぶっ飛ばしてやって! お願いだよ」


!注意!
 このシナリオは同盟諸国の命運を掛けた重要なシナリオ(全体シナリオ)となっています。全体シナリオは、通常の依頼よりも危険度が高く、その結果は全体の状況に大きな影響を与えます。
 全体シナリオでは『グリモアエフェクト』と言う特別なグリモアの加護を得る事ができます。このグリモアエフェクトを得たキャラクターは、シナリオ中に1回だけ非常に強力な力(攻撃或いは行動)を発揮する事ができます。

 グリモアエフェクトは参加者全員が『グリモアエフェクトに相応しい行為』を行う事で発揮しやすくなります。
 この『グリモアエフェクトに相応しい行為』はシナリオ毎に変化します。
 ヒトの霊査士・キャロット(a90211)の『グリモアエフェクトに相応しい行為』は『挑戦(challenge)』となります。
 グリモアエフェクトの詳しい内容は『図書館』をご確認ください。

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参加者
座敷武道家・リューラン(a03610)
闇夜の鴉・タカテル(a03876)
鋼鉄の白兎・グリンダ(a16715)
銀の剣・ヨハン(a21564)
月夜に微笑む黒猫・ポルロ(a24825)
黒頭公・ニヒト(a25314)
ねむねむ人形ひめ・マサキ(a28599)
自由の翼・ヨウ(a30238)
月夜に舞い降る銀羽・エルス(a30781)
戦闘執事・サキト(a38399)
蛍石の護り手・シーマリネィア(a39304)
強引にマイウェイ・ローレライ(a45997)


<リプレイ>


 地図を確認しつつ、冒険者たちは広大なワイルドファイアの草原を進む。
 そこらに低木や大岩があるが、基本的には障害物なしのだだっ広い光景。見晴らしがいいどころの話ではなく、右方に波のような山稜がそびえているのを除けば、ほとんどの方向で地平線がくっきりと見えた。ただ、目的の湖は見えない。おそらくはそこだけ標高が下がっているのだ。
 風の中、ひたすら歩いた。歩き通した。
 やがて下り坂に至った。眼下に恐ろしく大きな、澄んだ水色が展開された。
 そして呆れるほど巨大な生物の姿も。今回の標的――高さ10メートルのモーガストマックと巨大カエル怪獣が並んで、這いつくばって水を飲んでいた。立っていなくてもその大きさがよくわかった。
「……噂にニャ聞いてたが、本当にデカイな」
「ええ、さすがに大きいですね……」
 爆裂銀河女皇帝・ローレライ(a45997)と月夜に微笑む黒猫・ポルロ(a24825)は目が眩むようだった。ワイルドファイアの神秘と言えばよいのか、それとも恐怖と言えばよいのかわからない。
「強そうだな……。申し訳ない、出発直前に重傷を負うとは」
「俺もせいぜい足手まといにならないように立ち回るよ。くそ、全力で戦いたかった」
 闇夜の鴉・タカテル(a03876)と永遠の成長途中・リューラン(a03610)は前回の戦いのまだ傷が癒えてなかった。彼らをはじめ、鎧聖降臨を使えるメンバーは、敵が気づかないうちに防御を高めておく。
「うん、ふたりはホント、無理しないでね?」
 鋼鉄の白兎・グリンダ(a16715)はそう言ってウェポン・オーバーロードを発動した。自由の翼・ヨウ(a30238)と黒夜叉・サキト(a38399)も同じく得物を強化しておく。
「……まだ気づきませんね。では私も」
 蛍石の護り手・シーマリネィア(a39304)は黒炎覚醒して心の力を増強した。
 と、2体の怪獣がようやく水飲みを終えた。体が大きい分、必要な水分も甚大なものなのだろう。
 のんびりと体を起こした。そして振り返る。
 2体とも目を丸くした。武装している何者かが、今にも自分たちに襲いかかろうとしていた。途端に凄まじい咆哮が大地に響いた。


 先手はタカテルの粘り蜘蛛糸。モーガストマックは怪訝そうな表情を浮かべ、次に驚愕した。この大怪獣にしてみれば無にも等しいか細い糸に拘束されたのである。苛立ちもがいていると、第二撃が来た。
「ふふ、ボクと出会ったのが運の尽きだよ」
 悪夢と共に散る翼・マサキ(a28599)がの撃ち放ったエンブレムノヴァは、モーガストマックの脚にクリーンヒットし、ぶすぶすと燻る。ヨウもやや離れてチェインシュートで攻撃した。今は2体の分断に努め、カエル班が合流するまでの足止めという作戦である。無理をして手痛い反撃を食らうわけにはいかない。
 そう思っているうちに、拘束の解けたモーガストマックは突進を開始する。
「むっ、巨体に似合わない速さ――!」
 前衛壁役の銀の剣・ヨハン(a21564)が肩に食らった。凄まじい圧力と衝撃が巡る。素早く癒しの波をかけたので大事には至らなかったが、もう一度食らったら腕が使い物にならなくなってしまうかもしれない。ローレライは重傷のタカテルに誓いの言葉をかけ、さらなる護りの体勢で次に備えた。
「大きすぎてどこが弱点なのか……えい、どこでもいいですよね!」
 月夜に舞い降る銀羽・エルス(a30781)が印を結び、デモニックフレイムを発射した。敵の膝頭が赤く燃えると、わずかにぐらついたように見えた。下半身を重点的に攻めるのがいいかもしれないと皆思い始める。
 一方、モーガストマックはカエルの方を見る。そして安心したように笑った。初めての配下は、なかなかにいい働きをしてくれる、と。

 巨大カエル怪獣はいきなり長く伸びた舌で薙ぎ払いにかかり、カエル担当班を軒並み打ち倒していた。カエルの方も一刻も早くモーガストマックと合流したいと考えている。
 ムーンリーズが凱歌を高らかに歌う中、リューランは傷を抑えながらスーパースポットライトを放射した。カエル怪獣が光に気を引かれて移動した直後、サキトが湖の側に移動した。カエルの逃亡を阻止するためだ。
「我が名はサキト・キリュウ。我が主……はまったく関係ないが、その命奪わせていただく」
 さっき打たれた腹の痛みを堪えつつ、サキトは怪獣に真向かった。逃げず正面からぶつかるという堅牢な意思表示。刀を振りかぶるサキトの頭上に淡い光が現れる。光は天使の形を成し、彼の護りとなる。サキトはただ攻撃のみに力を注ぐ。
「砕け、鉄槌!」
 イボイボの尻に全力を叩き込む。カエルは全身をぶらせて、ゲロロと気味悪い呻きを上げた。後ろを振り返ったところで、今度は激しい熱を背中に感じた。シーマリネィアの黒い炎が追撃したのだ。あくまで注意は湖の反対側に向けさせなければならない。
「大きすぎるカエルは、可愛くないんだよ!」
 淀みない達人の斬撃。グリンダの一閃が敵の右後脚に切り込みを入れる。ポルロが続いて同じ箇所にバットラックシュートを飛ばした。傷の周りが黒く変色し、不幸が植えつけられる。
「やはりまずは下半身――脚ですね」
 飛鳳散仙・ニヒト(a25314)が粘り蜘蛛糸を繰り出した。絡まった糸は地面にひっついて、カエルは根っこが生えたように下半身全体を封じられる。

 ――行ける! この巨大生物相手にも自分たちは決して負けていない。強さとは大きさではないのだと、冒険者たちはさらに気迫をみなぎらせた。
 しかし敵も決して只者ではない。モーガストマックがぐるりと背中を向けたかと思えば、大風のような暴音立てて尻尾をぶん回した。ランドアースではお目にかかれない、非常に広範囲かつ強力な攻撃がモーガストマック班のメンバーに襲い来る!
「く、皆さん、しっかり!」
「わわ、大丈夫……? 気をつけて、頑張ろぅっ!」
 飛燕刃で牽制しながら仲間を励ますタカテル。マサキは攻撃の手を止め、ヒーリングウェーブを広げた。
「ヨハン、回復をもっと頼む! この相手とは常に全快じゃなきゃな」
 召喚獣ダークネスクロークのマントで事なきを得たヨウは、サイドから達人の一撃を入れる。ヨハンは頷き、全員にヒーリングウェーブを重ねてかけた。
 ダメージは敵のほうが多いはず! ローレライはここでさらに精神を奮い立たせ、初めての攻撃に出た。護りの天使の召喚、攻守兼ね備えたホーリースマッシュがモーガストマックの膝頭に突き刺さる、耳障りな鳴き声が降りかかる。
「そんな体で暴れられたら困ります。あなたの存在だけでも大迷惑であるんです!」
 半ば怒りながら、エルスがスキュラフレイムを投げつける。出血と毒と炎のダメージを同時に食らい、モーガストマックはさらに呻く。
 何をやっている、早く助けに来いとモーガストマックはカエルに目を向けた。

 カエル怪獣は勝負に出ていた。ニードルスピアを受けながらも、20メートルはあった距離を問題にせず、後衛のリューランを伸ばした舌で巻き取る。これで相手も迂闊に攻撃できまいとカエルは踏んでいた。
 リューランは動けないまま高々と持ち上げられる。もともとある傷にかかる圧力が凄まじかった。それでも抜け出そうと懸命に力を込めた。他のメンバーもどうにか助け出そうと思考能力を集中させる。
 その時――冒険者たちの体内が前触れもなく熱くなる。輝く。強くなる。
 それは、敵を倒すため常に最大の力であろうとした者だけに備わる、挑戦のグリモアエフェクト。
 サキトが飛んだ。通常では考えられないジャンプ力で、何メートルもの高さの位置にあるカエルの口元まで飛んだ。そしてキルドレッドブルーの魔炎を纏った刀が超スピードで閃く。
「一気、刀閃!」
 刃は苦もなく舌を切断した。舌はカエルの急所である。絶叫が轟いた。シーマリネィアが急いでリューランの回復に当たる。
 負ける。カエルはそう悟った。ぐらつきながら、後ろを振り向いた。逃げる気だ。
 しかし。
「逃がさないよ!」
 湖の縁にはグリンダがいる。そこから残像が生じるほど速く駆け、腹に稲妻の闘気を込めた一撃を突きたてた。巨大カエル怪獣は白目を剥いて、横向けに倒れ絶命した。
 残るはモーガストマック。いち早く合流しに行ったポルロとニヒトは、まったく同時に飛燕刃を射出した。単体ではたいしたことはなくとも、ふたつ合わさればパワーは倍増。足の指を傷つけられたモーガストマックは激痛に顔をゆがめた。ふたりは神経の集中部位である末端を寸分の狂いもなく狙ったのである。
 不吉な風切り音を立て、タカテルのバッドラックシュートが続く。モーガストマックはそれを意地でかわすが、体勢はフラフラだ。マサキの二度目のエンブレムノヴァは避けきれず、股間に受けた。
「モガーン!」
 今までで一番大きな悲鳴が上がる。
 モーガストマックは涙目でまたも尻尾を回しに来る。盾を構えたヨウを難なく弾き飛ばすが、同時にヨウの剣が尻尾に突き刺さる。カウンターの要領だ。繰り出す勢いが大きかったため、剣も深く刺さっている。
 ヨハンの高らかな凱歌が流れた。それは勝利の歌でもあった。ローレライが敵の首までジャンプし、剣を食い込ませた。
 それで終わり。モーガストマックは仰向けに突っ伏し、ほどなくして鼓動を止めた。


 どうにか、新たな重傷者を出すことは避けられたようだ。心身ともに疲れた冒険者たちは地面に座り込み、今しがた倒した敵を見上げた。
「こんな巨大な相手でも、力を合わせれば勝てるのですね……」
 シーマリネィアは興奮に心臓を高鳴らせた。皆、自分の何倍もの背丈を持つ敵を倒せたことに、冒険者としての誇りが膨らんでいくのを感じた。
「これらを埋葬するのは難しいですね。大地にゆだねて還るに任せましょう……その大いなる手に」
 と、ヨハン。怪獣2体の横たわる湖のほとり。やがて死骸をついばみに鳥の群れや獣がやってくるに違いない。そうして命は雄大なワイルドファイアを巡る。
「ところで怪獣は食えるんだったか?」
 サキトが真顔で言った。え? と固まるメンバー。
「いや、結構カエルは美味いぞ? ……種類にもよるがな」
「カエルは最初から晩飯にするつもりだったぜ、あたいは。うん、見れば見るほど美味そうだ。ふふ、ワイルドファイアの方があたいには向いてるかもしれないねぇ〜」
 追随するローレライ。さらに固まるメンバー。サキトも100パーセント本気で言ったのではないから驚愕である。エルスがポツンと口にする。
「お土産として持って帰るのはダメでしょうか」
「と……ともかく今は休みましょうか。お茶でもいかがです」
 タカテルが言って、お茶会セットを取り出した。
 まあ、せっかくの大自然なのだからそれぞれ好きにするのがいいだろうという結論になった。


マスター:silflu 紹介ページ
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