西方プーカ領を求めて〜ほっぷ・ステップ・じゃんぷ〜



<オープニング>


 同盟諸国が手痛い敗北を喫したレルヴァ大遠征。
 この敗北により、同盟諸国はレルヴァ周辺およびその南のプーカ領との連絡を絶たれてしまった。
 この問題を解決する為、滅亡したソルレオン王国の南方を通る街道を制する事が円卓で決定された。

 現在、プーカ領にはトロウルに追われたドリアッド達がノルグランド傭兵大隊と共に逃げ込んでいるが、ソルレオン王国が滅亡した以上、ドリアッドとプーカ達だけでトロウルに対抗するのは難しいだろう。

 彼らを救うためにも、冒険者達達は海沿いの街道を進み、モンスターなどの障害を一つ一つクリアして、プーカ領への道を切り開いていくのだ。

 まだ見ぬプーカ領へ向けて、冒険者達の冒険の旅が始まろうとしていた。

●始まりは何時も雨
 降り続く雨じめじめとした湿気が鱗の表面に雫を滴らせる……そんな錯覚さえ覚える。
「うが――――! 鬱蒼しい!!」
 轟音・ザスバ(a19785)が吼えた。
「そういやぁ……どっかでモンスターを見かけたとか聞いたなぁ」
 街角でちらりと小耳に挟んだ話をふと思い出した。
 場所はプーカ領に続く街道の湿地帯。
「早い所道を繋げてやりたいよな、おめぇら?」
 プーカ領にいる団員の顔がそろそろ懐かしくなってこねぇか?
「つうわけで、行くぞ!」
 一暴れすれば、この鬱憤も少しは晴れるだろうという、突発的なザスバの思いつき。
「なんかカエルに似たモンスターって話だな」
 張り手をかますカエルに似たモンスターが街道の途中の沼地が広がる湿地帯に出没しているらしい。
 まぁ、詳しいことは行けば分かるだろ。
 降り続く雨も何処へやら、湿地帯でのモンスター退治が決行されることになった。

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参加者
轟音・ザスバ(a19785)
雪ノ下・イージス(a20790)
不完の盾・ウルカ(a20853)
緑の記憶・リョク(a21145)
斬空術士・シズマ(a25239)
玲瓏なる紫昏・カナタ(a26377)
翠緑の慈雨・グレイス(a32683)
桃ノソリンの行かず後家・トロンボーン(a34491)


<リプレイ>

●目指すは西方
 昨夜から降り続く雨は止まず。今も尚、しとしとと降り続いている。
「雨……好きじゃないんですよね、オレ」
 斬空術士・シズマ(a25239)はこれが終わったら風呂にでも入ってさっぱりしたいと溜息をつく。
「雨か……こんな時くらい止んでほしかったが……」
 肩に降り注ぐ雫に眉を潜めながらも玲瓏なる紫昏・カナタ(a26377)も西方にいる友を思う。
「この時期の湿地は蚊がいそうなぁ〜んね………」
 向かう先は湿地帯だと聞いて心かしか桃ノソリンの行かず後家・トロンボーン(a34491)の声も間延びして聞こえた。
 この時期全身を鎧で覆うと暑そうだなぁ〜ん………で、ウルカさんが足場になってくれるんだっけかなぁ〜ん?
 まとわり付くような湿気でそれでなくても鬱陶しい……と、言いながらトロンボーンがさり気なく物騒な言葉を呟く。
「無用な怪我をしないように、ね?」
 泥濘対策のブーツでぬかるんだ道を踏み進めながら翠緑の慈雨・グレイス(a32683)が何時もの調子気心知れた仲間たちを見回した。
「カエルの分際で鱗なぞ生やしやがって!」
 リザードマンの鱗が大陸一だと言う事を見せてくれるわ!!
 事の発案者である轟音・ザスバ(a19785)は、じとじとした空気はなんのそので、豪快な笑い声を響かせる。
「カエルなのに鱗が生えてるっすか!?」
 その言葉に緑の記憶・リョク(a21145)がそいつはびっくりだ! と丸い瞳を更に丸くした。
 戦争がまだ終わっていないと心なし落ち込んでいた気分もどこかへ吹き飛ぶ。
「………組長の、思いつき……のような、気も……するけど………」
 いや、間違いなく思いつきに違いない……考え込んでも今更か……
 雪ノ下・イージス(a20790)もどこか達観した瞳で、一家を支える主の広い背中を見た。
「たまには、お頭の勘気も人の役に立つ方向に向くんだなぁ」
 たかがモンスター1体、されどモンスター1体。
 これでプーカ領への道がまた一歩進むことになるなら安いもの。と、侠盾・ウルカ(a20853)が笑みを漏らした。
 一部降り続く雨模様の天気に気の進まぬ顔も見うけれらたが、そこは同じ釜の飯食って生活している気心しれた間柄。
「おら行くぞ!」
 野郎ども!! 豪放磊落なザスバの活が飛ぶ。
「男ばかりじゃないけど、ね」
 隔して坐主罵組の猛者と、湿地に潜むモンスターの戦いの火蓋は切って落とされた。

●のっけの先から
「で、親父殿」
 くるりと振り返ったカナタが切り出す。
 肝心のモンスターは何処に? 見渡す限りの葦や水蘚の広がる湿地帯、それらしいものの姿は見当たらない。
 胸よりも高い位置まで伸びた草が生い茂り、雨で視界が悪いのに拍車をかけている。
「……それは……しらん!」
 こまけぇ事まで聞いていないからな。
 きっぱりと言い切ったザスバの口調に一同がやっぱり……と異口同音の唸りをあげ、頭を抱え肩を落とした。
「……まずはモンスターを見つけるところからなの、ね」
 仕方ないわと、既にこういう状況になるのを察知していたのかいち早く立ち直ったグレイスが、肩を竦めて義侠の契りを交わした家族を促す。
「せめて雨があがるといいんだけどなぁ〜ん」
 防水マントを羽織、防水処理したブーツを履いたトロンボーンが草を掻き分け踏み入った。
「お? リョクの兄さんなんかいいもん履いてるな」
「ふふふ……良くぞきいてくれたっす!」
 ウルカが隣を行くリョクの足元に目をつけた。
「農作業用の高級長靴を履いてきたっす♪」
 膝下までカバーできるから安心して動けるらしい。
「もしもの時もバッチリっ……!? うぎゃっ!」
「兄さん!!」
 悲鳴とともに水柱があがり、リョクの姿がウルカの視界から消える。
「……やはり、足場が悪いようですね……」
 湿地帯……故にたとえ目の前に胸丈まで草が生い茂っていようと、その下に地面があるとは限らない。
 慎重にシズマが一歩踏み出す。
「手前ら気を抜くんじゃねぇっ……ぬぉぅ!」
「お頭!?」
 激を飛ばすザスバも、何かに躓き高く水柱を上げる。
「下手に動き回るのはあまりよくなさそうだ……」
 カナタも其処此処からあがる水音と悲鳴に嘆くように雨を降らす曇天を見上げた。
「………でも……モンスター……倒さないと……」
 ひょっとして帰れない? コトリと視界の悪い辺りを見回し、イージスが小首を傾げる。
「そうね、まぁ……皆で探せばきっと見つかるわ」
 グレイスがイージスの肩を叩き促した。
 何人が水に落ち、どれ程時が経っただろうか。
「む? むむむ……? 何だかすっごく嫌な予感がするっす……」
 リョクの勘が逃げたくなるような何かの恐ろしいモノの到来を告げていた。
「来たか!」
「何処だ!!」
「陣形を……と、なぁっ!?」
 雨脚は強くなり、既に叩きつけるような大粒の雨に変わっていた。
 既に水に落ちたものも、落ちていないものも変わらない程に濡れそぼってる。
「……足元……注意なの……」
 言っている傍から幾人かが水に落ちた。
「くるっすよ!」
「ほら、気張っていきましょう、ね?」
 グレイスの言葉を待っていたかのように、頭上を黒い巨体が飛び越えた。

●カエルぴょこぴょこ
 シズマの頭部がまぶしく光り輝く。
「さて、行きますよ!」
 その光にカエルのようなモンスターの姿が照らし出された。
 手の平大の鱗は雨をはじきてらてらと輝き、だらしなく緩んだ口元から長い舌が覗く。
『ゲコゲコ……』
「…………変な顔……」
 不細工。イージスに一言で切って捨てられたカエルの目元と口元には、白と赤でくっきりと隈取のような模様が見える。
 その口から予想に違わぬしゃがれた声が漏れた。
「確かに不細工だなぁ〜ん」
 但し想像以上にでかいが。 
「………カエルか………」
 いや、わかってたことだが……あまりにも突拍子もない外見にカナタは軽く頭痛を覚えた。
「ほれイージスも言って来い」
「……うん……」
 ウルカからの鎧聖降臨を受けたイージスもシズマの後を追うように軽快な足取りでモンスターに近づいた。
「足場がもちっとしっかりした所へおびき出せや」
 したら全員で妬きいれたる。ここまで足場が悪いと不利だ。
 シズマとイージスの頭部の光と素早い足さばきで生み出した残像や動きに翻弄されたモンスターは、上手い具合にある程度地のある場所に誘い出された。
「此処までくれば!」
「後はまかせとけ! ゲァハッハッハァッ!」
 ダンっ巨大な蕎麦切り包丁を構えたザスバが、雨粒を弾き飛ばしながらカエルの姿をしたモンスターの前に立ちはだかった。モンスターの顎は長身のザスバよりも頭2つ分くらい高い位置にある。
「俺を見下ろすとはいい度胸だ!」
『ゲココっ』
 カエルの分際で! と、言い放ちながらザスバが巨大な包丁を降り抜く。迎え撃つカエルは張り手……
「お頭!」
「兄貴」
「親父殿!?」
「親分!!」
 一瞬の間に交わされた攻防を歴戦の兵達は見逃すことがなかった。
 それがたとえ、降りしきる雨に遮られてたとはいえ……そのような障害は些細な事に過ぎない。
 不恰好に直立になったカエルが繰り出した張り手の数は十を越え、切り込んだザスバの包丁からは、同じいやそれ以上の回数の斬激が打ち込まれている。
「ケッ、軟い鱗しやあがって!」
 ぺっと掠めた張り手で口腔を切ったのかザスバが、地面に血を吐き捨てた。
 鱗のようなカエルの表皮に一筋の傷。あれだけの応酬をしたのに一太刀だけか……苦々げにザスバは舌打ちした。
「無理しないの」
 ぺしっとグレイスがザスバの頭部をはたき癒しを施す。
 その間に一同は隊列を組みなおした。
「確実に……仕留めるっ」
 親父殿の仇は必ず……。
「たまには、攻撃に重点をおいてみたかたっす♪」
 全身が緑色のペインヴァイパーにとぐろを巻かれた状態のリョクの姿は、傍から見ているとなんともいえないディテールである。
「キツい一撃、お見舞いしてあげて頂戴」
「委細承知だぜ! 義母さん!!」
 ウルカの手にした四角杖がグレイスのディバインチャージを受けて神々しくその形状を変えた。
「覚悟なぁ〜ん!」
 トロンボーンが護りの天使を召喚し武器に更なる力を加える。
 阿吽の呼吸とでもいうのだろうか? 後方からの援護射撃の中を掻い潜り、ウルカとトロンボーンが懐深く踏み込む。
「成敗なぁ〜ん」
「落ちろ!」
 ぱっくりとカエルの腹が十文字に切れる。
『ゲコ――――!』
 よろよろと腹を押さえたカエルの手の平にべっとりと黒い血が付く。
『ゲゲっゲコ………ゲコっ!!』
「うわっ!」
 なにするっすか! と、リョクの悲鳴が響く。
 べろーんと伸ばした舌でペインヴァイパーごとその羽毛に包まれた体を巻き取り後方に大きく跳ぶ。
「リョクくん!?」
「くそっ!」
 すかさずカナタがチャクラムを飛ばすが届かない。
「俺の弟分をやろうったぁいい度胸だ」
 そもそも捕食関係が逆だろう……
「往生せいや!!」
 ザスバの極限まで凝縮された闘気が真っ二つにモンスターを両断した。
『ゲッ………』
 二つに分かれたカエルの口から漏れる声が断末の声となった。
 ばしゃりと水たまりにその躯が転がり、じわりと黒々とした染みを作る。雨は気が付けば小雨になっていた。

●幕引き
「おつかれさまぁな〜ん」
「とんでもないモンスターだったな」
 ザスバの見事な太刀筋に前衛二人が、流石は……と、ただただ感心して頷く。
「……戦う、たびに……なんで、ずぶ濡れに……なるの、かな……」
 水だけとは言わず、雨の中を駆け抜けたのだから、もちろん体中の其処此処に泥がはねているのを悲しげにイージスが瞳を伏せる。
 ここ最近水辺でばかり戦っているせいか……頭からぐっしょりぬれた経験も今日だけではない気がする……
「にしてもっす、兄貴の憂さ晴らしもたまには人様の役に立つことがあるんすね」
 カエルは薫製にしたりしたら長寿の薬になるというけれど、モンスターならどうだろうとリョクが興味深げに死骸を見下ろす。
「モンスターだからどうかしら、ね」
 仲間の体を見た限り、それ程目立った怪我をしていないのを確認したグレイスも肩の力を抜き少しだけ表情を緩ませた。
「さっさと風呂に入ってさっぱりしたいね」
「全くだ」
 ぬれた髪をかきあげカナタの言葉にシズマも同意を示す。
「なんにせよこれでまた一歩プーカ領に近づいたってことだな」
 ガハハハっとたまっていた鬱憤も晴れたのか、曇天を吹き飛ばす勢いのザスバの割れるような笑い声は暫く響いていた。


マスター:青輝龍 紹介ページ
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