りろーでっど



         


<オープニング>


「レィズは……居ないか?」
 いつもの酒場に現れた紅き柘榴の翼剣・キィルス(a90077)はサングラスを外しながら中を見渡した。その人物の代わりに返事をしたのは白光の癒杖・ルディリア(a90219)。
「さっきまで居たと思ったけど……何か用事でもあったの?」
「いや、居ないなら良いんだ。アイツに見付かりたくないから」
「ほぇ? 何なのよ?」
「ん、ヒミツさよ。俺が来た事も黙っといて。それじゃ、ちょっと出掛けてくるさね」
 そう言ってサングラスをかけ直し、黒コートを翻してキィルスは酒場から出ていった。
 6月なのに暑そう。ルディはぼんやりそう思う。でも格好良いからイイか、なんて。
「シークレット・ミッションの最中やとしたら、正しいファッションやな」
「うきゃっ!?」
 ルディが座っていた席のテーブルクロスがめくれ上がり、現れるは翡翠の霊査士・レィズ(a90099)。何時から潜んでいたとか無粋なツッコミは無しにして頂こう。
 立ち上がり椅子に座ってジュースを注文し、一息つくとレィズは眉顰めてキィルスの謎めいた行動についてルディに話す。
「何かオレに内緒で企んでる様子なんやわ。しかーし、このレィズの目は誤魔化せへん。キィがミスミの町で何らかの情報を受け取る為に待ち合わせしとるのはお見通しや!」
 どーやってどこからそんな情報を、とルディが思うと。二人の黒服の男女がレィズの側に近づいた。
「それじゃ、手筈通り俺達もキィさんの後を追わせて貰いますね」
「所で何で私まで黒尽くめの必要が……」
「エージェントとしての嗜みや」
 えーじぇんとって、なぁに。


 ミスミの町の伝統有る町並みの一角。建物に囲まれた広場では鳩が地面にて餌をついばむ。
 その広場の日当たりの良いベンチに腰掛ける女性。彼女の姿を認めたキィルスはサングラスを外しながら問いかけた。
「待たせたさね、ベルフラウ」
「今日和、キィルスさん。キャンディは如何です?」
「ん……余りモタモタしてられないけど……」
 差し出された飴玉を口に放り込むとキィルスは森に花冠を捧ぐ霊査士・ベルフラウ(a90084)の横に腰掛けて問いかける視線を向ける。ベルフラウは静かに微笑み頷くと、ポーチから折り畳まれた紙を取りだし差し出した。
「頼まれていた手配はしておきました。これは日時と場所のメモです」
「恩に着るさよ、ベルフラウ」
 彼は何かが書かれた二つ折りのメモを受け取り、軽く目を通すとそれを胸ポケットに収めた。
「ベルフラウさん――そろそろ、行かないと」
 庭園の守護者・ハシュエル(a90154)がいつの間にかベルフラウの後ろに立ち、帰りを促した。ベルフラウは立ち上がるとキィルスに一言告げ、ハシュエルのエスコートで去っていく。
「レィズさんは貴方が秘密でこうして何かしようとしている事に気付いてる様ですよ。間もなくレィズさんの放ったエージェント達が貴方を追ってくる筈です。――ご武運を」
 それって何――キィルスが問い返すも答えも無いまま、彼女達は去っていく。
 口の中で転がる飴が小さくなり。ガチッと割れた時。
 羽音がざわめいた。振り返ると黒尽くめの男が此方に歩んでくる姿。彼へ道を明け渡す様に鳩が空に飛び去っていく。
「探しましたよ、キィさん」
 いつもの眼鏡の代わりにサングラスかけた黒人・ラナンキュラス(a90216)がそう言って立ち止まった。後ろからも靴音。キィルスが振り返ると黒スーツに身を包んだ逆境ナイト・レキサナート(a90113)の姿もある。
「怨みは無いが……レィズに頼まれてな。コソコソと何を企んでいるのか捕まえて暴け、と言う事だ」

『町中やし派手なアビリティで仕留める訳にもいかへん。ここは人海戦術や』
 レィズは酒場にいた冒険者達にそう協力を呼び掛けた。
『アイツは足早いから追うのも一苦労やと思うけど。何とかとっ捕まえて何企んでるか聞き出して来や』
 キィルスが何をしようとしているか興味本位の者や、ただ面白そうだという理由でも構わない。レィズはそうやって追っ手の募集をかけたのであった。

「エージェントって諜報員さよね……力尽くの諜報?」
「私に聞かれても困る」
 キィルスのぼやきに似たツッコミにレキサナートは困った顔で答えた。
 気が付いたら視界にチラホラ見える黒服の姿。レィズが呼び集めた即席エージェント達か。
「逃がしませんよ」
 キィルスvs冒険者エージェント軍団のチェイスが今始まる!!

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参加者
NPC:紅き柘榴の翼剣・キィルス(a90077)



<リプレイ>

 一糸乱れぬ行進でキィルスに迫り近づく黒服ズ。
「ヴァーゴ君、私と会うのを知っていたのかね?」
 黒スーツで決め、無表情に言い放つマイト。首をふるふると振って否定するキィルス。額の汗は暑いせいだけじゃなく。
 右を向いても左を向いても刺客と名乗るエージェントだらけ。知らない。俺はこんな奴等と会うなんて、ほんの数十秒前まで思ってもいなかった。
「我々から逃げられるとでも?」
 ヨウが一歩近づくと同様にショウも全く同じ動きで進む。迫る黒服達。無機質な表情。キィルスは黒服の居ない後ろへと下がる。
 突き当たる壁。包囲され、突破口を求め視線彷徨わせるキィルス。
 そこに。
「ウィーン、ガッシャン。ウィーン、ガッシャン」
 カクカクした動きの見覚えのある鎧が口で言いながら近づく。一斉に視線向ける黒服達。
「……ディスティン?」
「ギアコップと呼べ。――まぁいい、キィルス殿、早く逃げたまえ」
 味方なのか? 視線で問う彼にディスティンは頷き応える。
「さぁ行け! 逃げようと考えるな、逃げられると知れ!」
「すまん!」
 黒服達に突撃する鎧と擦れ違う様に包囲から抜け出すキィルス。
「逃がすな、追え!」
 集団で鎧をボコる中、マイトが叫び皆追うも。
 すてーん!!
 エージェントに紛れていたスイが地面に敷いてた布を引き上げた。足下を掬われ一斉に転ぶ黒服達。
 道を塞いだザウフェンもキィルスに容赦なく張り倒され、駆ける彼の背中を見上げて不敵な笑み浮かべて言い放った。
「フフ……これで終わったと思うなよ。俺を倒しても第二第三の刺客が必ずや貴様を……」
 しかしその台詞がキィルスの耳に入る事は無く。次いでコートを脱ぎ捨てて襲い来るショウ。だが、ノーマがその前に立ち塞がりキィルスに路地を指し示す。
「あちらに!」
 人気の無い路地を駆け抜けると後からノーマが追ってきた。
「助けてくれてサンキュさね」
「礼に及ばないよ。所で」
 ノーマは黒眼鏡を掛け前髪を上げるとその服を鎧聖降臨で黒スーツに変ずる!
「此処に来てから、ずっと考えてる……どうして青い薬にしなかっ――」
 台詞を言い終える前に顎に蹴りが入った。敵だ、と本能でキィルスは察した結果。
「――レィズの阿呆」
 彼は大きく息を吐き出すとコートを翻して再び駆け出したのだった。

 大きな通りを走り抜けるキィルスを見張る者。建物の上で遠眼鏡を手にしたアールグレイドが下の黒服達に合図を送る。
「あれ、キィルスさん?」
 通りすがりのローズウッドが声かけた。非黒服である彼にキィルスも息切らせ立ち止まる。
「どうしたんだ?」
「俺も良く解らないけど。追われてる」
 へぇと頷いた瞬間、彼の衣服が黒服へと変ずる。
「ま、またか!」
「ほら、えーじぇんとが倒されたら他の人がえーじぇんとになるじゃん」
 撃たれた慈悲の聖槍をイリュージョンステップで辛うじて避けるとキィルスは再び走り出す。
 どんっ!
「きゃっ」
 チャイナドレスの女性と接触、転ばせてしまった。逃亡中だが振り返るキィルス。だが、その顔を見て彼は眉しかめた。
「……ルシェルじゃん」
 男だった。ならいいか、と立ち去ろうとするも。
「酷いですー。でも、これも仕事ですので捕まえさせて頂きますね、キィルスさん♪」
「お前もかっ!?」
 やはり逃げ出すキィルス。彼を見つけたルーシェンは上空にエンブレムシュートを放つ。
『ターゲット発見。直ちに任務遂行する』
 それを合図にわらわら集まってくるエージェント達。
「……待っていたっすよ、ヴァーゴ君」
 リョクとトロンボーンが彼の進路に立ち塞がった。一旦立ち止まった彼に、二人は互いに頷きあって襲いかかるのを受け止めるキィルス。
 そこに周囲がアビスフィールドの闇に覆われた。見るとクローディアの姿。彼女は微笑むと衣裳を黒服に変じて言う。
「試練が男を育てるって言うでしょ。逃げ切れるのを信じてるわ。これも愛なの♪」
「キツイ愛、さね?」
 苦笑で返じるも、二人相手だと流石に辛い。そこにクララが現れ、その手に武器を呼び出した。黒光りするサーベル。それを二人をいなし距離置いたキィルスに投げ寄越す。
「頑張れキィルスさん!」
「助かる!」
 納剣したまま彼は剣を振るい、3人の包囲を抜けるも追っ手はまだまだいる。
「こんにちは、キィルス君。前者には、未来があるが。後者にはないのだよ?」
「悪いな……俺もやらなくてはいけないのでね……」
 ドーリスやアルスが立ち塞がり、ダブル緑の束縛がキィルスを襲う!
 流石にこれには抗えず、葉に拘束されるキィルス。
「さぁ、観念して……」
 じわじわ近づく黒服達。キィルスも観念し出したその時。
 ヒュゥゥ……ン――ザッ!
 革スーツに身を包んだミスティアが上空から降りてきて低い態勢の見事な着地で現れた!
「キィルスさん……わたしは貴方が救世主だと信じているのですよ」
「救世主って、何」
「いいから此処は任せて行って下さい!」
 そう告げて彼女は拘束されたキィルスを押しのけると黒服達相手に一人対峙する!
「ここは、一人足りとも通しません!」
 追おうとする黒服を遮るミスティアを尻目に、キィルスは再び通りを駆け出したのであった。


 黒服達を路地の影でやり過ごし。キィルスはサングラスを外して目をつむり、大きく息を吐いた。
「何だってこんな……」
「ご機嫌如何、兄さん……いえ、Mr.Virgo?」
 首筋に冷たい感触。目を開けるとレノリアがナイフを手に笑む姿。隣にはシンナムの姿もあった。
「クライアントは貴方の行動の目的を知りたがっておられます。一緒に来て頂きますよ……なんちゃってね」
「へ?」
 引かれるナイフに驚くキィルス。彼女は赤毛ヅラと上げ底靴を付け、彼に変装しながら微笑む。
「兄さんの目的くらいは解ってるつもりですよー」
「ここは俺達に任せて行け。追っ手がそこまで迫っている」
 シンナムはクリスタルインセクトに意識を集中しながら彼に言う。追っ手の居る方に駆けたレノリア。鬨の声。黒服達は囮に騙されてくれた模様。
 2人に礼を心の中で述べ、狭い路地を駆けると途中で横道より手招きする者。グラサンかけたダフネである。
「キィルスさん、キィルスさんこっち。この道から抜けられますよ」
 人ひとり通るのがやっとの道をキィルスが前、ダフネが後に続く。と、ダフネは不意に懐から取りだした麻縄を手にしてキィルスの後ろから襲いかかる!
「騙されましたね!」
「なっ!?」
 罠か!? そう思った矢先、上から黒服で決めたリーリーが振ってきてダフネの上に着地した。
「キィルス、ここは僕に任せて先に行け!」
「え、あ、うん」
 術士同士の狭い場所での取っ組み合いを尻目にキィルスは急ぎその場を去るのであった。

「あれ? キィルスさどうしたん?」
 肩で息をしながら通りのオープンカフェのテラス近くに差し掛かるとお茶してたセナが声をかけた。周囲には黒服は見えない。グラスの水を貰おうと彼は側に近づいた。
「……追われてるんだ」
「匿ってあげようか? 此処とか」
 奢ってね、と言いながらテーブルクロスを捲るセナ。キィルスは身体を小さくしてテーブルの下に隠れこんだ。
「で、誰に追われてるん?」
「黒服の集団に――」
「ふぅん? もしかして……」
 バサッと服を脱ぎ捨てる音。ハッとして彼はテーブルクロスを捲ると。
「こんな人?」
 黒服グラサンに身を固めたセナの姿!
 同時に。近くで大きな羊皮紙を読んでいたエルノアーレとシルフィードが揃って此方を向いた。いつの間にか黒服黒眼鏡だし。
 逃げようと慌ててテーブルに頭をぶつけたキィルスに近づくシルフィード。
「Mr.Virgo、大人しくしろ。お前は包囲されている」
「ごめん、キィルス!」
 隣のテーブルクロスの下から這い出てきたのは何故か黒バニースーツ姿のアールタラ。スーツ違うってば。
「ちぃっ!」
 キィルスはテーブルクロス抜きを披露すると、その布をエルノアーレやセナ達に投げつけ覆い被せた。そしてもごもご言ってる隙に脱兎する!
「抵抗する気か……それなら実力行使をさせてもらう」
 シルフィードの号令で駆け出す隠れていた黒服達! 箱の中に隠れていたウィルカナも立ち上がって追おうとするが、足しか出ずにウロウロした挙げ句、味方の黒服に向かって倒れる始末。
「キィルス様ー、待ってくださいなのぉー!」
 追うメルクゥリオもすぐにスタミナ切れてばたんきゅー。アル様頑張って、と言いかけるも、そのアールタラも体力尽きて目の前でへたり込むのが見えた。流石心特化ドリアッド達。
 カフェから離れて振り切ったかと思いきや、彼の前に立ちはだかるはチェリート・シュリ・ルナシアの仲良し3人組。
「ふふ、やっと見つけたわ。悪く思わないことね」
「さて、もう逃げ場はないよ……キィルス君」
 グラサンを押し上げて言うシュリに、じわじわ近づくルナシア。キィルスも構えて対峙する。
 だが状況は一転する。
「ここはわたしに任せて先に行けです! 任務(愛)遂行せよ! ここは通さない!」
 チェリートが突然ルナシアの前に立ち塞がり、シュリに向かって叫ぶ。
「キィルスさん! わたしと一緒に逃げましょう!」
 ぎゅむり。
「うぎゃー!」
 チェリートに踏まれたルナシア。その間にシュリはグラサンとコートを脱ぎ捨ててキィルスの手を掴み、無理矢理その場から逃亡開始!
「有難う……犠牲は忘れない!」
 踏まれた誰かの冥福を祈り涙しながらシュリはキィルスを連れて勢いでその辺の包囲網を脱したのであった。

 狭い路地が交錯する地区。黒ずくめのジャムが屋根の上で標的を見つけ、ハートクレイクアローを撃つべく弓をつがえた。だが、先まで一緒にいたシュリは姿が見えず。……単にはぐれたらしい。
 頬膨らませてジャムは上から黒服達に標的の居場所を知らせる。屋根伝いに走るサガは彼を見つけると立ち塞がる様に飛び降り。
 ぐしゃ。
 大の字に地面にめり込んだ。
 何事も無かった様に早足で去る彼の後を何事も無かった様に起き上がって追うサガ。更に闇に身を潜めていたシュヴァルツも追っ手に加わる。
 影に隠れ身を潜め、何とか集団をやり過ごしたキィルス。小さく息を吐くと後ろに気配。振り向くと煙草の紫煙吐き出すゼクトの姿。
「逃げられると思ってるのかい?」
 どこまでも追い詰める気か。心も、身体も。
 逃げようとした彼の前に、屋根の上から現れたティムとユウの二人が全く同じ仕草でネクタイを締め直しながら近づいて迫る。
 後ろにはゼクト。前にはティムとユウ。抜け出す前にティムの手に掴まり、そのまま壁に投げつけられた。
「ぐっ!?」
 更に首を捕まえられ、締め上げられる。苦しく詰まる息に言葉も出ない。
『あの音が聞こえるかね?』
 ティムの声とユウの声がハモる。あの音とは他の黒服達の近づく足音だろうか。
『君の終わりを告げる死の音だ。さらばだ、ヴァーゴ君……』
 いや、こんなで死ぬなんて縁起でもない。そう彼が思った矢先。首にかかる力が緩んだ。
 建物の上からハルがティム達に蜘蛛糸を投げつけ拘束したのだった。
「キィルスさん逃げてぇえっ!」
「恩に着る!」
 咳き込みながら脱出し、路地を抜け様と進むと手招きする者。警戒しながら近づくと、物陰に引き込まれる。ファスティアンとアルだった。
「大丈夫、僕は捕まえないから」
 ファスティアンはそう言って彼を回復させ、アルは路地の影から周囲を伺って言う。
「逃げ切りなよ?」
 そう言ってウインク一つ。路地から飛び出して、
「いたぞ、南東の方角だ!」
と誤誘導に動いてくれた。
 そして、キィルスは何とか狭い路地の地区の脱出に成功したのだった。

 戻ってきた広場。鳩が地上を歩む最初のシーン。
 違う事と言えば。既に何人かが彼を待っていた事だろうか。
 普段の笑みから目の前で服を黒スーツに変じ、黒眼鏡にオールバックで決めるカズハ。
「待っていたよMr.ヴァーゴ。気分はどうだい?」
「……最悪かも」
 ネクタイを直しながら語りかけるカズハにそう応える。デューンは周囲の仲間達を指で指し示し、鎧聖降臨をかけて黒服達を増殖させていく。
「Yes,me.Me,me,me」
「やぁ……探したよ」
「ミスターヴァーゴ サプライズ トゥ シー ミー」
 ゼイムやルミエールがそう語りかけ、更に近くの建物の扉からぞろぞろ湧いて出てくる黒服達。今まで出会った者達の顔も見える。大集合、と言った所か。40人弱なのに100人も居る様な錯覚に襲われる。
 キィルスは覚悟を決め、呟いた。逃げるだけでは埒があかない。
「……やるしか、ないか」
 カーレッジがホーミングアローを、アシュレイが飛燕連撃を飛ばして攻撃してくる! キィルスは華麗なステップ、そして身を見事に仰け反らせて避けると何故かソウミが近く投げ置いてくれてた長い棒を手にして次々と襲いかかってくる黒服達を薙ぎ倒す!
 リツキが呼び出した土塊の下僕がキィルスにまとわりつくも、彼はそれを宙に吹き飛ばす様に払いのけた。指殺狙いで来たソウミも棒で突くと自分から激しく吹っ飛んでくれた。
「……この私から逃げられるとでも思っているのかね」
 ヴェロが諸手を翳して高笑いしている隙を狙ってあっさりドツキ倒し、残る強敵二人。
 逆光の中から現れるレオニードとグレイ。残る最強の二人と言った所か。
「Target on Sight」
「Mr.Virgo,welcome back.We missed you」
 レオニードのしなるモノウィップに、術手袋に紋章の力込めたグレイの殴打!
 急に暗雲が立ちこめ、雷雨が闘いの場を過剰なまでに演出する!
 キィルスの攻撃もレオニードは華麗な仰け反り回避を見せ、捕縛の糸を飛ばすもそれは彼の棒を寸断するに留まる。
 再び素手になったキィルスとグレイが対峙する。
 大勢が見守る中。双方の拳と拳がぶつかり合い、お互い派手に殴り飛ばされた!
 起きあがれぬキィルスの側にオリエが近づいた。
 味方? そんな淡い期待を裏切る様に、彼女はグラサンかけて楽しそうに微笑んだのだった。
「美女の裏切りは古今東西のお約束だよ。ごめんね、キィルス」
 彼女の手には荒縄が握りしめられていたのだった。

「で、何だってこんな騒ぎに」
「だってオレに隠し事やなんて許せへんもん」
 酒場にて。イザークはレィズと飲みながらそう苦笑していた。彼はルディにそっと耳打ちする。
「そろそろレィズの誕生日……だしなぁ」
「やっぱ貴方もそう思う?」
 戻ってきたエージェント達の報告は、彼等の予想通り。レィズの誕生日の為の企みであったらしく。
 その頃、開放されたキィルスはベルフラウのメモを頼りにある建物を訪れていて。
「ここか」
 開かれる扉。――箱に埋め尽くされた部屋、そして待ち構えるセリハの姿。
「やぁ、キィルス君」
「……!?」
 予定と違う者が待ち受けていた。キィルスが激しく混乱したのは言うまでもない。

「あ、渡すメモ間違えましたわ」
「……え゛」


マスター:天宮朱那 紹介ページ
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ダーク ほのぼの コメディ えっち
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参加者:61人
作成日:2006/06/27
得票数:ダーク1  ほのぼの4  コメディ55  えっち1 
冒険結果:成功!
重傷者:紅き柘榴の翼剣・キィルス(a90077)(NPC) 
死亡者:なし
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