≪恐竜王国≫激突!月多亜炉望! 〜三つの力を一つに〜



<オープニング>


 かつん、かつん、と謁見の間にたゆたう闇に足音が響く。
 ……ボッ! ボッ! ボッ! と入室者を出迎えるように、道を作る青白い炎。
 闇を押し返す光に頬を照らされた彼女は、恐竜王国の遊撃兵──ヒトノソ忍者・クーニャ(a90310)。灯火の示す終点、謁見の間の最奥に辿り着くと、彼女は静かに片膝をついた。
「……クーニャか」
「……底王様……御報告致しますなぁ〜ん」
「首尾はどうじゃ?」
 静寂を震わす低い声は、王のみに許された威厳溢れる重い響き。闇と底王チェアとに身を沈めた男こそ、底王・ゴオル(a07582)。旅団≪恐竜王国≫の長である。
「『イーグル』は緑色の石の側に居座ったままでしたなぁ〜ん」
 あくまで拙者の勘ですなぁ〜んけど、と前置いて彼女は悩みの色を紫の瞳に追加する。
「……まるで何かを待っているみたいに身動き一つしませんでしたなぁ〜ん」
「……ふむ」
 偵察の結果を報告するヒトノソ忍者に向けたのは、思案。静かに開かれたゴオルの瞳から、鋭い赤い光が漏れた。
「他に気づいた事は無いか?」
「え〜と、そういえば帰り際に……」
 なぁ〜ん、と目を閉じて思い出す。

 森が、裂けていた。
 最初は自然現象かと思ってしまったほど、激しく、広く。
 だが、嵐にしては局地的すぎる。竜巻にしては人為的にすぎる。
 周囲の木々に刻まれていたのは、ぞっとする程の精密な螺旋痕。
 槍によるものだろうか。相手の防御を貫き通す鋭さは、見ているだけでこの痕を穿った『何か』の魂の叫びが伝わってくるかのようで、背筋に震えが走る。
「…………」
 そしてもう一つ。離れた位置で薙ぎ倒された木々は、今のものとはまた異なっていた。
 先ほどの破壊が『技』によって成されたものなら、こちらは『力』。深く根を張る巨木さえも無造作に引き抜かれ、投げ飛ばされて叩き折られた惨状の爪痕──

「……違う、な」
 そこまでの報告を耳にしたゴオルは、小さく呟いた。
「? どうかなされましたかなぁ〜ん?」
「そういえば、お主は以前の月多亜との戦いには参加していなかったのだったな……その破壊痕は、恐らくイーグルとは別の相手の仕業だ」
「…………!」
「何はともあれ、危険な偵察大儀であった。奥で休むと良い」
 緊張に尻尾をぴん、と立てたクーニャに、ふっ、とわずかに頬を緩める。
 深い王者の笑いでクーニャを見送り、ゴオルは脳裏で報告を再び吟味した。
 イーグルのものとは違う破壊の痕が二種。その示す所は、恐らく。
「……三つの力が一つになれば、厄介なことになろう……」
 恐竜王国を率いる男は、何時になく真剣な表情のまま目を閉じ、再び底王チェアに体を深く沈み込ませた。
「……どうやら動くのが遅かったかもしれんな。此度は厳しい戦いになるかもしれん」
 これから起こる戦いの激しさを物語るかのように。

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参加者
底王・ゴオル(a07582)
黄砂の谷の・レティシア(a10843)
高機動型・ザク(a19335)
ダンディ・クロコ(a22625)
愛してるぜ皆・ジアド(a24688)
帰ってきた・ギ(a33429)
星薙ギノ剣・ミズチ(a46091)
大草原の小さな・ラマナ(a47586)
NPC:ヒトノソ忍者・クーニャ(a90310)



<リプレイ>

●今がその刻だ
 枝葉を掻き分け木立を縫って、視線が森を駆け抜ける。
 木々の色が支配する薄暗い樹の海の中で、そこだけが森の緑すら圧する緑の輝きを放っていた。
「? あそこだけ変な光なのなぁ〜ん?」
 首を傾げた大草原の小さな・ラマナ(a47586)の隣で、弓矢射翔・ジアド(a24688)はゆっくりと遠眼鏡を下ろす。
 視線の先。瞳に映ったのは、凶った光を放つ緑の石。そして、その前に佇む人影。
 ……緑の光を背に受けて、ボロボロのマントが風に揺れていた。
 鋭い手斧を携え、血のように赤い鎧を纏うモンスター。かつて戦ったジアドは、その姿を、その強さを、知っている。
「月多亜イーグル……今度こそ、逃がしはせん……!」
「周囲に他の敵はいないみたいですの……今のところ、ですけれど」
 つぶやく黄砂の谷の・レティシア(a10843)の紫の瞳と、『イーグル』の黄色の双眸が交錯する距離は、弓の間合い。
 彼ら恐竜王国との戦いを待ち侘びていたかのように、イーグルは既に戦いの構えを取っていた。
「……ふ。この大人数に不意打ちを許す程甘くはないということか」
 こうでなくてはな、と王の笑いを浮かべたのは恐竜王国の長、底王・ゴオル(a07582)。
 高々と掲げた腕と一体化するかのように現れた彼の武器『オーパーツ』は、戦いの合図を告げる角笛にして旗のように陽光に煌く。
「……往くぞ! 総員続け!」
「恐竜王国に栄光あれ!」
 空高く恐竜王国の主題歌を。我らに勝利の歌声を。戦いの時は、今。
 砂塵の中に消えゆく旅龍・ギ(a33429)が紡ぐ凱歌の第一小節は、鬨の声となって激突の時を彩った。

●HEAT
 駆ける。
 鎧聖の加護を願う、星薙ギノ剣・ミズチ(a46091)が。
 残像を伴って木々を擦り抜ける、恐竜殿下・クロコ(a22625)が。
 ジアドの手で踊る死神の札が。
「まずは挨拶代わり。チョイトした御呪いっと!」
 イーグルを取り囲み、襲い掛かるように、森を切り裂いて疾る。
 空を裂く黒符の閃きに続くように、ラマナもまた、鎧の擦れる音も微かに大地を蹴った。
 小柄な身には余りにも似つかわしくない大剣は、ミズチの愛剣『シュテルンシュナイデ』よりもさらに一回り大きな鉄塊。
「ボク達は! 君を壊すなぁ〜ん!」
 接触は激突。
 大地を蹴立てて高く跳んだイーグルを追って、跳ね上げたラマナの剣とイーグルの斧が、空中で爆音を伴う硬質の音を響かせる。
 高機動型・ザク(a19335)の赤い瞳は、空中で弾け合うその動きを捉えていた。
 出発前に受けた傷が、彼の反応速度を鈍らせる。肩口に構えた強弓『ハープーンシューター』の狙いがブレる。それでも。
「──此度の戦い、引くわけにはいかぬのだよ。……上かッ! 落ちるがいいッ!」
 イーグルの身に追いすがる雷の蛇。その牙が喰らいついた時には、レティシアが既に赤鎧の戦士の着地点に身を躍らせていた。覚醒した黒炎を揺らめかせて。
 冒険者達の攻撃は、側面からの波状型。左右に大きく視界を振られたイーグルは、胸元に添えるように突きつけられた彼女の杖『カドゥケウス』の漆黒の炎に反応しきれない。
『!』
「手応えあり、ですの……!」
 巻き起こる黒炎の中。
 凍てつく魔炎のヴェールの先で、身を焼かれたイーグルが己が身を庇うように体勢を変える。
 ──緑の光を背に受けて、紅い光が収束した。
 腕を体の前面でクロスさせたその姿は、己が裡に潜む力を抑え込み制御するかのよう。
 ……ゴオルは、その構えを覚えている。イーグル最強の一撃にして、かつてこの身を焦がした一条の裂光……!
「月多亜……ビーム……! いかん! 皆の者、下がれ!」
 狙いは──
「レティシア姉!」
 大地に手をつき斜線から飛び退いたミズチがあげた警鐘の叫びから刹那。赫光が、空を灼いた。
「っくぅっ……!」
 レティシアの黒炎と真紅の光条の激突。相殺し切れなかった紅い奔流が、彼女の盾の表面で弾ける。その熱気で、自慢の綺麗な鱗が焦げる。
 靴底が大地に溝を穿ったのは数秒。
 背後にあった桜の幹に叩き付けられて苦悶の呻きを漏らすレティシアを助け起こし、ギは、迫るイーグルを睨み付けた。
「これが……月多亜の力か……!」

●第二、第三の月多亜
 直感が稲妻のようにザクの脳裏を刺激したのは、彼とジアドがイーグルに矢の狙いをつけたのと同時だった。
「なんだ……このプレッシャーはッ」
 ただ本能と直感に従って、陽炎のようにその場から跳び退る。
「ザク! 来るぞ!」
 零距離射撃にも近いジアドの狙いは、がさ、と揺れた近くの茂み。
 ……刹那、ザクを追って突然飛び出してきた螺旋の凶槍が走った。
 ぎぃん、と。
 空気をも引き千切る槍を火花と共に打ち返したのは、『銘槍“呑取”』。槍を携えたクロコが、螺旋槍の左腕を持つ音無き襲撃者を睨みつける。
 敵は、鋭角なフォルムを纏ってそこに立っていた。猫科の獣のように音も無く近寄ってきたそいつはまるでジャガー……月多亜ジャガー。
「──ザク、ジアド。ここは俺に任せろ」
 クロコにも、不敵な笑みほど余裕があったわけではない。
 何しろ先程ザクを強襲した一撃は、恐竜王国中でも屈指の速さを誇るクロコでさえ、残像(ビジョン)に惑わされた程の速度。
 それは取りも直さず、速度の領域では彼以外の誰もがこの敵に太刀打ちできないということを示していた。
 本来ならクロコに決して引けを取らない速度を誇るザクが怪我で存分に動けない以上、単純な速度でジャガーと渡り合えるのは、後はジアドぐらいだろう。
「……さぁ、手前はこっちだ。タイマンに付き合ってもらうぜ……!」

 イーグル、ジャガーとの戦いが、激しい『動』の戦場ならば、ここは未だ『静』。戦いの兆しは、あまりにも緩やかに。
「って、樹が歩いてる……!?」
 一瞬ミズチが勘違いしてしまうのも無理はない。
 ひとりでに歩くように近付いてくる大木の下にいたのもまた、月多亜。
 重く四角いデザインを持つ第三の月多亜『ベアー』は、樹齢何百年もの大樹を高々と頭上に掲げたままゆっくりと少年を睨みつけ──そのまま、無造作に樹を放り投げた。
 ぶん、と擬音すらも重々しく投げつけられた大樹を斬り払った瞬間、ミズチの肩口からぶしゅっと鮮血が吹き上がり、少年の頬を紅く染める。
「くそ……!」
 開いた傷口に手をやって、荒い息をつく。
 ──手に構えた相棒が重く感じられた。
 直撃を受けたわけではない。この傷は、別の戦いで負ったもの。普段なら反撃に動けたはずの身を押し留める癒えぬ傷。
 一瞬立ち止まった彼の上に、再び樹の影が落ちる……と。
「おおっと危ねぇ!」
 目前に迫る第二の大樹を真正面から受け止めたのは、灰色の岩山・ワング(a48598)。
「させねぇよ! ミズチはがっちり守って見せるぜ!」
 その二つ名通り、岩山の如き巨躯でベアーの前に立ちはだかるワングの横を紫の風が抜ける。ヒトノソ忍者・クーニャ(a90310)は、ミズチからバトンを受け取るようにベアーの前に躍り出た。
「後は拙者が引き受けるでござるなぁ〜ん!」

 戦いは、三箇所。
 各々の戦い振りを視界の端に収めながら、ゴオルは重々しくつぶやく。
「任せたぞ、クロコにクーニャよ……!」
 イーグルを撃破するのが早いか、足止めをする二人が持ち堪えられなくなるのが先か──三局の戦場にまた一つ、誰かの血が舞った。

●三つの力が、一つに
 喉に、鋭い痛みが走る。戦いが始まってから、どのぐらい経ったのか。勝利を願う凱歌は、着実にギの喉に消耗を強いていた。
(「とはいえ、底王様の前で恥ずかしい戦いはできん……!」)
 その心を歌詞に変えて歌い上げる声に、もう一つの旋律が混じる。
 追奏するように澄んだ歌声を絡ませたのは、立ち上がったレティシア。
 この歌が途絶えれば、それぞれの戦いは均衡を崩して劣勢に傾く。その事実を実感しながら、ギとレティシアは己の戦いに集中するため一層声を響かせた。

 己に求められていることはただ一つ。一秒でも早く、一瞬でも早くこの敵を叩き潰すこと。だからラマナは、ただイーグルだけを標的に捉えて、號、と空と大地を叩き割る一撃を振り上げる。
「ひしゃげて潰れるなぁ〜んっ!」
 既にイーグルの鎧は大きく抉れ、焦げ、爆ぜる雷の矢の傷は深い。
 突き刺さる鮫牙の矢を抜けば、前衛で戦う彼女達の頬の横、脇の下を抜いて再び新たなジアドとザクの矢が身を穿つ。
 ……イーグルの体は既に限界に近い。

 両者の戦いは舞踏にも似て長く、 槍と槍は森の木々を巻き込んで踊っていた。
 ジャガーが死角から襲い来る銘槍を弾けば、クロコは木の葉を撒き散らして螺旋槍を捌く。
「無駄だ。この構えに捌けぬ物は無い」
 言い放つクロコにジャガーが向けた表情は、嘲笑。それと同時、ジャガーの腕がキュイン、と唸り声を上げた。
 緩やかに。そして、激しく。全ての防御を打ち貫く、高速で回転する螺旋の槍。その鋭さに内心で冷や汗を滴らせながらも、クロコは誰かの言葉を借りて、冷静に槍を構え直した。
「……当たらなければどうということはない、な」

 蜘蛛糸がぴんと張り詰める。
 両者の間で力が拮抗したのは、ほんの一瞬。大人と子供の綱引きのように、ベアーは徐々にクーニャを引き摺り寄せていく。
「……なぁん!」
 愛刀『黒姫』を一閃。蜘蛛糸をあえて自分から断ち切ると、クーニャは敵へと駆けた。
 間合いは、約十メートル。このまま蜘蛛糸による拘束を続けるべきか……一瞬だけ迷った刹那。
 突然、敵の手が目の前に迫っていた。
「──!? 手が伸び──」
 完全な不意打ちに、言葉が無理矢理中断させられる。ベアーの長く伸びた無骨な腕は、クーニャの細い首を掴み、そのまま……振り回した。
 竜巻。ミズチの瞳に映るそれは、全てを薙ぎ倒す自然現象としか表現できなかった。
 クーニャを掴んだままその場で回転を始めたベアーは、遠心力のままにクーニャを投げ飛ばす。
 それを受け止めるのは、仲間の優しい腕でも大地でもなく──最悪の結果。ジャガーが無造作に突き出した螺旋槍の穂先。
「クーニャ姉ぇぇっ!!」
 ミズチの言葉に、敵を止める力はなく。
 彼女の鎧がもたらした一瞬だけの抵抗は空しい火花を散らして失われる。
 ががっ、と火花を散らして高速で回転する腕槍に貫かれたクーニャは、そのまま大地に叩き付けられて己の産んだ血の池にぱしゃん、と倒れ伏した。
 ……そして、この攻撃には続きがある。
 三体が次々と入れ替わる──チェンジしながら攻撃する、いわば『月多亜チェンジアタック』の最終章は、イーグルの紅い裂光。トドメの一撃を与えるべく、イーグルはその場に跳──
「おのれ、月多亜!」
「させるか! そこで寝てろ!」
 ジアドの怒りに、ギの声に、対照的な色彩を持つ二体の三頭蛇が呼応する。
 『鋼弓【悼惜】』を限界まで引き絞る。怒りのままに敵を狙う衝動を抑え、打ち抜いたのはイーグルの影。
 影に足を掴まれ、ギの抗い難い言葉に耐えかねたようにがくんと膝をつくイーグル。
 それを燃え上がる氷で牽制して、レティシアはクーニャに駆け寄った。
「クーニャさん、しっかりですの!」
 口元と脇腹から血を滴らせる彼女を抱き起こしたレティシアの口から漏れたのは、祈り願うような歌声だった。

 既にイーグルの身は満身創痍。だが、レティシアが回復に回った以上、前衛の攻撃手は、ゴオルとラマナのみ。
 ──追い詰められているのは、果たしてどちらか。
「そこおー様のために! なぁ〜ん」
 ラマナの爆風が開いた道を駆け抜けるゴオルと、立ち上がったイーグルの刃が噛み合った。
「レティシアよ! クーニャを任せたぞ!」
 鍔迫り合いの状態から柄尻を跳ね上げてイーグルの顎を打ち上げ、ゴオルが次の一撃に繋ごうとした瞬間、イーグルの胸から溢れたのは、激しい破壊の灼光。
(「月多亜ビームか!」)
 だが、もう既に振り下ろす刃は止まらない。
 止めは、しない。
 この距離ではどの道かわせないという問題以前に、団員達が身を賭して戦う中、ここで退くわけには──いかなかった。
 がっっ!
 真紅の光条に、真正面から刃を叩き付ける。
 感触は、滝の流れに逆らう様にも似ていた。達人の刃が、放たれた赤光の反動に震え、押し戻される。
「ぐぅ……っ」
 その時だった。煌く矢が戦場を裂いたのは。
 刃の背を押すように突き刺さり、ゴオルの一撃に押し切る勢いを与えたのは。
 勝利を確信していたイーグルが、驚愕に双眸を光らせる。視線を向けたその先には……強弓を構えてニヤリと笑うザクの姿があった。
「底王様! 今です!」
「滅びるがいい……月多亜!」
『──!!』
 ──相打ちだった。
 ゴオルの一撃が届いたのと、二つに断ち割られた光がゴオルに突き刺さったのは寸分違わぬ瞬間の出来事。
 だから、後方に吹き飛ばされたゴオルの巨体をワングががっしりと受け止めたのと、イーグルが緑色の石に叩き付けられたのもまた同時。
 ──半壊し、大地に倒れ伏したイーグルの黄色の双眸は、自分を倒した冒険者達へと向けられたまま……ゆっくりと光を失った。
「倒した、のか!?」
「底王様……万歳!」
 その様を見届けて、苦痛を覆い隠すように王の笑いを浮かべると、ゴオルは立ち上がり、森に響き渡る声を轟かせた。
「……これで目的は果たしたな。撤退する!」

●恐竜王国
 号令を聞いたと同時に大きく間合いを取ると、ラマナは残る二体の月多亜にびしっと指を突きつけた。
「今度会った時は、まとめて倒すのなぁ〜ん!」
「その通り。次は貴様らの番だ!」
 歌声にも似た抑揚を持つギの言葉には、言霊でも混じっていたのか。彼らを追おうとしたジャガーが、先刻のイーグルと同じように、抗い難い力に気圧されて膝をつく。

 緑の世界は、既に遥か後方。
 森を抜ければ、ジアドの目の前には青い空と静かな大地が広がっていた。
「クーニャ、大丈夫か?」
「なんとかですなぁ〜ん……。拙者がもう少し保っていれば残る二体を倒せたかもしれないのに……面目ないでござるなぁ〜ん」
「いや、クーニャ姉。一応一体はしとめたんだ。今はこれで充分だと思わねーと」
 ミズチの言葉は深く、自分自身に言い聞かせる響き。この戦いで存分に戦えなかった己に対する悔しそうな色を感じ取ったのか、レティシアは優しく微笑んだ。
「ええ。今は誰も欠けることなく戻ってこれたことを喜ぶべきですの」
「その通りだ。心配せずとも奴らとはいずれ決着をつける時が来よう。その時こそ、必ずや憎き月多亜共を討ち果たしてみせようぞ」
 三つの力を一つ欠いた月多亜ならば、恐れることはない。と、月多亜が潜む森を眼光で威圧し、ゴオルは王の哄笑と共にマントを翻す。

 また何時か、月多亜と再び刃を交える時が来るかもしれない。その時は全員が無事に帰ることができるとも限らない。
 だが今は、この勝利に祝福と栄光を。
 ──恐竜王国に、栄光あれ。


マスター:麻生南 紹介ページ
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