ツキユーの合同誕生パーティー



<オープニング>


「さて、私の誕生パーティーを開く事にしましょう」
 例によって、ツキユーはまた変な事を言い出した。
「いや、お前の誕生日は12月だろう」
 バットを磨きながら、その発言を小耳に挟んだエミルが素早くツッコむ。
「何を言いますか、誕生日とは己がこの世に生を受けた事を祝い、感謝する日です。今日なんとなく生まれてきて良かったなーと思ったから、今日が誕生日である事になんら問題はありません」
「ふむ、確かに……」
 屁理屈で納得するエミル。全然確かじゃない。
「そうだ! ついでだから他の人の誕生も祝ってしまいしょう。参加者を募る事にしますかね」
 その場の思いつきで参加者を集めに消えていくツキユー。一人残されたエミル。
「……会場の手配とスルメの用意でもしておくか」
 ポリポリと頭を掻きながら、エミルは呟くのだった。

マスターからのコメントを見る

参加者
NPC:千の悲しみを識る霊査士・ツキユー(a90076)



<リプレイ>

●気絶1回目
 だだっぴろい原っぱには、草花以外に何も無かった。
「こ、ここでやるんですか……!」
 ミミックは思わずつっこむ。ひゅるりらーと風が通り抜けていく。
「そうですよ、何人集まるかもわかりませんでしたし……」
 ツキユーは言いながら芝生の上にシートを敷くと、近くに転がっていた石を重しにする。
「なにか間違いがあっても、酒場に迷惑がかかりません」
 既に自分が気絶に陥る事を前提にしていた。覚悟は既に完了済だ。
「おーいエミル、キャッチボールしようぜ」
「ああ、構わないぞ」
 原っぱという事もあり、デューンとエミルは持参したマイグラブでキャッチボールに興じ始めた。
 向こうではシュシュが手作りのお弁当を広げ始めている。
「みんながみんな、好きなことをやり始めてますね……」
 ポリポリと頬を掻くミミック。まとまりがないというか、フリーダムすぎるというか。
「まあ、ちゃんとやる時はやる方々ですから。心配いりませんよ……おっ、蛇たんじゃないですか」
 ツキユーはミミックの召喚獣であるペインヴァイパーに興味を示し始めた。新しいものには興味津々だ。
「噂には聞いてましたけど、本当に3つ首全部、色が変わるんですねー。ハビたんは色が変わらないかな、エメラルドグリーンにしたいんですけれど」
 そんな事を言いながら、ふとツキユーはポンと手を打ったかと思うと、おもむろにメルバルを引っ張ってきた。
「蛇たんは鳥とか食べますかね?」
「オレ様は食用じゃねー!!」
「ツキユー殿30.41369歳おめでとうございます。ケーキとローストチキンを持ってきましたよ」
 謎の年齢を祝いにくるタケル、恐らく現在の日にちとツキユーの本当の誕生日から割り出した数値なのだろう、涙ぐましい努力だ。
「お、うまそーなチキンだな! こりゃ食事が楽しみだぜ」
 そしてメルバルはきっと自分がチキンレッグだという事も忘れている。
「ツキユーさんおめでとうおめでとう!」
 既に酒が入っているのか、ろれつが怪しいシェードがふらふらツキユーへやってきた。コップ酒を渡すとムリヤリ乾杯する。
「はいはい、シェードさんもおめでとうございます」
 グラスを合わせるツキユー。シェードはうんうんと深く頷く。
「うんおめでとう、おめでとう……こんな私を生んでくれた両親もありがとう! 育ててくれた義父もありがとう!」
 すっかり出来上がっている。
「おーいツキユー、俺を祝ってくれ……って、随分飲んでるなシェード」
 重傷をおしてパーティーに参加したワスプはやってくるなり、酒の匂いに思わず鼻を摘む。
「ワスプさんはいつもお祝いありがとうで重傷おめでとー……てなんでやねん!?」
 一人ボケ一人ツッコミをかましたかと思うとケラケラ笑いだすシェード。
「お疲れ様で安静にしてくださいなー。ささ一杯」
 そして口を差し挟む間もなくワスプにジュースを勧めはじめる。
「……ワスプさん、おめでとうございます。そして、よろしくお願いします」
「ああ、わかった」
 諦めたような口調でワスプはシェードの相手をするのだった。
「ふう、これで一旦は落ち着いたかな……」
 安堵の溜息をつくツキユーだったが、一瞬の油断が命取り。
「お誕生日おめでとうだよぉ、お誕生日じゃない人もおめでとうだよぉ」
 足元、死角からサクヤが満面の笑顔でツキユーへ抱きついた。
 その勢いは苛烈で、サクヤの頭がツキユーの腹部にめり込む。
「ぐほっ!」
 血を吐きながら体をくの字に折り曲げるツキユー。
 つまるところ、気絶である。
「はあ……回復アビ満載の意味がありましたね」
 なんとなくこのような事態を予期していたのだろう、やってきたシュシュが命の抱擁で気絶を回復してやる。
「ツキユーさーん! ああっ、ツキユーさんが女の人を押し倒してますっ!!」
「老いたかと思ったが、まだまだ若いなツキユー」
「わ、私だって大きくなればいつの日か……歳の差なんかに負けませんっ!」
 そこにやってきて誤解するところだけ誤解するエルシー、ユーリィカ、ギンバイカといったツキユーを嫌いじゃない奇特な方々。
「あっはっは、やっぱりだ。思ったとおり面白いねぇ♪」
 そんな光景を遠巻きに見ながら、フレイは酒をぐびりと飲み干す。
「お、あなたもいける口ですね。どうぞどうぞ」
 フレイに目をつけたストラタムが、空いた杯に酒を傾けた。
「ありゃ、悪いわねぇ。あんたとは全く面識ないのに」
 ととと、とおこぼれを頂戴するフレイ。ストラタムは歌うように言葉を紡ぎ、杯を合わせた。
「それはどこのどいつなのかだとか、数えでいくつになったとか。あんまり深いこと考えずに、祝杯掲げてはいカンパーイ。面白おかしいこの一日に、日が暮れるまで乾杯しましょう」

●気絶2回目
「とりあえず、誤解ですから」
 10分後、気絶から復活したツキユーは詰問に殺到したファンクラブ面々に説明する。
「なーんだ、つまんなーい」
 頭の後ろで腕を組んで、頬を膨らますルリニャ。
「それよりツキユーさん、ボクついこの前誕生日だったんだよ、お祝いしてー☆」
 抱きつこうとするルリニャに対して、腰を落として衝撃に備えるツキユー。もはや病気であり、この調子では一生彼女はできないだろう。
「ちぇー。それじゃまたたびとか持ってない? 欲しいなー」
「猫みたいですね……無いんで、これで我慢してくださいよ」
 ツキユーは言うと、足元に咲いた小さな花を摘んでルリニャに手渡す。
「お誕生日おめでとうございます、ルリニャさん」
「あ、ツキユーさん、私も私も!」
「はいはい、エルシーさん、お誕生日おめでとうございます」
 薄い桜色の花を一輪手渡すと、エルシーは感激で腰砕けになる。
「ああ……もう私死んでも良いです……」
 命を粗末にしてはいけない。
「ギンバイカさんには、タンポポを。もう綿毛ばっかですけど……おめでとう」
 ギンバイカにも花を渡していると、ギルガメッシュが元気にやってきた。
「よっ、ツキユー君誕生日おめでとーっ!!」
 彼女はツキユーをこの原っぱで十字架にはりつけるつもりだったが、諸々の理由によりそれは無理だった。
「あ、皆さんでツキユーさんを胴上げしようと思いますの。あなたもご一緒に、どうですか?」
 そうもちかけるリュイシンはツキユーの服に花を挿していた。どうやら胴上げの準備だったらしい事にツキユーも気付く。
「ええっ、胴上げなんて……結構ですよ、年末のR−1グランプリ優勝まで取っておきますよ」
「なによR−1グランプリって」
 髪型をお嬢様結びにし、メガネをかけ、リボンを随所に散りばめてエルルのような格好をしたババロアが尋ねる。
「霊査No.1グランプリですよ、私の脳内でその年最強の霊査士が決定します。というかその格好こそなんですか」
「せっかくのパーティーなんだから、おめかししたのよ。この服は胸のあたりの風通しがいいのね、スースーするわ」
 それは胸が無い所為ではないかとは、口が裂けてもいえないツキユー。思わず押し黙る。これで反論の機会を失ってしまった。
「そんなこと言わずに、大人しく胴上げされてくださいよ。もう呼びかけてますから」
 リュイシンの言うとおり、エルシーが周りの人々に胴上げの参加を呼びかけはじめてしまっている。
 仕方ない、とツキユーは腹を括った。
「わかりました、胴上げしてもらいましょう。けど、絶対途中で落とさないで下さいよ、絶対ですよ!?」
「ほう……『絶対』だな」
 ニヤリと笑うティキ。
「ええ、『絶対』ですね」
 真意を汲み取ったとばかりにニューラも頷く。胴上げに集まる冒険者達。
「せーのっ! わっーしょい、わーっしょい、わーっしょい!!」
 ツキユーが3回、宙に舞う。周りではやリュイシンやギンバイカが紙吹雪を撒き散らしている。
 そして4回目は、無かった。
 びたーんという激しい音。
 ヒーリングウェーブをかけるキララの声が原っぱに木霊した。
「おーい、シュシュさ〜ん、また出番よ〜!!」

●プレゼントのお時間
「さて、そろそろ私へのプレゼント授与式に参りましょう……」
 疲労困憊の様子のツキユー。わざわざ原っぱに椅子と机を用意してプレゼント受付を開始する。
「私のプレゼントはこれです。煮てよし焼いてよし食べてよし。更に、困った時には角に頭をぶつけて現実から逃避できるという優れモノです」
 ニューラが差し出したのは火のついたロウソクが突き刺さった豆腐だった。
「ありがとうございます、私の健康も気遣ってケーキじゃなくて豆腐にしてくれたんですね」
 血の涙を流して喜ぶツキユー。きっと感動しているのだろう。
「はじめましてっ、手作りの割り箸人形・箸子さんですよっ! あと、ボク昨日誕生日だったんで祝ってくださいね〜☆」
 シアンが差し出したものは木の箸で組み上げられた人形のようだ。こういうのは好きらしい、まじまじと観察しながら受け取るツキユー。
「ありがとうございます、シアンさんもお誕生日、おめでとうございますね」
「はい、カレーピザ」
 ババロアはカレー味のピザを焼いてきた。面にはチーズやらでツキユーの顔が描かれている。
「ちょっと焦げて形が崩れてますけれど、本当の私よりイケメンですね。くやしい……」
「私のは秘伝の滋養強壮剤です。効果は抜群ですが、どうなるか誰にもわからない副作用がある逸品で、主に罰ゲ……いえ、度胸試しに使われています」
 リュイシンが差し出したのは琥珀色の液体が詰まった瓶だった。
「ありがとうございます。また気絶したら本当にやばいので、後でゆっくり頂きますね」
 次にギルガメッシュが、顔を赤らめながら風呂敷を突き出した。
「えっと……こ、これあげるっ。べ、別に誕生日プレゼントとかじゃないんだからねっ!!」
 ツキユーが風呂敷を受け取ると、脱兎のように逃げ去っていく。
「今流行りのツンデレですかね」
 風呂敷の中身を確認する。出てきたのは金塊だった。
「うほほ、誕生日ってこんなに儲かっちゃうの」
 ツキユーは金に弱かった。
「ほい、赤ワインだ。美味いぞ」
 ユーリィカは取り出した赤ワインの栓を開けると、そのまま口をつけて飲み始める。
「あの、それ、私のプレゼント……」
「ん? 細かい事は気にするな、老けるぞ」
「俺はこれだ」
 ノリスは黄昏色の球体をキャンディボックスから取り出す。
「お、キャンディですか。ありがとうございます、最近喉が痛くて……」
 ツキユーはもらった球体をさっそく口に含むが、全く甘くない。
「それは見せびらかしように持ってきたダンブリ石だった。返してくれ」
「……そうですか」
 次にどーんと走りながらサクヤがやってくる。警戒するツキユー。
「サクヤのどうぶつクッキーどうぞなのぉ〜」
「これはクッキー、なんですか」
 良くわからない造形の、良くわからない固形物を渡されるツキユー。思わず受け取りを迷う。
「サクヤ、頑張って作ったんだよぉ……?」
 涙目で上目遣いを見せるサクヤ。ツキユーは泣く泣くクッキーを受け取るのだった。
 ちなみにその後、ツキユーは強壮剤でクッキーを飲み干そうとして気絶したのだが、それはまた別のお話。

●喜びの歌
「さて、それじゃそろそろ宴会もクライマックスです。歌を唄いますか!」
 ツキユーが叫んで皆を注目させる。
「大きな声で、ハッピーバースデーを祝いましょう!」
 ニューラが琴で伴奏を開始する。
「よし、歌うぞ! はっぴばすで〜・とぅ・オレ様〜」
 一番に乗ってきたのはメルバルだった。拳を振り上げてノリノリで歌いはじめる。
 続くように、皆も歌いだす。この世に生まれた喜びを、今生きている喜びを込めた歌を。
 宴会はこうして、大団円を迎えるのだった。


マスター:蘇我県 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:22人
作成日:2006/06/01
得票数:ダーク1  ほのぼの27  コメディ6  えっち2 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
 
黒猫吸血姫・ルリニャ(a36846)  2015年12月02日 21時  通報
ツキユーさんにもらったお花、押し花にして大事にとってあるんだよ!

月下に咲く花・エルシー(a10291)  2010年06月30日 23時  通報
ツキユーさんに祝ってもらえるなんて光栄すぎます!嬉しかった〜!
ツキユーさんも胴上げできて(ん?)良かったです☆