【おやびん】親分特急



<オープニング>


 おい、こびんっ。
 へい、なんすか、おやびん!
 いっちょ、使いっぱしられやがれっ。
 がってんだ!

 旦那旦那!
 霊査士の旦那!
 てーへんなんでやんす!
 ……あ、御無沙汰っす。
 御無沙汰っすけど感動の再開は後回しで……ってそんな、感動しねぇとか堅い事は言わねぇで下せぇよぅ〜。
 ととと、それどこじゃなくてですね、今日はちょいと急ぎなんでやんすよ!

 これ、先ずはこれ視ておくんなせえ。
 ささっ、ずいーっと。どーぞどーぞ。
 で。
 どすか?
 どっすか!?
 へ? 五月蝿い?
 ごもっとも。
 すいやせん……って、あっし毎回こればっかっすね!
 へい、黙ります。お口チャック。

 ……おおっと、そうだ!
 毎度のことで聴こえちまってるでしょうから、旦那が視てる間に、冒険者の姐さん兄さんに何があったかざざっと言っときやすね。
 実ぁですね、泥棒が出やがったんですよ!
 おやびんの仕事場に入るってーだけでも、大概ふてぇ野郎だってのに、野郎ときたら、おやびんが製作中の香を失敬していきやがったんっすよ!
 そらぁもう、おやびんもあっしらもカンカンで!
 そこであっしらがこう、ふん捕まえてこてんぱんに……や、してねぇっすよ?
 あ、いや、紛らわしくてすいやせん。
 いやほら、そんなことできりゃぁ言うことねぇんでやんすが、流石に出来やせんし、何しろ、野郎の足取りがさっぱり見当つかねぇもんで。
 へい、それで、不幸中の幸いってんですかね、こじ開けられちまった天井のささくれに、野郎の服の切れっぱしらしいもん見つけましてね、それを旦那に視て貰ってるって訳でさぁ。

 ……お、旦那。
 どっすか。野郎の足取り判りやしたか。
 へ、廃墟っすか。そこを隠れ家にしてやがるんすね?
 これが見取り図っすか。旦那、結構上手いっすね……って、これ大分でかくねぇですか? 屋敷跡っすかね。
 玄関がココで……すぐ広間、そっから真正面にまーっすぐ廊下で、両脇に部屋が、ひーふーみー……八つっすか。二階も同じ間取りですかね?
 にしても、随分縦に長ぇ間取りっすね。なんでまた……ええ!? これ、岩ン中の空洞に立ててあるんすか!
 ははーん、入口が狭いから守りやすいとか、そういう寸法でやんすね? 野郎、ただのお間抜けじゃぁねぇなぁ。
 っても、玄関一つなら、追い詰められるんじゃ……どっかに抜け道があるってことすかね? あ、そこまでは判らなかったっすか。相手より先に居場所見つけねぇと、不味そうっすね。
 罠なんかは……あ、そっすか。冒険者だったら嵌った所でどってことないっすか。でも、引っ掛ると相手に所在がバレちまうんでやんすね? まーったく、面倒な事考えやがって。
 相手は五人? そんなに多かぁねぇっすね。
 それでそれで、盗られちまった香の在り処ってのは、判りやせんかね?
 へ? 地下? 地下室が視えた?
 狭い……って事ぁ、物置きっすかね。盗品そこに溜め込んでやがるんすかね。
 で、それは何処から? 
 あ、視えたけど何処から繋がってるかは判んねぇんですか。残念。

 ……ってな、具合なんでやんすが。
 どうっすかね、冒険者の姐さん、兄さん。いっちょ引き受けちゃぁ貰えませんかね?

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参加者
アフロ凄杉・ベンジャミン(a07564)
風舞彩月・シリック(a09118)
眠らぬ車輪・ラードルフ(a10362)
食医の紋章術士・アルト(a11023)
麗滝の薬師・カレン(a17645)
灰十字・セザリア(a21213)
愛を振りまく翼・ミャア(a25700)
愚者・アスタルテ(a28034)
月ノ巫女・ラクスウェル(a35290)
弓使い・ユリア(a41874)


<リプレイ>

●屋敷へ
 何処となく殺風景な山肌。
 かってはこの辺りにも人が居たのだろう、道すがらには僅かながら住居の跡が点在し、しかし、そのどれもが月日の経過に負けて、無残な姿を晒している。
 しかも、雨こそないものの、生憎の空模様。どんよりした空気が余計に物騒な雰囲気を醸し出し、月ノ巫女・ラクスウェル(a35290)の羽もしゅんとして見える。
「廃墟ですの……怖いです……」
 目的地に近付くにつれ、砂壁は岩壁にと、更に殺風景さを増していく。
 秘めし十字架・セザリア(a21213)が手にしたカンテラを脇道に翳してみれば、伸びきった雑草のなかから、柵や煉瓦の囲いが時折朽ち掛けた姿を覗かせた。花壇の跡だろうか。
 時折、すうっと冷たい風が岩間を抜け、風舞彩月・シリック(a09118)の帽子の鍔を揺らす。今でこそこんな有様だが、当時は避暑地として重宝されていたのかも知れない。たゆたうカモミールの芳香を風に散らせて、麗滝の薬師・カレン(a17645)は考える。
 と、岩の合い間、それらしき建造物を認め、眠らぬ車輪・ラードルフ(a10362)が足を止めた。
「あれですかな」
「みたいだね」
 続けて見上げた、食医の紋章術士・アルト(a11023)が頷けば、弓使い・ユリア(a41874)が手荷物の中から、霊査士が書いた図面の写しを引っ張り出した。現物と違うのは、ユリアが『怪しい』と思うポイントに印がつけられていることだろうか。
 ノルマは一人最低二部屋。
 愛を振りまく翼・ミャア(a25700)が図面を覗いて……ふと、なんだか一人足りない気が。
 実際、アフロ凄杉・ベンジャミン(a07564)は、道中の狭い場所にアフロがつっかえて、現場にこれなかったとかなんとか。
「………」
 そんなことには気付かずに、ラクスウェルは現物を前に無言で後退り。だが、震える足を堪えて。
「頑張るですの」
「準備はいいです、ね」
 玄関の真上に張り出た窓が暗く沈むのを見上げ、失格者・アスタルテ(a28034)が手にしたカンテラに火を灯した。

●突入!
 間取りの割にはこぢんまりとした玄関扉。
 始まったなら速攻勝負!
 勢いよく開け放った扉から真っ先に屋敷へ飛び込んだのは、白い塊……ではなく、白い着ぐるみ(防具)に身を固めたミャア。
 だが、扉を開けた時、何かがぶちんとはちきれた感触が……?
「上っ!」
 それは誰の声だったのだろうか。
 しかし、気付いた時には既に、古びたシャンデリアを改造したらしき金属の塊が、ごしゃーんと派手な音を立てて開けた扉のすぐ側に落下していた。
「うみーごめんなさいですのー」
 恐ろしさの余りか、目の前に居たユリアの服の裾を掴んでいたラクスウェル。その為か、初動が遅れ、扉を潜った所で二人共うっかり罠の下敷きに。
「いたた……って急がなきゃ!」
 衝撃自体は大した事がなかったのだろう、ユリアはえいやと覆い被さる塊を退けると、二階の見張りの為に急いで階段を駆け上がる。ラクスウェルも裾を引っつかんだまま、あれよあれよと二階へ。
 ラードルフはすぐさま一階廊下へ続く扉へ取り付くとそれを開け放ち、その扉を、シリック、アルト、セザリアが間髪居れずに駆け抜ける。
「奥まで音が届いてなきゃいいのに」
 しかし、今ので侵入が知れてしまった可能性は高……何か居る!
 灯りもなく薄暗い廊下の中途、アルトの闇夜を見通す目に、明らかに人らしき姿のものが。
 ばたん、がたん。
 背後でシリックとセザリアが一番手前の部屋に入り込んだ音を聞きながら、アルトは見えたものに向け、一気に距離を詰めながら無数の木の葉を……
「わっ!?」
 突如、廊下に開く穴。しかし、そこは冒険者、背に浮かぶ召喚獣の力も合わさって、転びはしなかった、が。
「右です! 恐らく、三番目!」
 アルトが見失った人影の行方を、ラードルフの声が告げた。
 廊下に居たということは、見張りだろうか。
 だとすれば、最低もう一人くらいは、この階に居るはず。
 出掛けにばさりと落ちてきた粗悪な網をサーベルで切り裂いて払い除け、セザリアが最初の部屋を出る。
「時間稼ぎなのかしら」
 もしや抜け道はこの階に?
 何もない部屋に律儀に用意された罠に、セザリアはそんな感想を抱く。
 埃っぽく人の気配のなかった最初の部屋から、帽子を庇うような仕草を見せつつ素早く飛び出し、シリックもすぐさま隣の部屋の扉に手を掛け……
「くおあぁあぁああ!?」
 不意打ちでも狙ったか、怒涛の掛け声宜しく飛び出してきた一人を、背に浮ぶ青いマントを閃かせ軽やかにかわすシリック。
 そして、その動作から続けて、不可思議な剣舞を軽やかに舞い踊り浴びせ掛ければ、飛び出てきた男はぺたりと廊下に尻をつき、すっかり戦意喪失。
 しゃん、と装備を軽く鳴らして、シリックは改めて構えを直すと、意地の悪い笑みを浮かべ。
「逃げるのならば……今度は本当に斬りますよ?」
「うぶるぶぶぶぶ!」
 男は最早単語として成り立たない変な声を出しながら、物凄い勢いで首を左右に振りまくっていた。

 時は少し戻り。
 ユリアとラクスウェルが二階ホールに着いた時、既に廊下への扉は開け放たれていた。
「明るくなったですの〜」
 ラクスウェルが灯したホーリーライトに照らされ浮かび上がる二階。扉の一つにミャアが施したらしきシャドウロックの姿もくっきり見える。
 開けっ放しの扉を抑え、ユリアがホールと廊下を一巡していると。
「ここは何もなし、です」
 一つ目の部屋の捜索を終え、アスタルテが次の部屋へ取り掛かろうと聞き耳を立てようと……して、手を止める。
 明るくなったお陰なのか、扉の隙間から細い縄が。
 如何に踏み潰して行くつもりとはいえ、こんな見え見えのものにまで引っ掛る道理はない。恐らく玄関にあったような、縄が外れると何かが起こる系統だろうと察し、アスタルテは扉を開け放った瞬間に縄を引っ掴かんだ。
「……やはり罠でした、ね」
 先を辿れば、天井を介し、壁に続く終点に、木材を尖らせて作った幾本もの杭。多分、これが飛び出してくるはずだったのだろう。
 そして、そのまま部屋を見回すが、先程見た部屋と同じく家財道具の類は盛大に朽ち果て、人の気配もない。
 軽く調べた所で、罠以外に何もないと察して廊下へ出ると、ミャアが自らの施したシャドウロックの掛かった扉を斬鉄蹴で破って……玄関で出遅れたラクスウェルの分か、既にノルマを越えて三つ目の部屋へと侵入していくのが見えた。
 更に別の部屋からは、カレンが姿を見せ、隣の扉へ。
 ミャアの豪快さとは対照的に、先ずは耳を澄まし……何かを感じたカレンは、そっと扉を開く。
 二階に響き渡る、眠りの歌。
 そんなカレンの様子に、矢をつがえ警戒を強めるユリア。
 ひとしきり歌ったところで、カレンがいよいよ扉を……
「おっと」
 飛び出てきた石の塊を咄嗟にかわす。
 そしてすぐさま部屋の中を覗き込めば。
「……上手くいったようです」
 岩しか見えない窓の外に垂らされた縄。罠とそれとをカムフラージュにして、入れ違いに逃げる算段だったのだろう。が、その部屋にいた二人組は、身を潜めたはずの天井で眠りの歌にやられ、だらしなくぶら下がっていた。
 廊下でその様子を見ていたアスタルテも、身柄を確保するべくカレンに続いて部屋の中へ。
 それに気付き、ユリアが階下に向けて声を張り上げた。

●捕獲!
「二階、二人確保!」
 階段の上から振ってくる声を、ラードルフが一階を探索する皆に向けて伝達する。
「二階、二人確保です。残り三……いや、あと一人です!」
 先ほどアルトが飛び込んだ部屋から、緑一色と化して廊下に放り出された人影と、廊下に飛び出て消沈した一人を確認、すぐに言葉を訂正する。
 ……と、その時。
 ずずどどささささー!
「くっ!?」
 突如、捜索していた部屋の天井が崩壊、セザリアは木屑と埃に塗れながら、廊下へと飛び出す。
 ここだけ随分大掛かりな……逆におかしい思って、はたとセザリアが振り返ると。
「……床抜けたの?」
「罠だったのかも……知れません」
 落ちてきたらしいカレンとアスタルテが咄嗟に見上げれば、確保されるはずだった盗賊二人が今の振動で目を覚まし、慌てて二階の廊下へと逃げ出していく。
 しかし、穴の上から。
「大人しく降伏するですの〜」
「れいんぼぉ〜♪ ま〜しふる☆じゃっべりぃ〜ん!」
「ふぁいえる!」
 なんて声が聴こえくるのから察するに、多分、速攻で捕縛されたに違いない。
 その時だった。
 一階を見張っていたラードルフの手鏡、階段のある背面を映したその景色の中を、何かが横切る。
 残りは一人、これだけの時間があれば、もう部屋は全て捜索済みのはず……ということは。
「しまった、一人外に出た!」
 焦りが出たか、いつもとは少し違う口調で仲間に警戒を発し、皆の注意を集めるためにスーパースポットライトを行使、自らも屋敷の外へ飛び出るラードルフ。何処から脱出したか、噂の一人は脇目も振らずに屋敷から離れようと必死に駆け出していく。無論、すぐに追いかけ……
 その時。
 玄関真上の窓が蹴破られ、そこからユリアが上半身を乗り出した。
「ふぁいえる!」
 掛け声一閃、走る盗賊に向けて、ばきゅーんと放たれる影縫いの矢。
 矢は見事、走る影だけに突き刺さり、唐突に動きを止められた盗賊はつんのめってばたり。
 そしてそこにきっかりラードルフが追いついて、見事全員の確保に成功したのであった。

●香はどこ?
 くそ〜、こんなに大勢でくるなんて。
 とは、捕まった五人の弁。
「で、聞きたい事があるんだけど」
 もそもそと身を寄せ合う五人組を見下ろすセザリア。
「地下室、って何処にあるのかしら?」
 しかし、相手は何のことだかと予想通りに白を切る。
「ここで協力しておけば、罪も多少軽くなる――かもしれませんぞ」
「香を返せば逃がしても良いかな……?」
 ラードルフは諭すように、シリックは思わせ振りな独り言を呟くが、集団心理とでもいうのか、言うな言うなの雰囲気に五人は揃って口をつぐむ。
 が。
「答えないなら……全身の毛を刈り取ってしまいましょうか?」
 ずいっとはさみ片手に迫るのはカレン。
「手袋してるから、間違って余計な所ちょんぎってしまうかもしれませんね?」
 余計な所、の一言に突如走る動揺。
 どうすんだよ、おちつけ、うばぶべばぼぼぼ。
 そんな、様々な言葉が飛び交う中。
「別に喋らなくてもいいです、よ?」
 アスタルテの静かな声に、はたと止まる会話。
「手段は秘密、ですけど……頭髪が真っ白になるような目にあっても良いというのなら、頑張って耐えて下さい、ね」
 実ににこやかなその笑顔を前に、五人の背にぞわぞわと冷たいものが走る。
 刹那。
 どかん、とも、ばきん、とも聞こえる鈍い音が、部屋に木霊した。
「……で、どうするの?」
 間髪居れず叩き壊した壁から腕を引き抜き、セザリアが威圧的な姿勢で再び五人を見下ろす。
 あうあわおわわわ。
 流石にもう強がる気も萎えたか、五人は我先にと地下室や抜け道のありかを話し始めた。

「え? じゃあ、僕が嵌ったのは、落とし穴じゃなくて……?」
「落とし穴でもある。罠だと思えば、わざわざそこ調べないだろ」
 そこだけ聞くと、成る程と思ったりもするのだが、急に飛び出してくる奴がいたりする辺り……この場所が割れたのも、ささくれ引っ掛った服のせいだったなと、五人の中に一人混じっているうっかり属性の存在に、何故か溜息。
 ともあれ、彼らもあとでお持ち帰りせねばならない。シリックとミャアは掛けた縄に更にシャドウロックを仕掛けてから五人を手近な部屋に転がしておくことに。
 底に据えつけられた尖った杭を引っ張り上げれば、杭を支える木箱が丸ごとごっそり外れて、地下への階段が現れた。
 ラクスウェルのホーリーライトに明々照らされて……しかし、床下収納程度の役割しか持っていないのか、階段はすぐに突き当たり、部屋自体も全員で入ると圧死しそうな狭さだった。
 なので、地下室には小柄なユリアとアスタルテがお邪魔することに。ミャアは着ぐるみがつっかえそうなので、一先ず待機。
「色々溜め込んでます、ね」
 とはいえ、目ぼしいものは一つ二つ。他はもう食料にでも変えたか、目立つのは加工食品ばかり。
「あったよ」
 そんな中から、僅かに香りを発している小瓶を見つけ、ユリアが階上の皆へと階段越しにそれを掲げて見せる。
 掲げられた香を受け取って、ラードルフはその外観をまじまじ。
「破損は……していませんかね?」
「怖かったですの……」
 その様子に安心したのか、思わずその場に座り込むラクスウェル。
「あとはこれを届けるだけね」
「泥棒の方々も然るべき所に届けませんと」
 五人はカレンが運搬用に呼び出したフワリンに乗せられ、時々効果時間を過ぎていきなり地面に落っことされたりしながらも、香と共に街へと連行。
「しかし、製作中のものなんて素人が盗ってどんな使い道があるんでしょうか」
「なっ……完成品じゃなかったのか!?」
「……今までよくやってこれたわね」
 いやそれとも、素人には、それすらも判別不能ということなのだろうか……
 真相は、謎である。


マスター:BOSS 紹介ページ
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参加者:10人
作成日:2006/07/28
得票数:ほのぼの1  コメディ16 
冒険結果:成功!
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