MOON STONE



<オープニング>


 星の無い夜に、
 世界中を照らす美しい月の光を、
 すべてこの掌に集めてみせよう

 貴方の為なら 何だって出来る私だよ

 彼はそう言って微笑った

 そして小さな石を彼女に与えた


「恋人が戻らないのです……」
 銀糸のように細く長い髪の娘は、そう言って顔を両手で伏せた。
 色も薄く細い少女。
 その娘を見ていると、夜にひとひら舞うホタルをはじめてみた時のことを彼は思い出した。
 幼い頃だ。
 ライムはそれを捕らえようとひたすらに追った。
 追って、追って、気づいたら道に迷っていた。

 そこは薄暗い森であった。

 昼間であれば、それでも帰ることはできただろう。
 けれど、フクロウの鳴き声や、獣の吠える声が響き渡り、そのうえ一つの小さな光だったホタルは、群れに合流し、暗い森のあちこちで、ひらひら、ひらひらと光り輝きながら踊り狂う。
 恐怖と不安と、それから空腹で、ライムは動けなくなり、そのまま森の中でうずくまったまま一晩を明かした。
 あの時のホタルの光みたいな娘だと、彼女が霊査士に泣きながら話してる姿を少し離れたところから眺めながら、ライムは思っていた。

 娘の恋人は、指輪を作る職人だった。
 その腕は確かで、名前もそれなりに知られている名工だ。
 
 その彼にこんな綺麗な恋人がいることは知らなかったけれど。
 と、その名工に今まで興味を持ったこともないライムはこっそり思う。

「私がいけないんです……」
 
 娘はまだ泣いている。
 よく泣く娘だと思う。鬱陶しいと、思いながらも目が離せない自分にも苛立つ。
「そうですわね……」
 彼女をなだめるドリアッドの霊査士。
 泣いてばかりでなかなか話の進まぬ彼女に手を焼いているのが、見ていてわかったが、甘やかすのはよくないので、そこは口出さないでおく。

「それでですね……」
 少し疲れた表情で、霊査士ベルフラウは依頼の内容を漸くまとめ改めて話し始めた。
「ミシェルさんは恋人に指輪をプレゼントしてもらう約束をなさっていたんです。
 それで、彼……リロドさんはミシェルさんにとてもよく似合うからと、ムーンストーンの石をプレゼントしてくれたのだけど、ミシェルさんはそれを失くしてしまったそうなんです。
 それでリロドさんは、再びムーンストーンを手に入れるためにその石がとれる岩山に出かけたようなのですが、予定日を過ぎても戻らない……と」

「なんで失くすかな!」
 ライムが呆れたような口調で言ったのを、ベルフラウは困ったように見つめた。
「本当は失くしてなんていなかったのです。
 ミシェルさんは彼と些細なことで喧嘩をしてしまって、どうにか仕返ししようと思って、そんな嘘をついたそうなんです。
 それから、彼がそんな遠い場所にわざわざ取りに出かけていたことも知らなかったそうなの。だから、今はとても後悔していて……」
 と心配げに見つめるベルフラウの視線の先で、その娘はまたぽろぽろと涙を落としていた。

(「これだから女は……」)
 ライムは大きくため息をつく。
 人を惑わしそうな娘だと、一目見たときから思ったのは間違いじゃなかった。
 そうしっかり顔に出ているライムの表情を困ったように見つめて、ベルフラウはさらに続けたのだった。

「それに大変なこともわかったんです。
 そのムーンストーンの取れる山には特別変異の大蛇に率いられた蛇の大群が発生しているようなの。最初に彼が石をとりにいった時には、それはまだいなかったのですが、春になって眠りから醒め、現れたようなのですわ。
 大蛇は七つの頭を持ち、全てが攻撃行動を行います。
 こんな敵に出会ってしまったら、リロドさんの命はあっという間になくなっていたでしょう。
 幸いだったのは……彼は他の用事を済ませてから、旅の帰りにその山に寄ろうとしているらしく、冒険者の足で急いでゆけば、まだ彼が大蛇にあう前に出会えるだろうということです。
 リロドさんも、ミシェルさんに石を失くされたので、石を取りに行くためだけに出かけるって少しだけ嘘をつかれていたのですね。
 そのおかげで、命を落とす前に冒険者の皆さんに助けを求めることができたのだから……不幸中の幸いってことかもしれませんわ」
「そもそもその人が失くした!って嘘つかなきゃ、山に登らなかったんだろう?」
「……まあ、そういうことですけど」
 困ったわね、と苦笑するベルフラウ。
「女ってやつはこれだから……」
 とうとう口に出し、ライムは生梅をかじったようなしかめっ面のまま旅支度を整えはじめたのだった。

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参加者
ちっちゃな重騎士・パン(a00909)
業の刻印・ヴァイス(a06493)
波紋に揺れる鏡・セレン(a13877)
草風の手品師・イコリーナ(a14101)
闘姫・ユイリ(a20340)
詩歌いは残月の下謳う・ユリアス(a23855)
星舞い落ちる夜・マイヤ(a28554)
龍神氷竜・ウキョウ(a35811)
耀星水晶の守護騎士・ナジュム(a35835)
世界を駆巡る暴風・ノーラ(a40336)
NPC:三日月王子・ライム(a90190)



<リプレイ>

●ミシェル
(「七つ頭の大蛇か……まるで伝説上の生き物のようだな」)
 霊査士の語る話に耳を傾けつつ、白玉の勇士・ウキョウ(a35811)は心の中でそう呟いていた。また霊査士の傍らで白い顔を両手で抑え、涙を零している美貌の少女に目をやると、聞こえぬ程度に小さく息をつく。
(「それにしても、つくづく女というのは……」)
「これだから女は厄介なんだ……」
 心の声に被さるように凛として響くのは某万年反抗期エンジェル、ライム。
「その、女ってやつは、っていう区切りはどうかと思うんだよ」
 闘姫・ユイリ(a20340)が困ったようにライムを見上げた。艶やかな長い黒髪を揺らし、華奢な腰に手をついて、軽く頬に力を入れている。
 ユイリに顔を向けるライム。何か言いたげな顔が口を開こうとした刹那、
「ともかく少し急いだ方がいいですね……」
 夢雫に溶ける雪菓子・セレン(a13877)が遠慮がちに呟く。
 その声を聞き依頼人の少女が、突然叫んで頭を深々と下げた。
「どうかお願いしますっ!!」
「……リロドさんは……僕たちが……護るですよ……」
 ミシェルの側に近づき、幼き掌を伸ばすとちっちゃな重騎士・パン(a00909)は優しく彼女に話しかける。
「……っ」
 さらに何か言いたげなライムに、耀星水晶の守護騎士・ナジュム(a35835)が青い綺麗な目を光らせて呟いた。
「友は何故に眉間に皺を刻んでいるのかね? 良いではないかね、乙女心はいついかなる時も複雑かつ可愛らしいものなのだよ♪ 男心を惑わすのは麗しの乙女たちの特権というものさ、それを笑って許すのが良い男というものだよ☆ 仮にも「玉子」を名乗る君ならば、レディのワガママには寛大であるべきだよ」
「玉子じゃない! 名乗ってない!」
 ぶー。頬を膨らませるライム。しかし、ここで女性批判を口にするには、彼の周りには女性が多すぎた。言葉を飲み込み、旅の道具を手に取ると「行こう……」と小さく呟く。
 一刻も早く現場に駆けつけることが必要ですわ、と霊査士の声が響き、急かされるようにして外に出て行く冒険者達の中で、星舞い落ちる夜・マイヤ(a28554)が足を止めた。
「私にも一生を添い遂げると誓った人がいるの。その人は今、遥か遠方で危険な任務についてる。……こういう時何も出来ないのが辛い気持ちはわかるわ……だから任せて」
「はっ……はいっ!」
 ミシェルが再び目の縁に涙を浮かべて頷いた。。
「折角もらったプレゼントをこんな形で使ってしまうのは、勿体無いですよ」
 慰めるような優しい声。見ると戻ってきたらしいセレンが微笑んでいた。
「リロドさんを連れて戻ります……だから、ちゃんと気持ちを伝えて仲直りしなくちゃ……ね?」
「!」
 ミシェルは感極り溢れていく涙で、視界が溶けていくのを感じた。そのぼやけた視界の中、マイヤとセレンが酒場を駆け出していく後姿が遠くなっていく。

●岩山
「皆、準備は出来たか?」
 件の岩山の麓で、業の刻印・ヴァイス(a06493)は、蹲っている仲間達を見回し声をかける。
「私はできたよ。セレンは?」
 木陰に眠る詩唄い・ユリアス(a23855)が靴を地面に慣らしながら立ち上がり、先ほどまで近くにいた人と会話をしていて、作業に入るのが一番遅かったセレンに声をかけた。彼らは山に登る手前に、靴に布を巻き頑丈にしておくという策を決めていたのだ。
「大丈夫です」
 立ち上がるセレン。その隣には草風の手品師・イコリーナ(a14101)と世界を駆巡る暴風・ノーラ(a40336)が無事に用意を整え終わったところだった。
「膝下まで布を巻いたし、これなら蛇に咬まれないなぁ〜ん」
「うん、大丈夫なぁ〜ん」
 ヒトノソリンに大丈夫といわれると根拠が無くても大丈夫かもって気がしてくるものだ。とはいえ、丈夫な布を巻いているので、確かに大丈夫でありそうではある。
 ヴァイスはさらに蛇を集める効果のある髪の毛や、マスク等を用意してくるつもりであったが、急いで駆けつける必要があったためこれは断念することにした。
「それじゃ行こう」
 全員が用意を整えたのを確認し、ヴァイスは短く告げる。
 冒険者達は無言で頷き、その後に続くのだった。

●七首の大蛇
「リロドーーーっ」
「リロドさーーんっ」
 人の気配の無い岩山に、彼の名を呼ぶ声が響き続けていた。
 武器を残し身軽にしてから山に入ったユイリが特にリロドの名を叫び、その姿を求めて懸命になっていたのだが、捜し求める人は、なかなか見つからない。そのうえ岩山は広く、砕石場も幾つか場所に分かれているようなのだ。
 山の入り口でセレンは地元の人に話しかけ聞いてみると、リロドは多分、その中でも奥まった場所にある砕石場を目指したのではないかという話だった。
「あっ、あの大きな岩が目印です」
 セレンが話に聞いたものと同じだろうと指差したのは巨大な岩。あの岩を回り込んだところにある採石場が月光石の質のいいものがとれる場所という。
「そうか……」
 ウキョウはセレンの説明を聞き、表情に僅かに緊張を走らせた――刹那。

 「「「「「うわああああああ!!!!」」」」」」

 叫び声が上がり、それと共に、岩の向こうから一人の青年が駆け出してきたのだ。
「!」
「もしかしてっ、リロドっ!?」
 ユイリの声に、青年は顔を上げ不思議な顔をした。
 だが。何か告げようと開いたその口元が、再び悲鳴を上げる。
 岩の向こう側から伸びてきた巨大な蛇の頭。それが彼を食わんと大きく開いたのだ。
「「危ないなぁ〜ん!!!」」
 咄嗟に竹箒にしか見えない両手杖を突き出すイコリーナ。
 紋章効果つきのノヴァの光が、その蛇の頭にアッパーを決める。
「リロドさんですねっ?」
 転がるように彼らの前に倒れてきた青年に駆け寄るマイヤ。マイヤを見上げ、リロドは何度も頷いてみせる。
 彼らはリロドを後ろに隠し、大蛇の首が伸びてきた岩の向こう側へと駆け込んだ。
 そこには――
 大小の生きた蛇を絨毯のように無数に従えた巨大な七つ頭の大蛇が、威嚇するように首をそれぞれ左右に動かし、ルビー色の14個の瞳で獲物を値踏みするように冒険者達をねめつけていた。

「やれやれ……ずっと眠っててくれれば良かったのにね……」
 ユリアスは小さく嘆息し、大蛇を見つめる。しかしけして怯んでいるわけではなく。
「頭の数の多さがなんだっての!」
 彼は信頼する彼の三つ頭の召還獣青色のペインヴァイパーを召還し、敵を睨み返す。
「おいでミリィ。戦闘準備なぁ〜ん!!」
 イコリーナもドールを召還して、戦闘の構えをとる。他の冒険者達の後ろにも召還獣のあるものは次々と姿を見せ、主人の近くで戦意を見せている。
「リロドを避難させてっ」
 鎧聖降臨を光らせながら、仲間の前方に立ったユイリが首だけ振り向き短く叫んだ。
 ライムが応じ、リロドを先ほどの大岩の影へと連れて行く。
 七首大蛇は観察するような目で突然現れた獲物を観察していて動かない。その間にパンやユイリも鎧聖降臨で自身を強化し、マイヤとノーラは黒炎覚醒を発動させる。
 最初に動いたのはイコリーナだった。
「光の雨よ、邪魔するものを取り除いてなぁ〜ん!!」
 叫びと共に振るわれる竹箒の先から紋章強化つきのエンブレムシャワーが放たれ、大蛇の周りに無数にいる蛇の一部がちぎれながら吹き飛んでいった。しかし、七首大蛇の後ろから、さらに数え切れぬ数の蛇が這い出てきて、イコリーナが広げた道をまた埋めていこうとしている。
 しかし。
 右手の蛇へはナジュムの流水撃が、左手の蛇へはセレンのエンブレムシャワーがそのその進行を阻んでいく。
 さらに、ヴァイスは蛇のいない道へと足を踏み込み、敵の正面から、粘り蜘蛛糸を放つ!
 この効果は覿面だった。七首のうちの4つまでが身動きを失う。ただし他の首の怒りも呼んだ。観察を止め、大蛇の首が冒険者めがけて一斉に襲い掛かった。
 炎に包まれたのはヴァイス、パン、ナジュム。尾に狙われたユイリは回避に成功する。
 ウキョウのヒーリングウェーブが即座に放たれ、仲間の傷を癒す。
 戻ってきたライムも静謐の祈りを唱えはじめた。
「やれやれ……ずっと眠っていてくれればよかったのにね……っっ!!」
 ユリアスはスキュラフレイムの黒い炎を、自分を攻撃した頭めがけ放つ。ペインヴァンバーの力も乗ったこの炎をまともに食らった頭は食らいついた魔物をはがせずもがくばかりだ。
「ウエポンオーバーロードっ」
 埋め尽くす蛇がいなくなった場所を駆け出すユイリ。叫びと共に、彼女の利き腕の中にペトルンカムイが輝きながら現れる。
 ユイリはその水晶の剣を握りしめ、一番近くにあった首を攻撃する!
 大きな手応えがあったが一撃ではさすがに沈まない。
 イコリーナも前衛に駆け出し、ユイリと同じ頭めがけ、七色に輝くエンブレムノヴァを叩き込んだ。強烈な二撃を食らった首は鱗が禿げ出血にまみれボロボロになってはいたがまだ息はあるようだ。
「もう一度だっ」
 ヴァイスが叫ぶ。再び粘り蜘蛛糸が飛ぶ。
 新たに3つの首が拘束されたが、回復したものもあるので動くのは3つだけだ。
 そのうちの一つはユリアスのスキュラフレイムですぐに拘束され、残りは2つ。
 前衛にはナジュム、パンも到着し、麻痺している頭にナジュムのホーリースマッシュ奥義が決まり、パンも兜割を見舞いする。
「……これは勝てそう……か?」
 仲間にヒーリングウェーブの光を送り、戦況を見極めようと敵を観察するようにしていたウキョウが低く呟く。
 セレンがホーリーレイを構え、エンブレムシャワーを一斉に敵に浴びせかける。
 ユイリとイコリーナが二撃を加えていた頭がこの攻撃で沈んだ。
 ――だが、敵も黙ってやられてくれるわけではないようだ!
 マイヤが魔炎+魔氷効果のブラックフレイムを弱っていた頭にぶつけ沈めたその刹那、残っていた敵の首が5つ同時に動き出し、後衛に届くほど首を大きく伸ばした。
「うわっ」
 ダークネスクロークが今度こそ、ナジュムを庇うようにマントを翻す。
「おおすまないっ! ……みんなはっ」
 振り返ったナジュムの後ろには倒れているノーラの姿が見えた。魔炎を払ったユイリが怒りに満ちた表情で、剣を掴み、自分に攻撃した頭目掛け、達人の一撃を叩き込み沈めてしまった。
 ヴァイス、マイヤの身を包む魔炎もすぐ消えたが、ダメージはけして軽くない。
 マイヤはヒーリングウェーブを放ち、自身の回復と仲間の回復を優先する。
 ユリアスの三度目のスキュラフレイム。その一撃で一つの首が落ちた。
「まだ生きている首は……あと3つ」
「後ろまで二度と攻撃はさせない……」
 ヴァイスは、癒えた火傷の傷跡に残った血を拭うと、ツェペシュを握る。
 その後ろにつくキルドレッドブルー。その炎を宿した槍を彼は大蛇の頭に突き刺した。
 小柄な体に似合わぬ銀の剣で放つ流水撃。体当たりしようと突き出てくる頭を避け、パンは息を吐く。傷つき疲れきった仲間の為にウキョウが再び癒しの波を放つ。
 強力な天使の光を注ぎ込んだナジュムの覇翼の錫『レーゲンハイト・ゼムゼ』から放たれる一撃が一つを沈めた。
「あと二つっ!」
 攻撃に転身しようと大蛇が動く。しかし一つは魔氷の効果で身動きがとれない。
 もう一つはユイリを狙ったが、これは防御された。
「……今度はこっちの番」
 ユイリは近づいた敵に再び達人の一撃で立ち向かう。
 大きなダメージを受けた頭はそれでもまだ動く。
 だが、それが攻撃をすることは二度と無かった。ヴァイスのツェペシェがその眉間を深々と突き刺したからだ。
「……あと一つ!」
 それは感情を結んだイコリーナとセレンが同時に放ったエンブレムノヴァで終わった。ドール強化+紋章強化されたこの二撃を両頬に食らい、大蛇は大きな音をたてて崩れ落ちた。
 と同時に、周りにまだ生き残っていた蛇たちも散会していく。
 どこへ消えていくかは解らぬが、戦意のない動物退治まで仕事にしたいとは思えぬ程、彼らは疲れきっていた。

「……終わったなぁ〜ん」
 ノーラが空に向かって息を吐く。一番深刻なダメージを貰った彼だが、医術士達のおかげで重傷に陥ることはなかった。
「終わり……ました……」
 パンも地面に座り込み、すっかり大蛇の血で汚れてしまった鎧の中で溜息をついた。
 ウキョウとライムは頷きあい、大岩の奥からリロドを連れてきた。
 リロドは冒険者がここに来た理由を知らない。
「……本当にありがとう……キミ達のおかげで助かったよ」
 ただ感謝し、頭を下げる彼を見つめ、冒険者達はほっとすると同時に、なんと伝えればいいか言葉に迷うのだった。

●帰還
 ムーンストーンを掘り出したリロドを連れ、冒険者は帰還した。
 酒場の前ではミシェルが心配しながら彼らを待っていた。
「……ただいま、ミシェル」
 リロドは優しく呟く。恋人の嘘を彼らは、リロドにまだ黙っていた。
 それは二人で解決しなくてはならない問題だからだ。
 ミシェルは涙を浮かべ、恋人の無事な姿に歓喜して飛びついていく。抱き合う二人を冒険者達は幸せな気分で見守った。
(「……ちゃんと自分の口で真実を言ってよね」)
 恋人達の隣を抜け酒場に戻りながら、ユイリはミシェルに小さくサインを送る。
 ミシェルは瞼を閉じ、何度も頷いた。

 酒場に入っていく冒険者達の背中で、ミシェルの声が響いた。
 愛するリロドの無事を確認し、安堵しながら、彼女は二つ目の試練を迎えるかのように、緊張した声で、ゆっくりと彼に話し始める。

「実は……実はね、私、あなたに謝らなければいけない事があるの……」

                             おわり。


マスター:鈴隼人 紹介ページ
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