はじめての西方国境警戒令



<オープニング>


 レルヴァ大遠征の最中、トロウル軍の手により陥落したソルレオン王国の首都ディグガード。
 それは同時に、列強種族『ソルレオン』のモンスター化を意味していた。

 ソルレオンの冒険者達がモンスターと化したため、現在、滅亡したソルレオン王国の領土には、無数のモンスターが闊歩している。
 これは同盟諸国との国境付近でも例外ではない。
 モンスター達は、やがて国境を越えて、この同盟諸国へとやって来るだろう。
 ……それを、阻む者さえいなければ。
 
 ある吟遊詩人は語る。
「暗黒の炎を身に纏う獅子の様ないでたち。其の鬣はまるで燃え盛る炎。紅蓮の炎を繰り出し、其の炎は人の心を映し出す鏡の様にその形を変化させる……」
 と。
 そして、傍らで耳を傾けていた砂漠の民〜風砂に煌く蒼星の刃・デューン(a34979)は、誰に気がつかれることも無く、静かにその場を立ち去る。仲間にこの事実を伝える為に。

「紅蓮の炎、か。一度手合わせ願いたいものだな」
 鮮紅を纏いし者・ファーラ(a34245)は、手に持ったカップをくるくると回しながらデューンの話に興味深げに呟く。彼女自身も紅の通り名を持つ故か、炎を纏う獅子、という詞に微かな胸のざわめきを感じる。
「そいつぁ強そうだ! うおぉっ、腕が鳴るぜっ!」
 がたんっ、と椅子を倒しながら立ち上がる白猫に導かれし戦士・ヴァル(a38901)は、ギョロリと目を光らせながら拳を握る。三度の料理と同じ位戦闘が好きというやつだ。 
「くぁ〜〜、退〜治了解〜! ハリセン準備O〜K」
 ぺふぺふとハリセンを振り回しながら、狂気が乱舞の赤ペンギン・ヒナタ(a40516)はぺたんぺたんと暴れ回る。デューンは微かに笑みを浮かべながらそんなヒナタを制すると、
「そうだな……他に、誰か行く奴はいるか?」
 静かではあるが、強い意志のこもる声。
 
 そして冒険者は集う。
 滅びた王国に炎が燃え、彼らの前に姿を現す。
 その場所、そこにいるモンスター。
 それが何を意味する事なのかは痛い程理解している。
 過去に戻ってやり直せない以上、取るべき道はただ一つ。
 
 願わくば紅蓮の炎が清い炎へと変わるよう――

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参加者
青空に浮かぶ龍・ルイ(a07927)
大天使長・ホカゲ(a18714)
真なる闇を作りし漆黒の拳・クロ(a33409)
隠れ家ヘよーこその看板盗んだ・フォッグ(a33901)
円環の吟遊詩人・ロッズ(a34074)
砂漠の民〜風砂に煌く蒼星の刃・デューン(a34979)
白猫に導かれし戦士・ヴァル(a38901)
狂気が乱舞の赤ペンギン・ヒナタ(a40516)


<リプレイ>

●西方国境、その想い
(「……何度目かの西方国境警戒。その度にかつての誇り高き武人達、「魔物化したソルレオン」を倒してきました。時計の針を戻すことは出来ません。しかしせめて彼らに、怒りや憎しみではなく「祈り」を送りましょう……」)
 吹きすさぶ風に乱れる髪を気にすることもなく、大天使長・ホカゲ(a18714)は異形の獅子を前にする。誇り高くも悲しき運命を辿ったその獅子は、もう何も語ることは出来ない。
 こそばゆく楽しく切ないほどに・フォッグ(a33901)は、ただ静かにその獅子を睨む。モンスターに感情など要らない。倒すこと。フォッグに与えられた使命はそれだけである。
「さて、いくか」
 穏やかに、しかし微かに憐憫を浮かべた表情で剣を手にする砂漠の民〜風砂に煌く蒼星の刃・デューン(a34979)。
 
 闘いが今、始まる。
 
●獅子
 冒険者達はそのモンスターを取り囲むように展開する。
「くぁ〜はぁ〜〜♪ 赤ペ〜ンさ〜んじょ〜〜♪」
 そんな中迷う事無くぼてりぼてりと突撃をかます狂気が乱舞の赤ペンギン・ヒナタ(a40516)。既に殲術の構えの準備は万端だ。今日もその身に纏った赤ペンギン重装型・真が眩しいぜ。
「俺ぁ細けぇこたぁ苦手だが、蒼星の立てた作戦を信じて思いっきりいくぜっ!」
 その後に続いて白猫に導かれし戦士・ヴァル(a38901)も駆け出す。通称料理の鉄蜥蜴と言われるヴァルも、今回ばかりは自慢の腕を封印し、ガチでバトる気満々である。
(「って、いきなり突っ込むかーヴァルは! 確実に援護できるとは限らんぞー!」)
 とにかく突撃しようぜ風のヴァルの大胆な作戦に、思わず汗を垂らすデューンだが、当のヴァル本人はそんなことはお構いなしだ。
 そしてデューン達は菱形でモンスターを取り囲み、その外枠を正方形の形で囲む。
 グオォォォ……!!
 獅子が一声大きく吼えると、その身体を纏っていた炎が一際大きく、黒く移り変わる。それは四方八方から迫り来る冒険者を敵として認めたこともまた意味していた。

(「炎の獅子か……元の面影を残してそうでちょっと複雑だな……でも、同盟に住む人々のためにも倒さなくちゃね……!」)
 右後方に下がりながら円環の吟遊詩人・ロッズ(a34074)はそんなことを考える。
(「とりあえず向こうから仕掛けてもらわんと話しにならんから、多少挑発してみるとしますかね……」)
 青龍・ルイ(a07927)は武器を下に投げ捨てると獅子の前に立ちはだかった。両手を下げるその姿は周りから見れば無防備以外の何者でもない。
 グゥルルル……
 記憶や思考など全て無いはずではあるその獅子は、しかし目の前に佇む無防備の冒険者に苛立つような唸りをあげる。そして、一歩歩みを進め
 ドゴッ!
「か……はぁ……!」
 ルイはわかっていた。この攻撃が来ることを。しかし引き寄せた武器はもう一度手元から、からん、と力なく落ちる。そう、武器を投げ捨てていた分その行動が遅れたのだ。
 危なかった。デューンが前もってルイに守りを施していなければ、今の一撃で既に致命的とは言わないまでも、かなりのダメージを受けていたに違いない。ルイの形状を変えた鎧から、何か焦げるような嫌な匂いが辺りに立ち込める。
「……」
 モンスターの真後ろを位置としたホカゲは静かに祈る。その思いが通じたのか、ルイの痛みが和らいでいく。
「ルイ!」
 ロッズから放たれる癒しの波が冒険者達を覆うと、ルイはその身体が動くことを確認する。
「うおおおおおぉぉ!」
 モンスターが攻撃をしたその隙を逃さずヴァルが側面から斬りかかる。が、この攻撃はいとも簡単に受け止められ、その身体にダメージを与えることはできない。
(「ああ、面倒な奴だ」)
 その背中を眺めながらフォッグは呟くが、決して不真面目なわけではなく、その眼光は鋭く目標を捉えたままである。
 グオオォッ!
 ちょうどルイに右腕を振り下ろした視線の先にいたモノ――ロッズ、を獲物と認め、獅子は駆け出す。
 うずくまるルイの横を駆け抜ける獅子。
「ちぃ、まずいわ!」
 ロッズとは丁度対角線に位置するところに構えていた深淵より尚深き漆黒の拳・クロ(a33409)はその姿を見て駆け出すが、いかんせん距離が遠い。
 ギャオオォォ!
 一瞬獅子が纏う黒炎が揺らいだかと思うと次の瞬間暗黒の炎が打ち出される。
「う、うわあぁっ!」
 不意を突かれたロッズはまともにその攻撃を受けると、後方に弾き飛ばされる。
 そのまま獅子はロッズに襲い掛か
「くぁっは〜〜あっかペ〜ン、ダァ〜イナミ〜ック!!」
 ろうとすると、何やら後ろから赤いモノが飛んできた。
 ちょうどロッズに襲い掛かる形で死角になっていたのか、モンスターはその反応が遅れる。
 ドゴォォッ!
 そのまま赤いモノは極限まで闘気を高めたハリセンの一撃をおもくそたたっこむ。残念ながら魂は飛ばない。そればかりか何か別のものを注入されたかのように、更に黒炎の勢いが増す。
「うおおおおっ! 砕け散りやがれえぇっっ!!」
 しかしモンスターがよろめいたその隙を逃さず、ヴァルも突撃する。無傷で勝とうとは元々思っていない。だからこそヴァルは極限まで近付いてその一撃をぶっ放す。
 グウウゥゥルル……!
 怒りの唸りをあげる獅子はその一撃をいただいたヒナタとヴァルの方に向き直る。
「ロッズ、大丈夫か?」
 デューンの癒しの波が辺りを包み込む。
 ズガッ!
 モンスターに不吉な絵柄が描かれたカードが刺さる。
「さて、不幸なのはどっちだろうな」
 獅子を睨みつけながら放ったフォッグのそれはすぐに掻き消えたが、元々黒炎を身に纏っている獅子に効果があったのかどうかはわからない。
「……その姿、かつては燃える炎の如き魂を持つ武人だったのでしょうか……」
 怒り狂う獅子を見つめながら呟くホカゲ。
「……春の枝に花あり。夏の枝に葉あり。秋の枝に果あり。冬の枝に慰めあり。明けぬ夜が無いように、癒えぬ悲しみもまた無いであろう」
 そしてまた祈りを始める。

「すまない、もう一度だ」
 回復したルイは回りにそう告げると、もう一度獅子の前に踊り出る。それに眼で応える冒険者達。
(「今度は、失敗しない」)
 心に強く思い、武器を手にする。
 グゥルルル……
 そして、一歩。
「今だ!」
 先ほどと同じ一歩。しかしモンスターのその攻撃はルイには当たらない。身を持ってその攻撃を受けた恩恵か、ルイの身体はそのモンスターの動きに反応したのだ。
「これはお返しだ!」
 ズンッ!!
 ルイはそう叫ぶと一歩踏み込み、その一撃を加える。
「俺ももういっちょぉ!!」
「くぁ〜〜!!!」
 ズドムッ!
 ドベチンッ!
 ヴァルとヒナタももう一度体重を乗せた一撃をぶちこむ。
 グギャアアアアッ!
「!!」
 一際大きな咆哮をあげる獅子に、一瞬身体に硬直を感じる冒険者達。
「きかねえぜええぇ!」
 ドゴッ!
 しかしヴァルはその咆哮をものともせずもう一度襲い掛かる。
 その一撃に不利と感じたのか、獅子は更に位置を変えるべく移動する。
 ザクッ
 しかしその軌道上に放たれるフォッグのカードが相変わらず身体に突き刺さる。
 戦況は良い方に向かっていた。が、まだ油断はできない。
 黒炎の合間から、ドス黒い液体がしたたり落ちるのが見える。
 ゆらり。
 再び黒炎がゆらぐ。
 ギャオオォォ!
 さっきよりも大きく、そして激しい黒炎が、前方にいたヴァル、デューン、ルイ、ロッズに襲い掛かる。その炎は生ある者全てを焼き尽くさんとする憎悪の炎とすら感じられる。
「うおぉぉぉぉお!!」
「ぐぅうぅ!」
「くうぅぅ!」
「ううわぁあ!」
 その炎にまかれ、膝を突く四人。既にモンスターは次の準備を始めている。
「……いけない……」
 祈りを中断したホカゲは獅子に向かい駆け出す。回復役の二人が傷ついた今、祈ることよりも攻撃をすることが先決だと判断した。
「みんな待っててや! 今いくで!」
 クロは四人を回復せんと駆け出す。
 しかしあと一歩遅い。クロがデューン達の元に辿り着いた時、もう一度憎悪の黒炎が放たれる。
(「まずいな」)
 デューンが呟くその前に、どこからともなく現れた赤いモノ。
「くぁ〜キタキタキタキタ〜〜!」
 四番、真紅のペンギン、ヒナタ。
 この時を待っていましたとばかりに両手にその武器、いや、ハリセンと言う名のバットを握り締め、ふりふりと振りながらその炎を待ち構える。
 獅子が放った炎は憎悪の炎。しかしヒナタは戦闘中常に『椰子の実』を考えていた。突撃をした時も、重い一撃をぶっこんだ時も。
 そんなもんだからヒナタの目には最早炎は天敵椰子の実以外の何者でもない。
「赤ペ〜ン、ホ〜ムラ〜〜ン!!」
 ブオンッ!!
 力一杯振りぬく。モンスターは変化球などは使えないので強打者ヒナタの餌食である。
 グガアアアアァァッ!!
 まともにその衝撃を身に受け雄叫びをあげる獅子。
「うおぉぉおおお!!」
 なぜかモンスターの雄叫びと共に響くヴァルの雄叫び。何が起きたのかもう一度見てみよう。
 椰子の実(炎)が飛んできた。
 殲術の構えを使用したヒナタさんが飛び込んだ。
 椰子の実に対し、ヒナタさんが振り抜いた。
 モンスターにヒナタさんの打ち返した炎が……おや?
 ヒナタさん、よく見たら打ち漏らしがあったようで、後ろにいたヴァルさんに飛び火していたようです。
「くぁっはっは〜、ちょこ〜〜っとごめんね〜〜♪」
 ヴァルに謝るヒナタだが、あまり悪いとは思っていないらしい。しかしヴァルさん燃えてますが。
「う、うおおぉおぉお!!」
 もう何度目のヴァルの叫びだろう。だが幸か不幸か燃え上がる中立ち上がるヴァル。
 一度死んだ漢はこうまで強いものか。
「まだだ……まだ……くたばっちゃいねぇぜっっ!!」
 大きく一つ気合いを入れるとヴァルは駆け出す。
「くぁ〜〜〜!」
 そのあとに続くヒナタ。
 ホカゲも獅子へと辿り付く。
 
「最高の仲間達だ」

 その言葉は誰から発せられたのかはわからない。だがその場にいた全員の耳に届いたことだけは確かである。そしてその言葉と被るように加えられた冒険者達の渾身の一撃に耐えられる程の生命力は、最早獅子に残ってはいなかった。

●西方の空
「子供達の事は俺達に任せて、安らかに眠れ」
 ルイは二度と動くことのないその獅子の骸を見つめながら声を投げかける。
「……汝の魂に、グリモアの加護があらんことを」
 ホカゲは軽く膝をつくと静かに祈りを捧げる。
「てめぇは最後まで立派な戦士だったぜ。あとはゆっくり休んでくれや」
 大剣を肩に担ぎながらギョロリと目を光らせるヴァル。傷はもう大丈夫ですか。
「やれやれ、こんな奴がまだまだいるんやろうな」
 深い溜め息を吐きながらクロが呟くが、しかしまだまだいるからこそ倒さなければならない敵であることも、クロは理解している。
(「望んで叶うわけではないがもし過去に戻ってやり直せたら、同盟で一緒に冒険ができたかもな――すまない。せめて花を手向けよう」)
 デューンは静かに獅子の骸に青い薔薇を手向ける。
 冒険者達はふと空を見上げると、その空の紅があまりにも鮮やかで、それ以上何も言うことは出来ず、その場をあとにするのだった。
 
 後方で訳の分からぬ高笑いをしている紅ペンギンを残して。


マスター:湯豆腐 紹介ページ
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作成日:2006/06/10
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重傷者:なし
死亡者:なし
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