≪陽光の砦リドマーシュ≫ソルレオン領偵察・3(城壁編)



<オープニング>


「いよいよです」
 リドマーシュ砦の食堂にて、粉雪纏いし霊査士・セイラはそう切り出した。
「霊査の材料も増え、進み方の要領もつかめて来たのではないでしょうか。ですので、今回は一気にマルティアスへ潜入したいと思います。そのために、今回は前回の3倍の人員をあてます」
 護衛士達の前に、簡易の地図が広げられる。そこには前回同様、色分けされた場所があった。
「マルティアスまでのルートは、前回までの偵察と霊査で概ね確立できたと思います。私の見立てでは、走って1日半ほどでマルティアスの近くまでは到着できるものと思われます」
 平和な時代では、マルティアスまでの所要時間は「走って1日」となっていた。なので、現在の状況は決して悪いものではない。
「今回の本題は、マルティアスに到着してからになります。前回の3倍の人員をあてていますので、予め3班にわかれて行動していただきたいと思います」
 セイラがそこまで言うと、別の図が広げられた。そのかなり簡易な図はというと。
「マルティアスの図です。ノルグランド時代から蓄積された情報と、今回霊査で見えた情報を総合して、私が書きました」
 セイラは図の説明を簡単に行った後、図のある1点を指した。
「マルティアスには城下町があったそうです。霊査で見えたのはこの辺りでしたので、1班は城下町のモンスター退治をお願いします」
 セイラの指は、そのまま図の上のほうへと滑っていった。
「前回の偵察で、マルティアス城砦の城壁付近にはモンスターがうろついている事が分かっています。1班は城壁付近でもう1班が内部に潜入し易いように、露払いを行って欲しいと思います」
 指は更に上に進み、城壁の中へと入っていく。
「残りの1班は城砦内部に潜入して、少しでも多くの情報を手に入れて欲しいと思います。ですが、残念な事に……」
 セイラはそこで一旦言葉を切り、息を継いでからこう告げた。
「内部までは霊査は出来ませんでした。ですので、状況は一切不明です」
 肝心なところで役に立てないと言う無念さが、セイラの表情から見て取れる。だが、ここで止まるわけには行かない。
「調査結果次第では、マルティアス奪取なども視野に入ると思います。皆さんで協力して、良い結果が出るようにがんばりましょう。宜しくお願い致します」
 セイラはそう言ってぺこりと頭を下げた。

 その後、城下町班と城壁班にはそれぞれセイラの霊査結果がもたらされた。
 城壁班への情報は……
「……城砦の通用口の1つに……剣と盾を持つ人型のモンスターが3体……扉を守り続けている……」
 それは、もしかしたら扉の警護をしていたソルレオン達の成れの果てかもしれない。
「……彼らの持つ剣は戦いを始めると……より猛々しい姿へと変化を遂げる……。その剣で……流れるように敵をなで斬りにしていく……。」
 セイラの霊査はそれだけだった。
「このモンスター達を早いうちに倒さないと、城砦内への潜入は飛躍的に難しくなると思います」
 セイラは最後にそう告げた。

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参加者
雪白の術士・ニクス(a00506)
一医専心・ローザ(a08278)
朱い翼・ナミ(a10048)
牡丹で薔薇・コレット(a18519)
ブルーベリー・シャム(a20438)
銀の剣・ヨハン(a21564)
不屈の守護者・テフテフ(a28538)
デタラメフォーチュンテラー・イエンシェン(a30743)
仮面のメイドガイ・コガラシ(a33379)
蒼聖の騎士・アルタ(a36559)
流離いの白夜・トウカ(a37461)
青き絆のカンタドール・ユナン(a37636)


<リプレイ>

 城下町班から少し遅れて、城壁班はマルティアスへと到着した。と、そこへ歓迎の歓声代わりに地響きが響き渡る。見ると、丁度城下町班が巨大獅子モンスターを倒したところである。だが、その音を聞きつけ、他のモンスター達は獅子モンスターのところへ集まらんとしていた。
「援護する! 後は頼む。行ってくれ!」
 城下町班から声がかかる。その言葉を信じ、城壁班は先を急ぐことにした。
 問題の通用口は、城の正面入り口から見ると右側にある。城下町班が戦っているところをすり抜け、護衛士達は城壁と城砦の間を進む。
 朱い翼・ナミ(a10048)はそのルートの中でも、出来る限り目立たない場所を遠眼鏡で探し、随時伝えていった。
(「出来るだけ姿勢を低くして……」)
 雪白の術士・ニクス(a00506)は努めてそう心がける。他の護衛士達も慎重に、かつ素早く先を急いだ。
 瞑捜するオカリナ奏者・ユナン(a37636)が後ろを確認する。だが、城下町班の奮闘のお陰か、追ってくるモンスターの影は無い。
(「それにしても、俺たちの行動が潜入班の行動に関係してる、か。はは……やりがいあるなぁ」)
 彼の思うとおり、今回の依頼は責任重大である。彼等が失敗すると、潜入班は城内への潜入が困難になるのだから、自分達だけの問題では済まされない。
 そこへ、ナミの声がかかる。
「いたよ。まだ、剣は派手じゃない」
 ナミの報告は、まだ、相手が臨戦態勢になっていないことを示していた。慎重に行動したのが幸いしたか、こちらが先手を取ることが出来たのだ。
 護衛士達は更に慎重に歩を進める。もちろん、先手をとれたのだからその間に準備をすることも怠らない。
 先頭を進むナミの横で、蒼聖の騎士・アルタ(a36559)は自らの鎧を『鎧聖降臨』で壮麗な白銀の物に変えていた。彼はナミと2人で相手モンスターを1体足止めすることになっている。準備はしっかり整えなければならない。
 医通大仁・ローザ(a08278)は、全員の様子を確認しつつ、門にいる3体のモンスターを見やっていた。
「ふむ。難儀な相手じゃなぁ」
 顎に手を当ててそう言うが、その顔は言葉と違い、危機感などは感じられない。
(「もとより、単純に勝つか負けるかと言う話なら問題はないからのぅ」)
 潜入班のために、可及的速やかに倒す。今はそれだけを考えればいい。
 と、ローザは顎から手を離した。護衛士達の準備が整ったのだ。
「回復は妾達が面倒を見る。存分に叩きのめしてやれぃ!」
 ユナンと共にやや後方へ引きつつ、ローザはそう指示を出した。
「行きますわ!」
 すかさず、牡丹で薔薇・コレット(a18519)が『緑の突風』をモンスターの1体に掛ける。
「ぐおおおっ!」
 モンスターはその風を身に受け、後方へと吹っ飛んだ。これが今回の作戦である。敵を分断し、各個撃破するのだ。
「……上手く分断できましたわね」
 まずは自分の務めを果たし、ほっとするコレット。この分断が失敗したら厳しい戦いを強いられるのは明らかだったからだ。
 早速、不屈の守護者・テフテフ(a28538)と仮面のメイドガイ・コガラシ(a33379)が分断されたモンスター(以下、モンスターC)の元へ駆け寄る。
「みんなを守るための重要な初めてのお仕事、絶対にこなしてみせますなぁ〜ん!」
「フッ……相手にとって不足は無さそうだ。覚悟するが良い!」
 その後ろで、ブルーベリー・シャム(a20438)が『ライクアフェザー』を掛けた。
「さーて、ちゃっちゃと片付けて“道”を作るか」
 更に後方からニクスとコレットが合流して、この5人がモンスターCと戦う。
「連携される前に終わらせてみせる……!」
 ニクスは空中に紋章を描き、巨大な火球を作り出す。『紋章筆記』によって強化されたその火球、『エンブレムノヴァ』は寸分違わずモンスターCを撃ち貫いた。
「フッ……食らうが良い! メイドガイ稲妻反転キーック!」
 続けてコガラシが『斬鉄蹴』を放つ。だが、向こうもやられてばかりではない。盾を構えてコガラシの蹴りをかわすモンスターC。

 その頃、残った5人は2体のモンスターと対峙していた。
「参ります」
 銀の剣・ヨハン(a21564)は、モンスター達に対し刀礼を行った。だが、敵はそんなことはお構いなしにこちらへと向かってくる。ヨハンはやむなく剣を構えるが、その前に勘違いで今宵も危険な核弾頭を・トウカ(a37461)が動いた。
「ここから先へは行かせません」
 トウカは向かってきたモンスター達に『粘り蜘蛛糸』を放ち、2体の内1体(以下、モンスターA)を拘束した。
「この戦い、負けるわけには行かないので……」
 だが、もう1体(以下、モンスターB)は剣を変化させ、なおも向かってくる。
(「異形となってなお、未だこの場所に踏み留まり、扉を守っている……。誇りがそうさせるのでしょうか」)
 ヨハンは構えた剣に天使の力を載せ、モンスターBを『ホーリースマッシュ』で貫いた。
(「……このような形ではなく、肩を並べて戦える日を望んでいました」)
 ヨハンは無念さを断ち切るように、自らの剣をモンスターBの体から抜く。
「『気高き銀狼』!」
 灰中落花・イエンシェン(a30743)は、ヨハンやトウカを後方から援護していた。まずは足止めをはかるべく、銀の狼をモンスターへと向かわせていく。
 そんな中、イエンシェンはある奇妙な感覚を認識していた。
(「そう言えば、わたくし、実はソルレオンの方にお会いしたことが無いのですよね。それなのに、現在ここへと赴いている……」)
 もしかしたら、一生来ることがなかったかもしれないこの地に居る。それは『縁』と言う名の不思議な偶然。
 だが、その感覚に浸る余裕は許されていない。イエンシェンは自らの役目を全うすべく、モンスターへと『スキュラフレイム』を放った。

 ローザとユナンは、宣言通り後方で仲間達の回復に専念していた。だが、余り後方に下がりすぎると回復が届かないので、適度な距離を保たないといけない。
 この『適度な』と言うのはくせ者で、油断をすると敵が踏み込んできて攻撃を食らう可能性があるのだ。
 実際のところ、足止めしきれずに2人のところまでモンスターが来ることも何度かあった。
「あっ!」
 ナミが叫ぶ。彼等が足止めに当たっていたモンスターAが、2人の隙間を抜けて後方に行ったのだ。
 モンスターAはそのまま、流れるように剣を降り、ローザ達を薙ぎ払おうとする。
「っと。あっぶな〜!」
 ユナンは襲い来る剣を何とか盾で防ぎ、距離を取った。
「呼吸を見、体運びを見、一瞬の機に踏み込み、刹那の隙に引く。人体を知り抜く者の戦術と知れぃ!」
 ローザも無事剣をかわし、距離を取る。そこへナミとアルタが割って入り、隊形は元に戻った。
(「そろそろ、かの」)
 ローザは横を見やり、もう少しで戦局が動くと判断する。その視線の先では、シャムが連撃を決めている姿があった。

「しっかりダメージ与えないとナ」
 シャムは『薔薇の剣戟』でモンスターCを切り裂いていく。だが、4連撃目は相手の盾で受け止められてしまった。
「まだ倒れないのかよ!」
「……焦りは禁物ですわ」
 相手のタフネスに驚くシャムへ、コレットがそう言う。ここで冷静さを失っては、相手につけ込まれるかも知れない。
「『スキュラフレイム』!」
「『エンブレムノヴァ』!」
 コレットとニクスが連続してモンスターに攻撃を放った。確実に体力を削ることが、結局は一番早く敵を倒すことになる。
「これでどうなぁ〜ん!」
 テフテフが『ブラックフレイム』を叩き付けた時、モンスターの動きが止まる。相手とて無限の体力を持っているわけではないのだ。
 コガラシはその機を逃さなかった。
「沈め! メイドガイ超電ドリルキーック!」
 振り下ろされた足が光の軌跡を描いて、モンスターを地面に叩き付ける。そのまま、モンスターは二度と立ち上がって来ることはなかった。

 1体を倒せば、パワーバランスは変わる。コガラシ達はそのまま、苦戦していたアルタ達の援護に回った。援護を受けたことで、ナミも『デストロイブレード』などで積極的に攻撃を仕掛ける事が出来た。
(「12人も居るんだ、誰かが誰かをお互いにフォローする戦いが出来る筈だ」)
 ナミの思うとおり、連携を駆使して戦いは一気に進む。モンスターAを倒し、モンスターBも護衛士達の総攻撃で沈んでいった。城壁班の目的は達成されたのだ。

「あとは潜入班が戻ってくるまで、通用口の確保じゃな」
 ローザの言葉を受け、ヨハンが敵の亡骸と周辺をざっと見て鍵を探す。だが、近くに鍵は見あたらなかった。時間が無いので、アルタが『大地斬』を使って扉を破壊する。

 潜入班が城内へ入ったのを見届けて、城壁班は周辺を確認した。幸いにすぐには他のモンスターからの襲撃が無かったので、護衛士達は門番のモンスターの身元を改め、霊査に使えそうな物を回収する。だが、埋葬する余裕はなかったので、亡骸は邪魔にならないところへ移動させることにした。
(「モンスターになっても、門を守ると言う使命を守ってたなんて、元は立派な冒険者だったんだろうね……。“もしも”の事は考えても意味がないけど、ソルレオンと話してみたかった……」)
 そう思いながら、ニクスは黙祷を捧げる。他の護衛士達も、それぞれの思いを胸に冥福を祈った。
 引き続き、少しでも潜入班の退路を安全にするために、城壁班は出来うる限り周辺の敵の撃破を行った。
 と、突然ユナンが声を上げる。
「今、トランペットの音が聞こえたぞ!」
 それは、城下町班の撤退の合図だった。ローザは改めて戦力の確認を行う。
「どちらに転んでもそろそろ時間じゃな。撤収の準備を始めるぞ!」
 奮闘のお陰で辺りのモンスターはかなり減っていた。だが、これ以上戦いを続けると、逆に敵を引き寄せ、押し切られるかも知れない。
 準備を終え、ユナンが呼び子を吹く。城壁班の撤退の合図である。
「では、抱えて逃げてくださいませ」
 コレットが残っていた敵へ『暗黒縛鎖』を放ち、城壁班はそこから撤退した。


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