<リプレイ>
●にゃんこ神社の新郎新婦 白無垢の花嫁は、挨拶に顔を出した冒険者達の前で、楚々と頭を下げた。 「此度は、どうぞ宜しくお願いいたします」 角隠しの上に見え隠れする猫耳、白い着物の帯下から伸びた猫尻尾。清楚な彼女は、にゃんこ花嫁の衣装もよく似合っていた。 「……お、おめでとうございますにゃ!」 にゃんこ巫女の衣装に既に着替えた大地のきらめき・エーナ(a32582)は、責任の重大さに少々緊張しながらも、笑顔で彼女を見つめた。 こんな結婚式会場ではあるが、二人にとっては一生一度の大舞台なのだ。 「素敵な花嫁さんにゃ〜♪」 壁犬・ウィスタリア(a00498)は神主姿の白銀の星芒術士・アスティル(a00990)、ウィスタリアとお揃いの猫巫女服姿の皇炎奏華・ルィンフィーネ(a02277)と三人で花嫁さんを優しく迎えるように微笑んだ。 「今日はよろしくお願いします。幸せになってくださいね」 「とてもよくお似合いですにゃ」 三人に褒められ、恥ずかしそうに俯く花嫁。 そこへ、三毛猫カラーの羽織を着た、花婿が現れた。 「や、皆さん。今日は僕達のためにありがとにょっ! どうかよろしくにょっ!」 「……まさか!」 着慣れぬにゃんこ神主衣装を身につけた無二なる雷閃・ロイズェ(a00758)は、聞き覚えのある語調に思わず声を出して振り返った。 「おや、あなたは。いつぞや境内で見かけたことがあるですにょ」 「……」 「ロイズェ様?」 ぴょこぴょこ尻尾を振り、ロイズェを見上げるプラム。 常に神社にいる熱狂的ファン客その1でしかなかった男が、清楚な娘を妻に迎え、こんなマニアックな神社で式をあげるなんて何も感じないというのが無理な話。 「冒険者だったんですにょ〜。こりゃあ驚きだ。それでは改めてよろしくにょっ」 「……お知り合い?」 「そうというわけでもないにょ」 新郎新婦が仲良く語りあう。 「二人のお名前を聞いてもいいですか?」 ヒトの剣聖・ジュダス(a12538)が黒い瞳を向ける。 この場にいて、猫神主でもなく、猫巫女でもなく、猫ですらなく、普通の格好をしているのは多少居辛いものがある。まにあ、というならば、彼は胸を張り大きな声で、「俺ははびたんまにあだ!」と宣言するが、ここはまた別なまにあの集まる場所なので、その衝動は我慢するべきか。 男性がネコマロ、女がミハルと告げた。 「解りました……今日はどうぞ頑張ってくださいね」 ジュダスは笑顔で頷いた。 「気をつけないといけませんね……そろそろ、私たちも行きましょうか?」 碧翠風華・レラ(a40515)は、猫巫女仲間の天照月華・ルフィリア(a25334)と黒耀薔薇・ショウコ(a43271)に呼びかけた。 レラとルフィリアは受付の対応、ショウコ、ウィスタリア、アスティル、ルィンフィーネは場内の警備に当たるという。残りのにゃんこ巫女達は皆、花嫁・花婿の警備だ。 「大丈夫か……?」 碧翠の護り手・ガイ(a42066)が心配そうに髪の毛をかき上げながら、恋人のレラを見つめた。受付といえば目につく場所。カタログ常連ともなったレラではきっと目立つだろう。ちなみにルフィリアも同じく常連。 「巫女を護るくらいなら、神社の者でもなんとかなるじゃろ」 奥からこの神社のオーナーでもある大神主の老人が現れ、目を細めた。 「大神主様……今回もお世話になるのです……よろしくお願いします……」 ルフィリアが丁寧に頭を下げる。彼女の後ろには黒髪の少女の如き召還獣がいたが何故か可愛らしい猫耳をつけているような気がするのは、気のせいだろうか。 「……あまりお客様を待たせるのも心配よ。そろそろ行かないと」 ショウコが皆を急がせた。門外にはもう沢山の人が既に集まっている筈だ。 「仕方ない。何かあったらすぐに呼ぶんだぞ」 ガイはそう言いながら、皆と共に建物の外へと出て行った。
●にゃんこ達も元気よく 「お前達は今日も元気じゃの」 猫を愛でる司書・コハク(a39685)の掌の下で、猫達は幸せそうに喉を鳴らす。 神社の目玉は猫巫女ばかりではない、この猫達も主役の一人なのだ。 そもそもこの神社は、猫を愛好する神社であった筈。猫復古運動を個人的に心に抱く彼は、幸せそうな猫達を見つめ、心に誓った。 「お主らの為に、わしは今日も猫饅頭を売りに売ってやるぞ〜〜」 「にゃ〜♪」 解っているのかそれは判別つかないが、猫達は声を揃えて鳴く。 「こんなところにもいたのねー、見つけたわ」 その猫達を見つけて、巫女服を纏った衝撃の弾幕少女・ユーロ(a39593)が近づいてくる。ユーロの側には、髪の色が違う以外は、彼女と紛わんばかりのそっくりな姉、嵐を呼ぶ魔砲少女・ルリィ(a33615)。 二人は外の警備を済ませると、社に戻って猫達がまだ境内にいることを知り、回収しに歩いてたのだった。 「外の様子はどうじゃった?」 尋ねるコハクに、銀糸のようなツインテールの髪を揺らしユーロはつまらなさそうに答える。 「……あんまり思い出したくないにゅ!!」 「2人捕まえたわ。大変だったけど」 不機嫌なユーロの代わりにルリィが答えた。なんでも猫ねこハンマーでダフ屋を追い回している間に、行列を作っているファンの前に飛び出してしまってちょっと大変だったのだ。 一般人と思って迂闊だった。次からはもっと早く紅蓮の咆哮を使おうと心に誓うユーロだった。ちなみに二人目はすんなりルリィの緑の束縛で捕まえたので、思う存分猫ねこハンマーで叩いてやったそうだ。 猫を回収した二人は、時間が押してるからと猫達を抱いて、すぐに社へと戻っていった。 「それじゃ……お祭りの始まりか」 コハクは笑顔で呟き、青く晴れ渡った空をゆっくりと見上げるのだった。
そして。
毎度の如く、開場と同時にどわっと人々が溢れ出す。 花嫁花婿の友人知人、近隣の一般客、遠くからでも足を運ぶファンやマニアの域に達する人達が、既に開場の数時間前から行列を作っていたそうな。 「レラちゃ〜ん! ルフィリアちゃ〜ん!」 「握手握手!」 「こっち向いて〜!!」 「あ、はい。……でも立ち止まると危険ですからっ!」 レラの必死な声が飛ぶ。 「……ルフィリア〜! 好きだ〜!!」 必死な声にはどこか間違った必死な声が帰ってきた。 「……」 またも呼び捨てにされたルフィリアは小さく嘆息。だが気づかれないように入場券を配り、握手を求める手に適当に応じた。 「レラちゃんっよかったら、このカタログにサインを〜!」 「てめぇ何割り込んでんだ?」 「け、喧嘩はだめですよっ!!」 レラの声が飛ぶ。 「だってこいつ割り込……!」 「おまえがっ……! 「痛っ!!」
「全員退場……それが嫌なら、おとなしくして……下さい」
「……」 一触即発の喧騒の声は、ルフィリアの一喝で、みるみる沈んでいく。 だけど、後ろのほうで「怒った顔も可愛……」なんて声が聞こえてきたりもして。 ……ここのお仕事は本当大変デス。
勿論大変なのは受付ばかりではない。 ショウコ、ウィスタリア、アスティル、ルィンフィーネの働く御神籤売り場も大変な人ごみだ。一番端に置いてある【にゃんこ神社公式カタログ】が特に危険。 次から次に伸びてくる手とお金。 笑顔を欠かさず応対している4人にも段々疲れが見られてきていた。 「い……忙しいにゃ……。でも頑張るのにゃ〜……!」 額の汗を拭うウィスタリア。 「ウィスちゃんかわいいーー!!」 「……こっち向いてーショウコちゃーーん!!」 何故か激しい歓声も、そんなに勇気づけてはくれない気がした。
流れてきた客の海の中にジュダスは紛れ込む。友人知人席は、裏取引されているという噂のあるVIP席。ここでの監視には大きな意味があるだろう。 「あなたもネコマロのお友達?」 「そ、そうです。以前から猫巫女好きで……」 親族らしい人の話に相槌を打ちつつ、ジュダスは続々詰まってくる人波を見守っていた。 ガイはステージ脇の、進入禁止、と書いてあるロープの内側にいた。 もしステージによじのぼるものがあればすぐに注意できる位置だ。 スリだの泥棒だの、ストーカーだの……祝いの席に水を差すような無粋な連中は許すわけにはいかない。 花嫁に聞いた話によると、彼女は元々この神社の巫女で、彼女のファンを名乗る客の一人が、彼女が別なファンと交際を始めたのを逆恨みして、嫌がらせをするようになったという。 ファンの風上にもおけない…… いや…… (「なんでレラはここで働くのが好きなんだろう……」) 勿論彼女はあの衣装が似合うし、働く姿は輝いている。 しかし何か抵抗がある。このマニアックな場所で彼女が毒されてしまうのではないかとか、そんな不安。 そういえば同じ悩みを持っている青年もいたことを彼は思い出した。今度語り合う暇があれば、話してみたいものだ。
へっくしょん!!
にゃんこ神主服を纏いながら、新郎新婦を護衛していたロイズェは盛大なくしゃみを吐き出した。 「大丈夫ですの?」 プラムが心配そうに見つめる。 「い、いや……大丈夫。……誰か噂してるのかね」 「怖いわ、私」 花嫁がぽつりと呟いた。 「大丈夫にょ! 僕が必ず君を守るにょ!」 新郎の真剣な瞳。花嫁は安心して頷く。変な男ではあるがいい奴らしい。 「冒険者がこれだけいるんだしね。何か起こすほうが難しいと思うよ」 「そうですわ♪」 同意するプラム。勿論彼女だけではなく。 「そろそろ参りますにゃ!」 エーナとユーロが二人の先導を務める。ロイズェとプラムとルリィはそのすぐ後ろを歩いてマタタビを撒き、猫がその後ろに続く事になった。
管弦楽器の音色。涼やかな音に鈴の音が合わさり響き渡る。
行列はゆっくりと進む。 長い行列の半分を占めるのは、撒かれたマタタビの香りでよたりよたりと歩く猫達。にゃ〜ん。にゃ〜ん♪と媚いるように合唱する声は、独特の風情だ。
人々の歓声が一斉に響き渡り、誰も彼もがステージを見守る。 猫饅頭屋のコハクも、おみくじ売り場のショウコやウィスタリア達も、客席のジュダスも、警備のガイも、一瞬それを見上げ、すぐに視線を観客に戻した。 変な動きをする者があるならこの機会に違いない。
長いステージの上をゆっくり歩いた新郎新婦は、その奥にある社の前で立ち止まる。そこに待受けていた大神主は二人を着席させ、お清めの枝を振った。 さらに祝詞奏上、三々九度、新郎新婦の誓いの言葉、と続くのだが、事件は大神主が祝詞を上げ終わったばかりの頃に起こった。 「今日がミハルさんの誕生日らしいよ」 「そうですか……」 客席で世間話をしていたジュダスは、ステージを見る客の中に変な動きをする若者がいることに気がついた。 「猫饅頭はいらんかのう〜」 屋台から持ち売りへと姿を変え、会場内を練り歩く饅頭屋コハクにジュダスは合図を送り、それから自分も客席に混ざる。 だが。女性の悲鳴を聞きつけ、足を止めた。 「この人痴漢よー!」 放っておく訳にもいくまい。 饅頭屋は男に近づこうとする。だが、人が多くてなかなか進めない。 邪魔な客に「カタログつきでどうじゃ?とびっきりのがあるのじゃよ」などと悪魔の囁きをし、少しずつ前に進む。「なんだよこのカタログ猫だらけじゃん」なんていう批判の言葉には耳を貸さない。いいじゃないかカタログだけならタダだから。 だがなかなか前には行けない。 そうしている内に、一人の男がロープの内側に飛び込み、ステージの上に駆け上がろうとした。 即座に気づきガイが身を翻す。眠りの歌でそれはあっさり地面に落ちた。だが、彼から見えない方向でも侵入者はあったのだ。 「誰か!あっちにもいます!!」 ショウコの声が響く。 「早くしないと登っちゃうにゃ!!」 売り場の巫女達は気づいたのだが、にゃんこ巫女が客席に飛び込むのは危険行為。警備が追いすがるが間に合わず、一人が始めるとマナーの悪い客は連鎖するものである。ガイも他の客の対応に追われ、とうとう一人の男が運悪くステージの上によじ登ってしまった。
儀式は進み、誓いの言葉。 「私達はどんな時も、二人で力をあわせ、生きていくことを誓います(にょ)」 声を揃える新郎新婦のすぐ後方で、男の声が響いた。
「「そんな結婚認めんーーーっっ!! ミハルちゃんは俺のものだーー!!」」
「!!」 驚く二人を守るようにロイズェとプラムは二人を庇う。 そして紅蓮の咆哮を使用しつつ、彼に向かって叫んだ。 「お客さん!舞台の上に勝手に上がらないでくださいねーっ!」 「ううっ」 体が動かなくなり男は顔色を変える。即効でユーロとルリィが退場させようとする。 「いやだっ!! 俺はっ!!」 苦しげに男は叫ぶ。よく喋れるものだ。 「……悔しいのはわかるけど、ここまで来て邪魔はいかんよ」 「そうにゃ〜……好きな人のためにお祝いするものにゃ」 ロイズェの呆れ声に、エーナも困ったように言う。 新婦は新郎に隠れながら、今まで嫌がらせをしてきたのはこの男だと皆に知らせた。 「男なら好きな女の子の幸せは涙を呑んで祝ってやらんとな。それでこそ男だろう?」 ロイズェの声に、男はがっくりと首を落とした。 そして悔し涙を零し、ぽつりと呟いた。 「ミハル……綺麗な花嫁さんだ。幸せになれよ」 「……ありがとう」 そして男は麻痺したまま、連行されていったのである。 うまく正常な人生に戻れるといいけれど。
「それじゃ、式の再会だねっ」 エーナが皆を励ますように元気な笑顔で言った。次の順式は、舞姫が二人の為に神楽を舞う儀式だった。 その役目はエーナが仰せつかった。 幸せな生活をこれから幾年も過ごしていく二人の為に、最高の神楽を舞って見せよう。鈴を手に、右手をくいっと折り、猫のポーズ。 にゃんこ神社だから、当然、にゃんこ神楽に決まっているよね。 エーナの可愛らしい、それでいて美しい神楽は、観客達にも大評判。 翌日あちこちで発行された瓦版“ぶろぐ”にも載っていたらしい。 そして可愛らしい猫神楽の終わった後、すっかり幸せな雰囲気を取り戻した新郎新婦はおごそかに指輪交換の儀をとり行ったのだった。
(「もしかして……」) ロイズェは、夢見るように二人を見つめているプラムを見つめる。 (「プラムちゃんもこんな結婚式がいいなんて思っているんじゃ」) それはとても怖くて聞けない禁断の台詞。
「いい結婚式だな……違和感はあるが」 「素敵な結婚式じゃよ……猫達も頑張ったのじゃ」 微妙な感想を漏らすステージの下の二人。 痴漢と暴れた男が二人、彼らの足元に縛られ転がっている。
「結婚式か……」 まだ受付の方には人だかりがある。忙しくしているだろう二人を思い、ガイも小さく考えた。あまり考えなかったが、自分にもそんな機会があるのかもしれない。 (「いつか……そういう日がきたら」) 彼は流れてくる音楽を聴きながら、恋人の晴れ姿を思い浮かべたりしたのだった。
おわり

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参加者:10人
作成日:2006/07/04
得票数:ほのぼの14
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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