<リプレイ>
「パンダさんが住んでも大丈夫そうな場所って、ご存じないですか?」 「いっぱい竹があってパンダさんがすめるところ、ないのかな? アリスおねえちゃま」 出発前の慌しさの中、猫大好き紋章術士・ヨナタン(a00117)と緑のちび魔女・グリューネ(a04166)が聞いてくるのに、アリスは困ったように首を傾げた。 「あのパンダを移動させられる場所……、っていう事かしら?」 「……やっぱり、ダメですか……?」 2人は、あからさまに『ドキドキ』している様子でアリスの返事を待つ。 やりとりに気付いた護りの天使・メイリィ(a90026)が、更にドキドキした様子でこっそり見ているのを、燃える瞳の少年・メルメル(a00055)が見咎め、やがて戒剣刹夢・レイク(a00873)達も聞き耳をたてた。 「ボクね、パンダさん、殺したくないんだ。2匹一緒なのは仲良しだからでしょ? お友達か兄弟か結婚してるのかわかんないけど、いなくなってしまったら、グリのパパとママがいなくなったみたいに、きっとだれかが悲しくなっちゃうと思う」 グリューネの言い分に、アリスは尚更に困った表情になった。 『2匹揃って』では、どこにも居場所は無いと同じ。すぐではないにしても、何ヶ所かある竹薮は食い尽くされていくだろう。だが、それを知らせるのは躊躇われる。相手が『ただのパンダ』でないのも問題だった。 「もしかして、そのパンダ達……モンスターの類いですか?」 神龍遺伝・アルファ(a04076)の問いに、顔を上げるアリス。 「正確には違うけれど……普通の動物でもないわ。凶暴だから、説得はとても難しいの」 「パンダは、竹以外にも、わりとなんでも食べるとも聞いたのですが……?」 重ねての言葉に、「あの子達は違う」と首を振る応えが返った。 「……せめて1頭ならアイギス周辺の竹薮で養えるかもしれないわ。人が近付いたら逃げてしまうようになるくらい……『怖い思い』をすれば、人との住み分けも何とかなるかも……」 どうしてもと言うなら1頭だけ。自分のテリトリーに人が入ると、餌を奪われると思って襲ってしまう、今の習性を変えられなければいけない。――妥協案に、グリューネは沈み込み、ヨナタンは溜息をつく。 そして、その反応が分かっていたから、アリスも何も言えずに送り出すだけだった。
カザフ村へは、案内してくれる少年と、慣れた様子のレイクが先を行く。手を繋ぎながら後ろを歩く、メルメルとメイリィの気配を感じながら、彼もまた「うぅ〜ん」と唸る。メイリィの手前もあり、パンダを殺すのは少し気が退けているのだ。 「う〜む。……パンダ、倒していいんだよね……?」 割り切れない様子で、緋の剣士・アルフリード(a00819)は仲間達に同意を求める。 「やっぱり熊料理でしょお。パンダって美味しいらしいしねぇ」 のほほーんと言う薬神ユンケル様使徒どくたぁ〜・フーリィ(a00685)に、ヨナタンとアルフリードは年少組の気持ちを思ってアワアワし、当のグリューネとメイリィは「はうううっ」とショックを受けた。 「共生できるなら、元からそういう依頼だったはずだもの」 フーリィの言は正論だ。実際、何とか助けたいという申し出に、アリスは困っているばかりだった。命を助けるには、ある意味――グリューネが言う『悲しくなる』、片割れを亡くすような酷い仕打ちをしなければならない。殺すのと、どちらがパンダ達にとって幸せとなるだろう? アイギスの赤壁・バルモルト(a00290)などは言いようが見つからず、ムスっと黙ったままだった。 「この先だよ」 案内してくれていた少年が指し示す方から、笹の葉の葉擦れの音が微かに響く。 「爺ちゃん、助けてやってね?」 どのあたりにお爺さんがいるのかなど、細かく確認していたメルメルに、少年は不安そうな面持ちで言った。 「うん、大丈夫。……だよね? メイリィちゃん」 「はい、ですの」 大きく頷いて、2人は請け負う。 「とにかく急ごう」 パンダの処遇については答えが出せないまま、アルフリードは言って歩みを速めた。 「この先はボクが案内するね☆」 少年に代わって、グリューネが先頭を引き受ける。 「風下から回れるようにしてくれる?」 「……」 そこへきたフーリィの要請に、少し彼女が二の足を踏んだのは、それがパンダを殺す為だろうと思ったから。 「……説得するのは待ってあげるわよ?」 察してフーリィが言うと、グリューネはハッとして顔を上げる。 「フーリィさん……実はやさしいんだね」 『実は』とか言われてコケそうになったフーリィに、グリューネははっしと抱きつくと、にこっと笑った。 ……可愛いから許してあげよう。
サクサク、サワサワ。……パキリ。 若竹を物色しては、パンダ達は笹の葉からムシャムシャと食べている。減ってくるまでは、とりあえずの贅沢らしい。 グリューネに案内されて、風下になるパンダ達の左方向へ回り込んだフーリィは、道すがら、竹に縄を2本渡していく。それを使って、気を引く音と防御に役立てる為だ。 「お爺さんは……?」 位置を確認するレイクに、メルメルが「あっちだって」と竹薮の斜め右奥あたりを指し示した。こちらからは見えないが、そこは、1メートル半ほどの段差の下が緩やかな坂になっており、竹もさほど混んでいない場所だと言う。声を上げてパンダ達に気付かれたら、丸見えに近いという事だ。 「メイリィちゃん、一緒に来て貰える?」 メルメルがお爺さんの救出に回りたい訳は、可愛いパンダを叩くのは胸が痛むから。きっとそれはメイリィも同じはず。 示し合わせて出て行く2人を、大丈夫だろうかと目で追っていたレイクに、バルモルトが軽く手を上げる。自分が彼らの補佐をするから――と。そして、嘆息しつつアルファが木立の影に沈んで、同じようにお爺さんの元へ。 ほとんどの護衛士達が、気が進まないと言いた気に準備を始めていた。
メルメル達に注意が足りなかったのと、同行したバルモルトの鎧の音とで、パンダ達がヒクリと耳を動かす。 「(拙い……)」 小さくレイクが言うのと、フーリィの準備が整い、ガサガサと竹が揺れたのが同じ頃。何事か、と言わんばかりに顔を向けた2頭は、フーリィ達5人に反応して、クワッ! と唸り怒りを露にした。 「……パ、パンダさんが……怖いよぅ」 怯んだグリューネより早く、ヨナタンが獣達の歌を使う。 『僕たちは敵じゃないよ〜♪ 話を聞いて〜おくれ♪』 『君たちを傷つけたく〜ないんだ♪ 前に住んでいた所へ帰〜えろ♪』 難しいと言われた説得を、ヨナタンは必死に試みる。 「よそに行ってほしいだけだよ。痛いことしたくないんだもん」 アビリティはないけれど、グリューネもそう言い挿す。だが、聞く耳を持たないパンダ達は、 『ボクらのご飯だもん』 『笹はボクらのだもんっ』 とヨナタンに返してくる。そして、徐々に距離も詰めて。
彼らの御陰で、寸でのところで気付かれる危機を逃れたメルメル達は、ハイドインシャドウを使っていたアルファから先に、お爺さんに近付いた。 「(しぃ〜っ! しぃ〜っ!! 黙ってて、お爺ちゃんっ)」 距離を置いてアピールしていたメルメルの苦労も空しく、怖さのあまり、お爺さんは「ひぃっ」と悲鳴を上げかけた。 「大丈夫ですから」 そっとフォローするアルファが、別の意味でお爺さんを驚かす事になったのは、アビリティの所為。 「……っ!」 上げかけた悲鳴が、『突然、人が現れた』驚きで引っ込んでしまう。そのままポックリ逝かなかったのが幸い。 「あ……。ごめんなさい。……突然で驚きました?」 口をパクパクさせて驚いているお爺さんの様子に、アルファはやっと原因に思い至る。手当てどころではなくなってしまった彼の代わりに、駆け寄ったメルメルがお爺さんを背負い、メイリィが回復をかける。 彼らの一連の動きに、パンダの1頭が気付いてしまった。 「……早く行け」 メルメル達を背面に護るように、武器を地面に突き立て、気を高めたバルモルトのスーツアーマーが大きく形を変えた。 咄嗟に、ニードルスピアをかける用意をするアルファ。 ヨナタンの説得は続いていたが、やはり効かないのだ。彼の方にも、パンダは迫っていた……。
間合いが狭まり、いざ、という瞬間。バルモルト達の方へに向かった1頭へ、攻撃が降り注いだ。救出のタイミングを見ていたアルフリードだ。 ライクアフェザーを万一の備えにして、サーベルのひと振りで生み出したリングスラッシャーが、衝撃波を撃つ。 「ごめんね」 そう小さく呟くアルフリードの声が、ざわめく竹の音と、撃たれたパンダの何とも言えぬ鳴き声に消される。 アルファが止めのニードルスピアを撃ちあぐねている間に、救出を横目で確認したバルモルトは前へ出る。生け捕りに出来るならそうしたかった。彼の技量からすれば、不得手な衝撃波を使ってみるぐらいが手だろう。 攻撃を続けるリングスラッシャーが、どれだけパンダを傷つけてしまうかが、生死の分かれ目になるかもしれない。
『待って! 殺したくないんだよっ』 眼前のもう1頭が、フウッ と鼻息を荒くして威嚇する様子で立ち上がるのを、ヨナタンは必死に止めた。 リングスラッシャーに仲間が撃たれ興奮して動き回ろうとするのを、レイクが作り出しておいた下僕達が、その足元で邪魔して止めた。 加勢のつもりで、グリューネは淡く光る蝶の群れを作り出す。相手を傷つけはしないアビリティだけれど……。蝶が引き起こした混乱は、四方とパンダ自身への攻撃。 手当たり次第に振り回された爪が、1度はフーリィの用意した『竹網』に掛かり、2度目は鎧進化で備えていたレイクの胸元を掠った。 「もう待てないわね」 加減しながらの為、護衛士達は少しずつ退いている状態だ。フーリィは見て取って、攻撃に切り替えるよう勧めた。 「フーリィさん? 待って、もう少し待って。グリがきっと説得するから。ね?」 「駄目だって、もう分かったでしょう?」 言いながら、フーリィの姿は影に溶けていく。 「グリちゃん、下がって……」 心配したヨナタンが駆け寄り、グリューネを退かせる。 (「グリちゃんには、見せたくないよね……」) そんな気持ちでレイクを見遣ると、薙いだソードから銀狼が翔け出でる瞬間だった。紋章術士の彼が使うソードだから……攻撃力はそう無いのだろう。 銀狼に組み伏せられた1頭に、カラミティエッジを叩き込むのは、影から現れたフーリィ。 「医術流交殺法・手術、口伝絶命技−滅素!」 完璧に決まれば敵の首を跳ね飛ばす必殺技にもなるそれで、命まで奪わずに済んだのは、それまでの手加減と、運。 ドサリと崩れ落ちる音がした瞬間は、2頭に大差はなかった。 ただ、一方は死に、一方は大きなダメージを受けながらも、気絶したに留まった事が違い。
救出されたお爺さんには、アルフリードが、用意した簡単な食事と水をとらせてあげていた。 そして竹林の中では。 『ごめんね』 『もう、人に近付いちゃいけないよ』 『そうしたら、怖い事は起こらないから』 虫の息のパンダに、ヨンタンはそう言い聞かせる。応急手当を施すグリューネを手伝おうとして、メイリィはバルモルトに止められた。『人を見たら逃げる』ようにしなければならないから、と。 アビリティで癒しをかけてしまったら、痛みは消えてしまうから……。
大熊猫鍋……は、さすがにみな――いや、1人を除いて? ――食べられなくて。戦利品となった毛皮や肉は、使えるだろうからとアルファが話を通し、カザフ村に寄付された。 ただ、こっそりと、フーリィだけは燻製の予約をして帰ったらしい。

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参加者:8人
作成日:2004/03/07
得票数:冒険活劇1
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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