マンモスファイヤー水着美女は湖畔がお好き?



<オープニング>


●秘密の湖
 照りつける痛い様な日差しが森の木々に降りそそぐ。ここはワイルドファイアにある『マン森』。巨大生物達が多く生息するダイナミックな森だ。季節は夏ということで、森の緑はさらに濃く生い茂っているが、日差しは沢山の木の葉をすり抜け薄暗い筈の森の中にまで差し込んでいた。
「ついたですよ〜♪」
 グラティアは振り返って皆に向かって声を張り上げた。どこかで鳥が飛び立つ様な音と葉擦れの音が聞こえてくる。びっくりさせてしまったのかもしれない。
「まぁ……こんな場所に湖があるなんて……」
 セリアは胸元で両手を組み感激したように低く溜め息をつく。グラティアの背後には広大な湖が広がっていた。湖の周囲は木々が水辺まで迫ってきていて濃い影を落としているが、中央部分は遮るモノもなく降りそそぐ太陽にキラキラと湖面が光っている。湖水は綺麗だったが、湖底まで見通せるというわけではない。藻の様なモノがゆらゆらしているは見て取れる。
「すごいです。こんな場所がマン森にあるなんて私全然知りませんでした」
「ボクも。ここってすごい穴場なんじゃない? グラティアは良く知ってたね」
 ミソラとエルも少し驚いた様な笑顔を浮かべ、グラティアに視線を向ける。
「めちゃめちゃ努力しましたよ〜だって、だって〜新しい水着、早くみんなにお披露目したいと思いますですよ〜♪」
 グラティアはバッと上着を脱ぐ。そこには今年の新作水着を既に着込んで居るではないか!
「……そ、そういうワケでしたか」
「なんか納得です」
「ボクも納得、さすがだよ」
「細かい事はコッチに置いとくですよ〜せっかくですから目一杯楽しみますですよ〜♪」
 グラティアは脱いだ服と重い荷物を置いてニッコリと笑った。

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参加者
新番組・ユウキ(a15697)
戦場にて華を想う刃・ランベルト(a26692)
銀蒼の癒し手・セリア(a28813)
焔をはらむ風と共に・セルシオ(a29537)
無限のイブクロ・エル(a32875)
黄玉の吟遊詩人・グラティア(a35019)
姫揚羽・ミソラ(a35915)
鉄弓・ヨイチ(a42044)


<リプレイ>

●ここは深い森の中
 そこは静かな森の奥にある湖であった。森の濃い木々を映す湖面は木漏れ日に時折キラキラときらめきを放つ。
「わぁーきーーれーーいーーっ」
 朝日に笑う小さな薔薇・エル(a32875)は水際まで走ると大きな声で目の前に広がる風景を賞賛する。
 急に大きな水しぶきと音がした。誰かが湖に飛び込んだのだ。ペールブルーの水着を着た小柄な……しかし引き締まった身体が宙を舞い水中に消える。
「なんと! 我々の目の前に広がるでっかい湖! ここにどのような危険が待ち受けていようとも決して引くことなど出来ないのです。何故なら遊びに来ているから! おぉ〜っ! 切り込み隊長グラティアさんが早くも水着で飛び込みました! この未知の領域でいきなり水中探索とは! 流石は我らがグラティアさん!」
 右手をギュッと握りしめて口元に寄せ、目の前に起こる全てを言葉で表し続けようとするかのように、ノーと言える・ユウキ(a15697)は『立て板に水』というよりは『立て板もろとも大瀑布』という感じで話し続ける。どこで息継ぎをしているのかわからない。
「ユウキさんはせっかく来たのに泳がないんですか〜♪」
 水面から顔を出した朱歌・グラティア(a35019)は岸辺にいるユウキに手を振った。グラティアが首を左右にぷるぷる震わせると赤みがかった茶色の髪から水しぶきが飛ぶ。
「早くも故郷の地に馴染み、水を得たストライダーとなったグラティアさんが私を恐怖の湖底へと誘います! 実況に使命に燃えるユウキは魅惑的なこの誘惑に耐えられるのか!」
「……夜はバーベキュウーです〜お魚探すです〜♪」
 大きく息を吸い、その息が続く限り喋りまくるユウキ。ユウキを誘っても無駄だと思ったのかグラティアも大きく息を吸って潜水し湖面から消える。

「あいかわらずユウキさんはユウキさんですね。変わらないって事も凄い事なんですよね」
 水面から少し高さのある岩の上に腰を下ろし、探求する銀蒼の癒し手・セリア(a28813)は到着早々賑やかそうなユウキを見つめていた。同盟の冒険者であるということ、それは苛烈な生き方を選んだと言うことだ。美しいモノだけ見ているわけにはいかないことをセリアはよくわかっていた。それでも、大きな戦いの後は心が波立つのを抑えきれない。
「でも、来て良かったです。みんなと一緒に居られて……よかった」
 姫揚羽・ミソラ(a35915)はセリアと並んで岩に腰掛け、両足をプラプラさせた。湖面を渡る涼しげな風がセリアの銀糸の髪と、ミソラの湖水の様な髪を揺らす。それとはわからないが先の戦いでミソラは負傷していた。思い返せばこれまで幾度となく大きな戦いがあり、その度に大事な仲間が散っていった。身体に残る傷はいつかは消える。しかし、心に深く刻まれた見えない傷はこうして美しい自然の中に身を置いたり、仲間と楽しく過ごしたりして少しずつ癒していくしかない。忘れるのではなく……力と為すために。
「……来てよかったですか?」
 そっとセリアが尋ねた。
「はい」
 ミソラはニッコリと笑って即答する。

「みんな楽しそうにです……いいですね……」
 戦場に閃く刃・ランベルト(a26692)は魚を求めて泳ぐグラティアをじっと見つめていた。ランベルトは先の戦いで負傷し、まだその傷が癒えていない。無理が出来る体調ではないことは自分でわかっていたので今回は無茶をしないつもりでいる。けれど、その代わりに1つの野望が彼の心の中で熱く燃えていた。それは……水の上を走る事。
「水の上を走る動物がいないわけじゃないんです。右足が沈む前に左足を出して、その左足が沈む前にまた右足を水面につければ……走る事は不可能ではない筈です……理論上は」
 誰にでも出来ると言うモノではないかもしれないが、なんとなく自分にはできるのではないかという根拠のない自信がランベルトの胸の中にあった。何故、今怪我を負っているこの時に挑戦してみようと思うのか。激しい戦いの後『なにか』を吹っ切って新しい1歩を踏み出すために、必要な事なのかもしれない(が、ランベルト以外の者にはよくわからない)。一足踏み出すたびに普段とは違う自分を再認識される。それでもランベルトは湖水に向かってもう1歩、そしてもう1歩とゆっくり進み出した。

「はいはーい。女の子集合! ここに着替えようのテント作るよー♪」
 エルが大きく手を廻す。
「おぉーっと、エルさんが動いた! ここは先ずテントです!」
 すかさずユウキがエルに走り寄り、実況をする。
「この辺でよければ僕が設置しましょう」
 ランドアース風ではないエキセントリックな服を着た、旅人は焔をはらむ風と共に・セルシオ(a29537)なんとなく立ち振る舞いにキレがないのはミソラと同じ様に戦いで怪我をしたからだろう。服を着ているとその怪我がどれほどのモノなのかはわからないが、脱げばきっともの凄いのだろう。しかし、セルシオは口調も態度も務めて平静を装い、背には大量の食材が入った袋を背負っている。それはとても8人分とは思えないほど膨大な量であった。普通の8人ならば1週間ほどここに滞在出来そうな量であった。しかし今この湖畔にいるのは普通の8人ではないし、普通の冒険者ですらない。頭に『あらゆる意味で』と付けても良い程だ。
「ってテントは……」
 セルシオはゆっくりと背の荷物を降ろしながら辺りを見回した。彼よりももっと沢山の荷を持っている筈の人物を捜し……いた。湖を囲む木々の向こうにポツンと小さな人影が黒く浮かんでくる。皆に激しく遅れを取りながらもなんとか目的地に到着しようとする人物。
「おおぉっと! とうとう最後のランナーがゴールに到着しようとしています。皆さん! 盛大な拍手でヨイチさんの栄誉をたたえてください。ヨイチさんはハンディキャップとして背中と右手と左手にはそれぞれヒトノソリン5人分の荷物を……」
「そこまで持てるわけない!」
 猛然とラストスパート的なダッシュした鉄の射手・ヨイチ(a42044)が、息を荒げながらもユウキのボケにツッコミを入れる。
「せいぜいヒトノソリン3人分だろ。まったく、今日だけだぜ、こんな荷物持ち扱いは……」
 ヨイチが背から降ろした荷にテントが入っていた。
「これこれー。これがないと水着に着替えられない」
 エルが目的の荷だけをヨイチが降ろした山の様な荷物の中から強引に引っ張る。
「どわっぁあ」
「きゃあ」
「あべしっ」
 整然と積まれた荷の山からテント道具だけが引っ張りだされ、あっという間に荷の山が崩壊し、その辺にいた何の罪もない冒険者を巻き添えにして転がる。そしてあらかたはそのまま湖の中に大きな水音と水しぶきをあげて……落ちた。人も荷もだ。ぽちゃーん。
「……あれ? みんな着替えなしで飛び込むなんて気が早いよー」
 陸に残っていたのはエルだけであった。エルはテントの道具を抱きかかえるようにして湖を見つめる。湖面からは不幸な事故でダイブした面々が次々と顔を出す。
「みんな気合いはいってますね〜♪一緒にバーベキューのお魚捕りしましょうね〜」
 既に水着で泳ぎ回っていたグラティアが楽しそうに寄ってきた。
「いや、違う……全然違うから……な」
 ヨイチは眼鏡の位置を右手でずらそうとして……ない!
「おぉ〜っと。これがヨイチさんの伝説の眼鏡! そして、はい。これはセリアさんの今日の水着ですよ。タダの縄? いえいえセクシーダイナマイト新作うはうは水着ですって。じゃ私はこれからトントンの足を引っ張るのに忙しいのでこれで……」
 水面から顔をだしたユウキはヨイチの眼鏡をカチューシャの様に頭の上に乗せると、ごくありふれた縄をセリアに手渡し、すいすいと泳いでいく。
「どわぁあぁぁぁ」
 ユウキの向かった先には、水際でバシャバシャと派手に水しぶきをあげて足踏みをしていたランベルトがいる。が、すぐに足から引きずり込まれるように水の中へと消える。バシャバシャ……バシャ……しーん。
「って、俺の眼鏡まで持って行くな!」
 ランベルトが水に消えた辺りが静かになる。数秒後にヨイチがふと我に返り、大きく水を掻いて泳いでいく。
「もう! ユウキで遊んでやる」
 エルは水からの強い強い力をユウキの服に注ぎ込む。その力に応えて服は形を変え強さを増す。
「とりあえずあがりましょうか。特に僕とミソラさんは」
「……はい。あまり長い間水に浸かっているのは身体によくないですね」
 セルシオが言うとミソラはコクンと小さくうなずいた。冒険者ならば自分の体調を自分で把握し管理する事はとても大事なのだ。
「私も水着にちゃんと着替えたです……これは、ちょっと無理ですけど」
 セリアはユウキから渡された縄をじっと見つめると、そのまま手を広げ水に漂うままに任せた(不法投棄です)。

 水からあがったグラティアは沢山のモノを湖から引き上げた。沢山のお魚たち。これは夜のバーベキューで皆の胃にそっくり収まってしまうだろう。あとは……。
「ユウキさんとセリアさん! ランベルトさんと水着、湖に捨てないでください〜」
 へろろ〜んとなったランベルトの来ている服の襟と、ユウキがセリアに渡した縄がそれぞれグラティアの片方ずつの手に握られている。
「あの……それは水着ではないと思うので……」
 しっかり縄を受け取りながらもやんわりと反論してみる。これが水着だと言うのなら、一体何が隠せるというのだろう。そもそも水を吸った縄はこんなに重くなっているではないか。
「歩けるならこっちに来い。こういうところじゃ火だって自力でやるのが醍醐味だからな」
 ヨイチが苦労してやっと熾した火が焚き火となっていた。その橙色に揺らめく炎の側からヨイチが声を掛ける。火の側にはミソラとエルもいて、せっせとバーベキューの食材準備をしている。大量の野菜や肉を櫛に刺しているのだ。セルシオが釣った魚も塩をふってある。
「……死ぬかと思いました」
 苦笑して言うと、ランベルトは素直に火のそばに寄ると崩れる様に座った。
「こらーユウキ。バーベキューの準備手伝えー」
 エルが手は休めずに湖へと声を掛ける。
「ランベルトさんを襲ったのは、湖に棲む恐怖の魔物なのか、それとも……え? 手伝いですか? 了解」
 湖水に肩まで浸かって何やら実況をしていたユウキは素直に振り返り、陸へとあがる。
「うっ……」
「わああああああ」
「きゃ」
「ユウキさん、いやー」
「あべしっ!」
 水からあがったユウキの服はすっかり形を変えて、そのエロティックなまでのディティールはとてもではないが正視出来るものではなかった。
「身体冷えてる筈だぞ、ユウキもこっちに来い」
「はーい」
 ヨイチだけは平気な様であった。

 満天の星空。その星を映す森の中の湖。湖畔のささやかな焚き火と、大量の食材で織りなす壮大なバーベキュー叙事詩。2/5がエルの腹に収まる不具合もあったが、それは軌跡の様に穏やかで優しい自然の中でのささやかな休日であった。


マスター:蒼紅深 紹介ページ
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