溺れるにゃんこ



<オープニング>


●海でダシが出ないの何故だろう
「ある海沿いの村で、猫が海に落ちて溺れるという事件が多発しています」
 真実求む霊査士・ゼロ(a90250)の言葉に冒険者たちも首を傾げる。確かに事件といえば事件なのだが、原因もさっぱり想像できなかったからだ。
「原因は海から何かの香りが流れてきていて、そのせいで猫が誘われているようなのですが……」
 何ともいい香りらしく、油断していると人も海に落ちてしまいそうになるのだという。
「霊査によれば、海に『カ・ツーオ』という魚の突然変異体が泳いでいるのが原因だということです。この変異体は泳ぎながら特殊な香りを放ち、周囲の『カ・ツーオ』を操って自分の周りに泳がせている様子です。このせいで猫だけでなく、漁師の人たちも『カ・ツーオ』が獲れなくなってしまって困っていらっしゃいます」
 何とか海を泳ぐ変異体を仕留めて欲しいとゼロは言う。
「変異体はあまり浅くない辺りを泳いでいるみたいなので、周囲の『カ・ツーオ』の群れや集まってきている猫たちに注意すれば何とか退治することは可能でしょう」
 ただ、早く仕留めないと溺れる猫は増えるし変異体も逃げてしまうかもしれないとゼロは付け加えた。
「香りに誘われて海に落ちないように注意して下さいね。何とか猫たちと『カ・ツーオ』漁の平和を取り戻すために……よろしくお願いします」
 そう言ってゼロは冒険者たちに一礼するのだった。

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参加者
猫の日広報活動中・ヨナタン(a00117)
親愛なる隣りの魔王・マオーガー(a17833)
大砲娘・ドミノ(a36487)
蒼き戦乙女・アリア(a37121)
一生紫を愛す司書・コハク(a39685)
穏かに流れ往く・マシェル(a45669)
光騎士・ルクス(a47651)
月夜に謡う波の調べ・ルルナ(a51112)
黒騎士・カミユ(a52450)
黒翼の蒼兵・グロック(a52706)


<リプレイ>

●海に香るは潮風と……?
「猫達がピンチとあらば黙っていられません」
「沢山の人を困らせているなんて見過ごせないのです。そのために、どうしても船が必要なのです」
 穏かに流れ往く・マシェル(a45669)と月夜に謡う波の調べ・ルルナ(a51112)は近くの村で漁師たちと話をしていた。海に現れた突然変異の魚による被害を食い止めるため、船を貸して欲しいと交渉しているのである。
「船は我々が回り込むことと、海に落ちた猫の救出に使います。ですから傷つけるようなことは致しません」
 猫道家・ヨナタン(a00117)も真摯に言葉を投げかける。漁師達も変異魚によって『カ・ツーオ』という魚を取ることが出来なくなって困っているので、すぐに準備に取り掛かってくれた。三人は頷いてそれに続いていく。
「急がないと……」
 船着場へと急ぎながら、マシェルは心配そうに呟くのだった。

「さて、海……といっても、バカンスってワケじゃないけどね……」
 一方ではセイレーンの重騎士・アリア(a37121)をはじめとした冒険者たちが海岸へと近づいていた。船を借りる交渉に行かなかった者達は、一足早く海岸に向かって猫達が海に誘われるのを少しでも防ごうと考えていたのだ。
 蒼き巨鳥・グロック(a52706)はハイドインシャドウで気配を消して、海を狙撃できそうなポイントを探している。
 そろそろ猫達がわらわらと集まってきている様子が視界に入ってきており、何だか魚の良い香りも漂ってきているような気がしていた。
「猫には怒鳴りたくは無いんじゃがな、この際しょうがないじゃろ」
 たっと駆け寄り、ボンオドラー・コハク(a39685)は紅蓮の咆哮を手近に居た猫達に浴びせかけ、すくみあがらせる。
「誘惑状態じゃないのかな?」
 大砲娘・ドミノ(a36487)は毒消しの風を発動させているが、猫達が海に向かうのは止まる様子が無い。その傍でコハクが紅蓮の咆哮を浴びせた猫の麻痺は解けていることを確認していた。
「とにかく止めないと……ほいほい、飯よ、飯〜」
 懐から取り出した猫の餌をばら撒く親愛なる隣りの魔王・マオーガー(a17833)に、コハクもスーパースポットライトを輝かせる。眩い光に猫達の注目が集まった。
「念のために……試してみるねっ」
 ドミノは静謐の祈りを捧げる。すると猫達はスーパースポットライトの麻痺が解除され、再び海へと誘われ始めるでは無いか!
「一体どういうこと!?」「いや、あれは!」
 首を傾げるドミノに、マオーガーが指を差す。その先ではさっき撒いた餌に集まって取り合っている猫達の姿!
「つまり、誘惑状態が解除されても良い香りが無くなる訳では無く……猫は正気でも良い香りの方に向かって進む。ということじゃな」
 言いながらコハクも餌を撒き、再びスーパースポットライトを輝かせていた。ドミノの毒消しの風や静謐の祈りは確かに猫達をバッドステータスから救ったかもしれない。しかし猫は正常でも良い香りがする方へ……海の方へと進んでいってしまうのである。目先に餌があれば流石にそちらを優先している様子ではあったが。
「なるほどねー」
 ドミノは急いで海岸へと走り、仲間が海に近づく道を確保すると同時に、今にも海に落ちそうな猫を抱きかかえて岸の方へと戻してゆく。
「いざ、張り切って参りましょう!」
 獅志騎士・ルクス(a47651)は出来た道を進みながら、横に居た聖罪の後継者・カミユ(a52450)へと鎧聖降臨を使用する。そして海に入ろうかと構えるカミユの肩をがしりと掴んだ。
「レッツゴー、カミユ!」
「わぁぁぁっ!?」
 どっぱーん
「ほら、獅子の子は崖からブン投げろといいますし、これも修行です」
 何だか満足気にルクスが呟いた丁度その時、海上の波を切って船が近づいてきた。
「まったく良い匂いさせちゃって……」
 鎧聖降臨で服を体にフィットする形状へと進化させ、船から海に飛び込むマシェル。ヨナタンも同様に鎧聖降臨を使用してから後に続いていた。まずは溺れている猫達を救出し、船に残るルルナへと渡してゆく。
「猫さん、今助けるのです……」
 船の位置調節と猫のケアをしながら、ルルナは心配そうに呟いていた。
「それじゃ行くわよ!」
 岸の方からは鎧聖降臨で鎧を水着に変えたアリアと、ドミノが海へと飛び込む。すぐに泳いでいた『カ・ツーオ』が、どんと体当たりを仕掛けてくる。どちらかといえば体当たりというよりも、泳いでいる軌道に二人が割り込んだような形だったが。
「この匂いに惑わされないようにしないと……」
 海はそんなに深いという訳でもなかったが、だいたい胸より上くらいまで海水に浸かってしまう。この状況で誘惑されないように、ドミノは静謐の祈りを捧げ始めた。
「この群れを……追い込んでいかないと」
 鎧聖降臨が掛かっていないドミノにはマシェルが発動させつつ、岸の方へと『カ・ツーオ』を追い込めるように皆で移動していった。
「それにしても、邪魔です!」
 変異体の周囲を泳ぎ回る普通の『カ・ツーオ』はルクスがデンジャラススイングで岸の方へと投げ飛ばしていた。あまり被害を出しすぎるのも良く無いが、作戦が遅れてしまっては元も子もない、障害となるものは仕方なく……という判断なのだろう。決して後で食べようとかそんなことは無い……に違いない。
 だが、そのルクスの行動はあながち間違いでもなかったのかもしれない。アリアやカミユは真っ直ぐ変異体へと向かおうとしていたのだが、どうにも周囲の『カ・ツーオ』が邪魔で近づけないのだ。
「っ……このっ」
 ざばざばと波を掻き分けて進もうとするカミユの横手に、どんと重く体当たりを仕掛けてくる『カ・ツーオ』。ダメージは鎧聖降臨のお陰もあってほとんど無いのだが、押された所に正面からも『カ・ツーオ』が泳いできたりして中々進めない。
 じゃっ!
 空を切り裂き、そこに一矢が突き刺さる!
「何!?」
 カミユが見れば、それはグロックが放ったものだった。
「所詮は魚よの。頭が向いた方向へしか泳げまい」
 グロックは岸から狙いを定め、『カ・ツーオ』の泳ぐ方向を見定めて矢を放ったのだ。鼻先を通過する矢に『カ・ツーオ』は驚き、或いはぶつかってルクスの周りにスペースが出来た。その空間を利用して、カミユは再び進み始める。
「なんだか沢山で、ちょっと気持ち悪いのです」
 船上からはルルナが粘り蜘蛛糸を放ち、アリアの行く手を阻んでいた『カ・ツーオ』を絡め取っていた。そうして何とか少しずつ、群がる『カ・ツーオ』たちを岸の方へと追い詰めてゆく冒険者たち。

「はいはい、そっちいかない……君はこっち」
 岸ではマオーガーとコハクも奮戦していた。既に餌は尽き、コハクのスーパースポットライトで猫達を釘付けにしているのだが、中には運良く麻痺から逃れてしまう猫もたまに出てくる。
「あぁもうはいはい遊ぼう、はいはい」
 そうして海に向かおうとする猫たちを、マオーガーがひたすら連れ戻しているのだ。
「一段落すればわしも投げ網を手伝おうかと思っておったのじゃが……難しそうじゃな」
 コハクも連続でスーパースポットライトを使用しているので動けずにいた。あんまり考えたくは無いが、スーパースポットライトの回数が切れたらどうしようかと思いながら。近接範囲にしか効果の無い紅蓮の咆哮では、これだけの数の猫をカバーするのは不可能だろう。
「……早く頼むぞ」
 二人で大量の猫をひたすら捕まえまくる光景を想像しながら、コハクは海に向かって呟くのだった。

「今のうちに普通の『カ・ツーオ』をできるだけ包囲の外に出しましょう」
 言って眠りの歌を奏で始めるマシェル。グロックの影縫いの矢やルルナの粘り蜘蛛糸で自由を奪われた『カ・ツーオ』たちを抜けて、じりじりと詰め寄ってゆく冒険者たち。
「くっ、大人しくしてなさい!」
 盾で『カ・ツーオ』の軌道を押し逸らし、強引に進むアリア。
「無視だ、無視」
 カミユはドカドカ体当たりされていたが、まぁ気にしないことにして進んでいる。見かねたマシェルが高らかな凱歌で蓄積し始めていたダメージを回復させ、グロックが影縫いの矢で群がる『カ・ツーオ』の数を減じさせた。
「っこいつの香りさえなければ……」
 ドミノは静謐の祈りを捧げ続けていた。近づくほどに強くなる香りだったが、冒険者達が正気を失わないのはこのお陰だろう。仮にちょっとクラッときても、すぐに解除してもらえるのだ。
「これですね!」
 その時、群れの中心に到達したルクスがガッチリと一匹の『カ・ツーオ』の尾を掴んでいた。それこそが騒ぎの元凶、変異体だ!
「どりゃあっ!」
 豪快に投げ飛ばされた変異体は群れから外れ、一匹だけ突出した形になる。岸にぶつかってビチビチと暴れていた。その動きを包み、再び海に落ちないように拘束すべくヨナタンの緑の束縛が纏わり付いてゆく。
「悪いけど……最後っ」
 ダンッと水しぶきを上げてアリアとカミユが走る、上段に振り上げられる蛮刀『Gスラッシャー』と巨大剣『ゼインドルファー』が交差し、兜割りとデストロイブレードが立て続けに打ち込まれた!
 どがんっ!
 デストロイブレードの闘気が爆発し……変異魚は微塵に砕け散ったのであった。

「これでまた『カ・ツーオ』が取れるのです」
 村人達に変異体の退治完了の報告と、船の返却に行くルルナたち。
「皆さん、お疲れ様でした。頑張りましたね、カミユ」
 ねぎらいの言葉をかけるルクスに、何だかちょっと不満げな様子のカミユだった。
「あぁもう疲れた。帰って寝よー」「……で、『カ・ツーオ』って美味いの?」
 猫の相手に疲れたマオーガーだったが、ドミノの言葉でちょっとだけ帰るのを待つ。びちびちと岸に打ち上げられてしまった普通の『カ・ツーオ』が数匹転がっているのだ。このままでは無駄な犠牲となってしまう。その命を無駄にしない為には……。
「服を乾かす焚き火を利用して、タタキとでもどうかの?」
 濡れた猫を乾かす手伝いをしていたグロックの提案に、一同はにっこりと頷くのであった。
 こうして、今度は危険で無い香りが潮風と共に漂う。つられて寄ってくるにゃんこ達に、マシェルがタタキの切れ端をおすそ分けしていた。

「保護した猫を返しにまわらんとな……」
 『カ・ツーオ』のタタキも堪能できたということで、にゃんこ達が飼い猫なら持ち主に返してあげないといけない。コハクを始め手分けして聞き込み調査が行われ、それぞれが飼い主へと返却されてゆく。
「余っている猫が居たら貰っていっちゃおうかな……?」
 で、まだ残っている猫は現段階では野良猫ということなのだろう。アリアとコハクは小さな猫達を眺め、ちょっとだけ首を傾げていた。

「猫さんたち、助かってよかったね〜 皆さんお疲れ様でした〜」
 ヨナタンの言葉に一同も頷き、冒険者たちは静かになった海を後にするのだった。

 (おわり)


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