アルカナの誕生日〜海に行こう〜



<オープニング>


 夏。夏が来る。
 青い空、青い海。
 いつもの五割増くらいに元気になれるフィールドには、きっと不思議な魅力があるに違いない。
「ねーねー、デスト。夏っていえば海だよね?」
 そして、此処にも海の魅力に取り付かれた者が1人。
「知らんよ。海の水は水のくせに飲めねえから嫌いだ」
 緑衣の狂剣・デスト(a90337)はトレジャーハンター・アルカナ(a90042)の言葉に、如何にも面倒くさそうに答える。
 元よりノリの悪いこの男。夏に海で情熱を弾けさせている姿は、ちょっと想像できない。
「ねえねえ、ミッドナーはどう思う?」
「興味ないです。あと、人の耳に貝を押し付けるのはやめてください」
 続いて隣の夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)に声をかけるが、此方はもっと反応が薄い。
「でも、海の音が聞こえるんだよ?」
「……だからって両耳に当てられても困るんですけど」
 デストに輪をかけてノリの悪い少女。夏場にもスーツをキッチリと着込んでいる彼女が海にいる姿は、絵的な妄想であればともかく、現実的にはありえない絵図である。
「じゃあ、デストに……」
「俺は耳に当てなくてもいいから、中身入りのをくれ」
 パタパタと手を振るデストに、アルカナが良く分からない、といった表情を浮かべる。
「焼いて食う。ヤドカリも俺は食えるから、それでもいいぜ」
「デストなんか、海水で塩作ってなめてればいいと思うんだよ」
 物凄く冷めた表情のアルカナに、さすがのデストも後ずさる。デリカシーの無さも、ときには考え物である。
「うーっ、2人ともノリが悪いんだよ……」
 アルカナが不機嫌そうに酒場から出て行くのを見届けると、ミッドナーは一枚の羊皮紙を懐から出す。
「じゃあ、海に決まりましたね?」
「……だな。しかし、こんな回りくどい真似しなくてもよ」
 溜息をつくデストに、ミッドナーは微かに悪戯っぽい笑みを浮かべて言う。
 実は2人はここ数日、アルカナの誕生日パーティの計画を本人に内緒で進めていたのだ。
「こういうのは、サプライズだから楽しいんじゃないですか」
 そう、このミッドナーという少女。ノリの悪さは天下一品だが、冷血というわけでもないのだ。
 かくしてアルカナの誕生日パーティの計画は、着実に進み……当日を待つのみとあったのである。
「……ところで、さっきの切返しは中々良かったと思います。アルカナさんを上手く遠ざけられましたからね」
 そんなミッドナーの言葉に、デストはきょとんとした表情で、こう答えたのである。
「さっきのって……ヤドカリの事か? 本気だったんだが」
「……デリカシーとかロマンって言葉、知ってます?」
「知ってるけど興味ない。お前は興味あんのか?」
 そう問われて、少し考えたミッドナーは。
「……デリカシーはともかく、ロマンって柄でもないですね」
 結局、あんまり他人の事は言えない2人であったという。

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参加者
NPC:トレジャーハンター・アルカナ(a90042)



<リプレイ>

●パーティの始まり
 とても青い空。綺麗な海。
 前日入りしたメンバーの努力で、海岸はすでに掃除されていた。
 怪我をしそうなものは取り除かれ、何処までも白い砂浜が続く。
「これなら、あとは楽だな」
 設置された椅子に、武侠・タダシ(a06685)が 夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)を寝かせる。
 いつもの如く、到着するまで彼女の体力がもたなかったようである。
 海のほうでは桃ノソリンの行かず後家・トロンボーン(a34491)が魚を釣り、緑衣の狂剣・デスト(a90337)が素潜りを始めている。
 準備はほぼ万全。あとはアルカナが来るのを待つのみであった。

「……へ?」
 トレジャーハンター・アルカナ(a90042)は、ポカンとした表情をしていた。
 無理もない。海底遺跡の探索のつもりで来たら、たくさんの人がパーティの準備を整えているのだ。
「よう、きたか。できてるぞ」
 さも当たり前かのように振舞う銀閃の・ウルフェナイト(a04043)の方を向いて、少し考えるアルカナ。
「アルカナさん、お誕生日おめでとう」
 抱きついてくる衝撃の弾幕少女・ユーロ(a39593)をそのままに、むー、と考えて。
「アルカナさんお誕生日おめでとうなのですよ♪」
 更に反対側から抱きついてくる嵐を呼ぶ魔砲少女・ルリィ(a33615)をくっつけたまま、ポンッと手を打つ。
「そっか……そうだったね。あはは♪」
 普段意識してなかったが故の反応の遅さ。しかし、綻んでいく笑顔が、彼女の反応を如実に表していた。
「飲酒可能な年になったようだが……どこぞの霊査士のようにはならないように気をつけてな」
 燃龍ブ・ルース(a30534)の声は、未だ寝息を立てているミッドナーには届かず。
 小さく笑いが広がっていくのであった。

●パーティは終わらない
 青い空に、笑い声が響く。
「つか、アルカナ二十歳になったのか…とてもそうは見えねーな……」
「ふっふーん。ボクのほうが年上なんだぞ。アルカナおねーさんと呼んでいいんだよ♪」
 赤雷・ハロルド(a12289)の呟きを耳聡く聞きつけて、胸を張るアルカナ。
「わ、海が凄い綺麗!」
 天藍顔色閃耀・リオネル(a12301)の言葉に、ハロルドがダイブをしようと提案を始める。
「アルカナ、ちょっと審判してくれないか?」
 その台詞を聞きながら、アルカナは当初の目的をふと思い出す。
 海底遺跡。本当にあればよかったのになあ、などと考えて。
「うん、おっけーなんだよ♪」
 まあ、いいか、と考える。
 だが、諦めきれない者達もいるのだ。
「だって、海だよ? 遺跡だよ? 探さずには居られないサ!」
 マーメイドクイーン・ニトレーティア(a35815)の言葉に、探索士・エルヴィン(a36202)が答える。
「そこに遺跡があるのなら行ってみるのが冒険者と言うものだろう。そして、そこに遺跡がないのなら探してみるのが冒険者と言うものだ」
 やる気満々の2人に、デストがチラリと視線を向けて。
「……まあ、頑張れ」
 素潜りして採ってきた貝の調理を再開し始めた。

「……何やってるのかしらね」
 岩場で野菜ジュースを飲んでいた黒の少女・ルノア(a42211)が呆れた様な、どことなく羨ましいような溜息をつく。
「青春してるんじゃないでしょうかね〜」
 ドーナツを取り出していた終焉の白・エスティア(a33574)が、そんな答えを返す。
「よく過程で得られる信頼関係こそが宝だってオチを聞くけど……そういうのもいいねぇ」
 そんな事をしみじみと呟く彩雲追月・ユーセシル(a38825)に、ミッドナーが視線を向ける。
 この夏の日差しの中でもスーツを着込んだ彼女は、汗一つ掻いてはいなかった。
 ユーセシルは水辺で遊んでいるらでぃかる悪なーす・ユイリン(a13853)や白雪・スノー(a43210)を見て、再びミッドナーに視線を戻す。
「……ところでミッドナーは水着は、いやデリカシーっ、デリカシーが来襲だね」
「私、霊査士ですから」
 霊査士と水着がどう関係あるのかは不明だが、泳ぐつもりがないらしい。
 そんなミッドナーの目の前に、2つの影が現れる。
「流石に海でスーツ着てっと熱さでぶっ倒れちまうぞ?」
 悪をぶっ飛ばす疾風怒濤・コータロー(a05774)の言葉に、少しだけ考えて。
「ほら、水着も用意してあるのじゃ」
 光牙咆震閃烈の双刃・プラチナ(a41265)の差し出した黒のパレオ付きの水着を見て、頭を抱える。
「……また同じものが……」
 奇しくも、コータローとプラチナの用意した水着は同じデザインだったらしい。
「……そのですね。人前で肌は出したくないんです」
 さすがに何度も断るのは気が引けたか、そんな事を言う。
 夏でも変わらぬスーツといい手袋といい、意外なこだわりがあるらしい。
「そっか。それじゃ仕方ねえな」
 あっさりと説得を諦め、ぽん、と頭に手を載せて海のほうに目を向ける。
 相変わらず、海辺は騒がしいようであった。

●海底遺跡を探せ
 アルカナが、白雪・スノー(a43210)に貰ったネックレスをつけて海に飛び込む。
 ちょっとお酒が入っていたせいか、いつもよりハイテンションだ。
 そんなところに「海底遺跡から見つけてきたネックレス」などという冗談を言ってしまったせいで、海底遺跡を探す事に決めてしまったらしい。
 思いっきりジャンプすると、丁度頭を出したニトレーティアを巻き込んで海にダイブする。
「うわわっ」
 近くで小船に乗っていた笑顔のヒーロー・リュウ(a36407)が大きく揺れて船の縁を掴む。
「謎の海底遺跡……いったい誰が何のために建設し、どんな罠が仕掛けられているのか……」
 素潜りしては浮上して、を繰り返しているうたかたのゆめ・ロン(a33766)が、そんな事を言う。
 何が謎かといえば、存在するかどうかが謎なのだが。
 夢は大きいほうがいいに違いない。
「……む、見ろ」
 漆喰ノ塵・アル(a47470)の声に、近くで遊んでいたユイリンやスノーまでもが振り向く。
「遺跡ですか!?」
 闇貫く閃光・フェイト(a50291)の言葉に、無表情でアルは何かを載せた腕を高くあげる。
「……タコだ」
「てい♪」
 笑顔でよく分からない海草を投げつけるアルカナ。色んな意味でお気に召さなかったようである。
「青春してんなあ」
 拝借してきたケーキをもぐもぐと食べているデストの側に、風使い・サン(a48059)が近寄ってくる。
「デストさん、誕生日プレゼントは持ってきて…無いですよね。まぁそんな事だろうと思って持ってきました。貝殻のイヤリングです。このメモの通りにすれば」
 そこまで言った所で、デストがメモをムシャムシャと食べる。
「ん、いい紙だな。メモなんかにするにはもったいない」
「せめて読んでくださいよ」
「断る。んな事より貝鍋でも食うか?」
 よく見ると近くにいる深淵の流れに願う・カラシャ(a41931)が、貝鍋をつついている。
 近くにやけにヤドカリがウロチョロしている理由は謎ではあるが。
「あ……!」
 楽風の・ニューラ(a00126)の声に、全員が集中する。
 ニューラの手に握られていたのは、何かキラキラした石で出来ている、大き目の鍵。
「海底の砂に埋まっていましたよ」
 その発見は、海底遺跡を探すメンバーに希望を与えた。
 鍵があるなら、扉が。扉があるなら、遺跡が。きっとあるに違いない。
「あった……ありましたわ!」
 紅色の剣術士・アムール(a47706)の声に、更なる歓声が上がる。
 それはかなり沖のほうではあったが。
 海中、というよりは海底の岩壁の中に作られた遺跡のようであった。
「昔は陸地だったのでしょうか……」
 紅色のメイドウィッチ・ソフィア(a52359)がそんな事を言う。
 ニューラの見つけた鍵がぴったりとはまり込み、ガチャリ、という重たい音が響く。
 すでに中も水で満たされているのだろう。大して抵抗もなく扉は開き……皆、我先に遺跡の中へと泳いでいくのだった。

●そして、パーティの終わりに
 幾ら冒険者が強靭といっても、無制限に水の中にいられるわけでもない。
 潜っては出てきて、潜っては出てきて。
 奥のほうを探索できないのが残念ではあったが、仕方がない。
 それぞれ思い思いの品を手に取り、海上に浮上する。
「いやあ、本当にあるとは思わなかったにょ」
 ルリィが良く分からない品を手に取り、浮上する。
 いつの間にか日が暮れ始めていて、海の向こうに太陽が沈もうとしている。
 本当に時間がたつのは早いものだ。
「この楽しい一時も、大事な宝物ってな」
 同じように浮上してきたルースが、感慨深げにそんな事を言う。
 赤く染まり始めた海岸ではタダシが掃除を始めており、この楽しい時間が終わりに近づいている時を告げていた。
「……本当に、楽しかったなあ……」
 噛み締めるように呟くアルカナの視線の先に、夕陽に向かってラットスプレッドを決めている漢・アナボリック(a00210)の姿があったが、とりあえず見ないフリをする。
「皆、今日はありがとう……最高の誕生日だったよ!」
 そう言って、アルカナは……夕日に照らされて、最高の笑顔で笑ったのだった。


マスター:じぇい 紹介ページ
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