<リプレイ>
●ルクレチア様の浴衣 星祭りが近付く夏のある日、浴衣を新調する機会を下さったルクレチア様の取り計らいに感謝しながら、其処を訪れたシファは思わず口を開けた。続いて扉を叩いたキルも、呆れたように呟いた。 「えっらい混んでるな……」 正に人人人。 涼やかな衣装である「浴衣」ならば求めて集まる人が多いのも道理だろう、とガルスタは納得する。人の数も凄いものだが、此れだけの浴衣を作った職人たちもまた凄いものだとノリスは思う。良い浴衣を見付けようとクィンクラウドが人混みに挑めば、リオンも拳を握って気合を入れると其れに続いた。折角だから御揃いの浴衣が良いと願うミリアとマヒナも、負けず人波に飛び込んで行く。 自信ありげに胸を張りつつ迷子に為り掛けるネロを、ピジョンが急いで呼び止める。マサキも早速連れの姿を見失い、辺りをきょろきょろ見回していた。此れでは知り合いが居ても気付けないだろうな、とティトレットは小さく息を吐く。ギバとコシロは逸れないよう、ぴったり引っ付いて進んでいた。 「此れが浴衣と呼ばれるものですか……」 風情を感じます、とノエルは頬を緩める。こんな風に夏に適した服があったのですね、とペルレは感嘆に息を吐いた。見掛けより涼しく肌触りも良い、と感心した様子で呟くゼンの姿を運良く見付けてヒトのレインは彼に声を掛ける。 「良い物揃いなだけに、如何しても目移りしてしまうね」 夏の香りがする布を撫でつつ、苦笑混じりにグリットが言った。浴衣の選び方の参考にしようとラッカが周囲を見回せば、兎に角試着しているファリー、まず蒼い浴衣だけを取り分けているサードムーンが目に入る。浴衣の選び方は人其々であるらしい。リピューマはこそこそと、リリカは必死に、そしてアナイスが楽しみながら好みの浴衣を選んでいる間に、ラピスは素早く選び終える。 桃色の可愛らしい浴衣を選んだミストやシエルと談笑していたアキナは、可愛らしい品々を目にすっかり蕩けたミーミリニャからやはり桃色の浴衣を薦められた。レーヴェとオルーガが相手に似合うだろう浴衣を選び合うのを、ヴェルーガは満足げに見遣る。ブラックとホワスは賑やかに喋りながら、エルフのレイジュとフィリスは楽しげに騒ぎながら浴衣を選んだ。 瑠璃紺地に白い鈴蘭模様の上品な一着を手にしたシーアスに、同じく純楓華風の浴衣を探していたユーリアが其の浴衣は何処に在ったかと声を掛ける。スイナに浴衣を着付けて貰ったチグユーノが試着室から出て来ると、ヒトのレイジュは「嗚呼」と小さく息を洩らした。 「女性が着ると、やっぱり華やかで良いねぇ」 フェリシスも彼に同意して頷き、素敵ですよ、と微笑する。アクアローズとアスティナは手を繋いで、仲睦まじく浴衣を探した。星祭りには二人で浴衣を着たいよな等と想いを馳せるキリエの横で、ティアルは不思議そうに「なぁ〜ん?」と鳴いて首を傾げる。
●浴衣を手に抱く想い 「ルクレチア様……」 浴衣を手にはしつつも、エルサイドは心此処に在らずと言った風情で溜息を吐いた。瞳は遥か遠き宮殿に居る寵姫を求めて宙を彷徨う。領内に立ち入ることも許されぬとは、随分と御機嫌を損ねたものだなと思いつつ、アオイはのんびりと浴衣を選んだ。本日は以前と違い、お抱えの職人を寄越してくれると言うことも無い辺り、寵姫の御機嫌が知れると言うもの。運搬を行った男たちは既に帰り支度を始めていた。 「寵姫様に、有難う御座いましたと御伝え下さい」 男たちに労いの言葉を掛け、アーサーは礼儀正しく頭を下げる。ルクレチア様に届けては貰えないかとニューラが団扇を差し出すも、男は「一度下賜為さった品を贈り返されたと見れば却って御心を痛めましょう」と首を横に振った。 「わぁ、この浴衣凄い!」 桜模様のレースで編まれた帯を手に、夢のようだとランスは顔を綻ばせる。ファオも様々な浴衣のを見るだけで心が弾む心地で、また新しい浴衣を一枚捲って見た。鮮やかな赤の模様に目を留めて、カナタが思わず歓声を上げる。流石ルクレチア様、と思わず感謝に手を合わせた。 「よし、此れなら……」 きっとルクレチア様も喜んでくれる筈、とノヴァーリスは縹色の浴衣に手を伸ばす。 ランララと独り過ごさせてしまった恋人を想い、ヴァルは浴衣を探していた。可愛い浴衣を着ていけば喜んでくれるだろうかと想い馳せつつ浴衣を手に取り、フィーは思わず破顔する。一方でイーリスは喧嘩してしまった大好きな人を想い、ちくりと痛む胸を押さえた。 「可愛いって、言ってくれるかな」 小さく呟く。カズキが恋人へ贈る為の浴衣を探す横で、クレスはいつも頑張る親友の為の浴衣を探した。オーロラは綺麗な浴衣を手に溜息を吐く。誘う勇気を抱きたいと願いつつ、不安ばかりが胸を締めた。ユーティリスに浴衣を見繕って貰いながら、マイヤは恋人を想う。 レラが似合うか尋ると、ガイは「どんな浴衣でも似合う」と答えて彼女を困らせた。照れた様子のヒースに、シゼルは嬉しそうに笑みながら浴衣を当てて遣る。シュリは大好きな人の肩に浴衣を当てるべく、足りない背丈を補おうとぴょんぴょん飛び跳ねた。そんな彼女が可愛くて、フェイトは思わず頬を緩める。 「うん、それ、凄くクールだぜ?」 オドレイは何時に無くはしゃいで言った。マントを掴んでいてくれる彼女を見、エメンタールは嬉しいような情けないような複雑な心地になる。微笑みながら自分をエスコートしてくれるセドリックを見て、ステュクスはヴェールの下で瞳を伏せた。彼は陽気で、けれど深い、南の海のような人だと想う。 浴衣の色を悩んでいる恋人の髪に触れ、紺地が良いのでは無いかとアモウが紡ぐ。 「金の髪が、良く映えると思うから」 撫子の花模様も素敵だと愛を紡ぐような柔らかな声音で囁いた。今年は一緒に星凛祭に行きましょうねと微笑むサナの手を取って彼は頷き、幸せそうに微笑する。
●浴衣選び 浴衣選びがひと段落する頃、特に何事も無く終わりそうだな、とアソートは息を吐いた。ロザリーと共に浴衣を探していたシュコウの元へ、シュハクが洒落た下駄を選んで来る。ルナが遠慮がちに声を掛けると、霊査士はこくりと頷き承諾した。彼女は何故だか、今日は少し機嫌が良い様子。ルーネの姿を目に留めれば、「次の機会があればまた、一緒に選びましょう」なんて囁いた。 試着した浴衣姿を見せるジェネシスには、ふう、と溜息を吐いて「既に決まっているのなら、私が手伝う必要、無さそうね?」と小首を傾げる。エンが水の流れにも見える薄青の茨が幾重にも重なった巾着を見せると、霊査士は素敵だと顔を綻ばせた。受け入れられた身勝手に安堵もしつつ、イドゥナは唯待つ。とても稀なことよね、とだけ霊査士は紡いで瞳を細めた。 「こんなんどうやろ……?」 冗談半分で女物の浴衣を差し出したツバメは、「試着してみます」とセレに頷かれ軽い罪悪感を抱く。浴衣に詳しくない彼は、疑うこと無く試着室へ向かった。エリオとアクアとサナエも程無く、笑顔で揃いの浴衣を手にする。セリアとサクラも浴衣を手に、試着待ちの列に並んだ。素早く試着を終えて出て来たクロスを見、ヒカリは「似合う」と微笑む。ユズリアはだらしなくならないよう気遣いながら、ゼツに着付けて遣っている。ニヴィアは興味深げに皆の浴衣姿を見ていた。 浴衣の着方が良く判らず、女性に尋ねるのも憚られ、恐らく知っているだろうと思える男を捜していたアニエスは、知っているだろうと考えた人物――ティアレスがラキアからミルクキャンディーを恵まれている図を目にしてしまった。更にボサツからは「薔薇の浴衣を貰うとイイよ」等と慰めるような口調で肩を叩かれる。オリエが煽ててやると彼は漸く気を持ち直した様子で立ち上がり、遠慮がちに声を掛けたミケーレの頼みにも「ふふん、良かろう」と二つ返事で頷いた。 浴衣を選び始めて間も無く袖を引かれる。振り返れば酷く真剣な表情をしたエルスが居て、似合うかしら、と尋ねて来た。ティアレスは「はは」と軽く笑って、柄も色も良く似合うと瞳を細める。試着し終えて来たネフィリムが、ほんのり頬を染めつつ浴衣姿を披露すると、「おまえの恋人に嫉妬しよう」と紡いで誉めそやした。 「ティアレスさんは浴衣、着ないの?」 ティーナの問い掛けに彼は短く沈黙する。 「余り、好きでは無いかな」 嫌いでは無いが、と自身を計りかねる様子で息を吐いた。選んだ浴衣を手渡され、「私の為に選んでくれて嬉しいわ」と微笑むエルフのレインに、勿論おまえの為だから選んだのだと微笑み返す。なら私のも選んでくれ、とユーリィカは声を掛けた。私の美しい髪が良く映えるように黒か紺の浴衣が良い、とへらへら笑って言う彼女に、ティアレスは「良く言う」等とくつくつ笑って返しながら浴衣探しを再開する。
●ひとりの為の浴衣 「どっちが良いと思う?」 ミナの差し出した浴衣を見た深雪の優艶・フラジィル(a90222)は、ううん、と唸った後、白が似合うと思いますと片方を指す。遣って来たセリハが丁寧に浴衣選びの手伝いを願うと、少女は「格好良い御兄さんの御願いなら喜んでなのです!」とにっこり笑った。彼女の笑みに釣られて、シルクも思わず笑顔になる。 「ジル様、宜しければ私の浴衣選びも手伝って頂けませんか?」 サホの呼び掛けに少女は「ジルで良ければ」と嬉しそうに頷く。スティアライトも物を選ぶのは苦手だからと手助けを願い出、リュタも恥じらいながら女の子らしい浴衣が欲しいのだと告げた。酷く緊張した様子のルルナも、丁寧な口調でフラジィルに助けを求める。 其の場で着替え始めようとしたティファーナを、フラジィルが慌てながら試着室に押し込んだ時、入れ違いに試着を終えた面々が戻って来た。どうかのう、と一回転して見せるヨミウタに「可愛いです」と手を叩く。ハイビスカス柄の浴衣を着たシルヴィアが、不安げに「変じゃないかな」と呟けば「涼しげで素敵です」と微笑んだ。此れからの暑い季節にぴったりですよね、とミリィも頷く。裾が短いのを気にしているエルには、「長い裾の浴衣もあるですよぅ」と勧めた。 「今は少し冒険をしてみたい気分なのですわ」 贈られた簪に合う浴衣が良いと言うエルノアーレや、誕生日の贈り物にしたいと言うシュシュ、「女の子センスに頼って」可愛い巾着を選んで欲しいと言うハコに対しては、額に汗しつつ「責任重大ですね……!」なんて気合を新たに入れ直す。 今年は星凛祭で御逢い出きるかしら溜息を吐いてから、はたと気付くルーツァ。此れでは星凛祭の言い伝えを体現してしまっているかのようだ。薔薇の帯飾りを手に、シアは小さく呟いた。 「可愛いって、言ってくれるかなぁ……」 女の子の願いを洩らして、ふと我に返った途端フラジィルと目が合った。赤面する彼女を見て、フラジィルはにっこりと微笑む。そんな少女に、「ジルさんもきっと浴衣が似合いますよ」とリューシャが声を掛けて遣った。薄紅の浴衣を選んで来たヴィンが、「どうかな」と尋ねれば満面の笑みが返される。 「じゃあ、ジルさんにも色々試着して頂きましょう!」 「なぁん♪ 試着して見せ合いっこするなぁ〜ん」 気合を入れて腕捲りしたロスクヴァがフラジィルの背を押し、苺柄も似合いそうだとサガが浴衣を抱えて後を追った。あの手毬の浴衣も似合いそう、とイリスが囁く。エメルディアも桃の簪が髪は映えるだろうと差し出してやった。彼女らの様子をケネスは微笑ましげに見遣る。戦は直ぐ其処にまで迫っているけれど、 「こんな御時世だからこそ……こういう休息も、必要ですね」 呟き、静かに目を伏せた。 山積みにされた綺麗な浴衣たちの横に、黒塗りの美しい下駄がひっそりと隠れている。ひんやりとした感触が優しくて、スノーはすっかり其の下駄が気に入ってしまった。からんころんと鳴る音が可愛らしくて、嗚呼、もう夏なのだな、と急に胸へ感慨が湧いて不思議と空が見たくなった。

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参加者:132人
作成日:2006/07/04
得票数:ほのぼの88
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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