【寵姫の望む物】Fascinante Lingerie



<オープニング>


「ですから、下着……『ランジェリー』ですわ」
 琥珀の寵姫・ルクレチア様は理解を促すように可愛らしく首を傾げた。

「淑女たるもの、表に見えないものにこそ気を払うべきですもの」
 先日依頼を受けた冒険者から、特に胸囲のサイズが大きい下着はデザイン面に難があるようなことを耳にした際、寵姫は甚く胸を痛めたのだ。女なればこそ機能性は勿論、下着の色やら形などの造形美にも気を払いたく思うもの。女性の肌に触れる品が女性の望んだ通りの品で無い――身に合った下着を身につけられないなどとは何とも由々しき事態だ、と寵姫は御考えに為ったらしい。
 寵姫は積極性が高く行動的な女性であるので、思い立った数日後には城下町に住まう下着職人と相談し、新たに多くの職人を召し抱えもしつつ今日この日に備えたのである。
「多くのランジェリーを揃えさせましたわ……皆様の御眼鏡に適う品が、在れば良いのですけれど」
 寵姫は小宮殿のホールに多くの下着を取り揃えたそうだ。望む物があれば是非持ち帰って欲しいのだと冒険者に語る。気に入るものが無ければ呼び寄せた多くの職人たちに、自らの身体に合った品を作らせれば良いとも続ける。当然、寵姫はオートクチュールの品ばかり身に付けるのだろう。
 試着室も幾らかは用意してあるらしいが、女性同士ですもの、余り気にすることも無いでしょう、と寵姫は言う。
 ルクレチア様はたおやかに微笑み、白い胸元を指先で押さえ、
「わたくしも、新調させようと思っておりますの」
 近頃少し、下着がきつく為ってしまったようですから、と囁くように紡いだ。

マスター:愛染りんご 紹介ページ
 愛染りんごで御座います。
 息抜き、気分転換にどうぞ。

!注意!
 今回は男子禁制です。性別が男である方は城内に立ち入ることが出来ません。
 しかし、城壁は高く険しいながら、冒険者の手に掛かれば登れぬことも無いでしょう。侵入は決して不可能ではありませんが、不法侵入し発見された際には(16歳未満で無い男性は全員)死を覚悟しましょう。

 と言うわけで女性の皆様、下着を手に入れに行きましょう。ルクレチア様は極普通に他意無く新設のつもりで皆様を誘っているようですので、普通に下着を新調したい方にオススメです。ルクレチア様と下着について語るなど、各々御自分の為さりたいことを御選択下さいませ。
 下着屋さんを呼び寄せて、離宮のホールに色取り取りの魅惑的なランジェリーを取り揃えました。試着用の下着が多くありますので、気に入った品がありましたら新品を包んでお持ち帰り頂けます。当日身に付けることは出来ませんが、職人さんに巻尺でサイズを測って頂き、オートクチュールで仕上げて貰い、完成後御手元にまでお届けすることも可能です。職人さんの中には少数ですが男性も居ます。

 御目当ての下着を見つけることが出来れば、アイテム「下着」のお持ち帰りが可能です。お一人様一点までとなりますので、「名称」を全角35文字以内、及び「下着の設定」を全角30文字以内でプレイングに記載してください。文字数がオーバーしていた場合、片方でも欠けていた場合、内容に支障がありました場合(水着はありませんし、ルクレチア様が目にして厭うタイプの下着もありません)には発行しかねますので御注意下さい。

 NPCはフラジィルが同行しておりますが、御誘いが無い場合には描写が全てカットされる予定です。何か御座いましたらプレイングにて御指定下さいませ。愛染りんごでした。

参加者
NPC:深雪の優艶・フラジィル(a90222)



<リプレイ>

●秘密の花園
 その日、琥珀の寵姫・ルクレチア様の御屋敷に、美しい娘たちが多く集った。
 男性であるノリスは門外で犯罪を抑止すべく警備に務める。多くの淑女たちは当然、不届き者が存在した暁には息の根が止まる程度の仕置きを、冒険者として持ち得る力の全てを用いて行う心積もりで居たのだから、不埒な男性が存在しなかったことは世界の平和にも小さく貢献したと言える。
 先日の依頼に於いては魅惑のブラを手にした勝者であるリピューマも、吹っ切れた様子で本日の会合に出向いて居た。脂汗を額に浮かべたダフネも、挙動不審に辺りを見回しながら様子を伺っている。時と所と機会が機会であるだけに、妖しげな色香を漂わせる女性が酷く多い。
「ルクレチア様の言うように、淑女たるもの見えないところに気を遣わないとね?」
 悪戯っぽく言って、シキは恋人にしな垂れ掛かる。ヴィオラは彼女に微笑み返すと、薄紅藤に染められた薄布を一枚手に取った。一方で塞ぎ込んでいたユィも、質の良い様々なランジェリーを前にして幾らか気を持ち直したようだ。透けたキャミソールを胸元に合わせてみる彼女の横で、チエリが大胆に胸元の開いたボディタンガを試着している。遠慮がちに参加していたディタも、周囲には女性しか居ないのだから、と積極的になり普段着込んでいる重厚な鎧を外して豊満な胸元のサイズを計って貰った。
「刺繍もしっかりしてるっちゃねゃ〜♪ こりゃ、まっこと良い仕事ぜよ!」
 ヴィルヴェルも独特の訛りで嬉しそうに声を上げる。豊かに実った友人たちの胸元と、細身な自身を見比べてルルイは「うぅ」と肩を落とした。皆スタイルが良過ぎだと嘆く彼女にクイが微笑み、未だ未だ此れからだろうと慰めてやる。ヴェルーガは悪戯したリィリを御仕置きとばかりに抱き締めて、私の胸に埋もれるが良いわ、と笑った。女の子同士でじゃれ合う姿の多い広間はとても華やかだ。
 ルクレチア様の小宮殿はその日、正に秘密の花園だった。
 ファオは恥ずかしそうに隅っこへ移動し、遠慮がちながら女性の職人を掴まえて採寸を頼む。
 何かに耐えるように俯きつつ、下着は闘いに於いても動作に影響するものだから、と自分に言い聞かせるようにシェラは呟いた。流石に大人の色香を感じさせるような下着が多い、と妙に感心してしまいながらもフィオは所謂「勝負下着」となるような一着を探す。自分には色気が足りないと考えるエルは、大人を感じさせる綺麗な品物を見付けたいと願った。
「わ、わたし自身は興味無いんだけどね、下着なんて」
 言いながら、ミリアは大量の下着を抱えて試着室に駆け込む。シルヴィアは型紙を広げた職人と、現在使用している下着の不満点や改善点について話し合っていた。胸が重たくて肩が凝ると言うのは、柔らかなフォルムを持つ女性ゆえの悩みだ。チャンドラも独特の風俗を持つ己の故郷で使われていた下着のデザインを細かに語り、職人に作成を依頼している。
 思い立って然程の間も無く、多くの職人を集めたルクレチアと言う人物は、家柄等だけで無く確かな手腕と人望を持つ方なのだろうとリツは感心に似た思いを抱いた。ランドアース大陸には元々ヒトノソリンと言う種族が居ないものだから、ノソリン尻尾が邪魔にならないような下着が欲しいと頼むフィフィには、職人たちも目を白黒させる。
「バストが大きく見えるような下着で……私に夢を見させてください、なぁ〜んっ」
 拳を握ったマヒナは、職人相手に必死で頼み込んでいた。職人曰く、貴女は若いのだから今後の成長に期待しなさい、とのこと。変に胸を圧迫してしまえば成長を損ないかねないから、無理の無い範囲で元々ある胸を少し大きく見せるような下着にしましょうと提案される。
「こんな本格的な下着なんて初めてだよ!」
 試着してみた可愛いベビードールに大喜びではしゃぐエルの横で、ヴィナは「うぅん」と小さく唸った。夫を新たに魅了し直すくらい自分に似合った下着が見付かれば良いのだけれど、と敢えて魅惑的なデザインの品に手を伸ばす。フリルがついた淡い桃色の下着が気に入ったのか、シュラーフェンは「……寝巻き代わりに、できそう」と呟いた。ユリーシャは肌触りの良い絹で誂えた茉莉花柄の品と同じデザインで、尚且つ自分の体型に合わせたものをと注文し、アナイスは悩みに悩んだ末、偶にはセクシーなものをと細やかなレースが美しい品を選ぶ。
 自分に合う下着を手に入れたルミリアは、ふと周囲を見渡して感嘆の息を洩らした。桃の花が刺繍されたブラジャーは実際のものより小さかったのか、とても豊かな胸が溢れ出しそうなトロンボーン。イツキの脚に柔らかく食い込んでいる黒い薔薇刺繍のガーターベルトは、彼女の白い足をより肉感的に見せているし、レースが織り込まれた純白の下着を身に付けたラジスラヴァは、清楚なデザインの品だと言うのに身体の線の柔らかさでか妙に艶かしく見える。
 何と無く顔を赤らめたシュチも勇気を振り絞り、幾らか透けた青い勝負下着を手に取った。ラスティも気恥ずかしさを誤魔化すように咳払いしつつ、動き易さと綺麗さに重点を置いて良い品を探し視線を巡らす。素敵な下着を手に入れて是非とも彼氏を悩殺したい、とアルフィレアは様々な下着を見て回った。普段自分が身に着けないような色鮮やかな下着たちも、見て回るのは其れなりに楽しい。トラヴィスは清純さを前面にアピール出来るような白い下着を探している。
「なぁ〜ん……」
 リィルアリアが小さく鳴いた。
 白い肌をより美しく見せる漆黒の薄布。素肌の殆どを晒してしまうような、だからこそ色香に溢れた下着。こんなの恥ずかしくて着れませんなぁん、と彼女は右往左往する。しかし恋人が喜んでくれるのならばと悩んだ末、彼女は「頑張りますなぁん……」と呟くのだった。

●淑女の嗜み
「じ、実は、少し前、告白されましてっ……その、勝負下着なるものが、欲しいと思いましてっ」
 顔を赤らめつつフェイが語る。それは素敵です、と深雪の優艶・フラジィル(a90222)が祝福しながら一緒に可愛い下着を選び始めた。彼女は随分着痩せするらしく、脱がせて見ると実は豊満であることが良く判り、フラジィルは長く沈黙して自分の胸元を見た。何も無いわけでは無いが、特に無い。
「ちょっと恥ずかしくてドキドキしますけど、何だか不思議と、楽しい気持ちになりますよね」
「ね、こういうのは女の子の特権です!」
 優しい色合いの可愛らしい下着を手に、リューシャがはにかんで微笑む。頷いたシアはシフォンのレースが愛らしい白の下着を試着していたのだが、彼女は実のところ豊満な体躯の持ち主であるので薄着になるとスタイルの良さが際立った。むむむ、とフラジィルが思い悩んだように唸り始める。
「……可愛い人には、色々と着せたいですよね」
 現れたヒカリは彼女が悩む隙を突いて、すぽんと服を脱がせては、目に付いた可愛らしい下着を手早く素早く着せて行く。乙女に囲まれて「此れが良い」「其れも良い」と至れり尽くせり状態のフラジィルは、暫くして自分の置かれた状況に気付き「あわわわわ」と目をぐるぐるさせた。
「……見えないところの身嗜みも、大切ですから」
「はわわわわ」
「ジルさ可愛ええべ〜♪ フカフカだぁ」
「ふわわわわ」
 ぐるぐるしているフラジィルをむぎゅうと抱き締めて、ウィルカナは満足げに笑った。何としてでも可愛いドロワーズを手に入れてくる、と宣言すると彼女は下着の山へと向かう。彼女らの様子を微笑ましげに見ていたロスクヴァは、やっぱり自分の胸を見て溜息を吐くも、「ジルさんは将来、どんな女性に育つのかしら……」と頬を緩めて未来を思った。
 ぐるぐるしていたフラジィルの肩を叩き、オドレイは「俺、センスに自信無いから、選ぶのを手伝って貰えねぇか?」と声を掛けた。着せ替えしていた乙女たちが優しい笑みを更に深めて、すすす、と彼女の傍に近寄って来る。どんなのが良いかしら勝負下着かしらと微笑まれ、彼女は顔を真っ赤にしつつ頷いた。
「やっぱ、白かな……御姫様みたいなやつ」
「まあ、可愛らしいわね」
 唐突な声に振り返れば、琥珀の寵姫が其処に居た。
 採寸を終えたらしいルクレチア様は、真紅のサテンで織られた肌の透けぬ膝上丈のベビードールを召し、蝶の刺繍で飾られた漆黒のガウンを肩から羽織り、微かな衣擦れの音と共に現れる。緊張で硬直する男勝りな少女に向けて、貴女の褐色の肌には白い下着が良く似合うでしょうね、と穏やかに微笑んだ。
 この時の為に確りとドレスで正装して来たミリィが、寵姫に歩み寄って深く礼をする。このような機会を設けて下さり有難う御座います、と告げると寵姫は優しく微笑んだ。続いて礼を丁寧に述べたヘルガに「皆様の御役に立てば、わたくしはとても嬉しく思いますわ」と言葉通り嬉しげに囁く。目の前を通り過ぎる彼女を見ながら、棚に置かれたボンテージ等、寵姫に酷く似合いそうだと考えた。
「御初目に掛かる、ルクレチア嬢」
 以後御見知り置きを、と頭を垂れたクレウに対し寵姫は一度目を瞬いた。
 にこりと微笑み「様、で宜しくてよ?」と彼女の前を通り過ぎる。紅のソファに腰を下ろした寵姫の元へ、頬を紅潮させたババロアが遣って来る。招きに対して礼を述べてから、「ルクレチア様の完璧なプロポーションに憧れていたのです」と告白した。発言や立ち居振る舞いにも美しく気品があるのだから尚、と拳を握る彼女に寵姫は「楽しんで行ってくださいまし」と機嫌良く答える。
「ルクレチア様、ボクの下着、選んでくれませんか?」
 確り御風呂に入って準備万端、挑みに遣って来たフィファは果敢に突撃した。寵姫は機嫌を損ねた様子も無く、「自分の身を飾るものは自身で選ぶ……それが淑女への第一歩ですわ」と幼い少女に微笑み掛ける。そんな寵姫にユーリィカが問い掛けた。下着に関する好みの話だ。メルミリアも興味津々と言った様子で、参考にしたいので是非、と言葉を重ねる。
「秘密にして頂けますかしら。特に、男性には」
 頷きが返されると、ルクレチア様は唇に指先で触れ、視線を宙に向けて小首を傾げた。
「自然と紅や黒が多くなりますけれど、基本的には、御相手の好みに合わせるようにしていますわ」
 寵姫は真意の汲み取り難い、普段通りの綺麗な御顔で微笑んで答える。
「何か、秘密とかは……」
 もごもごとメイロゥが質問した。向けられた視線に慌てながら、私もルクレチア様みたいに綺麗になりたいと思って、と言い訳のように好奇心の理由を語ると寵姫はくすくす笑みを零して、「ひとりで眠る夜には、下着をつけませんのよ、わたくし」と秘め事めいた言葉で囁き返す。ハーティアが寵姫が子供であった時分、どのような下着を身に着けていたのかを尋ねるも、寵姫は微笑んだまま「忘れてしまいましたわ」と青い青い瞳を細めた。
 女は何時でも勝負だろうと語るロゼッタに、寵姫は「わたくし、『戦わずして勝つ』と言う言葉は好きですわ」と答える。常に勝てるよう振る舞いはすれど、勝負事は嫌うと言う意味合いだろう。微笑むルクレチアを遠目に見遣って、ステュクスは自分の胸元へ視線を落とした。はふ、と力無く溜息を吐く。下着を倣った程度で寵姫に為れるとは勿論思わないけれど、ひとりの男性を脳裏に描いて、全てに愛される寵姫を少し羨ましく思った。
「る、ルクレチア様……」
 ほんのりと頬を朱に染め、伏せ目がちにランスが言う。
「あの、も、もし宜しければ、御胸を掬わせて頂けませんか?」
 流石にルクレチアも驚いた様子で、ルクレチア様のいつも感じていらっしゃる重みを知りたいのだと言う彼女の申し出を聞いた。身も心もルクレチア様のような素敵な淑女に近付きたいと願っているのだと言う娘の想いに偽りは無い様子。寵姫も釣られたように頬を染めて、戸惑いがちに唇を開いた。
「……決して、あなたのことを憎く思って言うのでは無いのですけれど……」
 別段機嫌を損ねた様子は無いが、わたくしも照れてしまいますわ、と彼女の願いを退けた。
 結局、不埒な犯罪者も出ることは無く、華が如き娘たちの一日は平穏に幕を閉じることになる。


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作成日:2006/06/03
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