【砂漠の巨塔】蜃気楼の歌



<オープニング>


●オアシスの魔物
「先日はお疲れ様でした。前回の結果により、新たな情報が分かりました」
 エルフの霊査士・ラクウェルの言葉に、冒険者の酒場にいる面々が集まってくる。
 砂漠の巨塔を巡る冒険は、まだまだ終わりそうにない。
「今回、皆様にお願いするのはオアシスの調査です。どうやらそこには、既にモンスターが居るらしいのです」
 可能なら、早いところ塔のような建物の調査を行いところではあるが、灼熱の砂漠での活動は困難を極めるため、出来るならオアシスを足がかりにしたいという。
 だが、そこには、残念ながら先客が居たらしい。
「モンスターは薄衣を纏った若い女性の姿をしており、どうやら、歌と踊りで獲物を幻惑し、生気を吸い取るようなのです」
 そして、そこには既に囚われの男性が居るという。
「おそらくは、塔を目指していた人達でしょう。自業自得ではありますが、見捨てるわけにはいきません」
 つまり、彼等の救助も今回の依頼には含まれるらしい。
「彼等はモンスターの能力によって操られています。おそらくは、敵として立ち塞がるでしょう。見たところ、動ける男性は三人程。出来る事なら、彼等を傷付けず、モンスターの手から助け出して下さい。
 皆様の健闘をお祈りしています」
 そう言うと、ラクウェルは依頼に赴く冒険者を静かに送り出すのだった。

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参加者
求道者・ギー(a00041)
星刻の牙狩人・セイナ(a01373)
白妙の鉄祈兵・フィアラル(a07621)
竜戦士・バジリスク(a10588)
勝利の戦乙女・ビクトリー(a12688)
殲姫・アリシア(a13284)
紅炎の想術士・シェル(a16437)
真実の探求者・エコーズ(a18675)
奏でるは悠久の旋律・ククル(a22464)
桎梏の代替者・シグルド(a22520)
ちりめん問屋の隠居ジジィ・ミト(a29811)
嵐を呼ぶ蒼き雨・レイニー(a35909)


<リプレイ>

●オアシスへの道
 砂漠に降り注ぐ日差しは暑く、延々と続く砂の回廊を歩む者の体力を奪い取っていく。
 砂漠の巨塔を巡る冒険は、オアシスという足がかりを得て進展するかと思われたが、そこに潜むモンスターが彼等の前に立ち塞がっていた。
「どちらにせよ、ここで足を止める理由はない。真実をこの目に納めるまでは……」
 陽炎に揺れる地平線を眺めながら、魔法剣士・エコーズ(a18675)は小さく呟いている。
 その先に、本当に幻の塔が実在するのか……まだまだ、疑問は尽きない。
「あってもなくても、俺は強い奴と戦えればそれで良い」
 そう口にするのは、破壊竜・バジリスク(a10588)である。分厚いフードの奥から見え隠れする真紅の瞳は、確かな戦意に染まっていた。
「暑いわー!!」
 不意に、後方から不満の声が漏れる。見ると、嵐を呼ぶ蒼き雨・レイニー(a35909)が何やら喚いていた。
 何というか、子供っぽく――かえって暑いだろうに――地面に寝転がって手足をジタバタとさせている。冒険者としての腕は確かでも、まだまだ幼い彼女にとって砂漠での強行軍は耐え難いものらしい。
「そんな事言ってると、置いてっちゃうぞ……?」
「嫌じゃ嫌じゃ、妾はもう歩きとうない。誰か背負うのじゃ〜」
 漆黒の剣・シグルド(a22520)が微苦笑しながらも宥めようとするが、彼女は地面に座り込んだまま動こうとはしなかった。
「オアシスに着けば、水浴びも出来るかも知れないよ?」
 夢幻の殲姫・アリシア(a13284)の言葉に、レイニーは暫し考え込む。
「ココナッツジュースはあるかのぅ……?」
「分からないけど、後でお歌を歌ってあげるから、一緒に頑張りましょう♪」
 渋るレイニーに、奏でるは悠久の旋律・ククル(a22464)が何とか説得を試みようとしていた。
 やがて、レイニーは渋々と仲間の後を付いていく。
 そんなこんなもありながら、暫くして、彼等の前方に先日発見したオアシスが見えてきた。
「もうすぐね……」
 遠眼鏡で前方にあるオアシスを確認しながら、紅炎の想術士・シェル(a16437)は仲間に聞こえるように呟いている。
 やがて、一歩一歩と近付くたびに、オアシスに人影らしきものが見え始め、やがてそれは幾つかの像を結び、何やら甘い恋唄のようなものを囁くモンスターの姿と、それに聞き入る3人の男性の姿へと変化していた。
「蒼雨、来るのじゃ」
 それを見るなり、レイニーがウェポン・オーバーロードを発動し、掲げた手に自らの得物を呼び出していく。
 先程まで駄々をこねていたとは思えない、やる気満々の様子で飛び出していくレイニーの姿に苦笑しつつも、冒険者は戦闘準備を整えるのだった。

●舞い踊る美女
「光よ……我等に幸運を」
 昏き理・ルニア(a18122)の張ったフォーチュンフィールドが戦場を包み込む。
 程なくして、冒険者とモンスターの戦端はオアシスを舞台に開かれていた。
 冒険者の存在に気付いたモンスターは、自らの側に侍らせていた男達を盾に、後方から様子を窺っている。
「手筈通りに!」
「……了解。貴様の相手は私だ!」
 ウェポン・オーバーロードで強化した弓を手に、ホーミングアローを放ちつつモンスターを牽制する求道者・ギー(a00041)の言葉に応じながら、白妙の鉄祈兵・フィアラル(a07621)は側面から回り込みつつ、スーパースポットライトを放っていた。
 閃光が立ち塞がる男達の目を焼き、無力化する。同時に、モンスターの意識がフィアラルへ向かうが、モンスターは冷静に狙いを定めると手にした双剣を振るう。
 まるで、優雅なダンスを披露するかのように、モンスターが振るう刃から鋭い風が巻き起こり、側面からモンスターに近寄っていたフィアラル達に襲い掛かる。風は研ぎ澄まされた刃となり、彼等の全身に無数の傷を生み出していた。
「我が牙よ、砕け!」
 それすらも意に介さず、バジリスクは破壊の一撃を叩き込む。
 繰り出されたデストロイブレードは、モンスターの身体に容赦なく叩き付けられ、確実にモンスターにダメージを与えていく。
「……行きます」
 遅れて、螺旋の騎士・ビクトリー(a12688)が達人の一撃を繰り出していた。
 狙い澄ました一撃が、モンスターの身体を貫き戦意を消失させる。
「今の内に!」
 そのまま、モンスターと男達との間に割って入るビクトリーの言葉に応じるように、ギー達は男達を救助するために動いていた。
 邪魔な武器を一旦投げ捨て、マヒしたまま動けない男性を強引に担ぎ上げ、そのまま後退していく。
「シッカリ♪ 頑張って頂戴♪」
 同様に、シェルやククルもエコーズの放った土塊の下僕の助けを借り、動けなくなった男性を回収していた。
「……邪魔はさせない!」
 彼等を安全な場所に避難させる間、星刻の牙狩人・セイナ(a01373)が後方からライトニングアローを放ち、モンスターの動きを牽制している。
 雷光を纏う矢がモンスターに襲い掛かり、モンスターは辛うじて一矢を避けていた。
 その身は、既に三つに分裂している。
「まずいな……」
 仲間への鎧聖降臨で援護していたシグルドが、思わず呟いていた。まるで、夢か幻のようにモンスターの姿が三体に分裂して見える。この、どれかが本物であるのは確かだが……彼等が身構えるよりも早く、モンスターの攻撃が繰り出されていた。
 狙いは、レイニー。
「なんじゃ!?」
 三方向から襲い掛かる舞いのような連続攻撃に、レイニーは避ける術もなく翻弄されていた。
 鋭い刃が、次々と彼女に襲い掛かり、オアシスに血の雨を降らせる。
 だが、その場に倒れ込む寸前、レイニーは辛うじてその場に踏ん張っていた。肉体を凌駕する魂の鼓動が、彼女を戦場へと押し戻していく。
「妾は死んでなどおらぬわー!」
「レイニー!」
 アリシアが咄嗟に高らかな凱歌を奏で、レイニーの体力を回復させていた。同様に、エコーズも癒しの波動を放って駄目押しする。
「焼き払え!」
 そこに、男達を救助して駆け付けたシェルの生み出した巨大な火球が、ミレナリィドールと同化し虹色に輝くそれが、モンスターに向かって撃ち出されていた。
 炎がモンスターを包み込んでいく。
 その隙に、冒険者は体勢を立て直していた。

●悪魔の誘惑
 あられもない格好をしたモンスターが、艶めかしいダンスを繰り広げる。
「……っ」
 思わず引き込まれそうになる意識を無理矢理に引き戻しながら、ククルは高らかな凱歌を奏でていた。
「みんな、しっかり♪」
 清浄なる歌声が響き渡り、仲間をモンスターの呪縛から解き放つ。
「破っ!」
 ククルの歌声に呼び戻されたフィアラルが、モンスターに聖なる一撃を放っていた。
 一撃が確実にモンスターの身体を捉え、地面に叩き伏せる。
 同時に発生した淡い光が結束して天使となり、彼女を守るように漂っていく。
 入れ替わるように、シグルドも攻撃を繰り出していた。
「惑わされるのは嫌いなのでな……」
 繰り出される聖なる一撃を受けて、それでも、モンスターは辛うじて立ち上がる。その身を分裂させる幻影が消えるよりも早く、振り回される刃がかまいたちを生み出していく。
 3倍に分裂して見える風の刃を避ける事も出来ず、冒険者の全身はズタズタに引き裂かれていた。
「厄介だな……」
 自らも深く傷付きながら、エコーズは高らかな凱歌を奏で仲間の傷を癒し、出血を止めていく。
 後方からは、ギーの放った矢が死角から突き刺さり、セイナの放った鮫牙の矢が、逆にモンスターに深く食い込んでいた。
「ダンスのお代は、これで。あ、お釣りはいらないですから」
 傷口から出血を続けるモンスターの姿を見やりながら、セイナは冷たく呟いている。
 前方では、剣と剣を交える激しい戦いが繰り広げられていた。
 レイニーの繰り出した一撃を避け、バジリスクの繰り出した一撃を辛うじて受け流しながら、モンスターは甘い歌声を奏でる。
「……っ、そんなもの!」
 咄嗟に殲術の構えを取るバジリスクだが、攻撃に集中していたため、ほんの少し反応が遅れてしまった。
 誘惑の歌に意識を奪われたバジリスクが、巨大剣を出鱈目に振り回す。刃が撫でた場所が容赦なく抉られ、炎と氷が大地を彩っていた。
「な、しまった!」
 ギーが思わず焦りの言葉を漏らす。混乱した冒険者は通常攻撃しか行えないが、彼の身には通常攻撃を氷炎の一撃へと変えるキルドレッドブルーが同化している。
 一番厄介な相手を選んだな、とモンスターを見やると、暴れ回るバジリスクから距離を置き、冒険者の出方を窺っていた。
 いずれにせよ、何とかしなければなるまい。
 距離を置くモンスターに牽制のホーミングアローを撃ち出しながら、ギーは考える。
 だが、方法は一つしかない。
「ルニア、頼む!」
「……分かりました」
 ホーリースマッシュの生み出した護りの天使で何とか攻撃を凌ぎながら、フィアラルは仲間と協力してバジリスクを抑え込んでいく。
 その隙に、ルニアがバジリスクに向かって癒しの聖女を飛ばすが、運悪くバジリスクの混乱は解けない。
「来るぞ!」
 エコーズの警告の言葉が響き、彼等が身構えるより早く、かまいたちが彼等の身を切り刻んでいた。
 一緒に攻撃され、大量の血を流しながらも、バジリスクは構わず巨大剣を振るう。
「味方としては頼もしいが……敵に回すと厄介だな」
 バジリスクの力任せの攻撃を何とか受け止めながら、シグルドは呟いていた。
 もし、鎧聖降臨の守りがなければ……あまり、洒落にならない結果になっていたであろう。
 再度、ルニアの癒しの聖女が飛び、今度こそバジリスクを正気に戻す。
「……すまない、助かった」
 ようやく、事態を呑み込めたのかモンスターに向き直り身構えるバジリスク。だが、目の前のモンスターは再度、三体に分裂して見える幻影を身に纏っていた。

●オアシスの覇者
「手打ちにしてくれるのじゃー!」
 レイニーが破壊の一撃を繰り出し、モンスターを追い詰めようとする。
 だが、一撃は届かない。
「レイニー、前に出すぎだ!」
 横合いから、シグルドがモンスターの動きを遮るように、ホーリースマッシュを放っていた。
 一撃は、しかし、モンスターの双剣に受け止められる。
「下がって!」
 後方から、アリシアの放った緑の業火がモンスターに撃ち込まれていた。
 彼等が咄嗟に下がると同時に、ミレナリィドールの力を受け虹色に輝く業火が、モンスターを呑み込み焼き払っていく。
 だが、モンスターは延焼する炎を振り払うと、そのままの動作で剣の舞いを魅せていた。
「……っ、すまない」
 三方向から同時に襲い掛かる刃の連続攻撃に、シグルドは為す術もなく倒れていく。
 クルルへの君を守ると誓うは、彼の体力を予想以上に奪っていた。
「シグルドさん……ここまで来て、負けるわけにはいきません!」
 ビクトリーが倒れたシグルドを庇うように前に立つ。
 前方では、バジリスクが先程のお返しとばかりに、モンスターに破壊の一撃を叩き込んでいた。
 そこに、フィアラルがホーリースマッシュを叩き込み、シェルがエンブレムノヴァをモンスターに撃ち込んでいく。
 だが、それでもモンスターは倒れない。
 一糸乱れぬ踊りが、三体に分裂して見える幻影も相まって、冒険者を翻弄している。
 そこには、いささかの迷いも慈悲もない。
 モンスターが、目の前のビクトリーに次々と刃を繰り出していた。
「……やらせません!」
 怒濤の連続攻撃を受け、ビクトリーは呻く。
 だが、圧倒的な剣戟の前に、彼女の体力は底を突いてしまった。
「おのれ!」
 倒れ込む仲間からモンスターを引き剥がすように、バジリスクが渾身の一撃を叩き込んでいく。
 一撃を耐えきれず、モンスターの手にした剣の一本が砕け散っていた。
「……疾く、阻め」
 更に、後方から放たれたエコーズの緑の突風が、モンスターの身体を泉へと吹き飛ばしていく。
 追い打ちを掛けるように、フィアラルのホーリースマッシュがモンスターの身体を泉の中に叩き伏せ、後方からは、セイナのライトニングアローが、アリシアの緑の業火が、シェルのエンブレムノヴァが容赦なく降り注いでいた。
 だが、モンスターは尚も立ち上がり、しかし。
「ええい、邪魔するでない。妾が倒すのじゃ!」
 水面を削るように巨大剣を走らせながら、生まれる水飛沫と共に、レイニーがモンスターを一刀両断にする。
 それが、ようやく止めとなり。
 モンスターの身体はバラバラに砕け、まるで、蜃気楼のように砂漠の風に消えていく。
 そうして、彼等はようやくと言った様子で、その場に崩れ落ちるのだった。

●指し示された塔への道
「ほっほっほ、皆さんご無事で何よりですぞ」
 ちりめん問屋の隠居ジジィ・ミト(a29811)の奏でる高らかな凱歌が、仲間の傷を癒していく。
 あの後、念のためにオアシスを確認したが、特に幻という事は無かったようだ。
 日差しを遮るように細身の木々が立ち並び、上空に大きな枝葉を広げている。泉からは冷たい湧き水が溢れ、彼等にここが砂漠である事を少しの間だけ忘れさせてくれた。
 だが、彼等が求めるのは、オアシスの向こう。
 しかし、そこにあるのは、わだかまる暗雲。おそらくは、向こうで砂嵐でも発生しているのだろう。
「……ふぅ、癒されるな」
 バジリスクが泉の水を掬い上げ、一口啜って感想を漏らしていた。
 特に、砂漠の行軍やモンスターとの戦闘の後では、水の有り難みが全くと言っていいほど違ってくる。残念ながら、泳げるほどの水はなかったが、セイナはお土産用として予備の水筒に沸き出したばかりの水を汲んでいた。
「ふぁ、もうずっとこのままで居たいのじゃ」
 ちなみに、レイニーは小さな岩の上から泉に足を浸し、極楽に浸っている。
 そのうち、救助された男性達もようやく目を覚ます。
「気分はどうですか?」
「あ、ああ……」
 多少、やつれた様子の男達ではあったが、彼等が水を与え、携帯食料を少しずつ食べさせると、ようやく喋れるまでにはなっていた。
「浪漫も良いけど、命は大事にしなさいよ」
 等と、シェルに窘められている男達に、エコーズが割り込んでいく。
「すまないが、砂漠の巨塔について知っている事があれば教えてくれないか?」
 エコーズの言葉に、しかし、二人はここに来た途端にモンスターに囚われたらしく、情報らしい情報は得られなかった。
 しかし、一人の男は、おずおずと口を開く。
「俺は……確かに見た。砂嵐の中に、巨大な……金色の塔が建っているのを」
「……砂嵐に金色の塔? それは、本当かね?」
 半信半疑の口調で、ギーが問い質す。
「ああ。だけど、そこには巨大なサンドワームが……仲間も全員喰われてしまった」
 そのまま、男は怯えたように俯いてしまう。
 果たして、彼の言葉は真実だろうか。
 答えも分からぬまま、彼等は男達を送り届け、情報を精査するために、いったん灼熱の砂漠を後にするのだった――。


マスター:内海直人 紹介ページ
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