≪緑翠館≫【伝説の果実】ミドリノカジツ



<オープニング>


「伝説の野菜を探しに行くっすよ〜♪」
 緑の記憶・リョク(a21145)がそこそこ古い宝の地図を手に、緑翠館のダイニングで3回目の呼びかけを行った。
「へぇ、どれどれ……」
 地図を覗きこむ南国の太陽・オープスト(a90175)。
 地図はどこかの森で、巨大な井戸らしきものが書かれている。その井戸からまっすぐ下に筒状に線が下ろされ、筒を這うように、螺旋をイメージさせる細かく角張った線が取り巻いていた。恐らく階段だろう。その筒の一番下には翼を広げた鳥と、ブドウの房のような絵が描かれ、ブドウの絵の脇にはミドリノカジツと記されていた。
「ミドリノカジツ?」
「そうっす。伝説の果実、ミドリノカジツっす。緑ならアオジルにぴったしっす。絶対に手に入れるっす!」
 おお、燃えている。ダイニングにいた団員は皆そう思った。そしてもはや止める事はできないであろうとも。
「(ところでよ。アオジルにするって言ってるの止めなくてもいいのか?)」
「(これってマスカットとは違うの? アオジルにしたところでそんな凄いのができるとは思えないけど)」
「(マスカットならマスカットと書かないか?)」
 ひそひそと話し合う旅団員たち。色々思惑も山盛りてんこもりだ。
「この森の場所って分かってるのか?」
「それはばっちりっす。ドリアッド領の村の近くだそうっす。地図屋の店長が教えてくれたっす」
「そうか、判ってるのか。んじゃいっちょ行って見っか。見つけたら一粒味見させてくれ」
 オープストがデザートのブドウを一粒、房からもぎながら言った。

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参加者
猫風仔・クッキー(a06505)
鰐娘・ジョディ(a07575)
梅を愛で鶯を慈しむ者・ウィード(a16252)
碧想の永遠花・ラリィ(a19295)
碧緑に燃え上がる剛拳士・ガルティア(a19713)
畑裏の女王・スリート(a20042)
緑の記憶・リョク(a21145)
銀の剣・ヨハン(a21564)
夜天を切り裂く銀闇の剣・アス(a21807)
ポセイ首領・ボルジャック(a37012)
向かい風の・レンガ(a37591)
青磁の華・レラ(a40515)
青藍の萼・ガイ(a42066)
アベノ・メディックス(a49188)
NPC:南国の太陽・オープスト(a90175)



<リプレイ>

●突撃隣の昼ご飯
 宝の地図が示す場所を目指し、緑翠館の勇士達はドリアッドの森を歩いていた。人を迷わすドリアッドの森の力も、ドリアッドである碧翠風華・レラ(a40515)と棘戯曲マリオネッタ・ラリィ(a19295)が地図を見ながら案内をする事で、迷いの力が一同を妨害する事は無かった。誰かが脱落する事もなく、恐らく順調に目的地を目指して進んでいるはずだ。
「そろそろお弁当にするっす♪」
 薄暗い森を歩いている中、丁度上手い具合に大きな陽だまりが出来ている場所を見つけ、団長の緑の記憶・リョク(a21145)が食事を提案する。日も大分高い事もあり、全員が賛同して思い思いの場所に腰掛け、弁当の包みを広げていた。
 畑裏の女王・スリート(a20042)は水筒からアオジルを蓋兼カップに注ぎ、おっきい焼き魚にぱくつく。シンプルイズベスト。あっという間に焼き魚を平らげたものの、まだ物足りなかった。少しシンプルすぎたのかもしれない。そこで彼女は、他の仲間がどんな弁当を食べているのか、マイフォーク片手に立ち上がった。

「葡萄みたいで緑色……って、やっぱりマスカットだと思うんですケド……。あ、でも普通に考えたら、腐ると思うし」
「野菜や果物じゃないほうが、俺は助かるんだが。野菜や果物だと……いろいろ作成されるだろうし。アオジルとかアオジルとか」
 探索隊メンバー15人の枠組みの中で、純粋なカップルは2組。そのうちの一組であるレラと碧翠の護り手・ガイ(a42066)の空間をスリートは覗き見た。
 お茶とおにぎり、お惣菜。おにぎりの具は梅、おかか、野沢菜だが、外からは当然わからない。慣れていないからか、形は少し不揃いである。
「料理が上手な人うらやましいなぁ……」
 そう呟くレラの視線は、料理が趣味の碧緑に燃え上がる剛拳士・ガルティア(a19713)やポセイ首領・ボルジャック(a37012)に向けられていた。
「そのうち上手く作れるようになるだろ。味自体は悪くないんだし、レラの場合は慣れの問題だと思う」
「そうですか?」
 ガイの言葉に、レラは微笑みで返した。
 幸せオーラ一杯の二人に、スリートは頂戴する前からご馳走様とばかりに、別の組の所に向かった。

「やっぱり森は良いですねーv」
 もう一組のカップルは婚約者の間柄であるラリィと蒼氷に封じられし銀月の陽炎・アス(a21807)。
 こちらは両者共に弁当を用意しており、ラリィはサンドイッチ、アスは握り飯である。
「今回こそは伝説の果物だといいですね」
「ああ。先の2枚は果物じゃなかったしな。あ〜でも、これ以上アオジルが妙な進化するのを見たくねぇからなぁ」
 果物であって欲しい気持ちと、違って欲しい気持ちが入り混じり、アスは複雑な表情である。
「あらあら、そのおにぎり、量があまっているんじゃないですか?」
 会話のラブ度が低いうちに、スリートはいざ突撃を開始した。
「スリートか。みんなに配る為に多めに作ったんだ。どれか一つ摘んでくれ」
「あらあら良く出来た旦那様です事。ラリィさん将来大助かりね」
 早速ひょいと摘んでぱくっと食べるスリート。
「あぁ! 言い忘れてだけど、一個、激辛ワサビツナマヨが入ってるから」
『ファイアー!!』
「……って遅かったか」
 スリート、撃沈。

「まぁ食え、やれ食え。飯だぞ飯」
 ガルティアの前には、野菜、豆、穀物で出来た豪勢な料理が並べられていた。中には氷豆腐など、肉を食べないリョクと肉食いの面々の事を考えられた歯ごたえある料理も用意されている。カップル以外の大半のメンバーは、ガルティアを中心に派生する輪の中にいた。
「いただきますなのね」
「負けませんよ、クッキーさん。レンガさんも、負けずに参りましょう」
「え。負けるって?」
 猫風仔・クッキー(a06505)と銀の剣・ヨハン(a21564)が人知を超えかねない勢いで食べに入る。それを唖然と見つめる刻むべき向かい風・レンガ(a37591)。量は頭数を遥かに超えて調理されていたが、余す所なく消化されるだろう。ちなみに二人が際立っているだけであり、大ぐらいの面子は彼らだけではない。作った本人も5人前は軽く食べる。
「いやはや、美味しいのですね、やはり筋肉は伊達ではないのですね♪」
 梅を愛で鶯を慈しむ者・ウィード(a16252)はゆっくり味わいながら食べ、アオジルを喉に流しつつ、ぺちぺちとガルティアの肩や腕を叩いた。尚、料理の腕と筋肉の因果関係は解明されていない。いないが、一行の中で特に料理に長けた者が全員、ボルジャックやリョクを含めた筋肉隊のメンバーである事から、ウィードの中の理論はあながち間違いとは言い切れない。
「館長も夜なべして作ってきたっす。ほ〜らクッキー、果物もいっぱいあるっすよ〜」
「はぅなのぉ〜ん」
 リョクの料理は見事に野菜と果物オンリー。ドリンクはアオジルである。クッキーは喜びのニードルスピアを虚空に撒き散らしつつ、様々な料理に手を付ける。
「そう言えば、命の抱擁の心得とかあるのでしょうか。最近獲物……げふんげふん、もとい患者に逃げられましてね……」
「そうだな……より愛を込めた笑みを湛えてみるというのはどうだ」
 溜息と共に南国の太陽・オープスト(a90175)に相談を持ちかけるヨハン。そこに、ボルジャックが愛を湛えた笑みと共に弁当箱をドンと置いた。
「わしも弁当を提供しようかのう。皆も遠慮せんと食べるのだぞ? めいっぱい詰めてきたからな!」
 ドン、とボルジャックが弁当の蓋を開けると、そこにはワカメが。ボルジャックの主食はワカメらしく、ワカメしか入っていない。そしてその食事の裏に込められたメッセージは、あえて誰も読まなかった。読めないのではなく読まない点に注意。上か下か、実は含意なしのかもしれないが、とりあえず毛染め使用者のオープストは心の中で涙した。

 輪の中でアベノ・メディックス(a49188)は道中拾った木の実を食べていた。普段フルフェイスヘルメットの彼女の素顔が気になるのか、ヨハンはボルジャックの筋肉座談会の渦中にいる中においても彼女の素顔を窺おうとしていたが、メディックスの前の食事量は明らかに消費されていたものの、彼女の素顔を見る事は叶わなかった。
 メディックスが次の実に手を伸ばそうとした時、ふと鰐娘・ジョディ(a07575)の弁当が目に入り、驚いた。
「あのその、オープストさん、よかったらお弁当とかどうでしょう。調子に乗って作りすぎちゃったので、夏の日差しで悪くなる前に食べてもらえると嬉しいなーとか」
 茹でた野菜、ご飯、そこまでは他のメンバーとあまり変わらないのだが、ハチノコ醤油炒め、イナゴの佃煮のふりかけと虫料理が続く。ちなみにメディックスが驚きを顔に出しても、フェイスガードの表には表れていない。
「虫で無理でないなら、あのその……」
 中身を見てオープストは一瞬手が止まった。遠慮がちに勧めるジョディ。オープストはすぐに何事も無かったかのようにハチノコをとって口にした。
「ハチノコってなんていうか、効くって感じだな。美味しかったよ」
 その感想は、料理の感想というよりは栄養剤の感想であったそうな。

「さて、食事も終わったし、そろそろ進むっすよ」
 腹も膨れ、スリートも復帰した所で、再び進むお宝ハンター達。
 程なくして、巨大井戸のような石造りの穴が、一行の前に姿を見せた。

●井戸の底の宝
「中々に深そうであるな」
 メディックスは、内側の螺旋階段を降りながら感想を述べた。
 真昼間でなければまっすぐ太陽の光が底まで届かないのか、底は薄暗い影になっている。その中で、ちらりと薄緑色の光と何かの彫像が見えた。
 螺旋階段の幅は大人1人分しかなく、一行は一列になって階段を降りていく。そしてある程度降りた時の事。
「鳥が羽ばたく音が……下からか?」
 ガイが下を確認しようと階段の淵に立った瞬間、下から風が吹き上がった。髪が乱れ舞い、落ち着いた時。螺旋階段の吹き抜け中央に、石造りの隼が空中に留まって冒険者達に頭を向けていた。
「はわ、モンスターなのね!?」
「下の彫像か!」
 急いで武器を構える冒険者達。互いにまだ距離があり、弓や離れている場所に届く力でなければ攻撃できない間合いだ。
 メディックスはスリートに、アスはラリィに君を守ると誓うを施すべく、誓いの言葉を述べ、そっと相手の手の甲に手の平を重ねた。それは女王への忠誠か、はたまた愛の証か。
 他の冒険者も補助術で己の能力を上げる中、攻撃が可能な者は先にその術を行使した。炎が渦巻き矢が放たれ、旋律が襲い狼が喰らいつく。それらを受け止めつつも、モンスターは激しく翼をはためかせると、立ってはいられない程の突風が吹き荒れた。井戸の壁に体が押し付けられたり、段を転げ落とされそうになる冒険者達。
「わぁあ!」
 ファナティックソングで恍惚となっているところを突風に煽られ、ウィードが階段から転げ吹き抜けに向かって落ちた。ゴリッという痛そうな音がしたが、音の発生源は近い。
「階段で戦うより、底の安定した足場で戦ったほうがいいんじゃないでしょうか」
「あれ? 良く考えたら底に落ちても傷が浅くて、普通に動けるんだったら「ミドリノカジツ」を取ってこれるんじゃ……?」
 応戦が続く中でのジョディの提案とレラの真理。どうするか悩む間にモンスターはガイ目掛けて襲ってきた。足場が自由にならない為避ける事は難しく、盾で爪の一撃を受け止めるが、それでも結構な衝撃が体に伝わる。
「このっ!」
 最初の集中攻撃で相手は弱っているのではないか。そう思いつつスリートが目にも止まらぬ速さで蹴りを入れるが、モンスターはそれを僅差で回避。え? という驚きと共にスリートもまた吹き抜けへダイブ。
「きゃぁあ! ぃて! ってあれ? みんな! そんなに深くない、いけるよ!」
 それを聞いて一斉に飛び出す面々。熟練の冒険者にとって底までの跳躍は殆ど問題ない距離まで実は降りていたらしい。
「皆さん大丈夫ですか」
 着地と共にラリィのヒーリングウェーブが皆の細かい傷を癒す。唯一目を回して倒れているウィードだけが心配だったが、それは目の前の危険を排除してからにしようと彼女は地上を見上げた。大丈夫、オープストさんに任せておけば。
 飛び降りた冒険者を追って迫るモンスター。
「コノヤロー三枚におろしてくれらぁ!」
 レンガがミラージュアタックで二本のサーベルを振り回している中、ボルジャックの目が光る。呼応してリョク、ヨハン、ガルティアの3人がカットイン。
「皆の衆、いくぞ!」
「出番すよボルジャック! 筋肉隊奥義『ボルジャック零戦一号』っす!」
「ってええ、ホントにやるんですか? ボルジャックさん、お達者で……!」
「いヨォォォォォッッしッ!! 筋肉隊、レディィィィィッ!! ゴォォォオオオオォオォオッ!!!」
 別れの涙と共に施されるヨハンからの贈り物がボルジャックの耐久性を上げ、リョクの勇者に捧げる祝福がまるでグリモアエフェクトの如き輝きをボルジャックに与えた。
 ぶるんぶるんとガルティアがボルジャックの体をスイングし、回転の勢いが頂点に極まった所で肉弾の槍は放たれる!
「我輩の愛を受け取れぃ! 愛・超絶マッスルボンバー!!」
「華々しく散ってくるっすーーー!」
 ドッカーーーン!!!
 筋肉隊奥義の直撃を受けたモンスター。体表が一斉にひび割れ、そして音を立てて崩壊していった。きっと散る間際に真実の愛と友情を知ったに違いない。
「筋肉ドットコム!! 友情パワーに敵は無し! ガーハァッッ!!」
「まぁ、オレが居るからには当然だな……」
 ボルジャックの高笑いと共に、レンガは胸を張って勝利宣言をした。

「おい、クッキー、大丈夫か?」
「何、罠でもあったのか!?」
 オープストの声で何事かと振り向くと、そこにはミドリノカジツに喰らいついたまま体が硬直しているクッキーの姿があった。
 ミドリノカジツは確かにまるで皿に乗ったマスカットのような形をしていたが、道中レラが気にしていた通り、それは果物ではなかった。取り出して見ると、それは数珠状に繋がった沢山の緑の珠だったのだ。クッキーの事、事前情報からいきなり齧りついた可能性が高い。
 一方で目を回しているウィードだが、オープストがクッキーの看病に回るのと入れ替わりに、レラの命の抱擁で目を覚ました。
 しばらく虚空を見回して一言。
「ここは何処でわたしは誰でしたっけ?」
 ウィード、人生ン十回目の記憶喪失であった。

 沢山連なった緑の珠。それが地図に記された宝で、残念ながら伝説の果実ではなかったが、今日の記念に一行はそれを外して一つずつ手にしたのだった。


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