宝地図屋グレック〜南南東に進路を取る!?



<オープニング>


 食後の団欒のひととき。
 輪廻の蛇・アトリ(a29374)は、テーブルに広げた地図の×がついた場所を、扇でトントンと示す。それは地図屋で手に入れたいわくありげなものだった。

「幻の園が見たいかー!?」
『おー!』
「覇者の剣がほしいかー!?」
『おー!』
「永遠の美と愛を得たいかー!?」
『おー!』

 ……などと応えつつも、その心中はさまざま。
 「楽しみー♪」 と、素直にはしゃぐ者、
 すごいお宝だと感心して頷く者、
 「ワクワクしちゃうわ」 と喜ぶ者、
 「面白そうだね」 と笑う者。
 無論、「うわ!胡散臭い!」 と冷静に思う者もある。

 宝地図屋いわく、
『この地図は、幻の園に眠る稀代の美女が愛した覇者の牙剣のありかを示したものらしい。その身からは甘美な香りが立ち、手にした者は永遠の美と愛が得られると言われる……』
 まあ、真偽はさだかではないが、なんだかすごい物っぽい。

「おっしゃ、んじゃお宝を戴きにあがるとしよーぜぇ!」
 そんな面々のリアクションも承知の上で、アトリは手を振り上げた。

 さあ、冒険の始まりだ。

マスターからのコメントを見る

参加者
トラブルメーカー・メイナ(a22036)
華麗なる恋の求道者・ノア(a22669)
エンジェルの医術士・ヴィオレッタ(a26131)
昼梟の劔・シンジュ(a26205)
蒼翠弓・ハジ(a26881)
朱の蛇・アトリ(a29374)
深潭沈吟・イブキ(a34781)
たゆたう婀娜花・イシュ(a49714)


<リプレイ>

●れっつ・とれじゃーはんてぃんぐ!
 よく晴れた朝。地図を頼りに冒険者達は洞窟の前に立つ。
「さぁて、お楽しみの始まりだ! お宝ゲットといこうぜぇ!」
 輪廻の蛇・アトリ(a29374)の言葉に『おー!』 と元気よく答えるのは本日の仲間たち。
「なんかこう、地図とかお宝とかって聞いただけで『わきわき』するよね〜♪」
 トラブルメーカー・メイナ(a22036)の発言に、わくわくじゃないの? と皆心の中でツッコんでみる。
「そんなすごいものあるなら見てみたいものだよなぁ」
 彷徨の劔・シンジュ(a26205)は、腰に提げた『相棒』 を気にしつつも、見るだけなら! とか思う。どんなに凄いのか、気になるではないか。
「………む…? ……こうまで吹かれると、胡散臭いを通り越して眠いのだが」
 闇の護衛・イブキ(a34781)はマイペースに現実的だ。蒼翠弓・ハジ(a26881)も同意するが、どんなものなのかと考えてみるだけ希望は持っているらしい。
「……幻の園は見たい……かな……」
 覇者の剣や永遠の美と愛は似合わないと思うけれど、綺麗な風景なら見てみたい。そんな等身大の希望を抱くエンジェルの医術士・ヴィオレッタ(a26131)の思いは、きっと叶うだろう。

「やぁーね、こんな儚げ可憐な私が先頭だなんて! ……ま、永遠の美の為に少しは頑張ろうじゃない」
 たゆたう婀娜花・イシュ(a49714)はやる気満々といった風情で先頭に着く。
「それでは行こうではないか諸君、幻の遺跡へ!」
 華麗なる恋の求道者・ノア(a22669)が気取った言い回しで皆を誘い……段差も無い平地で何故か見事にコケた。

●暗くてせまい場所
 一行は隊列を作って洞窟の中へ踏み入る。カンテラを持つ者も多く、ヴィオレッタのホーリーライトもあって光源の確保は十分だ。とはいえ、道幅が狭い為、一人ずつ入っていくしかなさそうだが。
「まっ! ちっとも華麗でも美しくもないわっ!」
 先頭を行くイシュが早速悲鳴を上げる。黒い塊が飛んできた。コウモリだ。
「イシュ、こんな感じかな〜?」
 そんな状況にお構いなしに、足元にしゃがみこみ、ぺたぺたとへらで土塊の下僕を造型していたメイナが聞く。
「それどころじゃな……! って、全然美しくないわー!」
 足元の微妙な物体も洞窟もコウモリも、イシュの美的感覚にはちっともそぐわない。そりゃもう、叫ぶしかない訳だ。
 土塊の下僕を目いっぱい呼んで、前を歩かせながら洞窟を進んでいく一行。
 ……すぽ。
「んん?」
 思わずイシュが目を凝らす。何故か、下僕が目の前から消えていってるような。
「気のせい……じゃないね」
 メイナもイシュの背後から覗き込む。姿が消えた地点を確認すれば。
 ……穴が。
 丁度一人ぐらいがすっぽりいきそうな感じの。
「手ごろなサイズだぁ」
 メイナが楽しそうに言う。何が手ごろか、皆はその辺りを詳しく聞かない事にした。

 それから……。
 ノアがすとーんと見事に穴に落ちたり。
(アトリが邪悪な笑みを浮かべ手を差し伸べながら「『アトリ様愛しています』って言えば助けるぜ?」 と楽しそうに穴を覗き込んでいた)
 這って進まなければならない場所で、ヴィオレッタがスカートの長さを気にしたり。
「別にハジくんを信じてない訳じゃないんだけど」
 でもやっぱり、恥ずかしいなぁ……とヴィオレッタが赤面すると。
「すみません! 前は見ないので意識せず進んで下さい!」
 しんがりを務めていたハジが赤面しつつ少し距離を取ってその後を追ったり。
 自分の前に覗けるスカート履いた子がいなかった事にじたんだ踏んで(あこがれのスカート覗きをしたかった模様)、シンジュの狸尻尾をわし掴んだアトリが怒られたり。
 ……楽しいハプニングが続出した模様である。

●緑の迷宮(落下物注意)
「やっと抜けたか……諸君、怪我はないだろうね?」
 ふ、とノアは気取って言って見るものの、何だか満身創痍だ。口には出さないけど、皆、自分を大事にしろとか、思ったり思わなかったり。
 少し蒸し暑いくらいの森の中。蔦の絡む木々の間を潜り抜け、一行は奥地へと進む。あちこちにやたら目のつくあやしげな蔦がいかにも引っ張ってくれと言わんばかりに垂れているのが気にかかる。
 ざくざく進む一行。そのとき、ひゅっと風を切って何かが迫る。
「……む……?」
 目の前を掠めたものを足元から拾い上げ、イブキはそれの投げられたと思しき方向に投げ返した。特に気にした風でもなく。
 すこーん。一瞬後にコントロールよろしくたいへんいい音がした。
「ギッ!?」
 ザザザザ……どすん。木の上から落ちてきたのは猿である。
「猿……か。……ふん、手癖が悪い」
 イブキはじわっとムカついてきていた。一方的にやられるのは性に合わない。
「ウキャ」「ウキキ」「ウキー」
 怒りの声のような複数の叫び。次いでザザザと木の上を走り回る音がして。
「これは、なんと愛らしい猿達よ、怯える事はない。私は君達の友人だよ。さあ怖がらずに心を開いて……!」
 猿の姿を見て、ノアの獣達の歌が響き渡るが……聞いちゃいねぇ。
 猿、一行を狙って一斉に。
 ……投げた。
「ネーちゃん、ストリームフィー……!」
 アトリのイシュを呼ぶ声もむなしく。木の実とか木の枝とか石とか割となんでもぶん投げてくる猿ども。
「このっ!」
 打ち返すシンジュ。
「……馬鹿め」
 下僕まで用意して数で勝負するイブキ。
「美しい私に何て事を!」
 百倍にして返すとがんがん投げつけるイシュ。
 互いになかなかの健闘を見せる。
「……物騒ですね」
 ひたすら避けに集中していたハジだけが無傷だった。

 そんなのも気にせずひたすらあやしげな蔦を引きまくる人びと。面白がってやったのは主にメイナとアトリだ。
「何かないかな〜?」
「うっしゃ、出て来い〜!」
「……あら? きゃっ!」
 ヴィオレッタもバランスを崩すたびに引くので、数では負けていなかった。
 森の中でごすごすと落下する音があちこちに響く。
 ……ありとあらゆるものが落ちてきた気がする。
「何かこの森の事で知っている事があったら教えておくれ……」
 そんな嵐のような状況で。ノアはぬかるみにはまりながらもジェントルに猿に問いかけている。……ここまで一環していればある意味立派である。

●花に埋もれた伝説のありか
「よ〜っし、いっちば〜ん!」
 メイナが石畳の上に走りこんでいく。丈の低い黄色い花に迎えられた冒険者は、朽ち掛けた柱に絡まるの白い花を見上げ、ようやく目的地にたどりついた実感を覚える。
「小さいけれど洒落た感じねぇ」
「おー、いい景色じゃねぇか」
 イシュとアトリは周囲を見渡して素直に感嘆する。白い柱に囲まれた中、小さな霊廟は眠っていた。精緻な装飾が彫られた扉はかたく閉ざされている。色とりどりの花に包まれ、すがすがしい香りが漂うその場所は、小さく纏まっているからこそに美しいとも言えた。
「なかなか素晴らしい光景だね! 皆は疲れてはいないかい? 私? 勿論大丈夫だとも!」
 と言う割りには足腰ががくがくいっているノア。優しい仲間達は見てみぬふりをする。
「……幻の園? にしては、ちょっと迫力不足だな」
「ですね。確かにいい景色ですが」
 シンジュとハジは幻想的な風景を前にしながらも、予想通りだったかと苦笑した。
「これは……パズル?」
 美しい風景に心癒されつつも、ヴィオレッタはまっすぐに遺跡へと向かい、遺跡の前に置かれた石台を覗き込む。パネルの上にばらばらに置かれた石のピースは、薄れてはいるものの、表面を色付けられているようだ。
「……石碑にヒントがある。風景が鍵となっているようだな」
 石碑の文字を解読したイブキがヴィオレッタに告げる。
「ヴィオラ、分かりそうか?」
「そうですね……」
 アトリの呼びかけに、ヴィオレッタはもう一度周囲を見渡し。
「花の位置かな?」
 あちこちを見回していたメイナが駆け寄ってパネルを覗き込む。
「ピースの色も合いますし……多分。北が上だから……」
「ヴィオレッタちゃん、手伝いましょうか?」
 イシュが申し出る。三人は話し合いながら、パネルの上に石のピースを嵌め込んでいく。
「赤い花は右手、青い花は左手。頭上に白い花の蔦。振り返って黄色の花。前は紫色の花……」
 確かめるように呟き、全てを嵌め終えると。
 軋んだ音を立てて……霊廟の扉が開いた。

●花の宴席
「あは〜、結局ガラクタだったね〜」
 石畳の上で円座になって反省会。メイナが明るく笑う。
「美女もいなけりゃ宝もガラクタかぁ……。でもまあ、あの霊廟の彫刻は美人だったよな! 結構俺好みだったぜ」
 扉だけ引き剥がしてくりゃ良かったかなと、アトリは大胆な事を言って笑った。
 ……扉の中にあったのは、薄汚れた宝箱ひとつ。中には彫刻こそ凝っているものの、あちこち錆びを浮かせたなまくら剣や杖がごろごろ転がっていただけだった。
「牙剣は……動物の骨で作った剣か。まあ……大筋間違ってはいないのだろうが」
 酒の入ったカップを手に、イブキが肩を竦める。伝説とは、たいていこんなものだ。
「あるいは、いにしえの先人が残した記念碑のようなものだったのかも知れませんね」
「まあ、夢は夢のままの方がいいだろう……多分」
 ハジの言葉に被せるように、シンジュが言った。
 そう。夢は、思い馳せる事が大事だから。

「私の美味しい料理を食べられる事を感謝しなさいよね!」
 料理の載った皿を両手にイシュがやって来た。
「あ、私手伝いますよ」
 ヴィオレッタがイシュの作った料理を運びに、鍋の掛けられた焚き火へ向かう。
「それは猿達の素晴らしい贈り物かい? どれ、私も味わう事にしようではないか!」
 ノアの言う通り、猿との凄絶な物投げ大会となった森の中で拾った物が料理に使われていた。何事も、過ぎ去ってみると無駄ではないのかも知れない。
「それじゃ」
「乾杯!」
 未成年には紅茶、成人はお酒。かちんとカップをぶつけ合って。
 月明かりの下、花の香り漂う中で、宴席は和やかに続く。
 ……そうして、探索は終わりを告げたのだ。


マスター:砂伯茶由 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:8人
作成日:2006/07/01
得票数:ほのぼの11  コメディ4 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。