吼え猛る怪獣峡谷:ハリネズモ



<オープニング>


●吼え猛る怪獣峡谷
 広大なワイルドファイア大陸には、誰も足を踏み入れた事のない脅威の大自然が幾つも存在している。
 ヒトノソリン達が住む平原の更に西にある、見渡す事すら出来ない大峡谷もまた、その一つであった。
 つい最近、その大峡谷から現れた大怪獣モーガストマックの群れは冒険者の活躍によって退治する事ができた。

 だが、その危機はまだ去ってはいなかった。
 その大峡谷……人呼んで怪獣峡谷から、恐ろしい吼え声が響き渡るようになったのだ。
 怪獣達の雄叫びは、怪獣峡谷に反響し大音声となって大地を振るわせる。
 それは、まさに、怪獣峡谷の怪獣達からの挑戦状であったかもしれない。

※※※※

「キミ達を見込んで頼みがあるんだ!」
 酒場のドアをバタンと開けて入ってきた霊査士、ヒトの霊査士・キャロット(a90211)は、元気な声でそう言った。
 なんでも、彼女が住んでいるワイルドファイア大陸で、大きな事件が起こりつつあるらしい。
 なお、ヒト族の彼女がワイルドファイア大陸に住んでいる理由は『ワイルドファイア大陸が大好きだから』なのだそうだ。

 そして、何事かと集まった冒険者達にキャロットは、
「えっとね、ワイルドファイア大陸の怪獣峡谷に挑戦して欲しいんだ。怪獣が集まる謎の峡谷の探検……胸がワクワクするよね!!」
 そう明るく言い切った。
 勿論、胸がワクワクするだけが依頼の理由では無い。
 怪獣峡谷の怪獣達におかしな動きがあるのも理由の一つだ。
 あたかも、モーガストマックを倒した者達が、怪獣峡谷へと踏み入ってこないように警告するかのように、彼らは日夜吼え猛ているのだ。

「あの大峡谷……怪獣峡谷の向こうには、とっても凄いものがあると思うんだ。冒険者なら、行ってみたいよね!」
 キャロットの言葉に頷く冒険者多数。
 やはり、冒険者は冒険に出てこそ冒険者だ。

「でも怪獣峡谷を抜けるには、幾つか大きな関門があるんだ。そう、まるで峡谷を護るような怪獣達。彼らはどんなに不利になっても逃げずに侵入者を撃退しようとするから、ちょっと危険だね」
 その怪獣達が護るポイントは全部で十箇所以上。
 その全てに、特徴的な怪獣達が冒険者達を待ち構えているというのだ。

「怪獣達が、こんな動きをするのには何か理由があると思うんだ。それを解明する為には……怪獣峡谷を突破するしかないよね」
 キャロットはそう言うと、キラキラと瞳を輝かせつつ、峡谷を護るそれぞれの怪獣達についての説明を始めた。

●ハリネズモ
「そこは切立った高い崖に挟まれた、言うなれば谷間の一本道だよ。差し掛かると、前と後ろからやって来るんだ。どうやら、元々彼らのお気に入りの狩場だか、遊び場だかになってるみたいだね」
 キラキラ瞳をそのままに、至極楽しそうに彼女は言う。
「数は二匹。背中にびっしり針みたいな毛が生えたハリネズモ……」
 ………はりねず『も』?
 その一瞬、笑顔のまま固まった様に見えたキャロットは、しかし、何事もなかった様に話を続けた。
 にこやかに。
「敵と見るや、その針毛を逆立てて先手必勝って感じで背中から突進してくるから要注意だよ。怪獣達には窮屈そうに見える場所でも実際は結構広さがあるから、空間は巧く使ってね。それから――」
 『穴掘りが得意なんだよ』などと話を聞いていると、イメージはハリモグラ……むしろ、その攻撃性を鑑みればヤマアラシでも良い。つまる所、些細な事なのである。ここはワイルドファイア大陸なのだ。
 巨大ハリネズミだろうと、ハリネズモだろうと――
「ああ、みんな……怪獣峡谷に思いを馳せてるんだね。頼もしいよ!」
 ……そんなワイルドファイア大陸なのだ。
「ちなみに、ハリネズモはね、岩みたいにゴツゴツした分厚い皮膚のトカゲ君。雌は雄より一回り大きい上、肩に一対のゴツいスパイクが飛び出てるのも特徴なんだ。背中からの突進だけと思って、ハリネズモの前や横に飛び出すと危ないよ」
 雌に比べて貧弱にも思えてくる雄だが、手強い敵には背中の針を飛ばして来たりもするらしい。
 まったくもって油断ならない夫婦怪獣である。

 もしかして、もしかしたら――ハリネズミみたいに、ふわもこなのかも知れないと。
 そんなささやかな夢さえ見せてはくれない、ワイルドファイア大陸。然り。逆もまた然り。
 その道の先へ行くには、巨大ハリネズミに似て非なるもの、『何かそんな感じの怪獣』ハリネズモを何とかするしかない様だ。


!注意!
 このシナリオは同盟諸国の命運を掛けた重要なシナリオ(全体シナリオ)となっています。全体シナリオは、通常の依頼よりも危険度が高く、その結果は全体の状況に大きな影響を与えます。
 全体シナリオでは『グリモアエフェクト』と言う特別なグリモアの加護を得る事ができます。このグリモアエフェクトを得たキャラクターは、シナリオ中に1回だけ非常に強力な力(攻撃或いは行動)を発揮する事ができます。

 グリモアエフェクトは参加者全員が『グリモアエフェクトに相応しい行為』を行う事で発揮しやすくなります。
 この『グリモアエフェクトに相応しい行為』はシナリオ毎に変化します。
 ヒトの霊査士・キャロットの『グリモアエフェクトに相応しい行為』は『挑戦(challenge)』となります。
 グリモアエフェクトの詳しい内容は『図書館』をご確認ください。

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参加者
黒衣の閃迅・レオニード(a00585)
鈴蘭谷の・プリムラ(a14092)
一麦の・ワシリー(a23245)
安らぎを奏でる柔らかな光・フロル(a25437)
エルフの主婦・セレア(a33556)
蒼穹に閃く刃・ジギィ(a34507)
刻読の巫女・キョウカ(a34597)
骨を心に抱く・クーリン(a35341)
天弓の巫女・ミヅハ(a39261)
晴天に薄れゆく蒼氷月・タツキ(a42022)


<リプレイ>

●ワイルドファイアの、神秘?
「……来たな」
 遠眼鏡を手に、天弓の巫女・ミヅハ(a39261)が静かに口を開いた。
 進行方向に溢れる豊かな光を遮る様に現れたのは、両肩に大きなスパイクを備えたシルエット。その体躯は遠目にもあまりに巨大で、逆光に強調されるシンボルは遠眼鏡で確認するまでもない。
「あれが……ハリネズモ……!」
 すかさずワンダラ・ワシリー(a23245)は振り返り、後方からやって来るもう一頭を視捉した。
 ……遠!
 そのせいで一回りも二回りも小さく見えるが、それでも六メートルは下らないのだ。凶悪な肩の棘が無い分、輪郭だけは比較的ソフトな六メートルが地表を振動させながらのっしのっしとやって来る。
「まあ、流石にどう見てもふわもこ、な訳ないですね。気合入れて行きますか〜」
 とげとげイガイガなのはしょうがないとして、ネズミとは似ても似つかぬそれを見て。
 妙にふかふかした調子で言いつつ、青天に浮かぶ蒼月・タツキ(a42022)は、緋の刀身持つ野太刀を抜き放ち一人ごちる。鎧聖降臨で自らの防御力を高める事も忘れない。
「穴掘って逃げられたらやですね」
 『狩場』には大きなクレーターが、無数に口を開いていた。蒼穹に閃く刃・ジギィ(a34507)とワシリーが足場を確認する為に手分けして召喚した土塊の下僕達が、滑落し、避けて通り、登ったり、登り損ねたりしていたのが、数刻前の事になる。依然、底が抜けてしまう様な落とし穴の有無は不明だが――少なくとも、土塊達が歩いたくらいではびくともしない地盤の上に、自分達は足を乗せている訳だ。
 一時たりとも気が抜けない。
「未知への一歩……なんだかわくわくしちゃいますね」
 実に、色んな意味で。
 それでも、どこか楽しげに声を弾ませ、みゅ〜と鳴くうさぎな・フロル(a25437)は手にした杖に力を込めつつ、傍らで呆けた様にぽかんと口を開けたままでいる刻読の巫女・キョウカ(a34597)と背中合わせに立ち位置を交代。注がれる力を感じて我に返ったキョウカは、より絢爛にその機能を高める形状に変じた自らの聖衣を撫でると、今はフロルの天衣に力を注いでいるワシリーに頭を下げた。
 紋章術士のフロルと医術士のキョウカ……術士2人を後衛に抱く円陣が、雌雄を各々正面から相手取る。この先に通すまいと立ちはだかる怪獣に、頑として立ち向かうべく。
「力ずくでこじ開けなきゃならんのが残念だが――」
 雄ハリネズモめがけて視界を掠め飛ぶ闇色の矢を、目を細めて見送り、チャクラムを構えた黒衣の閃迅・レオニード(a00585)の呟き。
 大峡谷の向こうに何が在るのか、冒険者達を駆り立てるのは数多溢れる好奇心。そして、攻撃力を増した一対の石斧『ビートイングラム』を両手に携え地を蹴る鈴蘭谷の・プリムラ(a14092)の――
「今日の獲物はハリネズモに決定なぁ〜ん♪」
 ……食欲?

●打破すべし、夫婦怪獣!
 轟、と唸る風が行き場をなくして渦巻く空間。
 冒険者達が通る際にはさして気にならなかった道幅を、ハリネズモは双方、体一つでがっつりと塞いでいる。『狩場』に追い詰められたのが他の怪獣ならば、確かに逃げ場もないのだろう。この場所が、ちょっとした広場になっているのは怪獣同士が凌ぎを削った痕でもあろう。

 ミヅハが放った矢は、雄ハリネズモの肩を掠めて飛び去った。
 猫が全身の毛を逆立たせる様に背の針を立て、鋭い針の突端をこちらに向けたハリネズモの猛突進をプリムラは寸で地を蹴って横合いに軌道を変え、往なすと同時に強力な居合いの一撃を見舞う。ビッ、と爆ぜる鱗の一片。次いでレオニードが投げた凶の絵札がハリネズモの身体に黒を刻んだ。
「しばらくの間、じっとしていてもらいますね」
 勢いの落ちたハリネズモを押さえ込むのは、フロルの杖の先――中空に描かれた紋章から生まれた虹の光を伴う木の葉。更に、「さて、此方ならどうだ」と距離を詰めたミヅハが粘り蜘蛛糸で追い討ちをかけた。

「敵は二体。あまり、時間はかけられないなぁ〜ん!」
 雄ハリネズモを足止めしている間に、雌ハリネズモを倒す。それが、冒険者達の筋書きだ。
 骨を心に抱く・クーリン(a35341)は雌ハリネズモめがけて全力疾走しながら、抱えていたバットをやにわに抜き――なんと、その実態はバット型の鞘に納まっていた肉包丁である――その名も『殴打君32号』を振りかぶって踏み込み……
「打、づべしッ!!」
 踏み込んだ先には地面がなかった。「なぁ〜ん」と情けない悲鳴を上げながらクレーターに転げ落ちるクーリンを目で追うジギィ。
「あれほど足元には気をつけようって……徹底したじゃないですかっ」
 クレーターに飛び込み、目を回しているクーリンを助け起こす。と、目の前に迫っている雌ハリネズモの背中の針と、ド太い足。盾……にするには周囲に配した土塊の下僕は、身の丈が低すぎる。ダークネスクロークが翻り、軽やかな身のこなしで何とか直撃は免れたものの、まともに踏み潰されたらしい土塊の下僕は既に跡形もない。
 タツキは、衰える事なく突っ込んで来る巨体を全力で回り込んでいた。眼前に迫る長大なスパイクをあわやで躱し、太刀を構えはするものの反撃に打って出る余裕はなく、地面に跳び込んで避ける。
 この時ばかりはクレーターの存在に感謝だ。
 一方、そのまま後衛まで達しかねない突進の足を止めるべく、雌ハリネズモに正面から挑むワシリーと。同時に、緑風のエルフ・セレア(a33556)が放つ鮫牙の矢。
「外さないわよー? 牙狩人の仕事は……獲物を確実に仕留めることよ!」
 少し離れた場所から、雌雄を同時にその射程圏内に捉えていた彼女だが、今は雌ハリネズモを片付けるのが何より先である。逆棘付きの矢はその分厚い皮膚にも鋭く深く食い込み、鮮血を流させた。
 ワシリーは頭上に漂う護りの天使の力を刃に重ね、重い一撃を叩き込むと、
「お2人とも、大丈夫ですかっ?!」
「な、何とか……」
「無事なぁ〜ん」
 応えるジギィとクーリンの姿を見て、にこやかに頷く。
 後方からその様子を確認し、回復の手がまだ必要ない事を知れば、すぐさま追撃に転じるキョウカ。
「聖なる槍の洗礼を受けてもらいます!」
 虹を纏い、神々しく光り輝く槍が彼女の手から放たれた。
「よくも、よくもなぁ〜ん!」
 クレーターから這い上がり、めらりと燃え立つ炎を瞳に宿したクーリンは、盾(ちなみにミット型である)を構えて横腹から無造作に雌ハリネズモの懐に飛び込む、達人の一撃。
 武装された背中でなく、突進の正軌道でなく。そんな所から反撃された事など、恐らくこれまでに数える程しかないであろう雌ハリネズモは、この時、見て解るほど気を落とし項垂れていたという。
 一瞬の間の後。ジギィとタツキは思わず顔を見合わせた。
 ――これは、最大のチャンス?

●んな、わいるどふぁいあ!
 妻の異変を感じ取ったのか、雄ハリネズモが唐突に暴れだした。
 レオニードがダメ押しで放つバッドラックシュートも数えて六発。
「まだ足りないか?」
「簡単に、抜け出せると思うな」
 ペインヴァイパーを従えたミヅハの非情な言葉の通りに、雄ハリネズモは蜘蛛糸の下でもがいている。新たに打ち込まれた鮫牙の矢による流血もある様だ。しかし――
「向こうはまだ終わらないのなぁ〜ん?」
 プリムラが心配そうに雌ハリネズモの方を振り返った、その時だった。
 うずくまってぶるぶると身を震わせていた雄ハリネズモの背中の針が、蜘蛛糸の拘束を破って一斉に冒険者達めがけて射出されたのだ。猛然と我が身に迫る巨大な針。駆け抜ける戦慄。
「「「!!!」」」
 レオニードの耳を、腕を、ミヅハの脇腹を、プリムラの頬を、脚を――熱い塊が嬲った。

 巨大な針の雨が降る。鋭く尖った竹やりが無数に降って来るかの如く。
 それはセレアの肩を撃ち抜き、キョウカの背を掠めた。思わず雄ハリネズモの動向に気を取られたジギィは、雌ハリネズモが、タツキの渾身の一撃を喰らって爆発の衝撃に揺らぎながらも振るった肩のスパイクを避ける事が出来なかった。貫かれなかったのが幸いだ、とはいえ。
「――……っ」
 強かに打ちのめされて咄嗟に起き上がれないジギィ。
 雌ハリネズモはしかし、倒れたジギィに見向きもせずに、背の針に磨きをかけて再び後ろ向きに走り出した。キョウカは回復の手を止め、セレアを庇いつつ横に飛び退くのが精一杯。そんな中、ワシリーはあえてその軌道上に身を置いた。このままでは、レオニード達が更なる危険に曝される事になる。
「硬さなら、負けません!」
 護るべく。彼はその身をもって、真っ向から徹底抗戦の構えを取った。力試しでもしようというのだろうか。退く気配のないワシリーを案じて、思わず声を上げるタツキとクーリン。
「ワシリーさん、無茶ですよ…!」
「危ないなぁ〜ん! …うしろっ」
 全力で雌ハリネズモを追いながら、彼らはその直後、目を疑った。

 背中に残った針を尖らせ、そこに立ちはだかる『敵』に対して猛攻をかけた雄ハリネズモが――
「!!」
 ――対面から走って来た雌ハリネズミと見事に正面衝突、否、『背面衝突』したのだ。
「ワシリーさんっ!!」
 狭間に消えた重騎士の名を呼ぶ、声、声、声。

 どごぉぉぉ……ん。

 震える空気は双璧を何処までも伝い、遥かな高みへと昇って行き……やがて静寂が訪れる。
「……………」
「………」
「……」
 ……。
 音と振動、土煙が治まった後、そこに在ったのは――重なり合うトゲの下、背中で支え合う巨体の下に僅かに出来た空間に、運良く身を丸めて納まっているワシリーの姿、だった。
「な、な、な……?」
 背面衝突の瞬間、頭を抱えて思わずその場にしゃがみこんだらしい彼は、瞬き、状況を把握しようと頭上を見上げた所で一気に青ざめる。もしこれが、体長2〜3メートル以上の生き物だったら間違いなく、夫婦怪獣の愛のサンドウィッチ攻撃に蜂の巣になっていた事だろう。まさに危機一髪。
 ワシリーは妙に素早い動作でその隙間からカサカサと這い出して来た。
 彼の無事を確認して、胸を撫で下ろす一同。
 そして、人心地着く頃――
「えーと、なぁ〜ん……」
 互いの針が突き刺さったまま、『狩場』のど真ん中でオブジェと化した夫婦怪獣へと。
 窺う様に、近づいて行くのはプリムラだ。雄ハリネズモの最も近くにいた彼女は、一時は意識を飛ばす程のダメージを負っていたのだが――フロルの治癒と看護により、歩けるほどには回復していた。
 もはや身動き一つしない雄ハリネズモに凭れたまま、ぴくりと前脚を動かした雌ハリネズモを、思わず石斧で殴ってトドメを刺す彼女。完全に沈黙したハリネズモを前に、えへんとふんぞり、振り返り。
「今夜の晩御飯は、腕によりをかけたハリネズモ尽くしなのなぁ〜ん♪」
 にこやかに言う彼女に、緊張の糸が解けた冒険者達は声も出せずに脱力したのだった。

●神秘なるワイルドファイア
「……しばらくハリネズミは見たくないかもしれないなぁ〜ん」
「ハリネズモ。……まあ、否定はしないがな」
 大仰に息を吐くクーリンに、レオニードは苦笑じみた表情で返した。
 ハリネズミなら、まだ幾分マシだろうと思いつつ。
 結果的に五体満足で済んだから良かった様なものの、あの針にまともに貫かれていたらと思うと心底ぞっとしない。迅速な回復を行ってくれたフロルや、その後、駆けつけてくれたキョウカのおかげであろう。それにしても。キョウカにとって初めてのワイルドファイア大陸は、少々刺激が強すぎただろうか。
「そういえばこの巨大な針、お土産に持って帰れないかなぁ〜ん?」
「……ふむ。さて」
 レオニードも、クーリンと同じく何か戦利品を頂きたい気分ではあった。雌ハリネズモのスパイクは少々ゴツ過ぎて、持ち帰るのも加工するのも難儀しそうだが、抜け落ちた針ならば――?

「流石に――、食べたら不味そうなんですけど」
「そんな事ないなぁ〜ん。皮膚は分厚くても中身は適度に引き締まってて美味しい筈なぁ〜ん」
 有限実行で解体まで始めたプリムラを見、その現場から僅かに目を逸らしながらタツキは「うーん」と唸りつつ、のんびり首を傾げた。実際、見れば見るほど不味そうなのだが、分厚く輪切りにされる尻尾だけは何だか、意外にも美味そうに見えちゃったかも知れない。
「うはあ、これは食いでがありそうです!」
 などと、覗きに来たワシリーもすっかり元気を取り戻している。颯爽と顔を上げた彼は、開けた道の先に再び溢れる光を期待と希望に満ち満ちた眼差しで見つめ、目を細めた。
 ――大峡谷を護る怪獣達。
 この先には、果たして何が待っているのか。それを思うと胸が躍る。
「……ちょっと見てみたいですね」
 同じ方向を眺めながら、ジギィが言い。
「いいものであるといいですね」
 こんなに苦労したんですから、と言わんばかりにフロルが微笑み。
「気になりはするが――今回はここまでだな」
 ミヅハが冷静にその場を締めた。

 遠くの方から、また怪獣の咆哮が聞こえて来る。
 どでかい夕陽に沈み往くワイルドファイア大陸。この大陸で見る夢は、相当デカいに違いない。


マスター:宇世真 紹介ページ
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参加者:10人
作成日:2006/07/07
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