<リプレイ>
● 光っている。海も大空も砂浜も、何もかもが輝いていた。潮騒に合わせて心は高揚し、熱い光線を浴びる体はなお火照る。 夏の海こそが真の楽園。戦いに疲れた冒険者たちを癒す理想郷――などとおしゃれな形容をしてしまいたいほどに綺麗な海岸だった。 海岸からほど近い場所に男女別の共同更衣室が設置されている。マサカズが言った。 「さて、着替えるか。あとでまた会おう」 一行は揃って更衣室に入った。 さて、海水浴は着替えの時点ですでに始まっているというのは常識である。そういうわけで女性陣は大いにはしゃいでいる。 「やっぱり恥ずかしいね。でもユーロ似合ってるにょ♪ えい♪」 「やん……横からだと丸見えになっちゃいそうだよぉ」 ルリィとユーロは姉妹揃って胸の先を隠すだけのV字型水着を着用。これではとても泳ぐことなどできない。ちょっと走っただけでも危なそうだ。 「んー、ふたりとも素晴らしい! バッチリ誘おうね」 アスカもヒモ同然のあぶない水着。この三人娘、海水を浴びるより人の視線を浴びることの方が多そうだ。
● で、冒険者たちは軽やかに変身して海岸に躍り出る。有り余るほどの元気さで波へと直進。拒むものは何もない。何も考えずに楽しむべき! 「これが海かあ。すごいっ」 「この時期を待っていたわー」 海は未体験のルークが目を輝かせる。ロゼッタは両手を腰に当てて、大海を見据えてから子供のようにダッシュ。 だが中には、先のノスフェラトゥ戦で怪我を負い、海へは入れない者もいた。 「申し訳ない、ハンゾー。一緒に泳ぐことはできそうもない」 「な、なんの。その水着姿を見られただけで充分」 終日おとなしくしているつもりのシュコウは黒ビキニの上に浴衣を羽織っている。覗く包帯が痛々しいが、逆にそれが背徳的なセクシー光線を放っていたり。 「ま、浅いところなら問題なさそうだ。行こうハンゾー。何を前屈みになっている?」 「しょ、承知いたした」 ハンゾーは愛猫のサスケと共にひょこひょこ歩き出した。 「荷物番は私が担当しよう。存分に楽しんでくれ」 ガルスタは着替えず、今日は潮風を浴びるだけに決めた。アヤメがそこに持参のビーチパラソルを差し、大きな日陰を作る。アヤメもその下で仲間たちを眺め、大自然のパワーを取り込むように深呼吸する。 「先の戦いが嘘のようだな……この平和を長く続けたいと思う」 「そうですね。危険を厭わず戦ってくれた皆さんの努力、無駄にしたくありません」 シィルも戦闘にこそ加わってはいないが、先の戦いには心を痛めている。重傷者、犠牲者は少なくない。 「……だが、その前に今日一日を精一杯生きよう。なのでシィルも泳ぐぞ」 「ええ!」 シィルはにこり頷いて熱い砂浜に飛び出す。ここでミルクレープから声がかかった。 「あの、周囲の目が何か怪しいのですが、拙者のどこがおかしいのでしょうか?」 どこがといえば、全部おかしかった。浮き輪を三段重ね、さらに両足両腕にも浮きを付けている。そもそも彼は水着に着替えていなかった。シィルはオブラートに包んで欠点を指摘してあげた。何事も初めてというのは難しいとミルクレープは苦笑いした。 再び走り出すシィルにタクトが並ぶ。 「シィルさん、今日は思いっきり楽しみましょう。僕がご一緒しますよ」 「可愛くてお気に入りです。改めてありがとうございます!」 シィルは先日タクトにプレゼントしてもらったホルスターネックを着用している。白地に鮮やかなハイビスカスの柄は彼女にベストマッチして、人目を惹かずにいられない。 「可愛い〜♪ いいなぁ〜」 「この間も思いましたけど……やっぱり似合いますね」 ティファーナもエリスも褒めちぎる。ヨウも恋人の水着をチェックしながら目移りしている。 「うん、やっぱ似合ってるぞミリィ。お、シィルもいい感じに似合ってるじゃないか」 どっちも最高、と親指立てるヨウ。さすがにミリィよりいいとは言わない。 「シィルさん、ちょっといい?」 と、ミリィはシィルとごにょごにょ話し合ってから――。 「ねえヨウ、どっちがいい?」 ふたりして前屈みになって胸を強調するポーズを取る。思わぬ展開にヨウは冷汗たらたら。シィルは今までこんなことをするなど考えたこともなかったが、このバストが武器になるのかもと恥ずかしながら思い始めている。
● 砂浜をしなやかな獣のように走るふたつの人影があった。普通の地面を走るのと何ら変わらない恐るべきスピード、その正体は何の前触れもなく徒競走を開始したウェンデルとグロリアである。ライバル同士のふたりが競うのだから全力以外にありえない。 今はスタートダッシュに上手く乗れたグロリアがリードをしている。そのまま突き放しにかかる。誰の目にも大勢は決したかに思われた。 しかし――現段階では体力値に違いがあったようで、徐々にグロリアはスピードダウン。そしてついに、ウェンデルが一歩前に出た。そこがゴールだった。 「はあ、はあ……勝ちましたわ!」 「く……この次はリベンジいたしますわよ」 たまらず座り込むふたり。息を切らしながらも笑みを漏らす彼女たちに野太い声が降ってくる。 「うちをゴール地点にするとは粋だな」 そこは『美容に最適バスソルト』という明快な看板を立てた店の前。そう、今回の目的のひとつであるバスソルトの売店である。 冒険者たち――主に女性――がずらりと並ぶ。店主は顔を綻ばせ、どうぞたくさん買って美容に役立ててくれと営業スマイルを光らせた。さっそくガルスタが妻にと数個を購入する。 「何個買ってもいいのかな? 自分用のと、お土産のが欲しいんだ」 「これは男でも使っていいのだろうか」 「うん、僕も興味があるんだけど、どうなのかな」 サラス、リシア、ルークの問いに、店主はいくらでも買ってけと答えた。老若男女問わないらしい。 「シィルはアレ、買わないの? あたしは後で買おうと思うんだけど」 ロゼッタは砂で城作りをしている。手伝うシィルも同じく後でと答えた。見たところ数はたっぷりあるし、売れ切れるようなことはなさそうだ。 「それより……彼は何をなさっているんでしょう?」 リフェリザが指差す先には褌姿のマサカズがいた。その向こうは波が荒そうな岩場である。たぶんひとりで叫びたいのであろう。
● 今日は恋人たちのデートの場でもある。ふいに、サフィルスがクレアを前から抱きしめた。 「あっ……ちょっと」 「も……申し訳ありません。ですがその……やはり他の男性には見せたくないのですよ……」 それはあなたが大切だと言われるより、100倍も嬉しい言葉だった。ウブな彼を困らせようかと思っていたら、こんな不意打ちをされるとは。クレアは顔を赤らめ、人気のない場所に行こうと恋人を誘った……。 この海水浴場には貸しボートもある。リーナとリュウはひとりきり浜で遊んだあと、ふたりだけで沖に漕ぎ出した。耳をくすぐる波の音、海鳥の声。そして想い人。それで何の不足があるだろうか。ここでもまたふたりは楽しく騒ぎ、話した。やがて。 「ねえ、私のことどう思ってる?」 「ん……その水着、僕以外にはあまり見せてほしくないなって。その、つまり、ずっと独り占めしたいっていうか、愛してるっていうか」 リーナは微笑んで、放蕩の宴を放った。紫煙の中でふたりは抱き合う。わたしも愛してるよ、とリーナは囁いた。 「青春だな、みんな。……おぅ、よく来たなお客人。ま、なんでも頼んでくれ」 エンデミオンは海パンTシャツサンダルバンダナという出で立ちで、海の家の経営をしている。彼も怪我で海には入れないのである。しかし海岸全体を見渡せるので、仲間たちの賑わいを眺めるにはもってこいだ。リフェリザも傍らの日陰でのんびりジュースを飲みながら、同じように観察をする。 「最近刺激がなくて困ってましたが、こう……冒険者であることを忘れる皆さんを見るのは面白いですね。……サラスさんはひとりですか?」 「ひとりでも楽しんでるからいいもん!」 「とか言ってるわりに、カップルを見る目が羨ましそうだぞ。……まあ、シィルもひとりだけど楽しそうだもんな」 エンデミオンの見る限り、呼びかけ人であるシィルに仲間が集中しているようだ。現在はホーリィと散歩中。 「美容について気を使っている点はありますか? あと、ナイススタイルになる秘訣を……聞きたいです」 「んん、やっぱり夜更かししないことですね。スタイルは……ちょっとわかりません。個人差としか。でもホーリィさんも諦めなければ大丈夫ですよっ」 と、ルフィスがトロピカルジュースを持ってやってくる。何だか照れていた。 「その水着……良く似合ってる」 シィルは礼を言いながらジュースを受け取った。ルフィスは徐々にペースを取り戻し、得意の誘惑技術を使って女性が喜びそうな言葉をいくつも投げかける。笑顔が素敵とか、声が素敵とか、たたずまいが素敵とか。そして彼は微笑しながら言う。 「いつかシィルとふたりで海に来たいな」 「――あら、それは本気なんですか?」 その言葉には期待がこもっているように思えた。 ビーチボール遊びをしていたフルルとフィフィは、そんなシィルをチラリと見る。 「酒場での話しっぷりではシィルは何だか恋愛に興味を持っているようじゃ。誰か好きな人でもできたのかのう……ちょっと興味深々」 「そうだなぁん。でもあの子は待ちの一手という感じだなぁん」 フルルがシィルに近づいて、ビーチボールで遊ばないかと誘った。喜んでとシィルは応じる。 「シィルは最近自分を磨くことに執心しているようじゃが、誰か気になる人でもできたのかのう?」 頃合を見計らってフルルは尋ねた。シィルはここだけの話ですけど、と前置きする。 「……逆に気になってほしいというか。きゃ?」 悲鳴を出すシィル。ルリィ、ユーロ、アスカのきわどい水着トリオが乱入してきた。シィルちゃんもあぶない水着に着替えて誘い受けしようとか言いながら、クッション性の高い抱きつき攻撃×3をむにむにお見舞い。男には目の毒だ。そんな中で、タクトがシィルの手を取る。 「こほん。ちょっと泳ぐ練習をしてみませんか?」 「はい、実は私あまり泳げないので……教えてください。もしも溺れたら助けてくださいね」 もちろん、とタクトは答えた。これはひょっとして誘っているのかなと思いながら。
● やがて陽は西に沈み行く。波が黄金色に変わり、人々の体は光を湛える。海水浴もこれでお開きだ。黄昏の海岸も美しい。エリスはあとでひとりだけで波打ち際を歩こうと思った。 「アヤメさん、水着ありがとね♪」 「ああ、ティファーナ。これからも愛用してくれると嬉しい」 集まった冒険者たちは名残惜しそうに言葉をかけ合った。バスソルトを買った者は、後日に成果を報告し合おうと約束を交わしている。クレアはサフィルスに今度はどこに行こうかと囁いている。恋人たちもより絆を結べたようだ。 「楽しかったですね。おかげで英気を養うことができました。ありがとうございますシィルさん」 「ああ、初対面にも関わらず交流してくれて感謝する」 ユリフェルとリシアが言った。発起人のシィルとしても大満足だ。 波は次第に穏やかになり、心を落ち着かせる。こんなにも安らげる自然があることが、とてもありがたかった。
まだまだ夏は始まったばかり。山、草原、川原――大自然はどこも、冒険者を待っている。行きたいところに行くのがいい。必ず包み込んでくれて、時には愛を育んでくれるだろう。

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参加者:31人
作成日:2006/07/17
得票数:ほのぼの27
えっち8
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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