≪南の翼ウィアトルノ≫青い道を往く



<オープニング>


 ワイルドファイア大会議が決定してからはや数日。会議の会場は勿論、マティエ達の国である。大怪獣っぽい情報を持ち帰った護衛士達の話を聞き、重傷者に安静にするようにと伝えて、ミニュイは拠点の床の上へと座りこんだ。

「最終的には、グレスターを動かす為に、あっちで踊ったりする訳よね……」
 ううう〜ん、と考えるミニュイ。
「事前に挨拶に行った方が良いわよね……場所の確認もしたいし……」
 そこまで呟くと、目の前の3人に視線を戻した。
「そういう訳で、聖獣さんに挨拶に伺いたいのだけれど──案内してくれるわよね?」
「ほわ? ミニュイが行くですか?」
 首を傾げたマティエに、ミニュイは頷いた。
「ええと、あの、一応、じゃなくて、ちゃんと団長だしね……」
 まあ、普段拠点やランドアースでごろごろしている分、こんな時くらい働かなくては嘘である。
「う〜ん、いいけどさ。聖獣のおっちゃん、怖いぜ〜……それに、ミニュイは俺達について来れるつもりなのか?」
「えええ〜。待ってくれないの?」
 困り顔のミニュイに、仕方ねえなあ、と呟くオプレイ。お菓子沢山持って行くの〜、とロロテアが笑った。

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参加者
天舞光翼の巫女姫・ミライ(a00135)
銀槍のお気楽娘・シルファ(a00251)
疵痕ハ古ノ魔獣ノ呪・ライガ(a01557)
灰眠虎・ロアン(a03190)
蒼氷の忍匠・パーク(a04979)
魔戒の疾風・ワスプ(a08884)
宵闇月虹・シス(a10844)
蒼炎超速猛虎・グレンデル(a13132)
暴れノソリン・タニア(a19371)
白翼の騎士・レミル(a19960)
翠の賢帝・クリスティン(a26061)
天まで届く青空・セルリアン(a35913)
NPC:霽月の霊査士・ミニュイ(a90031)



<リプレイ>


 青い道は大陸の西端、山岳の中をひっそりと走る小さな道である。恐らく、プーカの中でも知っている者は少ない、そんな道であった。
「青い道…名前の通り、綺麗ですね」
 宵闇月虹・シス(a10844)は呟いてそっと、天井に目を凝らす。僅かに発光する苔が、静かに青い光で道を照らしていた。
「でだ、ミニュイ団長は誰が運ぶんだー? 誰もいないんだったら、俺が背負子をつけて、お運びしちゃうぞー」
 小さく首を傾げながら、青の記憶・セルリアン(a35913)が尋ねたが、ミニュイ自身がその答えに、首を振った。
「中はどのくらい狭くなるのか想像もつかないし、気持ちだけ貰っておくわ。──足が動かなくなったら背負ってもらうかもしれないけれど」
 そう言って、少し笑った。
「ケガしててもミニュイの事ぐらい守れるからなっ」
 灰眠虎・ロアン(a03190)は包帯が見えないようにぐいぐいと押し込んだ。

「道は一本道だからな。逸れたら、前に進め」
 先頭を往くオプレイの声が至近に響く。先を進むにつれ、微弱な青に慣れた目が、しっかりと往く道を捉えられるようになっていった。
「……色々あるけど、オレたちがしなくちゃいけないのは前に進む事だもんな」
 そっと左右から迫る壁に両手を押し当てながら、ロアンが口を開いた。前へ進みながら、時々腕を額の上へ上げて、天井の高さを確かめる。
「…………」
 天井まで、手が届くのが嬉しいらしかった。
 一方──ゴン、と時折鈍い音を響かせて、前へ進むのは蒼炎超速猛虎・グレンデル(a13132)。
「裸足で歩けるなら、ブーツは脱いでいくか」
 10cmもあるヒールを脱いで、荷物に纏めると、ぎりぎり天井に届くかどうか、という程度へ落ち着いた。
「170がぶつけるかどうかのラインだな……」
 首を倒して歩く魔戒の疾風・ワスプ(a08884)が呟くと、そのようですね、と白翼の騎士・レミル(a19960)もやはり首を竦めながら頷いた。気を抜くと、直ぐに天井へぶつけてしまうようだ。
「………………すぐにぶつけられるほど大きくなってやるー!」
 快適に歩いていた蒼氷の忍匠・パーク(a04979)は、トンネル中に響くような声でそう、叫んでやった。

 途中、いくつか見られた広場での休憩、休息を挟んで、シス達は進んでいた。皆それぞれ持参した簡単なお弁当をつつき終えると、翠の賢帝・クリスティン(a26061)や天舞光翼の巫女姫・ミライ(a00135)が、疲れを取れるようにと、甘いお菓子を振る舞ってくれた。シスもお菓子にあわせて皆にお茶を注いでやる。
「プーカさんの聖獣さん……どんな方なのかなぁ?」
 ミライのガトーショコラを齧りながら、銀槍のお気楽娘・シルファ(a00251)がマティエに言葉を向けた。これまでにも、聖獣のおっちゃん、すごく恐い、すごく強い、と具体的でない話はいくつも耳に挿んで来たが、しっかりと話してくれた事はまだ、無いのだ。
「聖獣様との話に獣達の歌は必要なぁ〜ん? ……必要なさそうなぁ〜んね。聖獣様って、強いなぁ〜ん?」
 シルファや暴れノソリン・タニア(a19371)の言葉に、マティエは一度目を瞑ると、頷いた。
「大きい様は、とっても大きくて、それから、とっても凄い方なのです」
「とっても強くて、それから、物凄ぇ、恐いおっちゃんだぜ」
「ふかふかなの〜」
 答えを聞いて、レミルや黒耀天剣・ライガ(a01557)は小さく頷いた。
「そうか──大きくて、凄くて強くてふかふかか……」
 実はプーカ達と言葉をかわしたのは今が初めてである。3人の答えを総合してみると……全く想像がつかない。レミルも困ったように首を傾げてみせた。3人の語彙の問題があるのだろうが──実際に会うのが、理解を深める早道なのだろう。
「任務ほっぽりだして、(少なくとも)1ヶ月イタズラ三昧に興じてれば、そりゃ怒られて当然だと思うな」
 ぽそり、と呟いたパークに、ミニュイは少し笑うと、そろそろ行きましょう、と立ち上がった。

 安全な道、の言葉通り、トンネル内を安全に通行出来たタニア達は、幾日かの道程の後、漸く白い日差しを瞳に映すのだった。
「さ〜て、いよいよプーカの聖獣と御対面か、楽しみだぜ!」
 地図に、トンネルの道程を書き入れていたタニアの隣で、ワスプが声をあげる。
「少しでも謎の解明に繋がればよいのですが……」
 呟いたクリスティンに頷くと、ミニュイはマティエ達へと、改めて案内をお願いした。


 トンネルを出てから、さらに山肌を幾日か進むと、周囲は緑の森に包まれた。濃い緑の生い茂る森は、頭上からの光をあちこちに跳ね返し、歩く道を示すように足下に複雑な模様をいくつも刻んでいた。
「聖獣に会う前に村を散策したいな……どんな生活をしているか気になるし、うまい酒があれば相伴に預かりたいからな」
 グレンデルが、木漏れ日に手をかざしながらそう言った。
「オレも、プーカの人達とあんまりしゃっべったこと無いから色々聞いてみたいなー。どんな事して遊ぶのかとか、どんなかっこいいものがあるのかとかー。……異文化交流って奴だよなー?」
 セルリアンがにこにことそう言うと、ロアンも一緒に頷いた。
「……この森から、プーカの森ですよ?」
 マティエは言って、皆へとにっこり笑った。
 プーカ達には村も家もない。食べ物はそこら中に果物が実っているし、それに、木の上で眠れば、夜も安全だった。
「聖獣さん、ついにお会いできるのですね……え? ──きゃっ…!」
 突然、右足で踏みしめた筈の地面が沈み、思わずシスが声を上げた。同時に、森の向こうから、くすくす、くすくす、と小さな子供達の笑い声が聞こえたような気がする。ミライが慌ててシスに駆け寄った。
「一応、周囲を警戒したほうが良さそうだな──どっから奇襲(悪戯)を受けるか判らないしな」
 ずっぽりと、脹ら脛まで埋もれたシスの右足を見つめて、ワスプが神妙に頷いた。
「聖域まではまだかかりそうなぁ〜ん?」
 タニアが尋ねると、マティエは頷いた。あともう幾刻程歩けば着くらしい。
「領域に辿り着いたら、まずは全員で身だしなみを整えましょうか?」
 クリスティンの言葉に、シルファが首をかしげる。
「武器も外した方が良いのかなぁ? 先ずは丁寧にご挨拶だよねぇ?」
「……マティエ達が預かってくれるってさ。謁見か……今更ながらすっげえ緊張してるぜ」
 ライガの言葉に、レミルも頷いた。
「……噂に聞く聖獣さんと言うのはどのような方なんでしょうね。楽しみではありますけど……ちょっと緊張します」
 ワスプは漆黒の刃とマティエ達の顔を交互に見つめてから、顔を上げた。
「失くしたら両のほっぺ摘んでどこまで伸びるかの刑な」
 パークと同じく、聖獣が恐いのは、プーカ達がイタズラばかりしているせいじゃないかとワスプは思っていたのだった。


 森を進んだ向こうで、一頭の巨大な獣がライガ達を待ち構えていた。
「このおっきな犬みたいなのが、聖獣のおっちゃんなのかー?」
 聞いたセルリアンに、しーっとレミルが唇に指を当てる。聖獣は、太い四肢を伸ばし、ゆっくりと大きな頭を上げた。
「はじめまして」
 ミニュイが前へ進み出ると、大きな瞳の奥で優しい光が瞬いたような気がした。
「ようこそ、お客人。今日は私が代表で話をしよう──マティエ達もご苦労だった」
 顔を上げ、口を開くと低い、静かな口調が響く。マティエ達は小さく礼をすると、向こうに言っていると告げて、奥へ引っ込んでしまう。
 彼がマティエ達の言う、聖獣の『大きい様』である事は間違いないようであった。

 ミニュイは先ず自分たちウィアトルノの説明を終えると、シス達を簡単に紹介してから、これまでの経緯を簡単に話しだす。
 自分たちが、ランドアースから来たのだと言う事。マリンキングボスやグレスターの話、マティエ達との出会い、それから大怪獣の話。
 シルファやミライ、パーク達が順番に要点をまとめて話を進めると、聖獣は黙って耳を傾けてくれた。
「オレはな、オレはなセルリアンっていうんだー。おっちゃんの名前はー?」
「普段は『大きい様』等と呼ばれているな」
 等と、なかなか友好的ある。
 パークの話すマティエ達の話には少々笑いながらも、「これほど早く戻ってくるとは思わなかった」と感想を伝える聖獣に、パークは、なら一体どれくらいかかると思っていたのかと尋ねると、「数年……いや、十何年はかかるだろうと思っていた」と言って頷いた。寄り道は、計算のうちだったらしい、と知ってパークは静かに頷いた。
 大怪獣についても、ウィアトルノでの調査が告げられると、聖獣は、「そうか」と言って目を閉じた。実際に調査に赴いたタニアや、調査を纏めたシスが要所を纏めて報告を終えた。
「いくつか聖獣様に質問をさせていただきたく思います。お答えいただける範囲でかまいませんので……」
 こちらにも良く分からない事ばかりなのだと、クリスティンが言うと、聖獣は良かろう、と頷いてくれた。
「あの黒いタマと拳で語ってみたなぁ〜ん。なんかどっかーん、ざっぱーんで凄かったなぁ〜ん。2度とやりたくないなぁ〜ん」
「勝手に触っちゃった事は──えと、ごめんなさい」
 タニアとロアンが、先ず、先日の調査からの質問を口にした。
「あれが大怪獣ヴリモガーンなぁ〜ん?」
「私達が見てきた黒い半球と長い巨大な棒状のモノが、大怪獣なのでしょうか?」
 皆が思っていた疑問を、タニアと、ミライが口にする。
「そうでありそうではない。大大怪獣はお前達が考えているよりもより偉大な存在だ」
 聖獣は頷くと後を続ける。
「また、大大怪獣には名前は無い。あえて呼ぶならば、大大怪獣ワイルドファイアと呼ぶべきだろう」
 聖獣の答えに、ミライは小さく首をかしげた。
「大怪獣はワイルドファイアにとってどういう存在なのですか?」
「大怪獣と称された存在はこのワイルドファイア大陸のものなのでしょうか?」
 ミライと一緒に、クリスティンが口を開いた。
「大大怪獣なくしてワイルドファイアはあらず。ワイルドファイアなくして大大怪獣もまたあらず」
 その答えに、ロアンはう〜ん、とひとつ頷いた。
「あれが大怪獣なら、まだ眠っているなら、覚めた時に何が起きるんだろう?」
「大大怪獣はワイルドファイアを滅ぼすだけの力を持っている。しかし、それが使われた事は未だ無い。それは、空と大地と海と人とが、大大怪獣と楽しみをわかちあう事ができたからだろう」
 良く、分からない。ロアンは言葉を続ける。もう一つ、気になっていた事だ。
「聖獣さんは何でその事を知っていたのかな?」
「そうそう、大怪獣の出現をどうやって聖獣ってのが知ったかって事だよな」
 ライガやクリスティンも気になっていたらしい。思わず声をあげた。
「知るべき事を知っているからこそ聖獣と呼ばれている」
 聖獣の大きな瞳には深淵なる叡智が見て取れた。
「そういえば、リザードマン領では──」
 岩棚の怪獣、大陸西でも何かが起こっている。ワスプは怪獣の動きが活発になっている事を聖獣へ報告した。
「大陸中の怪獣が最近何かを目指している様に移動してるみたいなんだ。この事も大怪獣と何か関係あるのかな?」
 ロアンが後を続けると、聖獣は深く頷く。
「大大怪獣の目覚めに、多くの怪獣が喜んでおるのだろう」
 喜んでいるのですか、と、レミルは少しだけ首を傾げながら、口を開いた。
「大怪獣について、プーカの中で語られている話等あるのでしょうか?」
「過去にも大怪獣が暴れていたのでしょうか? もしそうならどうやって退治──封印したのですか?」
 ミライが後を続けると、聖獣は目を細めた。
「語られるのではない、知っているのだ。大大怪獣は退治するものにあらず。大大怪獣を失えばワイルドファイアもまた失われるだろう」


「大会議については現在ヒトノソリン・エルフ・ストライダー・リザードマンの代表をプーカ領に運んでいる最中です」
 大怪獣についての質疑が終わると、グレスターを利用して、大会議の準備が整っている事がレミルや、シルファ達によって伝えられた。
「グレスターは一人じゃ動かねぇ。踊るヤツ、槍を運ぶヤツ、全員の力が揃って、初めてグレスターは動くんだ」
 熱く語るグレンデルの言葉に、聖獣は静かに耳を傾ける。
「これが、今まで通ってきたところなぁ〜ん。ここがヒトノソリンの住処で、ここがストライダーの住処で、ここがエルフの住処で、ここがリザードマンの住処なぁ〜ん」
 タニアは地図を広げて、聖獣へと説明をする。
「それぞれの代表がここに来る手はずは整っているなぁ〜ん。他に声をかけるべき種族は知っているなぁ〜ん?」
「うむ。これで全てであろう」
 聖獣は頷き、森に被害を与えない場所になら、グレスターを停める事も許可すると、そう伝えた。
「良い設置場所はあるかなぁ?」
 シルファは首をかしげてみせる。
「グレスターとやらについては良く分からぬ。お前達の良いようにするが良い。人手が居るならば、言葉次第で子供達が協力してくれるだろう」

「そういえば、さっき10年くらいかかるものと思っていた、とあったが──」
 ワスプはマティエ達の事を言っていた聖獣の言葉を思い出す。
「プーカは年を取らないのか?」
「プーカは心の成長に伴って成長する──中にはずっと子供のまま過ごす者もおるくらいだな」
「あ、それと……宜しいでしょうか?」
 シスは聖獣が頷くのを見て、言葉を続けた。
「何故、マティエさん達がお使いに向かわれたのでしょうか? ……お三方にお会いできたことは勿論とても嬉しいのですよ。ただ、どうして大人の方でなく彼らなのかな、という単純な疑問です」
「聖獣は、聖域を出る事は叶わないのだ。マティエ達、彼らは勇者だ……プーカ達の中では特に責任感が強い者達が選ばれたのだ」
 『あれで』という言葉を飲み込んで、パークがへー、と声を上げた。ミライも思い出したように、質問を続ける。
「聖獣さんは、ワイルドファイアにとってどういう存在ですか?」
「我々はこの聖域を守る者である」
「それから……どのくらい生きていらっしゃるのでしょうか?」
「我々は、時に大しては不死である──」
 ドリアッドや、セイレーン達と同じような物であるらしかった。
「もうひとつ、良いですか?」
 パークは一歩、前に出る。
「同盟の事については理解して頂けたと思いますが、プーカの皆さんにも、同盟に参加する、という選択肢はありませんか?」
「………プーカの聖域はプーカの物である」
 プーカの聖獣はプーカの聖域にしか住めないのだという。
 グリモアを共有出来るという話が本当だとして、聖域を共有した後、聖獣が今迄通り、ここに住めるのかどうか。
 聖獣の問いかけに、誰にも答えられなかった。
「それから……シハーブという男がここへ来たと思うんだが」
 ワスプの言葉に聖獣は頷く。
「彼はどこへ?」
「彼は既に旅立った」
 答えは簡潔だった。
 その後、タニアの持つメダルや(知らないそうである)細々とした質問が続けられた。
「まだあるのか?」
「最後に一つ」
 グレンデルが顔を上げた。
「もし、ワイルドファイアが戦火に包まれた時、あんた自身も戦いに出るのかい?」
「戦火だと? ──そのようなワイルドファイアは、大大怪獣によって滅ぼされてしまうべきだろう」


 面会を終え、グレスター到着点の下見を許されたレミル達は、プーカの森の周囲を散策に出かける事になった。
「なるべく環境への影響が少なくなる様なルート取りにしたいけどな……」
 急ぐのなら、贅沢は言えない。中継点を取るつもりだったワスプだが、実際山岳を挟んで移動させる事を考えると、山間部にグレスターを呼ぶのは難しいように思えた。
「でも……本当に、ただ森なんですね」
 歩きながら、シスが笑う。言われなければ、知っていなければ、ここにプーカ達が住むとは思えなかった。家も、村も無い。森が彼らの住処なのだ。
 時折、森の緑に混ざって赤い髪の子供が後をつけてくるような気配する。くすり、と笑ってミライやセルリアンが手招きすると、わさわさっと、7、8人が集まってくる。
「ちょっと待ってなんだよぅ」
 ごそごそ、とシルファが荷物の中から、甘いガラスの実を取り出すと、プーカの子達はわたわたっと手を出した。クリスティンも残っていた菓子を取り出した。
「食い過ぎるんじゃねぇぞ!」
 手持ちの実を全部あげたグレンデルが、声を上げる。
「皆で食べたら、きっと美味しいよねぇ?」
 シルファの言葉に、ロアンもにっこりと笑った。

 どのくらい歩いただろうか。空を覆う濃い木々の間に、突然開かれた視界に、クリスティンは瞬いた。
「………この辺りは、木の生長が遅いのでしょうか?」
 パーク達は森の端をぐるりと切り取ったように、大きく開けた広場のような場所に突き当たった。タニアが導きの翼を手に取ると、グレスターの進行に丁度良い程に、南へと空が開かれていた。
「ここに、グレスターを呼ぶのはどうかなぁ〜ん」
 なんだか誂えたような広場に、いいんじゃないか、とライガも頷く。
「ここに、こう槍をさして──グレスターの操作で踊りまくるってのをどうやって説明したらいいものかな」
 今度の移動には、プーカ達にも踊りを手伝ってもらわなければならないだろう。そう言って顔を上げたライガの脇に視線を遣ったシルファが口を丸くあける。
「あれは、槍? 槍だよねぇ?」
 シルファの指差した方角、広場の真ん中に見慣れた槍が地面に刺さっているのが見える。驚いて、ミライが駆け寄ると、背後から子供の声が聞こえた。
「それ、触っちゃ駄目なんだぞ!」
「大きい様に怒られるんだぞ!」
 え? とミニュイが振り返ると、見知らぬプーカの子供が二人──きっとミニュイ達の後を尾けていたのだろう。
「どうして触ってはいけないのですか?」
 優しく、シスが話しかけてみた。
「それは『ワレワレノテニスルモノデハナイ』なんだぞ!」
 良く知らされてはいないが、触ってはいけないと教えられているらしい。
「でも……これは」
 汚れてはいるが、たしかにグレスターの槍と同じ物だ。グレンデルは槍を手に取った。
「あああ! 大きい様に怒られるんだぞー!」
「だぞー!」
 二人は驚いたように森の奥へと逃げてしまった。
「槍がもう一本あった、という事かしら……うん。これは同じ物のようね」
 ミニュイは槍に触れて、目を閉じる。
「折角だから、これを利用させて貰いましょう」
 槍がここにある事。ムムティル国へグレスターが到着したら、直ぐに出発出来る事。
「踊りは、プーカの皆さんに手伝ってもらうとして、プーカさん達を集める係と、伝令の係とに手分けしたいと思うわ」
「踊りの手伝いはお願いしとかないとな!」
 そう言ったロアンに頷きながら、あの道を往くのなら、伝令には4人居れば十分かしら、とミニュイは考えた。
 大会議まで、もう一息であった。


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