星祭・蒼灯流し



   


<オープニング>


 巡る時はひと時も留まる事は無く。
 また、蒼灯流しの夜が来る。
 一人減り二人迎え、また一人訪れて。
 夜中の酒場に、酒と煙草で潰れた独特の声とコントラバスの音色が響く。

 騒ぎ疲れ酔い潰れた客達の静かな寝息を聴きながらバルバラが歌う神と人の古い古い物語は、誰にともなく呟かれる独り言のようだ。
 女を孕ませ捨てた神が、やはり女を忘れられずに戻れども、女は子を連れ雲隠れ。悔いた神は泣いて泣いて、身を削って泣いて身が削れて涙になり、最後の一欠片になった時、許した女が子を連れて現れる。
 寄せる波のように途切れる事無くどこか寂しい調べに乗せて、バルバラは神代を物語る。
 星に纏わるそんな伝承が今に伝わる海辺の町オルギアでは、7月7日の夜に罪を流して赦しを得る祭が行われるのだと常磐の霊査士・ミカヤ(a90159)は言った。
 蒼灯流し。
 町を貫いて海へ続く川に、青い紙で作った灯篭に蒼の刻印と呼ばれる蒼石のメダルを乗せて流す。蒼の光は神の涙を現して、川を流れて行く。そして、再び蒼の刻印を祭司に選ばれた子持ちの女から受け取る。来年、それにまた己が犯した罪を乗せて川へと流す為に。

「青色硝子のランタンを持った人々が、光を落とした街中を行くのだ。蒼灯は途切れる事無く川を、流れて海へと旅立って行く」

 町を行く人々の手にした灯火が、夜光蟲や深い水底を行く銀魚、蛍が惑う様めいて、星明りに誘われて現れた深海の夢のように町を彩るのだよと、ミカヤは縁の欠けた緑青の茶器に満たした酒を啜る。
 きっと去年の事を思い出しているのだろう。セイモアはランタンの暖かな橙の光に柔らかく照らされた、老婆の横顔を見ながら、在りし日に聞いたオルギアの、祭りの一夜の物語を記憶の中に聞く。横顔は、ただ切なくも幸せのものとして思い出しているようにも、深い場所で微かな悲しみを味わっているようにも見えた。
 赦される――か。手の中の、水の杯に目を落とし、セイモアが呟く。

「時折、本当に時々ですれけれど、僕だけ生きている事が罪なのではないかと思うときがあるんです」
「――生きるって事は喜びだ」

 歌い止めたバルバラがセイモアの言を切って捨て、琥珀の酒を瓶から煽るとさも嫌そうにセイモアから目線を逸らす。セイモアは何を言う事も無く、ただ物悲しく笑った。 
 ランタンの被い硝子の中で揺れる炎と、きらきらと燐粉を振り撒きながら焼かれて死んでゆく蛾を見ながらミカヤの話を聞いていたユビキタスが、羊乳酒の杯をぐるりと揺らしながら老婆を見遣った。

「信じているの?」
「この祭りはね、ユビキタス。罪を赦す事ができると、思い出す為にもあるのだよ」

 ミカヤは静かに答える。ユビキタスはそれ以上何も言わず、ただ微かに物憂げな笑みを浮かべる。
 隅でじっと話を聞いていたユーゴは、ぼんやりと遣り取りを聞きながら窓の外を見た。
 夜の町に星明り。深海の如き藍に町は沈む。
 ミカヤを誘って、皆を誘って、それでオルギアの町へ行きたいな。
 無数の蒼い灯火が、川を伝い海へ漂い出て赦しの浜辺に着く様は、罪も喜びも僅かしか持たない自分が見たとしても、きっととっても美しいのだろうから。

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参加者
NPC:常磐の霊査士・ミカヤ(a90159)



<リプレイ>

●星祭
 蒼灯流しの祭りの夜、深海の藍に沈むオルギア。青い灯りを持つ人々は深い海底を往く銀魚の如く。連なる出店は賑やかだったが喧騒は夜に吸い取られ、どことなく静かな印象を残す。呆れられたり共にはしゃいだりしながら、様々な出店を堪能したティーとリュト。胸にはお揃いの連星花が輝く。蒼光の中、星振る空を見上げるティーの横顔が可愛くて、リュトは思わず手を繋ぎ直ぐ真っ赤になって手を離した。
「趣味が悪いわね、これにしなさい」
「あ……」
 ヴィオレッタは下僕に命ずる女王の如く、アーカムが選んだ地味なお守りをそう評する。変わりに渡されたお守りが彼女とペアだと知りつつ、常にそうであった様に我侭を受け入れるアーカム。ヴィオレッタは満足気に微笑み。
「うまうまー♪」
 全店制覇を目指すリーフィアは食べ物両手に幸せそう。
「はい。迷うから」
 財布係のローランドが浴衣姿の少女に手を伸べる。片手の林檎飴を青年に渡して2人は手を繋ぐ。恋人にまた一歩。とても嬉しくて、ローランドは微かに尻尾の先揺らす。
「……わかった、買ってやる」
 手を繋いだまま見上げる浴衣姿のヒカリ。クロスは負けっぱなしだ。
「ありがとう〜! んじゃ、林檎飴2つね〜!」
 きらきらと目を輝かせて笑うヒカリを見ながら、俺は出店よりヒカリの笑顔を見ていたいとクロスも微笑む。
 頬を掻きつつ、にこにこしているラマナを見遣るガイヤ。
 まあ、保護者みたいな物だ……すまん、嫁。
 予定が変わって来る事の出来なかった妻に心の中で謝って、蒼灯を川に流す。
 既に川には無数の蒼灯が、水の面を行く無数の青い花を思わせて乱れ咲く。
 柔らかく深い青の光を燈らせる蒼灯。
 その一つ、一つが、様々な思いと罪とを負っていた。

●蒼灯流し
 暗き水面に、蒼灯の光が散る。星振る夜の空のようだ。
 橋の上に、また川辺に人々は集う。
 美しさに息を呑むルキの明るい眼差しの中に一抹の寂しさ。わたしの罪――わかってるから、わすれないから。ルキの言葉が水面に落ちる。
「『生きて』帰ってきます。いつでも……どんな依頼からも」
 赦されなくてもいい、誓いは違えない。言うマカーブルの頬に、ミカヤは慈しむ様に手を伸べ。
 祭りの警備をする為に人込みへと去り掛けたシオンは振り返り、戦いの日々で背負ってきたものを乗せ流した蒼灯を束の間見送る。紙細工の桜と共に乗せた罪の名は『生』。鬼に襲われ姉、家族、故郷の全てを失った。罪悪感を胸に秘め、ヨシノは蒼灯を流す。嵐の海に消えた姉。見殺しにしたのね人でなし。二度も姉を奪った男を罵った。赦せず悪鬼に堕ちたのは私だと、ストラタムは暗い水面に目を落とす。
 力と刃を手に入れ、傷つけて傷ついて。フィーはそんな己の罪を流し、ルナは『赦されたい』と願う自分を赦して欲しいのかもと、漠と思いながら蒼灯を流し。
「じゃあお祭りに行きましょーなのです♪」
 はにかむ様に微笑んでフィーはルナの手をぎゅっと握る。
「……君は……この光景、好き……?」
 問われ、故郷を思い出すとユーゴは頷く。青い光は父を思い出すんだと、ヤーウェのどこか寂しげな声が水に消え。今は決して赦す事はできないけれど、いつか己が罪を赦せるようになりたい。赦せるようになれと言った彼と自分の為にも。そうガラクスィは蒼灯を流し。それを罪と呼ぶことが許されるならば――故郷を守れなかった過去を乗せ、先へ進む為にソウヤもまた蒼灯を川へと浮かべる。思考を掠める言葉達。罪と喜びと。漆黒の双眸に蒼灯を映らせながらルトリヒは微かに自嘲的な笑みを浮かべた。自身がどんな罪を背負ってるかシズナは覚えていない。けれど皆が幸せになれば幸と、流れる蒼灯に思いを馳せる。命を奪う罪は赦されるのか、それともずっと背負って行くのか。問うバーミリオン。悔いる心があるならば赦されぬ罪など無いと思うよと、ミカヤは少年の頭を優しく撫でる。
「……悪ぃ。そっちに行く予定は、まだ大分遅れちまう……。もうちょっと待ってくれな」
 流せぬ罪を胸に、トワイライトは淡く苦い笑みを残して踵を返す。自身が定めた道。それが罪であるとわかっていても、歩みを止める事はできない。だからガルスタは、己が道貫かんが為、命を奪う罪を蒼灯に乗せる。大好きな人たちを護りたい……大切なひとのそばにずっといたい。思うだけで動けぬ己が罪と切なる願いを乗せて、スウは蒼灯を川へ浮かべる。光惑う川を茫と望むレダ。
「深い、優しい夜だ」
 言葉の通りに、優しい赦しの夜を蒼灯が行く。水面で惑い、命あるものの如く揺らめく青を望んでいたアネモネは、今までの出来事を思いながら、その切ない美しさに溜息を零す。自身の生を卑下せず、全うしようとする事が大切なのだと思いながら、彼の地も同じ青色が映り届いている事を願うファオ。赦されるなんて、未だ思わないけれど……血に塗れた哀しい罪が、青い光に透かされて少しでも透明なものになればいい。ヨルはそう蒼灯を見送って。赦されぬ罪など無く、セイモアが生きている事が嬉しい。殺める罪を負っても、こうやって罪が赦されるなら、また私は弱き人々の為に戦って行けると言うハルに、セイモアは少しだけ眩しさを覚えた。今は彼の地にいる恋人。孤独に心が揺らぐ。内と外の弱さが罪なのだと言うユフィアの言葉を、ミカヤは静かに受け止める。生きてほしいと思う者が例え死を望んでも生かし、守るために傷つける者を倒す罪。自分で決めた道を行く為に蒼灯を流すクスリ。生き残った罪。愛という罪――どうかこの清廉なる水面が、罪の全てを流してくれますように……そう、ハーウェルは目を伏せ。ミカヤに挨拶をした後、逸れぬようにと手をとってエィリスとハジは蒼灯を望む。
「こんなに綺麗な灯火だから、どんな罪も赦しを得られるんですね。きっと」
「そうですわね……」
 一緒に過ごせて、とても嬉しかったですわ。エィリスがそう微笑んだ。
「……許しが欲しい訳じゃないんですよ、でも罪を許すことが出来るって、それだけ見たかったんです」
 呟き、セルディカはミカヤを振り返る。
 何と言って蒼灯を流そうかと暫し考えるルシア。
「ありがとう」
 一番言いたい事を言葉にして少女は微かに笑み、黒猫がにゃあと鳴いた。
「去年も深海みたいに綺麗で、でも青は冷たいから……吸い込まれそうで少し怖かったな」
「まるで、『いのち』が瞬いておるようじゃ……」
 鞠提灯を手に蒼灯を眺め、それからコトナは、ずるい、でも好きが溢れそうだとアルクスを見る。眼差しを受け止めアルクスは微笑んだ。
 青の仄光が流れる様は、温かくもあり、切なくもあり、ユージンは身の引き締まる気持ちを覚える。
「今日は、ありがとうございました。本当に嬉しいです」
「らしくなさに座りが悪いゆえ止めてくれ」
 呪と文字のある団扇で顔を隠すツァイ。ユージンは微かに笑みを深め。2人で流した蒼灯を見送るニクスとセイモア。
「苦難に満ちた生を生き続けること……それこそが試練であり、贖罪だと思うのです」
 赦しと微笑みと。嘗ての約束を違えず、青年の心の背中を押すニクス。
「生きる事は一つではないんですね――」
 セイモアは物柔らかな笑みを浮かべた。
 罪と贖罪、喜びと悲しみ、苦難と慰め、人を殺め人を生み出し、全てを孕んで生はあるのだ。そして生きる事が齎す痛みを乗せて、蒼灯は弛まず川を流れて行く。蒼灯が至る海へ入り口でようやく出会ったハルヒはカナメ。
「考えていたんだ、僕の幸せ。それが、カナメさんの一番傍に居る事だって言ったら笑う?」
「俺の生きる事も喜びも、ハルヒさんの傍に居る事だよ」
 それから2人笑い合った。
「あの灯りが美しいのは、人がおのれの罪を知っているからなんだ」
 クローチェと灯火を見ていたユーゴが言う。へェと少年は返す。でも蒼灯を流す気にはまだなれなくて。
「屋台を見に行こうぜ。罪も喜びも同じ位僅かだってんなら、喜びが増える方が嬉しいじゃねェか」
 クローチェの言葉に、嬉しいとユーゴは表情を和めた。川辺の酒場ではノリスが、骨っぽい品はどうだろうか、と虹色に輝く小さな貝の化石をユビキタスへ。
「綺麗ね」
 灯に翳し女は物憂く微笑む。
 林檎飴とチョコバナナを手に他愛無い話をしながらキャメロットとルーツァは高台へ。高みから見る蒼灯流しは蛍の群を思わせ、ここに蛍がいるのなら、きっとキャメロットに集まるだろうとルーツァは思う。星が、朝の優しさと眩さを吸い込んで全てを照らす太陽に憧れる様に。高台の離れた場所では、ウィーが美しい蒼に微睡む町を望んでいた。最愛の人に会いたいとは思えど酷く我が儘な気がして。いつか、この光景を一緒に見たいとひっそり思う。カガミもまた、町を行く蒼灯を複雑な表情で眺める。手を伸ばせば届くはずの事に伸ばさなかった自分。次こそはと、決意を新たにし。川と海を往く罪と蒼灯は、赦しの浜辺へ去って行く。もう届かない、戻れないものだと自分でも分かっているから――だから、優しいその光景を、ヒユラは悲しみを抱いて望む。
「……美しいな……」
 ただ見たかった。この光景を。満天の星と宵藍の町と蒼が惑う川と願いを馳せる罪びと達を望みながらカイザーは静かに佇む。自身の罪は流さず、皆の罪が赦されるようにと願いながら、セドリックも町を眺めていた。時として強い海流に逆らって自在に海を往く魚達の様に、人々の持つ灯りが行き交う。夜に流るる水が持つ静けさ、命を思わせて揺らめく蒼灯。
「お前に似てるな」
 空の広さを教える星々を見上げ、クルードとセファを見る。
「……いなくならないで下さいですなぁ〜ん」
 じっと見返すセファ。
「……泣かせることはしない」
 少女の帽子に、頭を撫ぜる様にぽんと触れて、クルードは約束を交わした。
 川辺の静かな場所で蒼灯を遠目に、エンヤを挟んで手を繋ぐマサキとトロイメライ。父と母の温もりに、エンヤは幸せを笑顔に変え。
「次も、次の次も一緒に来ようか。お祭」
「……ずうっと、いっしょ」
 トロイメライが言い、エンヤが答える。
 いつか年月に分かたれる時が来る。それでも良いと2人は言った。
「ありがとう、ございます」
 そう娘の頭を撫ぜ、惜しみない愛情を注ごうとマサキは思う。
 終わりの後に、悲しみが残らぬ程の愛を。
「……本当はお酒が良いのかもですけど、ボクには早いので」
 クララが差し出す菓子を見て、ユビキタスが微かに笑った。霊査士になった理由を問われ、砂糖菓子を食べながらユビキタスは、避けられる死と避けられぬ死があるからと答える。
「背負った罪に押しつぶされそうになった時……貴方はどうする……?」
「誰かに助けを求めます」
 寂しい瞳をした青年の言葉を知りたくて問うリルケにセイモアは答え、僕は独りで生き続けられる程、強くは無いんですと水のように微笑んだ。自分を庇って少年が死に贖罪の為冒険者となった。けれど今では彼の気持ちが分かる。守られた事を重荷にしてはいけないと言うメイフェアの頭をミカヤは優しく撫ぜ、ラグは2人を静かに見守り。ジェイクは酒を片手に蒼灯流しへ目を遣る。罪の重さや覚悟が死地で命を繋ぎ留める楔に成る気がして、ただ赦しの光景を見るに留めていた。
「……あなたのような女性になりたいと、思うておりますの」
 バルバラと乾杯してカイが笑む。好い女が勿体無いと、酒杯を傾けバルバラが笑う。
 酒場で卓を囲み、穏やかな酒宴は続く。ユーゴが語る失った故郷の幸せな物語。でもね、失われた記憶の中に、しでかして来た罪を見つけるのが怖いんだと言うユーゴの頭をシュシュは抱いてぽんぽんと叩く。暖かな風景。アージェシカは目を伏せて一年前の今を思い出し、ユーゴに微笑み掛ける。
「……大丈夫。幸せな思い出は、いつでも心を照らしてくれる、灯火だもの……」

●深藍の未明
「西へ旅立った皆が無事に帰ってきますように……」
 星辰の洞窟――蒼く溢るる光の中で、祈りを捧ぐフィミア。その洞窟の外の砂浜では、行き逢った町の若者と、争いとも戦いとも関わりない穏やかな日常の話をしながら、ユリカが海を望む。彼方に、いつか赦しの浜辺に辿り着く為に海を往く蒼灯の群があり。
「一緒にあれを見ようと思ってね」
 アニエスはそう蒼灯を望み、青光の中に、海に還った人々を思い出して物悲しい痛みを覚える。
「蒼灯か……何れ、流せる日なんて来るんだろうか」
 呟きつつも確かに、少しずつ何かが変わっている様だと、シルフィードは手の蒼灯に目を落とす。多くの命が彼の蒼灯の光で癒されますように。多くの人々の罪を忘れぬよう、時々思い出してもらえますよう……祈りにも似た思いを覚えるゼアミ。
「……罪を流したかったのもあるけれど……忘れない、ためかしら」
 蒼灯を流す理由を問われ、海を望んだまま答えるマイヤ。
「私は罪を赦してもらう為ではなく、己の戒めとする為に、蒼灯を流しに来たんだ。進めない言い訳ではなく、進む為の力にしたいから」
 ユズリアは、静かな言葉を零す。
「罪も、俺を形作るものの1つだと考えているんだ。だから、時に重く苦しいと感じる事があっても……手放そうとは思わない」
 淡く笑うレーダ。罪は赦されても消えはしないんだと、ユーゴは言う。波が寄せる音が重なる。何もかも穏やかに和ませる波音を聞きながら、そっとロードは蒼灯に願う。どうか……皆でいられるこの幸せが、いつまでもずっと続きますように、と。
「……星みたいだね」
 愛犬を撫ぜながら、わたしの罪はまだ流せないけど、流れていく誰かの罪がどうか赦されますようにと、スグハは行く蒼灯に祈り。伝説は悲しくとも、その光景は本当に綺麗で。戦争で重ねる罪に染まる両手の赤さは、あの青で洗い流せるのだろうかと、カガリは手に目を落とす。去年を思わせタイピンを直す真似をして、笑うシリウスとシエルリード。それから笑いを微笑みに変えて、彼の浜辺でそう在った様に、巡る年の間に近づいた距離を確認する様に、2人は静かに寄り添い。赦す気も赦される気も無い。ただ、蒼い光を見たくてこの町を訪れた。そしてエリオノールは奏でる。罪びとの、贖罪のうた。その傍らに在るヨハンが言った言葉を、セイモアは思い出す。犯した過ちの重さを識り、赦しを得ても、別の新たな罪に囚われ果て無き贖罪の旅路を歩む……それが人生と。
「一緒に、生きるのなぁん」
 一緒に赦してもらう方法を探そうと見上げるナーテュの頬に、己の生が罪だと言ったセイモアの涙が落ちた。
「蒼灯の灯りはとても悲しそうに見えますねぇ……」
 妻と子を送ったのだと言うラプセル。私は救えぬ罪を乗せたよとミカヤは静かに蒼灯を見送る。
 彼方に黎明の白。藍に沈む町オルギアに朝が訪れる。海に敷かれた煌く真白の道を辿り、最後の蒼灯が赦しの浜辺へと旅立ち、ナタはそれを見送って、暖かな夜明けの光の中に踏み出す。
 心に、忘れ得ぬ蒼灯流しの日の思い出を残して。


マスター:中原塔子 紹介ページ
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作成日:2006/07/16
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