【エバーグリーンの挿話】夕菅の道・澄明



<オープニング>


 そこは、地下墓地の花冠。
 そこは、楽園の形代。
 あるいは、死者の花園。

 追憶の色をした花咲き乱れる死者の道。
 その果てには断頭台と呼ばれる岩山が聳え立ち。
 頂には、楽園に似せて花が咲き給う。


「お墓参りに、行きたいんです。僕はまだ、牢屋番だから」

 セイモアは、初めて酒場を訪れた時に見せたのと同じ、春の温い夕暮れのような微笑を浮かべて、ミカヤに言った。

「ああ、ミストラには今時分に、死者が帰るのだと言う口伝があったな」
「はい。もう夕菅が咲く頃ですから」

 差し向かい、互いに薄荷茶を啜りながら、老媼は想いを追う様に双眸を伏せ、青年は笑みを物悲しげなものに変える。
 扉が開く音がして、酒場に風が吹き込んだ。
 暖められた土の匂い。町が生み出す遠い喧騒が聞こえる。荷車が軋る音を立てて行き、物売りは客を呼び込み、移ろい行く日々の、大切だが他愛も無い様々な事を話しながら人々が通り過ぎ。
 やがてミカヤはセイモアへと、金の霞掛かった深緑の目を戻した。

「行けば良いだろう。もうおぬしと世界を隔てる壁は己の心しかあるまい」
「――……誰かと一緒に行きたいんです。ずっと独りで墓参りをしてました。でも、もう独りは嫌ですから。きっと行っても墓の前で、僕は泣いているだけでしょうけれど、あの、花も綺麗ですし、空気も美味しいですし、ええと……」
「わかった。わかったから情けない顔をするな」

 溜息を一つ。それからミカヤは常には厳しい目元を微かに和ませる。
 春から初夏の気配漂う窓の外に目を遣り、ぼんやりと2人の遣り取りを聞いていたユーゴが、セイモアを見て不意に口を開いた。

「わたしは『道標』が欲しい。戦って死んだひとを送る儀式があるんだろ?」
「ええ、ありますよ」

 ミストラに伝わる古い古い、あの熱い土地を守る為の戦いがあった頃にまで遡る儀式。
 敵と――そして人生と戦って死んだ者達を送る儀式として今に伝わる。
 盾を持ち剣を持ち、口伝の戦歌に乗せて打ち鳴らしながら、ミストラから断頭台の頂まで上るだけの簡素な儀式で、終えた後に『道標』と呼ばれる死んだ獣の骨から削り出し呪印を刻んだ小さな板を得る。
 彼、もしくは彼女のいない世界で行き続けて行く為の道標として。
 生者にとっての慰めでしか無い儀式ですけれど、区切りの為に、祈りの為に、儀式が必要な時があるでしょう。望まれれば行いますよ、と青年はまた唇に微かな笑みを乗せる。

「うん……。それだけじゃかなしいから、お茶とお菓子と料理と、色々な飲み物とたくさんの皆で、ピクニックがしたいな。断頭台の頂でピクニック。わたしは花がすきだから」
「今ならば、春の花が断頭台の淵から溢れる程に咲いていて、とてもとても美しい世界が広がっていますよ。儀式とか関係なく、花を眺めに行くのも良いと思います」

 そうだな、とユーゴは再び窓の外に目を移す。
 深海色の瞳の中で青葉と白い花が揺れる。

「ウツギの花が綺麗ですね」

 セイモアは物悲しげな笑みを和めてユーゴの視線を追い。
 きっとうんと寂しくて、そして楽しい日になるだろう。
 そう、皆で過ごす一日を思って、幸せそうに目を細めた。

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参加者
NPC:常磐の霊査士・ミカヤ(a90159)



<リプレイ>

●夕菅の道・澄明
 熱を孕んだ風が吹き抜ける。
 天蓋は様々な青に埋め尽くされ、白熱する太陽からは、地に満ちる生命の緑を等しく際立たせる陽光が降り注ぐ。
 木々や草花は生きる喜びを歌う様に風と揺れ、磨り硝子を透かして見る灯火の如くに、緑の内側から仄かな光を溢れさせていると錯覚する程に鮮やかだった。
 死者の道――道程を示す夕菅の花は未だ開かず、静かに夜を待っている。
 道の果てから風に乗り、シャァァン、シャァァンと鋼を鳴らす音が聞こえる。
 祭儀の盾と剣とを打ち合わせる音だ。
 光の下で咲く花の中を、緑の中を、熱せられて乾いた土の匂いの中を、夏を思わす光の中を、そして溢るる生命の中を、目には見えぬ道を辿り、戦歌の祭列は断頭台を目指す。
 北の荒地で命が果て、大きな戦いが幾度もあって、また沢山の命が世界の掌から零れ落ちた。
 さらさらと絶え間なく命は失われて行く。
 その中には知っている人々もいた。
 メイフェアは、小さきその手に握られた盾と剣を打ち合わせながら、高く低く響いて自然が紡ぐ囁き声と調和する、戦人の歌を歌う。
 たとえ自分自身の慰めに過ぎなくても、魂がどこか暖かな場所に辿り着く様に祈りを込めて歌いながら、少女と戦歌の祭列は断頭台の頂を目指す。
 彼方から此方へと吹く風が歌声を攫い、首を立たれた人に似た岩山を駆け上がる。
 死者が往く、と伝わる風だ。
「お疲れ様でしたの……ありがとう」
 あなた方の分も戦って、大切な人達を護り続けますの、ずっと……。
 メイフェアの呟きと思いを乗せて、風は生者には見えぬ何処かへと去って行く。
 シャァァン、シャァァンと鋼を鳴らす音が続き、戦人の歌は螺旋を描いて、魂と思いの最後の一滴を何処かへと送り出し、気が付けば目の前には、花咲き誇る断頭台の頂が広がっていた。

 口伝の戦歌を心に刻みながら、ガイヤは花野を見渡す。
 二度目の断頭台。前は一人だったけれど、今日は違っていた。
「あむ。なぁん♪ おいしいなぁん。団長は良い主夫になれるなぁん」
 お弁当を広げ、サンドイッチを食べて満面の笑みを浮かべるラマナを暖かく見遣るガイヤ。
「うん。おいしい……」
 誘われてサンドイッチを食べたユーゴも、真剣な表情で頷く。
「ユーゴちゃんも良いお嫁さんになれるなぁん」
「そうなのか?」
「そうなのなぁん。誰だってなんにだってなれるなぁん♪」
「ああ、そうだな――」
 昔――冒険者になる前の日々を思いながら、ガイヤは頷いた。
 あの日々を経て、今ここにいる。人は何にだってなれる。
 一緒に踊ろうとユーゴの手を引くラマナ。踊って笑って見送ろうと、跳ねる様に舞い始める。吊られて不器用に踊るユーゴ。ラマナとガイヤの笑い声が弾ける。
 真白の花が揺れる。名前が思い出せない花。グラースプはそっと指先で触れながら、ミカヤを見て微かに微笑んだ。
「皆、居なくなってしまうんです。先に、行ってしまうんです。それがこれからも続くのでしょう――戦いが終わることは、きっと無いのだから……」
 死地に立つ事も境界線を越える事も怖くないけれど、置いていかれるのはとても辛い――そうグラースプが続ける。
「ああ、辛い。それでも、誰かを愛する事は止められないのだな……」
 ミカヤの言葉を吹き払い風が往く。
 緑に煌きが走り、花々が奇跡の様に輝き、世界は短い命を謳歌する。
「最期に見る景色がこんな綺麗なものだったらいいのだけど……」
 まあ、無理な願いだなあ、とグラースプは苦く笑う。
 私はお前より先には死なんよと、ミカヤはただ穏やかに、青年の頭を撫ぜた。
 その姿にツヅは微かにマムを思い出した。
 沢山の物語を綴りなさいと、ツヅと言う名をくれた座長のマム。
 苗字をくれたのはエンだった。
 アイレだろ、と言って、風とリズム――流れ奏でる風の名をくれた。
 ツヅは自分の胸に手を押し当てて、目に痛い程の青を溢れさせる空を見上げる。
 生と死に隔てられていても、絆と思い出が切れる事は無い。
 時々胸が痛むし、前を向いて生きるのは難しいとも思うけれど、彼はそこにいて、ここにもいる。
 ツヅはぐいと目元を拭って視界を晴らし、握り締めていた太陽色の飴玉をポケットに仕舞って、サンドイッチを持って人の輪へ。
 既に暖かな食卓の用意は出来ていた。空色の大きな大きなラグを敷いて、サンドイッチや菓子や持ち寄った茶やほんの少しのお酒を並べる。沢山の人の話し声。それから草花が風にざわめく清かな音。綺麗な花を見て、皆で茶を楽しむ。北の荒野にも、地獄にも無い幸せを、熱せられた草の息吹と共に吸い込むバーミリオン。
「ミカヤさんにもまた会えて、すごい嬉しいんだよっ」
「私も嬉しく思うぞ、良く戻った。辛い思いを沢山したね、それでも希望の名を戴く冒険者として頑張ったのだね……」、
 ミカヤはバーミリオンの頭を撫ぜ、それから抱き締める。
「美味いな、コレ。リツが作ったんだろ?」
 バルバラがサンドイッチを齧ってリツに笑い掛ける。
「きっと皆さんで食べるから、美味しいのだと思いますよ」
 暖かな情景があると、食事も紅茶も、ただの空気でさえ美味しく感じられますね、と微笑むリツ。そうかもな、お前は幸せが何かを良く知ってるね。もう一つサンドイッチ咥え、何だか幸せそうに、少しだけ寂しそうに、バルバラはぼんやりとミカヤとバーミリオンを見つめる。そんなバルバラに、林檎のブランデー入りの紅茶を勧めるシュシュ。
「ああ――暖かいな」
 一口飲んでバルバラはぽつりと言った。少し多めに酒を入れた紅茶を舐める様に呑みながら、暖かいですねと微笑んでシュシュは花々に目を移す。
 大好きな人たちがいて、綺麗な花が咲いていて、陽射しが温かくて、だから今日はとても幸せ。幸せが此処にあるから、何度転んでも立ち上がれる、前に進める、何度でも戦える――静かに瞳を伏せて、シュシュはそっと【道標】に触れる。
「お肌のお手入れ怠ってないかい? ミカヤ老」
「もうそのような歳ではないよ、ボサツ」
 悪戯っぽい笑顔のボサツに、やれやれとミカヤは笑みを返す。
「……ただいま」
「お帰り」
 ぽつりと付け加えたボサツを愛情を込めて抱くミヤカ。踊りから戻って来て、シュシュに貰ったタルトを一心に食べていたユーゴが、2人の遣り取りを見て小首を傾げる。深い蒼色の瞳を見て、そうか彼女がと思い至り、始めましてと言おうとしたボサツを遮って、ユーゴはボサツの身体をぎゅっと抱き締めた。
「私の真似をしているのだよ」
 痛みに聡い子だから慰めようとしているのだろうとミカヤが言う。くすぐったい様な笑みを浮かべて、ボサツはユーゴの頭を撫ぜた。
 おなかいっぱい食べた後は、皆で草叢に寝転んだ。
 草の清かな良い香り。
「ねえ、みんな。笑って幸せでいてね」
 僕はちゃんとさよならして、今は幸せで笑えるから、彼方に行ってしまったみんなも、幸せでいてね。草の中に寝転んで、ヘルディスターも呟く。戦歌を歌い、捧げた祈りをもう一度繰り返す。
 死んでからも不幸じゃつまんないから。
 だから、生きてる皆も死んじゃった皆も、幸せになってね。何時か何処かで巡るり会うその時に、笑顔で入られる様に。
「もう彼方へ行かれてしまったでしょうか……」
 蒼が滴り落ちそうな空を見上げ、寝転んだハナが呟く。
 弔いになればと、戦歌を歌い断頭台の頂に至った。
 彼等は今どこにいるのだろう。
「まだその辺に、いるのかも知れないね」
 傍らのバルバラが答えた。それならば、とハナは目を伏せる。ありがとうという言葉を口に、強くなるという誓いを胸に、花と草の香りに包まれて、優しい眠りの中に落ちて行く。
 ヒヅキは寝転ぶ者達から金木犀へ目を移す。あの戦いの日々を忘れることなく胸に留め、きっとこれからも生きて行く。甘さや悔いでは無く、それが一緒に生きた仲間の大切な思い出だから。
 彼女は――そして彼らは笑って許してくれるだろうか。彼らは、やっぱり仕方が無いと苦笑するだろうか。
「ありがとう……」
 戻って来ているかも知れない彼女達に感謝を捧げて紅茶を一口。世界が風と踊る音を聞きながら、ヒヅキはそっと目を伏せる。
「これから冒険者として生きていくのであれば、命を奪う事や知り合いを失う事もでてくるでしょうから……その時には今日の儀式や道標が、ささやかながら救いになる事もあるかと思うのです」
 ハルカは手の上の【道標】に目を落とす。ミカヤはその上に手を重ね、辛さを乗り越え、冒険者としての喜びと良き仲間が得られるように祈っておるよ、と言った。
 湯をカップに注ぐ音が響く。チューリップの花弁の欠片が、カップの底へと沈んで行く。
 紅茶の表面に、あの日見聞きした事をもう一度見出しながら、ノリスはふとユビキタスに問うた。
「地獄へ行って骨を眺めたいと思う事はあるか?」
「あるわ」
 機会があれば護衛をしようと言うノリスに物憂い笑みを返して紅茶を啜りながら、ユビキタスは鋼色の眼差しを彼方へと向ける。
 離れた場所ではレーダが、同じ方角を見ていた。
 大切な人達が沢山いたのに、骨の橋が落ちた時、既に重傷を負っていて後方にいた。何時か天涯の名を戴く紅い花の中で誓い、それから幾許かの経験を経て力を得たけれど、「その時」に「その場所」にいないのなら意味がない。
「結局、あの頃から俺は何も変わっていない……」
 呟くレーダの手を、ユーゴはぎゅっと握り締める。不器用ながら励まそうとしているのだろう。2人は何も言わずただずっと、緑が走る熱い大地の彼方を見ていた。
「ミカヤさん、ご無沙汰しています」
「久しいのう、ジェルド」
 雪の如き花弁を降らせるウツギの花を眺めながら長い物思いに耽っていたジェルドが、ミカヤを見止めて会釈する。ミカヤは皺深い目元を和ませて応えた。
「もう一年も経つのですね……」
 少女とこの場所を訪れたのは一年も前の事。考えるさせられる事の多い一年だったから、それをずっと思い出していたのだと、ジェルドは目を細めた。
 そうだな、世界も私の回りも、随分様変わりしてしまったよ、とミカヤもまた目を細めウツギの花を見る。
「ここには花が沢山咲いているけれど……夕方に咲く花は、朝には萎んでしまっているんだよね」
「うん……」
 アニエスの言葉に頷くユーゴ。同じ空の下で咲いているのに、アニエスにはそれが何だか少し寂しかった。【道標】とヴァイオリンを傍らに、蕾んだままの夕菅を見遣る。けれどきっと、日が落ちたら花は咲くのだろう。花は弛まず咲く様に、人はいつか必ず死ぬ。けれど、せめて花も実も残さずに逝かぬように――揺れる花に、誓いに似た思いを抱くアニエス。
 目の前に咲き誇る花々に、ユーゴが好きだと言っていた羊草は無かったけれど、世界は春が夏に手渡す花篭を覗いた様に美しく。
 その中で、マイトは弓を立てて膝を付く。
「この地で戦い、亡くなった人への鎮魂の舞を舞う。それが、道しるべになるのなら、私は、そのまま、舞いましょう――」
 弦を一鳴らし。流れるように立ち上がり、風に舞う色とりどりの花弁と風に吹かれる柳の如くに優美な線を描き、死と生を表して静と動を織り交ぜながら、マイトは祈りを舞へと昇華する。
「滅びた村に行き、土に触れて、花を植えました。人はこうして日々を暮らすのだと思うと、当たり前のことですが何やら感慨深く思えました……」
 マイトの舞をミカヤと共に見ながら、マカーブルは淡々と言葉を紡ぐ。誓いは今も、傷と共に鮮やかな色を伴って胸にあるけれど、優しくも残酷な時の流れは、いつかグドン地域での体験も、懐かしい思い出、等にしてしまうかも知れない。血の匂いは薄らぎ、日常に慣れて――。
「世界を愛しむ事を覚えたのだね、マカーブル」
 マカーブルの思考を断ち、ミカヤは柔らかく微笑む。
 経験を糧に成長し、夕景の中にある家の灯りの様な暖かな思い出を抱いて生きて行けば良い。
過去を思い出にする事は、決して悪い事では無いのだよ、とミカヤはマカーブルを見た。
 紅の裳裾が翻る。また弦が鳴る。断頭台の頂きに立ち、微かな重みを伴って身体を打つ陽光を浴びながら、ストラタムは己の生と、それから義弟を思う。時を止めてしまった義弟。永遠を生きる青年。彼の中の時は、ただ当たり前のようにいつまでも横にいるはずだった人を失って、凍り付いてしまった。
 懐にいつもある汚れた短刀の柄の掠れた名前の文字を辿り、本当に伝えたいことは何も伝えられなかったと呟く青年。止まらぬ時の只中に立ち尽くす彼に道が示されますように。
 死者の道の如くに、夜だけでも良いのです。だからどうか――……。
 祈るストラタムと、マイトの舞に、戦人を送る儀式を重ねて見るクローチェ。
「近しい人間を失うってどんな気持ちなんだろうな……?」
 身近な人は殆どいない。でも、先の戦で誰か死ぬのではないかと少しだけ怯えた。1人だったら戦なんざ怖くないのに、他人の命を心配して怯えるなんて全く馬鹿げてる。そう、クローチェは苦く笑う。
「凄く綺麗な花を一緒に見ようと思ったら、もう枯れていた時みたいな……大好きなこの世界を、もう一緒に味わえないんだ。抱きしめたりキスをしたりもできない……」
 何も分かちあえなくて、悲しくなる――ユーゴの、膝の上で手を握り締めた拳に涙が一粒落ちる。
「これ、やるよ。温かくはないが」
 頬を掻き、そうクローチェが差し出したのはミルク瓶。
「ありがとう。クローチェは……暖かいな」
 そっぽを向くクローチェ。ユーゴは大切そうに、瓶に頬を寄せる。それから2人、生きている事に乾杯をし、一緒に美味しいのって幸せだね、とミルクを味わった。 
「お父さんもお母さんも大好きで……でも、もう声も顔も朧で……これが正しい記憶だと言い切れる程は覚えてなくて……色々思い出して、セイモアさんが仰っていた泣く気持ち、凄く共感できたんです……」
 降り注ぐ光の輪の中で、膝を抱えて座り込むセイモアと2人、花を見ていたファオの、黒の双眸から涙がぽろぽろと零れる。涙を拭いもせず流れるに任せて、静かに紅筏葛を見るセイモアとファオ。
「後悔で足が竦むんです。自由を味わう資格の無い人間なのだと、思い知らされます。泣きながらでも立ち止まらず、歩き続けられる強さが欲しい……」
 セイモアが涙と共に言葉を零した。血が滲むような後悔の言葉を聞きながら、ファオは静かに祈りを捧げる。
 誰にも皆、等しく心の平安が訪れる事を――と。
 陽光に照らされて甘く匂い立つ断頭台の上を、爽やかな風が吹き抜ける。
 緑は揺れて、命そのもので世界を美しく彩る。
 ユリカが心を癒すように見詰める一輪の百合の花の花弁にも、光の雫が舞い降りて、白を柔らかく輝かせた。
 少女は静かに目を伏せる。
 風の唄を聞きながら、ユリカは百合と同じ様に、静かで物柔らかな笑みを輝かせた。


マスター:中原塔子 紹介ページ
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作成日:2006/06/05
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